言わなければならない事は言わないと前には進まない

生活する中において言わなければならない事や、他の記事で共感したことなどを中心に。今その時の思いを表す。

100歳のジャーナリストむのたけじ氏「民衆は自ら声上げよ」

2015-12-01 08:38:01 | 言いたいことは何だ

                 日刊ゲンダイ




  100歳のジャーナリストむのたけじ氏「民衆は自ら声上げよ」



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            現在も講演など精力的に活動する(C)日刊ゲンダイ

 戦時中、朝日新聞記者として中国や東南アジアでの惨禍を目の当たりにした後、終戦の日に新聞人としての戦争責任を取る形で辞表を提出した気骨のジャーナリストである。現在100歳。先月31日、戦争の動乱期のためもらいそこねた母校・東京外語大の卒業証書を、80年目にして受け取った。その際の挨拶には「第3次世界大戦を起こさせないように」という強い思いが込められていた。世界と日本を覆う不穏な空気に私たちはどうあらがったらいいのか。生涯、反戦を訴えてきたこの人の言葉は重い。


■今は人類滅亡の曲がり角


――外語大で卒業証書をもらいました。大事なことを2つおっしゃったそうですね。


 ひとつは80年経って卒業免状を下さる外語大に対する感謝と尊敬ね。個人でも団体でもヘマをする。それに気づいたら、何年経とうがきちっとけじめをつけるということが、どうも日本人は不得手なんだけど、外語大がそれをやったのは偉いことです。もうひとつは、人類語大学とか人類文化大学院という校名にして、単なる言葉の養成所ではなく、もっと大きな役割を果たして欲しいと言いました。人類は700万年の歴史の中で、滅びるかどうかの曲がり角に来ているというのが私の考え。文化を根底から立て直す時なのです。


――日本人はけじめをつけるのが不得手ですか。


 私はジャーナリズムに携わっているけど、ジャーナルというのは日記で、個人日記は、何時に起きた、何時にご飯を食べたなど、1日の記録だけ。ジャーナリズムとismが付くと社会の日記になる。昨日何やった、今日こうだった、だから明日こうなるだろうと、過去現在未来のつながりの中で社会を見ていく。

民族でも生き方の違いがある。世界全体の中で歴史を意識しながら生きてきた種族と、その日その日の暮らしに追われ、短い1日を生きる人間とは違う。島国の日本の場合は、その日暮らしが多いんだな。漁民も農民もそれぞれの日の天候に左右される。過去現在未来というつながりの中で生きるということが、日本人は残念ながら不得手だったと思うんです。

――だから、先の戦争のけじめがつけられていない。


 昭和20年の8月にポツダム宣言を受諾した時、日本の国民と政府が一緒になってやるべきことは、戦争の締めくくりだった。それは3つある。まず、あの戦争を誰が、いつ、どうして始めたのか。軍部だというけど、軍部のどういう勢力なのか。中国の領土の一部を取ろうとした戦いが、なぜ米英仏相手の戦いになったのか。

次に、戦場で何をやったのか。南京虐殺や慰安婦の問題があるけど、一体どうだったのか。そして原因の究明と償い。これら3つをドイツはやったんですよ。ナチスを止められなかったドイツ国民全体にも責任があるとして、償いも一生懸命やった。それでドイツは許されて、いま欧州のリーダーになっている。日本はどうかというと、韓国や中国との関係さえもうまくいかないじゃない。

――人類が滅びる曲がり角というのは、どういうことですか?


 評論家やマスコミ関係の中で「第3次世界大戦」という言葉を使っているのは、恐らく私だけのようだけど、私はそういう捉え方をしているの。世界は第1次、第2次の大戦を経験し、その流れが解決できないまま続いています。要するに国家エゴイズムだな。だから国際連合にしてみても、なかなか機能を果たせていない。

例えば地球温暖化の問題。10年ぐらい前から工場の生産と人間の生活スタイルを変えようとしているけれど、後進国と先進国の責任のなすりつけ合いで、全然決まらないでしょう。そして原子力の問題。原子力はすでに兵器として利用されているけど、実際、世界に(核兵器が)何発あるのか。国連できちっと調べるべきなのに、それがない。1万5400発というのがいま一番多い数字だけれども、冷戦時にロシアも米国も3万発を目標に生産を開始したという話もある。いまもこれを持っているのか。
第1次も第2次も、ちっぽけなことがきっかけで世界大戦になった。いまも世界のあちこちで戦争の種になりうるようなことが起きています。IS(イスラム国)の行動は、宗教と政治の危険な絡み合いを物語っている。それがパリ市のど真ん中に現実に悲劇を生む状況は、極めて血なまぐさい暗黒を示しています。

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母校の卒業証書を80年目にして受け取った(C)日刊ゲンダイ


――世界情勢がかつてないほど危険な状態にあるという認識ですね。


 国連加盟国が約200ある中で、決定的な影響力のある国は、米国、ロシア、中国の3カ国でしょう。ところがどこも安定していない。米国は間もなく大統領が交代する。中国は1党独裁に対する民衆の不満がある上、好景気に見えた経済が足踏みして止まった。そして重要なのは、米ロ中に少数民族が多数いること。彼らが、圧迫や侮辱はごめんだと動きだしているけれど、きちんと対応できていない。

超大国が米ロ中の3カ国になってしまったから、これが2対1になれば戦争が始まる危険性がある。だから、独や英や日本などが、この3カ国を2対1にしないように努力しなければいけないわけだ。ところが日本は、オバマ大統領の手下のような格好で、それでいて安倍首相はオバマにほとんど相手にされていない。ぶざまなもんだ。英独だって、ロシアの100ある少数民族を解体して、ロシアをグチャグチャにしたい。どこにも戦争を止めるプラス要素がないのが現状です。

――そんな状況下で、安倍政権が違憲の安保法を成立させ、日本も危ない状況になってきています。


 憲法9条、あれは何だと思いますか? 日本の側は9条を、あの15年戦争の後に行き着いた、誇りを持って地球上で生きていくための美しい旗印と受け止めた。戦争のない世界をつくるために先頭に立って頑張るぞと。しかし、連合国にとって9条は「日本を国家として認めない」という罰則だった。現代国家の条件は軍隊を持ち、戦争をやれるということですから。美しい旗印ならば、戦後70年経って、国連加盟の200カ国の中で、日本と同じ9条の条項を作る国が出てきてもいいのに、聞かないじゃない。本当は昭和20年の段階でこの矛盾に気が付いて、日本人はおいおい泣きながら、これは違うぞ、と問題にすべきだったんです。


■憲法9条は連合国からの罰則


――それを理由にして、安倍首相たち自民党のような憲法改正を目指す勢力があるわけですが……。


 だけど、日本は戦後70年間、実際に戦争をしなかったし、ひとりの戦死者も出なかった。それで、憲法9条が連合国の罰則だったということを抜きにして、やはり日本人として平和憲法は大事だなと思う人が育ってきたのだと思うんです。それじゃあダメだというのが安倍首相で、米国と手をつなぎ、強国と一緒に発展していきたい。そのために、米国との軍事同盟を強くして、戦死者が出てもやむを得ないような体制に持っていこうとしている。


――第3次大戦を回避するため、日本人はどうしたらいいのでしょう?


 非常に困難で危険な状態になると、出てくるのが「英雄待望論」です。昭和の初め、爆発的に売れた本が、哲学者の鶴見俊輔の父・祐輔の「英雄待望論」だった。日本人の悪い欠点なんだけど、神様、仏様と全部、人様頼み。そして、そういう苦しい社会状況を助けるのに「解放」という言葉がある。「解放」には2種類あって、ひとつは「解き放つ」、もうひとつは「解き放ちやる」。「解き放つ」は苦しむ人たちが自ら縄をブッタ切ることで、「解き放ちやる」は英雄を待って解き放ってもらうこと。これまではずっと「解き放ちやる」できたけれど、それじゃあダメだ。


――受け身ではなく、能動的に動けということですね。


 第3次大戦が始まれば、酷い目に遭う。それが嫌なら、英雄を待っていてはダメ。人類の長い歴史の中で、こうなったら困るという事態に直面しているのなら、困る人間が動かなければならない。何にも難しい理屈はいらない。人間にとってこれは許せない、という感覚で、声を上げるということ。国会周辺だけじゃなく全国で「安倍政権打倒」の声が上がった。今後、憲法改正に向かうような動きになれば、叫び声はもっと高くなるでしょうが、一番の問題は民衆なんだ。だからマスコミも、こうした危機的な現状について「あなた方、これでいいんですか」と読者にブツけなきゃいけないね。


▽本名・武野武治 1915年、秋田県生まれ。東京外国語学校スペイン語科卒。朝日新聞記者として中国、東南アジア特派員。45年8月の敗戦を機に書いた戦争記事に責任を感じて退社。秋田で週刊新聞「たいまつ」を創刊。100歳の現在も現役記者として講演など精力的に活動。


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