切られお富!

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<訃報> 演出家 蜷川幸雄

2016-05-12 21:19:46 | 芝居日記(ex.伝統芸)
偉そうにいえるほどたくさんは観てないし、特に好きな演出家ではなかったんだけど、歌舞伎座で尾上菊之助と組んだ「十二夜」の初演は凄かったと思いました。ご冥福をお祈りいたします。

個人的に記憶に残るのが、彩の国さいたま芸術劇場で観た、三島由紀夫原作の「近代能楽集」。「卒塔婆小町」と「弱法師(よろぼし)」をやったんだけど、「弱法師」の藤原竜也のちょっとオーバーな激情の芝居に、セリフ噛み噛みだった筒井康隆の父親がすごくて、灰皿飛んでこないか心配になったほどですが、高橋恵子はよかったんですよね。あと、最後に、三島の市谷でのアジ演説が流れるという演出は・・・。

「十二夜」に関していうと、「弱法師」の悪印象があったんで期待してなかったんですが、その分なのか、とても感動しました。特に初演ですね。菊之助はもちろん、左團次、松緑、亀治郎時代の猿之助がよくて、美術も息をのむほど素晴らしかった。菊之助の追悼コメントが聴きたいなあ~。

あと、本なんですが、『蜷川幸雄・闘う劇場―僕が笑い、泣き、闘った舞台のすべて』(NHKライブラリー)は、70年代くらいからの演劇状況がわかったりして面白く読みました。特に、東京調布の大映スタジオで芝居の公演を打った話は興味深かったですね。

そして、最後は映画。映画は意外と悪くないです。『青の炎』は観てないんですが、『嗤う伊右衛門』と『蛇にピアス』はまずまず。特に『蛇にピアス』は監督したこと自体に意外性があったし、吉高由里子の映画主演デビュー作ですからね。共演が高良健吾とARATA(現・井浦新)というのも、今考えるとよいです。また、亀治郎時代の猿之助がチラッと出演しているのも、歌舞伎ファンには見逃せないでしょう。

というわけで、蜷川幸雄の話に戻すと、生きたいように自由に生きた幸福な人だなあ~と思います。なかなかそういう風にはいかないですものね~。明日から、各メディア、追悼特集だらけになるんでしょうね。


蜷川幸雄・闘う劇場―僕が笑い、泣き、闘った舞台のすべて (NHKライブラリー)
蜷川 幸雄
日本放送出版協会


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
十二夜 (fortheday)
2016-05-14 19:05:53
再演されていたんですね。
初演は珍しく何回か通いました。
ほんときれいな舞台でした。
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コメントありがとうございます。 (切られお富)
2016-05-18 22:04:08
forthedayさま

コメントありがとうございます。

十二夜の初演(2005年)はビックリでしたね、舞台がきれいで。

再演は、2007年5月の歌舞伎座と、2009年6月の新橋演舞場でしたが、再演からは安藤英竹が松緑から翫雀に変わってしまいました。翫雀も巧いんだけど、松緑の素朴な道化がよかったんで、わたしは初演が一番よかったと思います。
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