切られお富!

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東山千栄子の「桜の園」を観た!

2007-04-11 23:59:59 | 芝居日記(ex.伝統芸)
先日、NHK-BSで放送していた、東山千栄子主演のチェーホフ「桜の園」を観ました。東山千栄子というと、小津安二郎の「東京物語」の死んでしまうおばあさん役があまりに印象的で、庶民的な女優というような気がしていたのだけど、貴族のラネフスカヤ夫人役も品があってよかったなあ~。でも、最近知ったんだけど、このひとって、36歳で女優を目指したんだそうですね、このひとの経歴を知ってちょっとビックリ!

日経新聞連載の「私の履歴書」を文庫化したシリーズ『私の履歴書-女優の運命』の、東山千栄子の部分を読んでいて驚いたのが、このひとって大変なお嬢さんだったということ。

恵まれた家庭に育ち、モスクワで新婚生活、リヨンへ語学留学したこともあるというハイソな暮らしぶりで、帝政ロシア時代のモスクワで、チェーホフの未亡人が主役ラネフスカヤ夫人、スタニスラフスキーが兄ガーエフ役で出演の「桜の園」を観たというから、もう凄すぎ。

そんな彼女の転機は関東大震災で、人生は一度きり、子供もなく夫に食べさせてもらっているだけの生活から独立しようと、一念発起して、数え年36歳から女優志願したというから、立派だなあと思いますね。

ところで、話を「桜の園」に戻すと、日本では太宰治の「斜陽」に影響を与えたという没落貴族の戯曲として有名だけど、ヒロイン・ラネフスカヤ夫人のキャラクターって、女性より男性に人気があるという印象ではありますね。

身持ちがいいとはいえず、感情に流され、行動力はない夫人の性格って、男性にはある種の母性を感じさせるんだけろうけど、女性はああいうおっとり感に今や魅力を感じないように思えてしまう。

たとえば、倍賞美津子やスーザン・サランドンみたいな積極性のあるあばずれ(?)女優には、この役は似合わないし、仮に演じたとしても別の役のように見えるんじゃないかな?

(因みに、NHKの番組では、演劇評論家の渡辺保氏がこの芝居に共鳴する一方、高畑敦子が「あまり好きではない」と発言していて、やっぱりって思ってしまった。)

で、東山千栄子のラネフスカヤ夫人だけど、割と陽性で罪のない女性というイメージで、当時70歳過ぎということから、色気には乏しかったけど、コケティッシュな魅力のある芝居だったなあという印象でした。

ついでだったんで、岩波文庫から出ている新訳を読んでみたんだけど、解説が詳細で旧訳の文庫しか読んだことがなかったわたしにはかなり新鮮でしたね。紹介されていた宇野重吉の『チェーホフの「桜の園」について』という本にも興味を持ったし。

そんなわけで、NHKには今後も昔の芝居のVTRをどんどん放送して欲しいなあと思いました。(深夜枠でもかまわないので。)

PS:『私の履歴書-女優の運命』の解説は、『負け犬の遠吠え』の著者・酒井順子さんが書いてるんだけど、なかなか面白いです。ここだけ立ち読みするのもありなくらい。

私の履歴書 女優の運命

日本経済新聞社

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