「やっと目を覚ます時がきたのだ。寝ぼけている民主党の議員はもう目を覚ましてくださいね:岩上安身氏」
2015/9/22 晴耕雨読
集団暴力詐欺師の手口で評決が盗まれ、「賛成議員は落選させよう!」のコール、その翌日の共産党の国民連合政府の呼びかけ。そうなれば、民主党の長島さんや前原さんや、その他の自民党議員かと見紛う議員たちの去就に注目がいく。
民主党は政権交代可能な二大政党制を目指した。モデルは米の民主党、英の労働党だったはず。わけても英労働党のトニー・ブレアの「第三の道」路線は、日本の民主党のお手本になるかのような幻想を与えた。
実際には、ブレアの路線に未来はなかった。新自由主義への迎合による格差拡大、失業と貧困の増大、そして米帝国へ追従してイラク戦争への参戦。第三の道も、ニューレイバーも大嘘、無残な幻想だったのだ。
冷戦構造のもとで自民党と社会党が票を分け合ってきた55年体制が、冷戦の終結とともに崩れた。「物分かりの悪い」社会党が古臭い脱ぎ捨てるべき皮のごとく嫌悪されて「物分かりのいい」政党として民主党に脱皮したわけだが、その「物分かりのよさ」が何ももたらさないことが明らかに。
「物分かりのよさ」につけこんで、経済的収奪が続くことに辟易した民主党支持層の一部は、一時的にであれ、「物分かりの悪い」共産党の支持に回った。
憲法を侵し、平和主義の浸食まで図った今回の集団的戦争法案で、ついに公明党の支持基盤である創価学会員すら「物分かりのよさ」を捨てた。
権力と資本に対して、なんら抵抗せず、おりこうに、物分かりよくしていれば、きっとリターンがある、という幻想は、完全に崩れたと言っていい。では、日本の民主党のお手本をだったはずの英労働党はどうなっているか。
日本ではとんと話題になっていないが、「第三の道」のブレア路線など、道路に叩きつけるように脱ぎ捨てていたのである。この9月12日、英国の労働党の党首選挙が行われ、ジェレミー・コルビンという人物が当選した。
それも60%近い得票率での圧勝だった。
驚くべきは、コルビンが掲げた政策である。ブレアとは正反対の、おそろしく「物分かりの悪い」政策を掲げて戦い、圧倒的な支持を得たのである。
70年代末のサッチャー政権以来、30数年間、保守反動、新自由主義のトップランナーとして走り続けてきた英国で、これほど徹底した、左翼らしい左翼のリーダーが、労働党内の選挙であれ、勝利したのは初めてではないか。
まず、先行したギリシャのシリザ政権と同じく緊縮財政政策をやめる。そして、これまでさんざん優遇されてきた富裕層や大企業への課税の強化(累進性の再強化)や、サッチャリズムの代名詞でもあった民営化を否定し、鉄道やエネルギーなどの公共性の高い事業の再国有化を唱える。
日本と同じく、切り捨てられてきた社会福祉予算の復活、大学の授業料の無償化なども掲げる。新自由主義、サッチャリズムの全否定、妥協なき全面方向転換である。
さらに驚きは、外交・安全保障政策でも180度の大転換を図ることを掲げていることだ。
まず対米追従をやめる。まず、ウクライナ問題でロシアは不当に非難されているとして(これは真実である)、ロシア制裁の隊列から距離を置く。
さらに米国の事実上の戦争機械であるNATOから離脱する。
米国に背中を押されて始めたシリア空爆を中止する。
それだけではない。
パレスチナ問題で、パレスチナを支持し、ガザ空爆などでパレスチナ難民を苦しめるイスラエルに制裁を行う!そして第二次大戦の戦勝国であり、安保理の理事国であり、国際社会に特別な地位を占めることを象徴する核兵器の保有を放棄する!
まさに、今、日本の安倍政権が向かおうとしている方向と真逆の方向に転進しているのである!当然、これまでの「物分かりのよい」(つまりは煮え切らない)日本の民主党の歩みとも正反対である。
もう英労働党は、日本のこれまでの民主党のお手本だったブレアの労働党ではなくなったのだ。アベノミクスと称して、米国のバーナンキのやった後を追い、アホのような金融緩和(QE)を行っている日本の金融政策にも、コルビンは批判的だ。
バブルマネーを膨らませるのではなく、インフラ投資などの実体経済へカネが回るようにする ”People's QE” を行うという。
これらは、絵に描いた餅に終わるかもしれない。しかし、サッチャリズムの延長のそのまた延長の先に、恐慌と戦争の不安だけしか見出せず、明るい展望を何も描けない状況の中で、思いきった大転換を図りたいと労働党の支持者である一般庶民が願ったのは当然のことだ。
そして、単なる願いで終わらせずに、労働党内の選挙によって、「米帝国のプードル」であり、「物分かりのよい」プチブル然とすべきとしたブレア路線から、実際に大転換を実現させたのだから、すごいとしか言いようがない。
「民主主義ってなんだ⁉」「これだ‼」ってことだろう。もちろん、労働党が政権を取ったわけではないし、変人扱いされているコルビンが首相になって内閣を組閣したわけでもない。
だが、イギリス社会の中に、対米従属一本槍、新自由主義一点張り、では、もう社会も国家も成り立たない、という意識が芽生え、広がっているのは間違いないだろう。
だからこそ、保守党のキャメロン政権下でも、今年、中国が提唱した新しい国際金融機関AIIBの設立に、ヨーロッパ諸国の中では、最も早く、反対する米国を「裏切る」形でイギリスが参加を表明したのが合点がゆく。
どんなにアメポチが不都合だ、困ると言っても、米帝国の覇権が衰えているのは事実だ。衰えているからこそ、米国のやることなすことがどんどんデタラメになってくる。米国に一貫した地政学的戦略があるのか、今や疑わしくなっている。そんな支離滅裂な米帝国に、これからお供して一緒に戦さについて参ります、などという国の愚かさたるや、正気ではない。
日本国民の多くは正気だから、こんな集団的戦争法案に賛成しない。
NHKを筆頭に、どれほどマスコミが中国の脅威を煽っても、反対、あるいは懐疑的である。
さらにこの先には、本物の「狂気」の産物、自民党の改憲草案にもとづく明文改憲の可能性が待っている。抵抗の手を緩めるわけには到底いかないのである。
深夜にうっかり、こんな長い連投を始めてしまったのは、ふと民主党の長島議員、金子議員ら、同党内右派の議員たちの、寝ぼけてんのか⁉と言いたくなるつぶやきを目にしてしまったからだ。
国会で爆睡していた自民党の議員らと、党は違うのに同じ夢を見ているらしい。いや、彼らはもっと以前から長い長い夢を見続けていて、いまだに目が覚めないのかもしれない。
ブレアらの見せた夢、「第三の道」という白昼夢を。
対米従属で、新自由主義で、ちょっとだけリベラル風を装う「物分かりのいい」野党という夢を。だとしたら、起こしてやらなければ!このままだと、日本は世界から本当に取り残されてしまう。
米国はいざとなれば世界覇権からは撤退し、西半球に引きこもり、新モンロー主義政策も取りようがあるけれど(石油、ガスも、シェールが詐欺でなければ引きこもりエネルギー自給可能)、日本はそうはいかない。
そんな資源はなし。エネルギー資源のない日本が、どうやって戦争を遂行するのか。無理でしょ。できないっしょ。持久戦に持ち込まれたらアウトでしょ。実に簡単な結論なのである。
日中戦争を延々とやった。第二次大戦で総力戦も戦って、結果、粉々にされた。石油が自給できないことはあの時と何も変わらない。
馬鹿げた亡国の道を再び歩みだす前に、イギリスの労働党の党首になった「変人」の話に、一度耳を傾けたらどうだろうか。ブレア時代のプチプル労働党のマネをまだしている民主党の議員は、もういらないでしょう。
国民連合政府でも、オリーブの木でもいいから、この国が完全にアウトになる前に、野党の選挙協力ぐらいは実現して、「賛成議員は選挙で落選」だけは現実にして、できれば国会議員の大幅な入れ替えをやって、経団連の広告マネーで餌付けされてしまったマスコミの立て直しをして。
そのぐらいのこと、本気になればきっとやれる。マスコミは立て直せないかもしれない。選挙もないことだし。
ナベツネを日枝や籾井を落選させることはできない。しかし、マスコミの報道が真実だと信じ込んでいる人の目を覚まさせ、マスコミ信者の数を劇的に減らすことならきっと可能だ。
特にNHK信者たち。創価学会の信者も目を覚ましたのだから、NHK信者の脱洗脳もきっとできるだろう。簡単ではないけれど。でも、やれることは全部やる。
サッチャリズムの本場のイギリスで、労働党が「ニューレイバー」なんちゃって、さもポスト冷戦の、新時代が幕開けしたかのように、ブレアが登場して宣言したのが1994年。あれから21年。やっと目を覚ます時がきたのだ。
寝ぼけている民主党の議員はもう目を覚ましてくださいね。長島さん。