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電力自由化と地方自治体

2016-02-08 06:42:22 | 言いたいことは何だ




転載
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2016年01月13日 09時00分 更新


2016年の電力メガトレンド(4):エネルギーの地産地消で町が変わる、自治体が電力の小売に乗り出す (1/3)




電力会社を頂点とする従来の市場構造を転換する試みが全国各地に広がってきた。自治体が主導して再生可能エネルギーを増やしながら、同時に地域内で消費できる循環型のエネルギー供給システムを構築する。4月に始まる全面自由化に向けて、自治体が出資する小売電気事業者も続々と生まれる。




[石田雅也スマートジャパン]


http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1601/13/news019.html


 全国で約1700に及ぶ自治体はいずれも、学校や病院を含めて数多くの公共施設を所有している。大量の電力を消費する立場にあって、電力の安定供給やコストに対する意識は高い。その一方で地域の活性化に向けた実効力のある対策を求められている。新たな町づくりを目指して再生可能エネルギーの地産地消を推進する動きが活発になり、自治体みずから電力の小売に乗り出すケースも増えてきた。

 注目を集める自治体の1つが鳥取県の鳥取市だ。市内でガス事業を展開する鳥取ガスと共同で、電力小売の新会社「とっとり市民電力」を2015年8月に設立した。さらに12月には再生可能エネルギーによる発電事業を支援する「とっとり環境エネルギーアライアンス」を地元の企業6社と設立して、地域内でエネルギーを供給できる体制づくりを進めている(図1)。

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図1 鳥取市のエネルギー地産地消を推進する2つの事業会社。出典:鳥取市役所 

 当初は市が所有する施設に電力を販売することから始めて、段階的に民間企業と一般家庭にも供給範囲を広げていく計画だ。地域内で発電事業と小売事業を拡大することによって新たな雇用を創出しながら、災害に強いエネルギー供給システムを構築していく。電力に加えて資源や資金を地域内で循環させて活性化を図る(図2)。

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図2 エネルギーの地産地消による町づくりの構想(画像をクリックすると拡大)。出典:鳥取市役所 

 福岡県みやま市は鳥取市より一足早く、2015年4月から電力の小売事業に参入した。地元の銀行などから出資を受けて「みやまスマートエネルギー」を設立して、市役所や学校などの公共施設32カ所を皮切りに電力の供給範囲を拡大中だ(図3)。全面自由化が始まる2016年4月から家庭向けにも電力の販売を予定している。

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図3 福岡県みやま市が推進する電力事業。出典:みやまスマートエネルギー 

 この事業でも地域の再生可能エネルギーの調達量を増やしていく。九州電力の管内で出力が50kW(キロワット)未満の太陽光発電設備を対象に、固定価格買取制度よりも1円高い価格で電力を買い取る事業を開始した(図4)。市民が再生可能エネルギーを導入する取り組みを支援しながら、夏の電力需要が増えるピーク時に地域内のエネルギーを有効に活用する。

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図4 太陽光発電の買取事業。出典:みやまスマートエネルギー 

 みやまスマートエネルギーは初年度から営業利益を上げる見通しで、その収益を農林業や観光業などの地域産業に投資する方針だ。市民向けにはHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)による情報サービスを拡充していく。当面は2000世帯を対象に、電力の使用量や室内の温度・湿度のデータを利用した高齢者の見守り・健康チェックサービスなどを提供する。

太陽光やバイオマスの電力を売る



 全国の自治体の中で電力の小売事業に初めて取り組んだのは群馬県の中之条町である。人口1万7000人の町が2013年8月に「中之条電力」を設立して大きな話題を呼んだ。その2年前に発生した福島第一原子力発電所の事故を契機に、電力の地産地消を推進する「再生可能エネルギーのまち中之条」を宣言してプロジェクトを開始した。

 中之条電力は再生可能エネルギーを中心に電力の小売を手がけるV-Powerと共同で事業を展開する。特に太陽光発電の開発と調達に力を入れている(図5)。町内の3カ所で運転中のメガソーラーから電力を購入して、町役場などの公共施設に電力を供給している。

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図5 群馬県中之条町が推進する電力事業。出典:中之条電力 

 太陽光発電による電力の小売事業は大阪府の泉佐野市も開始した。近隣の太陽光発電所から年間に450世帯分の電力を調達して市内の公共施設に供給する(図6)。民間の新電力と共同で設立した「泉佐野電力」は、自治体が出資する事業者では初めて小売電気事業者の登録も済ませた。4月から家庭向けにも電力の販売が可能になる。

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図6 大阪府泉佐野市が推進する電力事業。出典:泉佐野電力 

 2015年12月末の時点で、自治体が出資する小売電気事業者は2社ある。泉佐野電力のほかに、岡山県の真庭市が出資する「真庭バイオエネルギー」だ。山林で大量に発生する林地残材や製材所から出る端材を有効に活用するために設立した(図7)。市内の事業所などに木質バイオマスボイラー用の燃料を供給している。

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図7 岡山県真庭市の木質バイオマスを活用した地域エネルギー循環システム。出典:真庭市役所 

 真庭市では2015年4月に「真庭バイオマス発電所」が運転を開始した。発電能力が10MW(メガワット)に達する大規模な木質バイオマス発電所で、年間に2万2000世帯分の電力を供給することができる。真庭市と真庭バイオエネルギーのほかに地元の森林組合や製材会社が共同で発電事業を運営する。

 真庭バイオエネルギーが小売電気事業者に登録したことで、木質バイオマスによる電力を家庭にも販売できる体制になった。真庭市は「バイオマス産業杜市(とし)構想」を掲げて、林業と製材業を中核に新しいバイオマス産業の育成に取り組んでいく。

電力会社も自治体と組んで地産地消に



 自治体による電力小売の動きは全国各地に波及する。地域の民間企業に加えてエネルギー分野の大手企業が参画するプロジェクトも増えてきた。静岡県の浜松市はNTTファシリティーズやNECキャピタルソリューションの出資を受けて、「浜松新電力」を2015年10月に設立した(図8)。

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図8 静岡県浜松市の「浜松新電力」の事業スキーム。出典:NECキャピタルソリューション 

 人口が81万人の浜松市は政令都市の中で初めて電力小売事業に参入する。市内のメガソーラーや清掃工場で発電した再生可能エネルギーの電力を買い取って、浜松市の公共施設のほかに民間企業や家庭にも供給する予定だ。地域全体の需給管理はNTTファシリティーズが請け負うことになっている。

 全国各地でメガソーラーを展開するNTTファシリティーズは岩手県の北上市でも、自治体と協定を結んで小売事業を開始した。市内に設立した「北上新電力」がメガソーラーや小水力発電所から電力を調達して、市の庁舎や防災拠点に電力を供給する(図9)。

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図9 岩手県北上市の「北上新電力」の事業スキーム。出典:NTTファシリティーズ 

 市役所の本庁舎はBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を使って電力の需給バランスを最適化できるようになっている。太陽光発電システムと蓄電池システムに電気自動車も組み合わせて、需要のピークカットや災害時にも電力の供給を継続できる体制だ。

 市町村にとどまらず、県が参画するプロジェクトも始まった。神奈川県は湘南エリアを中心に電力の小売事業を展開する「湘南電力」と協定を結んだ。湘南電力は県の補助金を受けて、県内で稼働中の太陽光発電設備などから電力を購入する(図10)。電力の需給調整をエナリスに委託する体制でエネルギーの地産地消を推進していく。

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図10 神奈川県が支援する「湘南電力」の事業スキーム。出典:エナリス 

 山梨県では東京電力が協力して、再生可能エネルギーの地産地消と企業の誘致を促進する新しい事業に着手した。県と東京電力が共同で設立した「やまなしパワー」を通じて、県営の水力発電所の電力を企業に安く提供する(図11)。水力発電所が供給する13万世帯分の電力を、東京電力の単価よりも1円程度安く供給する予定だ。


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図11 「やまなしパワー」の事業スキーム。出典:山梨県、東京電力


 対象は県内の中小企業のほか、新規に山梨県に進出する大企業も含む。県の産業振興策に合致する企業を優先的に選んで、再生可能エネルギーを生かした産業の育成を目指す。東京電力は小売の自由化が進む中で供給先を確保できるメリットがある。官民連携によるエネルギー地産地消の取り組みは、全面自由化が始まる4月以降にますます活発になっていく。


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