言わなければならない事は言わないと前には進まない

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日本の農業の疲弊は過保護のせいではなく

2013-03-10 14:41:40 | 言いたいことは何だ




日本の農業は、高齢化、就業人口の減少、耕作放棄地の増大などで疲弊が進んでいる。この現状はTPPを拒否するだけでは改善はできない。

だが忘れてはならない点がある。日本の農業が衰退したのは、そもそも日本の農業保護がほかの主要国に比べてかなり低いためだということである。

たとえば、農業産出額に対する農業予算の割合、つまり国家財政による農業への支援率ともいうべき数字を見ると、
  アメリカ 65%、
  ドイツ   62%、
  フランス 44%、
  イギリス 42%…
…に対して、2005年度における日本はたった27%である。

日本と比べると経営規模が一桁も二桁も大きい欧米農業でさえ、これだけの財政支援をしている。このことだけ見ても、日本の農業は決して過保護されているわけではないことが理解できる。

日本はこれまで、WTOルールに従って、農業保護をきまじめに着実に削減してきたし、農政の立案についても、まずWTOルールとの整合性から検討するような、非常にまじめな取り組みを行ってきた。一方ほかの主要国は、WTOルールを都合よく解釈し、農業保護削減を最小限度に抑制してきたし、農業保護を低く見せかけるような画策を講じてきている。ましてや日本政府の「開国」議論のように、自国市場がいかに閉鎖的であるかを喧伝するような国はほかにない。

このような農業保護への取り組みの違いは、各国の農業の強さや食料自給率の高さに端的に表れてくるものである。

戦後の日本は輸出製造業の成長を優先した産業政策と高度経済成長のなかで、食糧自給率(カロリーベース)が1960年代の70%から現在の40%にまで一貫して下落するほど農業が衰退することを許してきた。昨今も農政に対する国内世論の支持は得られず、農業関連予算は年々減額されている。

一方、かつての植民地政策下の欧州諸国のなかには、イギリスのように、現在の日本と同じくらい農業が疲弊していた国もあった。しかし、第二次世界大戦後、国内農業を保護・育成する政策に転換して、基幹食料を中心とする生産力の回復を着実に成功させてきた。その結果、現在では、
 イギリス 70%、
 ドイツ   80%、
 フランス 120%…
…などの高い自給率を維持している。

食糧自給率125%の純輸出国である米国はどうだろうか。対外交渉上は自由貿易のメリットを率先して主張し、他国に市場開放を強く迫る米国こそ、乳製品や小麦などの主要品目にはきわめて手厚い保護や高関税を堅持している。乳製品でアメリカは、自国の方が強い対カナダ協定(NAFTA)ではカナダに門戸開放を迫り、自国のほうが弱い対オーストラリアでは関税で守るという身勝手な使い分けを平気でやっている。また必要に応じて新たな農業支援策を新設するなど、本気で自国の農業保護の削減を実施する気がないことを見せている。

つまり、欧米先進国の農業の強さは、政府による手厚い保護・支援の証である。輸出国でさえ、本来的に国際競争力が強いからではなく、国家戦略として輸出振興政策があってこそ輸出が可能になっているわけである。一方で日本の農業は支援水準がかなり低いのだから、疲弊しているのは当然なのである。過保護だから日本の農業が弱い、というのはとんでもない事実誤認である。





(「よくわかるTPP、48のまちがい」/ 鈴木宣弘・木下順子・共著)

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安倍さんはもともと公約では、聖域なき関税撤廃という条件では自由貿易協定には参加しない、と話していたが、わたしの耳には「聖域確保」の言質がアメリカから取れれば参加できる、というふうに聞こえていた。そも管さんがTPP交渉参加を言いだしたのは、鳩山さん時代に沖縄基地問題でこじれた対米関係を正そうとして、日本の社会制度をアメリカのネオコンの手に売り渡そうとしたからだった。であれば日米同盟強化を最優先させる安倍さんならなおのこと、TPPで日本国民の側に立つはずがないのだ。

安倍さんとオバマさんとの会談を前に、日本の大手新聞・大手TV局はこぞってTPP交渉参加を急ぐよう世論に働きかけていた。大手メディアはひとつとして慎重論を打ち出したものはない。まさに国民総動員の世論を作ろうと躍起になっているのが、素人目にも明々白々だった。日本共産党によると、これはアメリカからの要求がかなりせっぱつまってきていることを示しているのだそうだ。

日本が積極的にルールを作ってゆけ、とそれがあたかも容易であるかのように、大手メディアは読者・視聴者に気休めを与えるようなことを言うが、カナダや韓国がそれに失敗したのに、アメリカに対して奴隷的従順しか示せない日本の官僚にそんなことができるか、と思うのがふつうだ。そんなことができるんなら、はじめからTPP参加など持ちだすはずがない。日本はもうさまざまな自由貿易協定によって十二分に門戸開放はしているのだから。そんなことができないから、大手新聞社、とくに産経・読売の両社の社主と安倍さんは会食などして懇談するのだ、メディアの力を借りて世論操作をするために。

新聞などは、TPP交渉において日本が守るべき品目などを列挙したリストを見せて、自民党内では参加合意ができたかのように印象づけているが、実際は自民党内だけで100人以上の反対派が声をあげている。わたしたち国民としては、もう最悪の結末を覚悟しておいたほうがいいが、それでも自分の命が惜しいと思うなら、機会が残されている間は抵抗の意志を表明し続けるのがいい。

安倍政権も決して盤石の基盤を持つのでないことは、選挙支持率では09年政権交代時より低いという現実が明らかに示している。だが安倍政権への右派の支持は根強い。他人は死んでも自分だけは安心していたいというネット右翼の支持はかなり手ごわい。そしていまやそういう捨て鉢な憂さ晴らし的な世論が強硬姿勢を日本政府に促しているのが現実なのだ。

前途には依然まっくろな暗雲が立ち上り続けている…。







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