言わなければならない事は言わないと前には進まない

生活する中において言わなければならない事や、他の記事で共感したことなどを中心に。今その時の思いを表す。

デニー知事誕生のうねりつくった20代——彼らはなぜ基地問題で10万人の署名を集められたのか

2018-10-03 19:13:11 | 言いたいことは何だ

デニー知事誕生のうねりつくった20代——彼らはなぜ基地問題で10万人の署名を集められたのか







9月30日に投開票された沖縄県知事選は、辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」が推す前衆院議員の玉城デニー氏(58)が過去最多の39万票余を獲得し、安倍政権が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)に約8万票差をつけて大勝した。
自民や公明の「鉄壁」ともいえる組織票の一部を突き崩し、無党派層の多くを取り込んだ玉城氏の勝利の背景には何があったのか。

民意の地殻変動の予兆はあった



沖縄知事選
無党派層や女性を抑えた玉城デニー氏。当初の予想よりも自公の「鉄壁」に対して大勝した。
撮影:初沢亜利
「オール沖縄」が推す候補は2018年2月の名護市長選に敗れるなど、沖縄県内の選挙では、このところ不利な情勢にあった。そうした流れを変えたのは、翁長雄志知事の急逝と、「後継」となった玉城氏の知名度や人柄による面が大きいのは否めない。
しかし、もう一つ、忘れてはならない潮流がある。
今回の知事選で浮かんだ民意の地殻変動の「予兆」ともいえる現象が、知事選の数カ月前に起きている。5月23日~7月23日にかけて実施された、辺野古埋め立ての賛否を問う「県民投票」実施に向けた署名運動だ。
この運動に政党や労組がコミットしたのは終盤にすぎない。前面に立ったのは20人ほどの学生を含む20代を中心とする若者たち。この「寄せ集め」といっては失礼だが、政治運動の経験もほとんどない素人集団が、誰も予想しなかった10万人余(有効署名は9万2848人分)もの署名を短期間に集めることに成功したのだ。

オバマ選対のTシャツをイメージ



沖縄の若者の署名運動
元山さんたちは、「基地問題についてもう一度考えてみるきっかけになれば」と県民投票の署名運動を始めたという。
提供:「辺野古」県民投票の会
「今回の知事選で、デニーさんのところで頑張っていた若者の多くは県民投票のスタッフです」
そう話すのは、「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さん(26)だ。元山さんは沖縄県宜野湾市の出身。大学進学で上京し、現在一橋大学大学院2年。今春、大学院を休学し、県民投票の署名運動を主導した。
2016年末に翁長知事による埋め立て承認取り消しを巡る違法確認訴訟で県が敗訴して以降、なし崩し的に新基地建設が進み、県民の間にあきらめムードが漂った。そうした中、「ワンイシュー」で新基地の是非を問うことでもう一度議論を起こし、新しい風を吹かせたいと考えた元山さんが同年代の県内の若者にSNSなどで参加を呼び掛けた。他の若者たちも、「基地問題について考えてみるきっかれになれば」との思いで参加したという。
9月30日夜。当確の報を受けてカチャーシーを舞う玉城氏の陣営で、玉城氏の周りを取り囲む黒のTシャツ姿の若者たちの弾んだ笑顔が目についた。知事選で玉城選対を支えた若者たちは、玉城氏の似顔絵をデザインした、このそろいのTシャツを着用。これは、アメリカ大統領選でオバマ陣営のスタッフが着ていたTシャツをイメージしたという。
政策面でも、基地問題だけでなく、貧困や子育てのほか、LGBTの問題などダイバーシティも重点的に訴えるよう提言した。こうした選挙戦が、女性や無党派層に玉城氏の政策を浸透させた面もあっただろう。

「作業服のお兄さんたち」も署名



那覇市であった反米軍基地集会
2016年6月、那覇市であった反米軍基地集会。今回佐喜真氏は「辺野古」に触れずに戦った。
REUTERS/Tim Kelly
ただ、若者たちが玉城氏支援に尽力する上で大きなモチベーションとなったのは、沖縄の民意が「辺野古」に対して関心を失っていない、という確信があったからだ、と元山さんは言う。
「街頭で県民投票の署名を呼び掛けているとき、まさか署名してくれるとは思わなかった作業服のお兄さんたちも自発的に署名してくれました」
元山さんが言う「作業服のお兄さんたち」とは、建築・土木関係の現場仕事に従事する人たちを指す。沖縄の選挙では、自民党が支援する保守系候補の決起集会で、必ずといっていいほど見かけるのが、この「作業服の人たち」だ。いわゆる、「動員」された支持者である。草の根の自民党票を支えるこの層が、辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票の実施に協力的だったというのだ。ただ、沖縄県民の基地問題への思いは複雑だ。米軍普天間飛行場まで歩いて10分という宜野湾市の実家で暮らす元山さん自身も、「内面は複雑」だと明かす。今回の知事選でも父親は佐喜真氏を支援していたという。
「今回、佐喜真氏を支援した若者も少なくないと思いますが、彼らの気持ちもよくわかります。基地容認の若者は誤ったネット情報に踊らされているだけ、という見方をする人もいますが、経済の問題や政府との関係を彼らなりに考えた上での判断だと思います」

これまでの革新陣営にない熱気



「保守化」が進むといわれる若者の心理について、元山さんはさらにこう説明する。



「基地問題に辟易している人も一定数います。沖縄の民意は『基地反対』だと上の世代から押しつけられたり、同調圧力みたいなものを感じたりすると、特に若い世代だと反発したくなるのもわかります」
沖縄では、米軍基地従業員や基地内の工事などで収入を得ている人も少なくない。米軍関係者が身内という人もいる。新しく知事になる玉城氏も、米軍人だった父親と日本人の母親との間に生まれた「ダブル」だ。
「玉城陣営の熱気は、これまでの革新陣営にもなかった盛り上がりだったように思います。やはり、県民投票にかかわってきた若者たちの力が大きいのでは」
こう話すのは「辺野古」県民投票の会の副代表を務めた那覇市在住の司法書士、安里長従さん(46)だ。
安里さんは県民投票の署名運動を通じ、組織のしがらみとは無縁の人たちが自発的に署名に応じる姿や、署名の有効期間が過ぎた後も一般の人からの問い合わせが相次いだのを目の当たりにした。こうした経験から、県民の民意の質に明らかな変化を感じている、と知事選開票前に筆者に吐露していた。

「基地はない方がいい」思いは共通



沖縄知事選
自民党は小泉進次郎議員、菅官房長官なども沖縄入りしてテコ入れしたが、敗北した

日米の「普天間返還」合意から22年が経過した。この間、軍事的理由ではなく、「本土の理解が得られないから」という政治的理由で県外移設が実現しない内実が可視化された。また、基地とリンクした振興策では持続的な経済発展が図れず、地域社会の分断や自治の破壊をもたらし、貧困問題を一層深刻化させる構造も浮き彫りになりつつある。だがこうした過程を経て、沖縄の民意は成熟した、と安里さんは見る。
「基地や貧困、教育はこれまで別々の問題だと認識されていましたが、これらを一体的に捉えて根本要因は何かを考える流れができたように思います」
知事選で佐喜真氏に投票した人も、積極的に基地を肯定する人は限定的だと、安里さんは強調する。「辺野古」に関しても、県民の間に主にあるのは、「反対してもどうせ造られてしまうから仕方がない」という人と、「最後まであきらめるべきではない」という人との考え方の違いであって、「基地はないほうがいい」という考えをほとんどの県民が共有している、と安里さんは言う。
「『辺野古』をめぐる県民の表面上の対立も知事選で終わりです。今後は安倍政権だけでなく、本土の一人ひとりに向けて沖縄の意思を伝えるようにしたい」

長期的な目線で何ができるのか



安里さんは、2018年5月に沖縄の出版社「ボーダーインク」が発刊した「沖縄発 新しい提案」を中心になって執筆した。同書は「普天間・辺野古」問題の解決に向け、憲法や民主主義の原則に照らして何が問題なのかを丁寧に説き、全国の議会への陳情活動も提唱している。9月25日には、この提唱に基づき、東京都の小金井市議会で陳情が採択された。
「多くの市町村で陳情が採択されれば、『辺野古が唯一』という政府のロジックは使えなくなります」(安里さん)
県民投票の署名を受け取った県は9月20日、県民投票条例案を県議会に提出。県民投票は2019年春までに行われる見通しだ。安里さんは言う。
「基地問題のシングルイシューで議論を深め、真に問われているのは本土の人たちだという共通認識を構築したい」
一方、前出の元山さんはこう展望した。
「今後も沖縄は基地問題を抱え続けなければならず、悲しいけれど米軍絡みの事件事故も起き続けると思います。長期的な目線で自分たちに何ができるかを考えていきます」
沖縄の胎動を本土はどう受け止めるのか。問われているのは本土側だ。
https://www.businessinsider.jp/post-176469




最新の画像もっと見る

コメントを投稿