切られお富!

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『ジョン・レノンを撃った男』 アンドリュー・ピディングトン監督

2014-09-10 00:31:43 | アメリカの夜(映画日記)
ジョン・レノン殺害犯の仮釈放却下報道があったのは記憶に新しいところだけど、そもそもこの犯人どういう人だっけということで、観ました。というか、映画の存在は前から知っていたんだけど、企画としては悪趣味だという先入観があって、観ないできたんですよね。でも、すごく真面目な、よくできた再現ドラマで、監督の志の高さがうかがわれる。ということで、興味のある方はどうぞ。

【ニュース】服役中のジョン・レノン殺害犯マーク・チャップマン、8度目の仮釈放申請を却下される

殺害犯マーク・チャップマンがサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の愛読者だったという話は有名だったけど、ハワイに住んでいた男だとは初めて知りました。そして、観た率直な感想は、まことに単純ながら「こういう人いるな」というもの。特に、いまの格差社会日本には、こういう人増殖してるんじゃないのかな~。なので、1980年と2014年の時代ギャップ、世代ギャップを、わたしはまったく感じませんでしたね。

それと、別に犯人を擁護する気はさらさらないんだけど、<ジョン・レノン>クラスのスーパースターなら、ましてや銃社会アメリカなら、AKB握手会商法なんかあり得ないんだな~とよくよく思いますよ。銃が簡単に買えちゃう感じもリアルで興味深かったですしね。

あと、別の映画なんだけど、『ピースベッド』というジョン・レノンが政治に近づいた時期のドキュメンタリー映画も一緒に見るべきだと思います。こちらの映画を観れば、ジョン・レノンの置かれた状況が、狂った殺害犯だけの問題じゃなかったことがわかるはず。(ちなみに、こっちの映画はピーター・バラカンさんが著書の中で強力推薦してました。)

ということで、自分が無駄に年をとってきて感じるのは、ジョン.レノンの享年40歳も、マーク・チャップマンがほとんど自殺に近い凶行に走った年25歳も、つまりどちらの意味の<死>も若い、若すぎるということ。まだ、きっと先に何かがあったはずなのにという…。

もっとも、ジョン・レノンだって、ポール・マッカートニーみたいに長生きすれば、才能の枯渇とか駄作の連発という老醜を晒したかもしれないし、チャップマンも誰からも注目されない緩慢な生を全うしたかもしれない。

だけど、特別な天才とか特別な出来事より、今のわたしは緩慢な生の問題の方に興味ありますね~。だから、何が言いたいかって?早死した天才を崇拝したい連中も、天才を殺しに行く人間もどこかでつながっているんじゃないのって話。太宰治の「駆け込み訴え」みたいな感じというかね~。チャップマンが釈放されたら殺したい連中だって、チャップマンと同じ穴のムジナなんだし。

なので、今のわたしは、ジョン・レノンに過剰な思い入れはなくて、割合クールに観ることができました。もう遠い歴史の一事件として考えるべき時期という意味で、よくできた映画だと思います。

PS:しかし、わたしのブログの調子って、今もって野崎孝訳「ライ麦畑」調なのはご愛嬌ってところかな?!

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