女性告発に官邸激震 “忖度捜査”で「レイプ被害潰された」
2017年5月30日 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/206390
声を詰まらせながら質疑に応じる詩織さん(右写真は山口敬之氏)/(C)日刊ゲンダ
29日、元TBS記者でフリージャーナリストの山口敬之氏(51)に「レイプされた」と主張するジャーナリストの詩織さん(28)が、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。山口氏を不起訴処分とした東京地検の判断を不服として、検察審査会に審査を申し立てたことを明らかにした。
山口氏は安倍政権の内幕をつづった「総理」(幻冬舎)などの著者。著書の中で、安倍首相と登山やゴルフに興じる昵懇の仲であることを明かしている。詩織さんは会見で時折涙ぐみながら、「山口氏が権力側で大きな声で発信し続けている姿を見たときは、胸が締め付けられた」と吐き出すように語り、日本の捜査のあり方に対して不信感をあらわにした。
詩織さんが配布した資料などによると、“事件”のあらましはこうだ。
15年4月、詩織さんは当時TBSワシントン支局長だった山口氏と都内で食事をした後に突然記憶をなくした。翌朝、目覚めると裸にされた詩織さんの上に山口氏がまたがっており、「自分の意思に反して性行為が行われた」という。その後、詩織さんは警視庁に被害届を提出。高輪署がこれを受理し、同年6月8日、逮捕状を手にした捜査員が成田空港で帰国する山口氏を、準強姦罪容疑で逮捕するため待ち構えていた。ところが、土壇場になって逮捕が見送られたという。その直後、「上からの指示があり逮捕できなかった」と捜査員から詩織さんに連絡があったという。
山口氏は同年8月26日に書類送検されたが、昨年7月、東京地検は最終的に嫌疑不十分で不起訴とした――。
詩織さんは会見で、「驚くべきことに、当時の警視庁刑事部長が逮捕の取りやめを指示したと聞いた」「私の知り得ない立場からの力を感じた」と訴えた。あくまで一方的な主張ではあるが、彼女は顔と名前をさらしている。相当な覚悟を持って会見に臨んだのは間違いなさそうだ。
■忖度で逮捕状を握りつぶしたなら重大問題
それにしても、逮捕状を握り潰した“当時の警視庁刑事部長”とは誰か。この件を最初に報じた「週刊新潮」によると、第2次安倍政権発足時、菅官房長官の秘書官を務め、政権中枢に近いとされる中村格・警察庁組織犯罪対策部長のことらしい。だが、今の日本においてそんな“超法規的措置”みたいなことが可能なのか。元大阪高検公安部長の三井環氏がこう言う。
「準強姦事件の逮捕は警察署の署長の判断で行われます。そこに警視庁の刑事部長が口を挟んで待ったをかけたのなら異例中の異例だし、あってはならないことです。女性が会見で述べたことが事実だとしたら、公平公正であるべき日本の司法が歪められたことになる。もっとも、同様のことは、加計学園の獣医学部をめぐる問題に異を唱え、会見した前川喜平前文科次官に降りかかったスキャンダルを見ていても感じます。警察当局にしか集められないような醜聞情報が、政権に近いとされるメディアにリークされた。官邸が捜査機関を手駒のように恣意的に利用しているとしたら問題だし、捜査機関が官邸の意向を“忖度”して動いているとしたらさらに大問題です。この状況下で共謀罪成立なんて絶対に許されません」
山口氏は自身のフェイスブックで、〈私は法に触れることは一切していません。一昨年の6月以降当局の調査に誠心誠意対応しました。当該女性が今回会見で主張した論点も含め、1年4カ月にわたる証拠に基づいた精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出ました。よって私は容疑者でもありません〉と反論している。
29日、日刊ゲンダイは改めて山口氏の言い分を聞こうと都内の事務所を訪れ、チャイムを2回鳴らしたが反応ナシ。携帯電話にも連絡したが、国際電話時の呼び出し音が聞こえたまま山口氏が電話に出ることはなかった。
山口氏にジャーナリストとしての良心があるならば、ぜひ、“捜査の内幕”を暴いて欲しいものだ。
②「私はレイプされた」。著名ジャーナリストからの被害を、女性が実名で告白
不起訴を受けて、検察審査会に不服を申し立てた詩織さん(28歳)が会見した。
2017/05/29 BuzzFeed News 渡辺一樹
https://goo.gl/mt8SK0
テレビに多数出演する著名ジャーナリスト・山口敬之氏にレイプされたと主張する女性・詩織さん(28)が5月29日、山口氏が不起訴となったことを受け、検察審査会に不服申立をしたと発表した。詩織さんは弁護士を伴い、東京・霞が関の司法クラブで記者会見した。
配布された資料などによると、詩織さんは2015年3月、当時TBSワシントン支局長だった山口氏に就職相談をしたところ、食事に誘われた。そして4月3日午後8時ごろ、都内の串焼き屋に入り、午後9時20分ごろ寿司屋に移ったが、そこで食事をしているところで記憶を失った。そして、痛みで目覚めた際、レイプされていることに気付いたという。
時折涙ぐみながら、詩織さんは語った。
「私の意識が戻ったのは翌朝の午前5時ごろ。ホテルのベッドの上でした。私は裸にされており、山口氏が仰向けの私の上に跨っている状態でした。詳細については差し控えますが、はっきり言えることは、私はその時、私の意思とは無関係に、そして私の意思に反して性行為を行われていたということです」
詩織さんは酒に強く、酔って前後不覚になったことはなかったという。詩織さんはすぐに病院に行き、さらには4月9日に警視庁原宿署に相談した。
警察の捜査によって、タクシー運転手や、ホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、2015年6月にいったんは山口氏への逮捕状が発行された。しかし、捜査員からは逮捕直前、「上からの指示で、逮捕できなかった」と連絡があったという。
山口氏はその後、2015年8月26日に書類送検されたが、2016年7月22日に、嫌疑不十分で不起訴になった。詩織さんは納得がいかないとして、検察審査会に不服申立をした。
詩織さんは、家族の意向で名字は伏せたものの「匿名の被害者女性と報じられたくなかった」として、顔と名前を公開して記者会見に臨んだ。
テレビなどで活躍するベテラン・ジャーナリスト山口氏は元TBS記者で、長く政界を取材しており、2016年5月のTBS退社後はフリージャーナリストとして多数のテレビ番組に出演している。安倍首相との距離も近いとされ、2016年6月に出版した著書「総理」(幻冬舎)では、次のように記している。
「安倍氏と私は一回り違いの午年で、出会った当初からウマが合った。時には政策を議論し、時には政局を語り合い、時には山に登ったりゴルフに興じたりした」
山口氏は、週刊新潮でこの件が報じられたことを受けて、自身のフェイスブックで5月10日次のように反論している。
「私は法に触れる事は一切していない。当局の厳正な調査の結果、違法な行為がなかったという最終的な結論が出ている。この過程において、私は逮捕も起訴もされていない」
一方、詩織さんの代理人弁護士は「これは起訴されるべき事案だと確信している」と述べた。
2017年5月30日 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/206390
声を詰まらせながら質疑に応じる詩織さん(右写真は山口敬之氏)/(C)日刊ゲンダ
29日、元TBS記者でフリージャーナリストの山口敬之氏(51)に「レイプされた」と主張するジャーナリストの詩織さん(28)が、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した。山口氏を不起訴処分とした東京地検の判断を不服として、検察審査会に審査を申し立てたことを明らかにした。
山口氏は安倍政権の内幕をつづった「総理」(幻冬舎)などの著者。著書の中で、安倍首相と登山やゴルフに興じる昵懇の仲であることを明かしている。詩織さんは会見で時折涙ぐみながら、「山口氏が権力側で大きな声で発信し続けている姿を見たときは、胸が締め付けられた」と吐き出すように語り、日本の捜査のあり方に対して不信感をあらわにした。
詩織さんが配布した資料などによると、“事件”のあらましはこうだ。
15年4月、詩織さんは当時TBSワシントン支局長だった山口氏と都内で食事をした後に突然記憶をなくした。翌朝、目覚めると裸にされた詩織さんの上に山口氏がまたがっており、「自分の意思に反して性行為が行われた」という。その後、詩織さんは警視庁に被害届を提出。高輪署がこれを受理し、同年6月8日、逮捕状を手にした捜査員が成田空港で帰国する山口氏を、準強姦罪容疑で逮捕するため待ち構えていた。ところが、土壇場になって逮捕が見送られたという。その直後、「上からの指示があり逮捕できなかった」と捜査員から詩織さんに連絡があったという。
山口氏は同年8月26日に書類送検されたが、昨年7月、東京地検は最終的に嫌疑不十分で不起訴とした――。
詩織さんは会見で、「驚くべきことに、当時の警視庁刑事部長が逮捕の取りやめを指示したと聞いた」「私の知り得ない立場からの力を感じた」と訴えた。あくまで一方的な主張ではあるが、彼女は顔と名前をさらしている。相当な覚悟を持って会見に臨んだのは間違いなさそうだ。
■忖度で逮捕状を握りつぶしたなら重大問題
それにしても、逮捕状を握り潰した“当時の警視庁刑事部長”とは誰か。この件を最初に報じた「週刊新潮」によると、第2次安倍政権発足時、菅官房長官の秘書官を務め、政権中枢に近いとされる中村格・警察庁組織犯罪対策部長のことらしい。だが、今の日本においてそんな“超法規的措置”みたいなことが可能なのか。元大阪高検公安部長の三井環氏がこう言う。
「準強姦事件の逮捕は警察署の署長の判断で行われます。そこに警視庁の刑事部長が口を挟んで待ったをかけたのなら異例中の異例だし、あってはならないことです。女性が会見で述べたことが事実だとしたら、公平公正であるべき日本の司法が歪められたことになる。もっとも、同様のことは、加計学園の獣医学部をめぐる問題に異を唱え、会見した前川喜平前文科次官に降りかかったスキャンダルを見ていても感じます。警察当局にしか集められないような醜聞情報が、政権に近いとされるメディアにリークされた。官邸が捜査機関を手駒のように恣意的に利用しているとしたら問題だし、捜査機関が官邸の意向を“忖度”して動いているとしたらさらに大問題です。この状況下で共謀罪成立なんて絶対に許されません」
山口氏は自身のフェイスブックで、〈私は法に触れることは一切していません。一昨年の6月以降当局の調査に誠心誠意対応しました。当該女性が今回会見で主張した論点も含め、1年4カ月にわたる証拠に基づいた精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出ました。よって私は容疑者でもありません〉と反論している。
29日、日刊ゲンダイは改めて山口氏の言い分を聞こうと都内の事務所を訪れ、チャイムを2回鳴らしたが反応ナシ。携帯電話にも連絡したが、国際電話時の呼び出し音が聞こえたまま山口氏が電話に出ることはなかった。
山口氏にジャーナリストとしての良心があるならば、ぜひ、“捜査の内幕”を暴いて欲しいものだ。
②「私はレイプされた」。著名ジャーナリストからの被害を、女性が実名で告白
不起訴を受けて、検察審査会に不服を申し立てた詩織さん(28歳)が会見した。
2017/05/29 BuzzFeed News 渡辺一樹
https://goo.gl/mt8SK0
テレビに多数出演する著名ジャーナリスト・山口敬之氏にレイプされたと主張する女性・詩織さん(28)が5月29日、山口氏が不起訴となったことを受け、検察審査会に不服申立をしたと発表した。詩織さんは弁護士を伴い、東京・霞が関の司法クラブで記者会見した。
配布された資料などによると、詩織さんは2015年3月、当時TBSワシントン支局長だった山口氏に就職相談をしたところ、食事に誘われた。そして4月3日午後8時ごろ、都内の串焼き屋に入り、午後9時20分ごろ寿司屋に移ったが、そこで食事をしているところで記憶を失った。そして、痛みで目覚めた際、レイプされていることに気付いたという。
時折涙ぐみながら、詩織さんは語った。
「私の意識が戻ったのは翌朝の午前5時ごろ。ホテルのベッドの上でした。私は裸にされており、山口氏が仰向けの私の上に跨っている状態でした。詳細については差し控えますが、はっきり言えることは、私はその時、私の意思とは無関係に、そして私の意思に反して性行為を行われていたということです」
詩織さんは酒に強く、酔って前後不覚になったことはなかったという。詩織さんはすぐに病院に行き、さらには4月9日に警視庁原宿署に相談した。
警察の捜査によって、タクシー運転手や、ホテルのベルボーイ、ホテルセキュリティーカメラ映像、下着から採取したDNA片の鑑定結果などの証拠が揃い、2015年6月にいったんは山口氏への逮捕状が発行された。しかし、捜査員からは逮捕直前、「上からの指示で、逮捕できなかった」と連絡があったという。
山口氏はその後、2015年8月26日に書類送検されたが、2016年7月22日に、嫌疑不十分で不起訴になった。詩織さんは納得がいかないとして、検察審査会に不服申立をした。
詩織さんは、家族の意向で名字は伏せたものの「匿名の被害者女性と報じられたくなかった」として、顔と名前を公開して記者会見に臨んだ。
テレビなどで活躍するベテラン・ジャーナリスト山口氏は元TBS記者で、長く政界を取材しており、2016年5月のTBS退社後はフリージャーナリストとして多数のテレビ番組に出演している。安倍首相との距離も近いとされ、2016年6月に出版した著書「総理」(幻冬舎)では、次のように記している。
「安倍氏と私は一回り違いの午年で、出会った当初からウマが合った。時には政策を議論し、時には政局を語り合い、時には山に登ったりゴルフに興じたりした」
山口氏は、週刊新潮でこの件が報じられたことを受けて、自身のフェイスブックで5月10日次のように反論している。
「私は法に触れる事は一切していない。当局の厳正な調査の結果、違法な行為がなかったという最終的な結論が出ている。この過程において、私は逮捕も起訴もされていない」
一方、詩織さんの代理人弁護士は「これは起訴されるべき事案だと確信している」と述べた。