2月4日、ニュージーランドのオークランド、スカイシティにおいてTPP(環太平洋経済連携協定)の署名式が行われ、参加12か国の閣僚が集まり、日本からも高島修一内閣府副大臣が出席した。
この署名式に関しての日本での大手新聞各紙の報道は、情けないとしかいいようがない。
「読売」(4日夕刊)──「TPP12か国が署名 日米など 国内手続き本格化」(1面、3面に解説)
「朝日」(4日夕刊)──「TPP12カ国が署名 批准手続きへ本格化」(1面)
「毎日」(4日夕刊)──「TPP12カ国協定署名 国内手続き焦点に」(1面)
「産経」(5日朝刊)──「TPP協定文書名12カ国、2年後発効目指す 日米承認行方 カギ握る議会」(10面経済面)
「東京」(4日夕刊)──「TPP協定文に署名巨大経済圏誕生目指す」(2面)
シャープが台湾の鴻海精密工業の傘下で再建をめざすことになった、などの他のニュースが大きくとりあげられてどれも小さな記事。しかも、見出しも内容もほとんど横並びだ。掘り下げる記事もない。
TPPは、外国の農産物が大量に入ってくることで、日本の農業がどうなるのか、今でさえ低い日本の食料自給率がどうなるのか、原産地の表示や遺伝子組み換え、農薬や保存料の使用などの規制が緩和されることでの食の安全は大丈夫なのか。林業や水産業はどうなるのか──。
さらに、米国流の「自由診療の拡大」によって医療費や薬の価格が上がるのではないか、皆保険制度が壊され、医者にかかるのも金次第になりはしないのか──。
あるいは、TPPで影響を受ける農業者への補助金や、高くなった医療費・薬価で治療が難しくなる患者のために多額の税金が投入され、またも国民に負担が押し付けられるのでははないか──。
こうした様々な多くの疑問や懸念について、政府は明確な答えを出すこともなく、大筋合意の「内容」も明らかにすることなく、さらに国会答弁でも明らかとなったが、首相や閣僚たちさえも和訳で協定全文を読んでいるわけでもないというのに協定文に署名し正式合意したわけである。
メディアは、いくらでも問題点を指摘できるはずである。日本の将来を考えたら、一般的な報道で終らせていいわけがない。
しかも、2月2日付の「東京新聞」には。「全農産品関税撤廃の恐れ 除外規定なし 国も認める」との見出しで、安倍政権が頑なにTPP協定の全文の和訳を公開しないことから、弁護士らのグループが全文を和訳して検証したところ、聖域5品目を含む全農産品が関税撤廃になる恐れがあるということがわかったという。
今は大臣を辞職された甘利さんや安倍さんたちが言っていたことと違うではないか。
それこそ、政権党である自民党の「史上最大の公約破り」なのである。
そこまで書かないにしても、無批判で報道するのは、能がないとしかいいようがない。
そして、もうひとつ。
TPPの調印式が行われた当日は朝から、オークランド市街を中心に、TPPに反対する市民が大規模なデモを行っていた。
https://www.youtube.com/watch?v=3TZ-OIBw3GM&feature=youtu.be
そのことは、残念ながら日本の大手新聞は、どこもいっさい報道していない。
海外メディアでは、世界三大通信社の一つであるフランスの通信社AFPでは「……反対派は、自国の雇用が奪われたり主権が侵害されたりしかねないと主張しており、署名式の会場外でもデモ隊がスピーカーを使って抗議の声を上げた」と書いて配信するなど、抗議行動を報道している。
抗議行動は、ニュージーランドだけでなく、アメリカも含め交渉に参加していた世界各国でひろがっている。
4日の「共同通信」の配信記事もデモのことは触れていない。他のそれぞれの新聞社の特派員の記事にも書かれていない。記者や特派員たちはTPP調印式の会場まで行っているのだろうから、大規模デモに遭遇しているはずである。大量の警官も出て交通規制もされていたというから、「知らない」はずはないのである。
それを記事にしないのか、あるいは記事にしてもデスクでボツにしてしまうのかわからないが、新聞が部屋の中の「調印式」の模様だけを報じるのは、きわめて一面的であり、意図的であるといわざるをえない。
甘利大臣の口利き・金銭授受疑惑、株価続落や日銀マイナス金利策などアベノミクスの陰り、着々と進む原発の再稼動、そして、このTPP問題。いずれも、政権を揺らしかねない大事件・大問題である。
ところが、いまや、日本は清原逮捕と北朝鮮ミサイル発射準備一色となっている。その前は、SMAP解散騒動、ベッキー不倫報道……と、よくもまあ話題が事欠かないと思うほどの報道で、甘利疑惑もアベノミクス不調も原発再稼動もTPPもどこかへ吹き飛ばされてしまっているかのようだ。
一方で、メディアの“権力のチェック機関”としての機能がこれほど著しく低下し働かなくなっているときはないといえる。
どんなおもしろおかしい話題があったとしても、日本の国民の将来や国のあり方に関わるようなTPPのような大問題は、スペースをこじ開けてでも、しっかり報道すべきである。
それが報道機関、ジャーナリストの役割であり、矜持であるはずだ。
それができなければ、「政府公報紙」か「自民党機関紙」に名を変えるべきではないだろうか。
この署名式に関しての日本での大手新聞各紙の報道は、情けないとしかいいようがない。
「読売」(4日夕刊)──「TPP12か国が署名 日米など 国内手続き本格化」(1面、3面に解説)
「朝日」(4日夕刊)──「TPP12カ国が署名 批准手続きへ本格化」(1面)
「毎日」(4日夕刊)──「TPP12カ国協定署名 国内手続き焦点に」(1面)
「産経」(5日朝刊)──「TPP協定文書名12カ国、2年後発効目指す 日米承認行方 カギ握る議会」(10面経済面)
「東京」(4日夕刊)──「TPP協定文に署名巨大経済圏誕生目指す」(2面)
シャープが台湾の鴻海精密工業の傘下で再建をめざすことになった、などの他のニュースが大きくとりあげられてどれも小さな記事。しかも、見出しも内容もほとんど横並びだ。掘り下げる記事もない。
TPPは、外国の農産物が大量に入ってくることで、日本の農業がどうなるのか、今でさえ低い日本の食料自給率がどうなるのか、原産地の表示や遺伝子組み換え、農薬や保存料の使用などの規制が緩和されることでの食の安全は大丈夫なのか。林業や水産業はどうなるのか──。
さらに、米国流の「自由診療の拡大」によって医療費や薬の価格が上がるのではないか、皆保険制度が壊され、医者にかかるのも金次第になりはしないのか──。
あるいは、TPPで影響を受ける農業者への補助金や、高くなった医療費・薬価で治療が難しくなる患者のために多額の税金が投入され、またも国民に負担が押し付けられるのでははないか──。
こうした様々な多くの疑問や懸念について、政府は明確な答えを出すこともなく、大筋合意の「内容」も明らかにすることなく、さらに国会答弁でも明らかとなったが、首相や閣僚たちさえも和訳で協定全文を読んでいるわけでもないというのに協定文に署名し正式合意したわけである。
メディアは、いくらでも問題点を指摘できるはずである。日本の将来を考えたら、一般的な報道で終らせていいわけがない。
しかも、2月2日付の「東京新聞」には。「全農産品関税撤廃の恐れ 除外規定なし 国も認める」との見出しで、安倍政権が頑なにTPP協定の全文の和訳を公開しないことから、弁護士らのグループが全文を和訳して検証したところ、聖域5品目を含む全農産品が関税撤廃になる恐れがあるということがわかったという。
今は大臣を辞職された甘利さんや安倍さんたちが言っていたことと違うではないか。
それこそ、政権党である自民党の「史上最大の公約破り」なのである。
そこまで書かないにしても、無批判で報道するのは、能がないとしかいいようがない。
そして、もうひとつ。
TPPの調印式が行われた当日は朝から、オークランド市街を中心に、TPPに反対する市民が大規模なデモを行っていた。
https://www.youtube.com/watch?v=3TZ-OIBw3GM&feature=youtu.be
そのことは、残念ながら日本の大手新聞は、どこもいっさい報道していない。
海外メディアでは、世界三大通信社の一つであるフランスの通信社AFPでは「……反対派は、自国の雇用が奪われたり主権が侵害されたりしかねないと主張しており、署名式の会場外でもデモ隊がスピーカーを使って抗議の声を上げた」と書いて配信するなど、抗議行動を報道している。
抗議行動は、ニュージーランドだけでなく、アメリカも含め交渉に参加していた世界各国でひろがっている。
4日の「共同通信」の配信記事もデモのことは触れていない。他のそれぞれの新聞社の特派員の記事にも書かれていない。記者や特派員たちはTPP調印式の会場まで行っているのだろうから、大規模デモに遭遇しているはずである。大量の警官も出て交通規制もされていたというから、「知らない」はずはないのである。
それを記事にしないのか、あるいは記事にしてもデスクでボツにしてしまうのかわからないが、新聞が部屋の中の「調印式」の模様だけを報じるのは、きわめて一面的であり、意図的であるといわざるをえない。
甘利大臣の口利き・金銭授受疑惑、株価続落や日銀マイナス金利策などアベノミクスの陰り、着々と進む原発の再稼動、そして、このTPP問題。いずれも、政権を揺らしかねない大事件・大問題である。
ところが、いまや、日本は清原逮捕と北朝鮮ミサイル発射準備一色となっている。その前は、SMAP解散騒動、ベッキー不倫報道……と、よくもまあ話題が事欠かないと思うほどの報道で、甘利疑惑もアベノミクス不調も原発再稼動もTPPもどこかへ吹き飛ばされてしまっているかのようだ。
一方で、メディアの“権力のチェック機関”としての機能がこれほど著しく低下し働かなくなっているときはないといえる。
どんなおもしろおかしい話題があったとしても、日本の国民の将来や国のあり方に関わるようなTPPのような大問題は、スペースをこじ開けてでも、しっかり報道すべきである。
それが報道機関、ジャーナリストの役割であり、矜持であるはずだ。
それができなければ、「政府公報紙」か「自民党機関紙」に名を変えるべきではないだろうか。
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