ビーチボーイズの『スマイル』、「ロック史上、もっとも有名な未完成アルバム」がついに登場した。2004年にブライアン・ウィルソンがソロ・アルバムとしてレコーディングしたものを発表しているが、こちらは67年当時の音源を再構成したもの。
本編とも言える部分は2004年のブライアン版をもとに曲順などが構成されているし、多くの人が指摘している通り、恐らく67年当時の構想がもとになっているわけではないのだろう(というか、当時はそこまでしっかりとまとまってはいなかったのだろう)。
そして、原題の通り、これはセッションの記録としてとらえるべきものであり、『スマイル』は永遠に未完成だというのが適切なのかなとは思う。
それでもやはり、この音源が世に出たということは、ファンとしてはうれしいこと。逆に言えば『スマイル』は存在することに意味があると言えるのかもしれない。
ブライアン版を実家においてきてしまったので聴き比べができないのだけれども、このセッションはやはり「英雄と悪漢」、「サーフス・アップ」、「グッド・ヴァイブレーション」の3曲が核を構成していて、残りの曲を「コンセプト・アルバム」風につないでいってひとつのアルバムを構成するというのがひとつの方向性なのだろう。「ペニー・レイン」、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の3曲を核にしていたビートルズの『サージェント・ペパーズ』との相似形になっている気がするのは偶然だろうか。
67年という時間において、ブライアンとヴァン・ダイク・パークスのチームをレノン=マッカートニーと比較することは適切ではないだろうけれども、前者の才能のひらめきの多くが未完のままに終ってしまったことは、後者の成功を見るにつけロック史上最大の損失のひとつであったと言えると思う。