神奈川・川崎市川崎区浮島町の日鉄住金鋼管川崎製造所の敷地内で24日、火災が発生し、隣接する花王の工場に延焼した。

  火災のあった製造所は今年6月に生産ラインを終了し、解体作業が進められていた。冷却塔を取り外すための溶断中にガスバーナーを使っていた作業員が「飛び 散った火花が燃え移った」と話していることが24日、県警川崎臨港署への取材で分かった。作業員が消火器で対応したが、火は一気に燃え広がり、上空は黒煙 が立ち込めた。鎮火したのは約5時間半後でけが人などは出なかった。

 出火当時に爆発音を聞いたとの目撃情報もある。元東京消防庁消防官 で防災アナリストの金子富夫氏は「50年も稼働していた工場で、積もり積もった油やススなどが、燃えたのでしょうが、あの黒煙は尋常ではない。なにか廃油 や危険物が貯蔵されていたのではないか」と指摘する。日鉄住金鋼管側は原因不明としながら「建物内に有害物質は保管していなかった」と説明する。

「風向きに助けられた。西風が吹いていたらどんな被害になっていたのか」と声を震わせたのは地元の脱原発関係者だ。延焼した花王は製造所から西南側に位置し、東南側には東芝原子力技術研究所が隣接する。この東芝の敷地内には実験用の原子炉が設置されているのだ。

  同研究所には1960年代に造られた2基の原子炉があり、1基は2003年に廃炉となったが、核燃料廃棄物は保管されたまま。もう1基は原発の新規制基準 による審査中で停止となっている。半径100メートルは原子力災害対策重点区域に指定され、厳重な規制が敷かれている。川崎市危機管理室によれば、火災発 生後、東芝側と状況確認を徹底したという。

「川崎の原子炉は実験用で出力が小さいとはいえ、放射能はたっぷり含んでいるわけで、事故が起 きれば市内どころか首都圏が汚染される。多摩川を挟んですぐ羽田空港があり、飛行機が墜落する可能性もある。3・11以前からこんな密集地に原発施設があ るのはおかしいと抗議活動が行われていました」(前出の関係者)

 あわや“原子力事故”となる寸前だったわけだ。地元住民や関係者らが背筋を凍らせたのも無理はなかったわけだ。

【転載終了】