文科省に圧力電話する「安倍昭恵」は私人か! 実績なきイベントに官庁後援がついたワケ
週刊新潮 2017年3月30日号
■文科省に圧力電話する「安倍昭恵」は私人か!
森友学園問題をめぐり、安倍総理は昭恵夫人(54)のことを「私人だ」と言い張る。だが、支援者の息子でもある遠縁の若者が主催するイベントを支援するために、文科省に圧力をかけ、大臣に掛け合う人物のどこが「私人」か。新アッキード事件の幕開けである。
***
「私人」とはどんな意味であるのか、「大辞林」を引くと〈公の立場を離れた一個人〉と書かれている。念のために「広辞苑」を開いても、〈公的な立場をはなれた一個人〉と、ほぼ同じ説明が見つかる。公の立場から離れているか否か。それが私人と公人との境目だというのである。
「私人」という語が、われわれの耳にことさら強く響いたのは3月1日の、参院予算委員会だった。その場面はテレビでも再三放映されたから、多くの人の記憶に残っているだろう。森友学園が設立予定だった瑞穂の國記念小學院の名誉校長に、わが国のファーストレディが就任していたことを問題視して、共産党の小池晃書記局長が、
「首相夫人は(森友学園理事長の)籠池(泰典)氏といつから知り合いで、何度会っているのか」 と問いただすと、安倍晋三総理は、「いつかわかりませんよ。妻は私人なんです。妻をまるで犯罪者扱いするのは不愉快ですよ」と、露骨に不快感を示したのである。
だが、たとえば、以下のような場合も、安倍昭恵夫人は「私人」として行動したことになるのだろうか。
掲載した写真は、さる人物のフェイスブックからの引用で、この3月9日に撮られたものだが、
〈全国高校生未来会議の打ち合わせに首相公邸なう/今日も昭恵さんからパワーもらいました!〉
とある。イベントの打ち合わせに総理の官舎たる公邸を使えるように、「公の立場を離れた一個人」の立場で便宜を図ることなどできるものだろうか。
イベント、すなわち全国高校生未来会議(以下、未来会議)については、あとで詳しく説明するが、ともあれ、その第2回が今月27日と28日に、参議院議員会館で開催される予定である。主催するのは「リビジョン」という一般社団法人で、その代表は斎木陽平という24歳の青年だ。
公邸での打ち合わせの参加者のひとりは、「斎木さんから“首相公邸で昭恵さんと会うから来られないか”と誘われた」 と、こう証言する。
「公邸に行くに当たっては事前に連絡先と肩書を提出し、当日は身分証明書を見せ、生年月日を尋ねられたあと、会議室に向かいました。まず斎木さんだけが中に入って昭恵さんと40分ほど話し、その後、僕らが呼ばれて20分程度、今年の未来会議について説明したりしました。実は、昨年の第1回未来会議の打ち合わせでも、公邸にお邪魔しました。2回とも首相公邸という場所でお会いし、その場に秘書の方も立ち会いましたから、昭恵さんは私たちに、公人として会っていたことになると思います」
ちなみに、未来会議はクラウドファンディングを実施中で、それについても3月12日、斎木氏のツイッターに昭恵夫人からのメッセージ動画がアップされ、
「安倍昭恵です。全国高校生未来会議を応援しています。たくさんの高校生が全国高校生未来会議に参加をしてくださいます。この高校生たちがこれからの日本の未来を創っていくと、私は思っています。そのために、どうか多くのみなさまにご協力をいただきますように、私からもお願いを申しあげます」
と訴えている。それにしても昭恵夫人、たいした肩の入れようだが、ここで第1回未来会議がどんな内容であったか、確認しておく必要があるだろう。
■文科省への働きかけ
開催されたのは2016年3月23日から25日の3日間。18歳選挙権の実施を前にして、全国から選ばれた中学3年から高校3年までの120人が、地域おこしプランを競ったり、各政党の代表や幹事長といった幹部の演説を聴いて、模擬投票を行なったりした。
主催はやはりリビジョン。会場が衆院第一議員会館で、最終日は総理公邸まで使われた。そのうえ文部科学省と総務省が後援し、優秀者には総務大臣賞に地方創生担当大臣賞、そして内閣総理大臣賞までが贈られるという大盤振る舞い。常識的に考えて、弱冠23歳であった若者が主催しうるイベントのスケールを、遥かに超えた様相だったのである。
いまだ実績のないイベントが、初っ端からどうしてこれほどの規模で開催できたのか。文科省の関係者が声をひそめて語る。
「未来会議については13年に、斎木陽平さんの恩師に当たるさる筋から、文科省に後援してもらえないかという打診があったのが最初です。ただ、そのときは、斎木さんになんの実績もないことから却下されましたが、その後、安倍昭恵さんから、未来会議をバックアップしてほしいという打診があったのです」
霞が関の官庁に直接、働きかける人物が、「公の立場を離れた一個人」と言えるのか。だが、昭恵夫人のこうした働きかけは珍しいことではないそうで、関係者が続ける。
「昭恵さんから文科省には、いろいろなご相談が持ちかけられます。文教族の議員秘書に、当該の案件について省内の誰に相談すればいいかを尋ねることもあるようで、担当者に電話がかかってくるのです。たとえば、教育関係のNPOやボランティア団体に“会ってあげてほしい”と頼まれることも。総理公邸に官僚が呼び出されることもしばしばで、行くと、昭恵さんからある人物を“私が信頼している人だから”と紹介されたりします。もちろん、その多くは断っていますが、時には総理夫人に配慮してお受けするのも事実です。ちなみに、詳細はお伝えしかねますが、愛媛県今治市で大学建設を進める加計学園のことで、昭恵さんから省内にご相談をいただいたことがあるのは確かです」
昭恵夫人はそんな日常的な“圧力”のひとつとして、未来会議への支援を要請してきたという。
週刊新潮 2017年3月30日号
■文科省に圧力電話する「安倍昭恵」は私人か!
森友学園問題をめぐり、安倍総理は昭恵夫人(54)のことを「私人だ」と言い張る。だが、支援者の息子でもある遠縁の若者が主催するイベントを支援するために、文科省に圧力をかけ、大臣に掛け合う人物のどこが「私人」か。新アッキード事件の幕開けである。
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「私人」とはどんな意味であるのか、「大辞林」を引くと〈公の立場を離れた一個人〉と書かれている。念のために「広辞苑」を開いても、〈公的な立場をはなれた一個人〉と、ほぼ同じ説明が見つかる。公の立場から離れているか否か。それが私人と公人との境目だというのである。
「私人」という語が、われわれの耳にことさら強く響いたのは3月1日の、参院予算委員会だった。その場面はテレビでも再三放映されたから、多くの人の記憶に残っているだろう。森友学園が設立予定だった瑞穂の國記念小學院の名誉校長に、わが国のファーストレディが就任していたことを問題視して、共産党の小池晃書記局長が、
「首相夫人は(森友学園理事長の)籠池(泰典)氏といつから知り合いで、何度会っているのか」 と問いただすと、安倍晋三総理は、「いつかわかりませんよ。妻は私人なんです。妻をまるで犯罪者扱いするのは不愉快ですよ」と、露骨に不快感を示したのである。
だが、たとえば、以下のような場合も、安倍昭恵夫人は「私人」として行動したことになるのだろうか。
掲載した写真は、さる人物のフェイスブックからの引用で、この3月9日に撮られたものだが、
〈全国高校生未来会議の打ち合わせに首相公邸なう/今日も昭恵さんからパワーもらいました!〉
とある。イベントの打ち合わせに総理の官舎たる公邸を使えるように、「公の立場を離れた一個人」の立場で便宜を図ることなどできるものだろうか。
イベント、すなわち全国高校生未来会議(以下、未来会議)については、あとで詳しく説明するが、ともあれ、その第2回が今月27日と28日に、参議院議員会館で開催される予定である。主催するのは「リビジョン」という一般社団法人で、その代表は斎木陽平という24歳の青年だ。
公邸での打ち合わせの参加者のひとりは、「斎木さんから“首相公邸で昭恵さんと会うから来られないか”と誘われた」 と、こう証言する。
「公邸に行くに当たっては事前に連絡先と肩書を提出し、当日は身分証明書を見せ、生年月日を尋ねられたあと、会議室に向かいました。まず斎木さんだけが中に入って昭恵さんと40分ほど話し、その後、僕らが呼ばれて20分程度、今年の未来会議について説明したりしました。実は、昨年の第1回未来会議の打ち合わせでも、公邸にお邪魔しました。2回とも首相公邸という場所でお会いし、その場に秘書の方も立ち会いましたから、昭恵さんは私たちに、公人として会っていたことになると思います」
ちなみに、未来会議はクラウドファンディングを実施中で、それについても3月12日、斎木氏のツイッターに昭恵夫人からのメッセージ動画がアップされ、
「安倍昭恵です。全国高校生未来会議を応援しています。たくさんの高校生が全国高校生未来会議に参加をしてくださいます。この高校生たちがこれからの日本の未来を創っていくと、私は思っています。そのために、どうか多くのみなさまにご協力をいただきますように、私からもお願いを申しあげます」
と訴えている。それにしても昭恵夫人、たいした肩の入れようだが、ここで第1回未来会議がどんな内容であったか、確認しておく必要があるだろう。
■文科省への働きかけ
開催されたのは2016年3月23日から25日の3日間。18歳選挙権の実施を前にして、全国から選ばれた中学3年から高校3年までの120人が、地域おこしプランを競ったり、各政党の代表や幹事長といった幹部の演説を聴いて、模擬投票を行なったりした。
主催はやはりリビジョン。会場が衆院第一議員会館で、最終日は総理公邸まで使われた。そのうえ文部科学省と総務省が後援し、優秀者には総務大臣賞に地方創生担当大臣賞、そして内閣総理大臣賞までが贈られるという大盤振る舞い。常識的に考えて、弱冠23歳であった若者が主催しうるイベントのスケールを、遥かに超えた様相だったのである。
いまだ実績のないイベントが、初っ端からどうしてこれほどの規模で開催できたのか。文科省の関係者が声をひそめて語る。
「未来会議については13年に、斎木陽平さんの恩師に当たるさる筋から、文科省に後援してもらえないかという打診があったのが最初です。ただ、そのときは、斎木さんになんの実績もないことから却下されましたが、その後、安倍昭恵さんから、未来会議をバックアップしてほしいという打診があったのです」
霞が関の官庁に直接、働きかける人物が、「公の立場を離れた一個人」と言えるのか。だが、昭恵夫人のこうした働きかけは珍しいことではないそうで、関係者が続ける。
「昭恵さんから文科省には、いろいろなご相談が持ちかけられます。文教族の議員秘書に、当該の案件について省内の誰に相談すればいいかを尋ねることもあるようで、担当者に電話がかかってくるのです。たとえば、教育関係のNPOやボランティア団体に“会ってあげてほしい”と頼まれることも。総理公邸に官僚が呼び出されることもしばしばで、行くと、昭恵さんからある人物を“私が信頼している人だから”と紹介されたりします。もちろん、その多くは断っていますが、時には総理夫人に配慮してお受けするのも事実です。ちなみに、詳細はお伝えしかねますが、愛媛県今治市で大学建設を進める加計学園のことで、昭恵さんから省内にご相談をいただいたことがあるのは確かです」
昭恵夫人はそんな日常的な“圧力”のひとつとして、未来会議への支援を要請してきたという。
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