「中国脅威論」の作られ方!? ジャーナリスト高野孟氏が日経記事のトリックを論証~「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」第4回公開シンポジウム「中国・北朝鮮脅威論の内実を問う」 2016.12.5
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「中国脅威論」の作られ方!? ジャーナリスト高野孟氏が日経記事のトリックを論証~「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」第4回公開シンポジウム「中国・北朝鮮脅威論の内実を問う」 2016.12.5
2016年12月5日(月)、衆議院第二議員会館で行われた、公開シンポジウム「中国・北朝鮮脅威論の内実を問う!」。
司会をつとめた主催団体「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」の呼びかけ人である、鹿児島大学教授木村朗(あきら)氏と、登壇した琉球新報記者新垣毅(あらかきつよし)氏に対しては、前日(12月4日)に岩上安身が6時間に迫る超ロングインタビューを行なった。インタビューは、「沖縄(琉球)における自己決定権」を中心に、深夜にまで及ぶ白熱したものとなった。こちらは編集が終わり次第、アップされる予定である。
木村朗氏には、たびたびIWJにご登場いただいている。ぜひ、以下の記事もあわせてお読みいただきたい。
- 原爆から原発へ 原発から原爆へ ~岩上安身による木村朗氏インタビュー 2013.9.29
- 「日本の真実を語る~思考停止に陥らないために」 クロストーク:木村朗×植草一秀×川内博史×岩上安身 2014.6.1
- 『核の戦後史』出版記念 原爆・原発・被曝の真実に迫る!岩上安身による木村朗氏・高橋博子氏インタビュー 2016.4.11
http://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2016/12/161205_349699_01-640x427.jpg ▲シンポジウムの様子
記事目次
- 新垣氏「歴史的にも沖縄が対話の場を提供することで軍縮や平和づくりに貢献できるのではないか」
- 海上民兵とは言うけれどもそのへんの漁業のおっさんやお兄さん達
- 高野氏「中国公船と日本の領海に侵入した」というのは間違いではないが、わざと誤解を招くような書き方をしている
- 田岡氏「公船に来てもらうことがもともとの協定であって、中国が公船を派遣しなかったら約束違反なんです」
■ハイライト
- 共同代表からの開会の挨拶 司会者:木村朗氏(鹿児島大学)
- Ⅰ 顧問からの開会のご挨拶 「東アジア共同体の安全保障構想」 前田哲男氏(軍事評論家)
- Ⅱ 基調報告 【第一報告】「米中および日中の海空連絡メカニズム」 高野孟氏(ジャーナリスト、『インサイダー』編集長)/【第二報告】「北朝鮮の“脅威”にどう対処すべきか」 田岡俊次氏(軍事評論家)
- Ⅲ 質疑討論 「沖縄にとっての『脅威』」 新垣毅氏(琉球新報記者)
- Ⅳ 顧問からの閉会のご挨拶 「東アジア共同体と沖縄」 進藤榮一氏(国際アジア共同学会会長)
- 日時 2016年12月5日(月) 17:00~
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
- 主催 東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会
新垣氏「歴史的にも沖縄が対話の場を提供することで軍縮や平和づくりに貢献できるのではないか」
「沖縄にとっての『脅威』」と題してスピーチした新垣氏は、「米軍基地の固定化・強化によって沖縄は、平時には事件事故の被害者となり、有事には攻撃目標とされる」と語り、沖縄の人々の恐怖と怒りを訴えた。
また、「日本は米海兵隊の縮小・撤退を見越して自衛隊配備の強化、さらには国防軍化を目指しているのではないか」と予想した上で、「沖縄の住民は沖縄戦の教訓から、『軍隊は住民を守らない。守るどころか殺しさえする』と肌感覚で学んだ」と語った。
その上で中国・北朝鮮を敵視する「脅威論」を「妄想ではないか」と述べ、衝突を回避するための日米同盟だけに頼らない主体的な外交努力を訴えた。
そして、「歴史的にも沖縄が対話の場を提供することで軍縮や平和づくりに貢献できるのではないか」と語り、東アジア共同体への希望を寄せた。
http://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2016/12/161205_349699_02-640x427.jpg ▲琉球新報記者・新垣 毅 氏
海上民兵とは言うけれどもそのへんの漁業のおっさんやお兄さん達
「これ、なんでもないような文章なんですけどね、トリックだらけなんですよ」
ジャーナリストの高野孟(たかのはじめ)氏は、「尖閣接続水域に中国漁船と公船が押し寄せてきた」という新聞記事について、上記のように語り、その「トリック」について解説をした。
マスコミによる「中国脅威論」については、IWJ代表の岩上安身は横浜市立大学名誉教授・矢吹晋氏にもお話をうかがっている。ぜひ、以下の記事よりお読みいただきたい。
http://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2016/12/161205_349699_03-640x427.jpg ▲ジャーナリスト・高野 孟 氏
高野氏が指したのは2016年10月22日付の日本経済新聞の「習近平の支配・闘争再び⑤」と題された連載記事。
「8月上旬、200隻を越す中国漁船が沖縄県・尖閣諸島近海に押し寄せた。漁船には軍が指揮する『海上民兵』がいたとされ、一部は中国公船と日本の領海に侵入した」という書き出しは、読者の不安を掻き立てる。
この記事について高野氏は、「海上民兵がいたというのは本当か。本当ですね。民兵そのものが中国の軍制の中に位置づけられているものであって、戦時には召集される予備役の予備役みたいなものですから、漁民の中にたくさん混じっています。だから、混じっていなかったのかと言われれば、混じっていたに決まっているんです」と話す。
しかし、「『軍が指揮する』というのがまた微妙で、いざという時に軍が指揮するのは当たり前なんです、軍制に位置づけられた民兵なんですから。だけどこのときに、軍からの何らかの作戦命令が出て、軍の指揮のもとに尖閣周辺にやってきたのか。その可能性は100パーセントないんですね」と語った。
その理由として高野氏は、次のように述べた。
「これは海上自衛隊の自衛艦隊司令の山本さんという方も論文で書いておられますけれども、要するに海上民兵とは言うけれども、そのへんの漁業のおっさんやお兄さん達なんだと。
いざという時には召集されるが、その場合には、特に公海上で行動する場合には民兵を示す『MB』と書いた表示を含めた制服を着て行動するということであって、それをしないで民間人に紛れ込んで作戦行動に携わるということになれば、それは国際法にも違反するし、国際的にも非難されると。
ですから、この時は特別の命令をもって一部が日本の領海に侵入したわけではないということだと思います」
高野氏「中国公船と日本の領海に侵入した」というのは間違いではないが、わざと誤解を招くような書き方をしている
では、「領海侵犯」についてはどうなのだろうか。
これについても高野氏は、次のように語り、「中国脅威論」が意図的に作られていることを説明した。
「中国側がこの直後に日本に説明しておりまして、『一部の金儲けしか考えない漁船が解禁日にどっと押し寄せて収拾がつかない。それで日本が主張するところの尖閣海域領海内に入らないよう、先回りして規制した。3日間かけて規制し、追い返した』と。
そのために入ったのであって、『中国公船と日本の領海に侵入した』というのは間違いではないんですけど、わざと誤解を招くような書き方をしているということです」
田岡氏「公船に来てもらうことがもともとの協定であって、中国が公船を派遣しなかったら約束違反なんです」
さらにこの記事についてはこの後、軍事評論家の田岡俊次氏もコメントを加えた。
「尖閣については日本も中国も両方がEEZ(排他的経済水域)を適用しない、入会地(いりあいち)にすると自民党時代に決まっていた。そのときに『お互いに自国の船で漁船を取り締まる』ということにしてるんです。
http://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2016/12/161205_349699_04-640x427.jpg ▲軍事評論家・田岡俊次 氏
入会地だから中国が魚を獲りに来るのは当然の話。そのときに中国公船が来ると日本の新聞に大きく載るけれども、あれは公船に来てもらうことがもともとの協定であって、中国が公船を派遣しなかったら約束違反なんです。
それから『領海侵犯』と一般に言いますけど、領海というのは無害通航権というのが認められておりまして、軍艦でもなんでも相手の領海を突っ切ってかまわないんです」
日本のマスコミ報道の恣意性が垣間見えた。
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