
読み終わりたくなかったので、少しずつ読み進めていた、ビル・クロウ著(村上春樹訳)『さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想(新潮文庫)』新潮社(1999)をついに読み終わってしまった。
モダン・ジャズの絶頂期にジェリー・マリガン・カルテットなどでベーシストとして活躍した著者の「自伝的交遊録」である。超有名ミュージシャンの回顧録ではないので、あんまり派手な話は出てこないけれども、ジャズという音楽の純粋な楽しさが伝わってくる温かい作品だ。と同時にジャズが「街でいちばんかっこいい音楽だった(村上春樹・和田誠『ポートレイト・イン・ジャズ』新潮文庫 168ページ)」ころの雰囲気もまた味わうことができる。
「バップの洗礼」を受けつつも「スウィング・ジャズ・スタイルの演奏をする先輩ミュージシャンたち(いわゆる中間派ジャズメン)に対して終生深い敬意をの念を抱き続けている(「訳者あとがき」 551ページ)」著者の姿勢も(恐らくは訳者の好みとも相俟って)読んでいて心地よい。
読んでいてなんとなくジャズを聴きたくなる、そんな一冊である。
巻末の、訳者による「私的レコード・ガイド」も必見!
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