新潟で部分日食しか見られなかった彼女を満足させた私

　東日本のみなさん　こんにちは

　我が家族が父手製の日食グラスで金環日食を大阪で楽しんでいる頃、私は出張先の新潟のビジネスホテルで朝食を食べていました。こちらは部分日食です。それでもどんなものか見ようと表に出てみると、女性が一人日食グラスで太陽を観察しています。

　借りたいけれど、こちらから貸してともいえず、まぶしい太陽を見上げて再びその女性を見ると、目が合いました。どちらともなく会釈をしあったその刹那、女性が、
　「見られます」
　促してくれました。もちろん、
　「はい、いいですか。ありがとうございます」
　彼女、穏やかに
　「目に当ててから太陽を見るようですよ」
　と日食グラスを渡してくれました。

　７時半前でした。日食グラスを通してみる太陽は下弦の三日月のように陰っています。私と同じように外にいた男性も私が貸してもらったのを見て、彼女を見ました。するとその方にも彼女が「どうぞ」と。その様子を見ていたホテルの中からも数人の方が出ていらっしゃって。そのみんなに彼女は「目に当ててから太陽を見てください」と、几帳面に声を掛けグラスを渡していきました。結局彼女のグラスで７、８人が『部分日食』を楽しみました。

　天体マニアでもないので部分日食を見てもそんなに感動するものではありません。特に一人で見ても。あの三日月のような太陽を見たことより、この彼女を喜ばせたのは、グラスを貸したみなが喜んで、ありがとうをいっぱい言ったことでしょう。

　こちらがグラスを借りた方なのに、「借りることで貸してくれた彼女を満足させられた」と思う私の性格はちょっとゆがんでるんでしょうか。　

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