安倍内閣「成長戦略」は名ばかり 大多数には利益なし 評論家・ノンフィクション作家 関岡 英之 (2014/6/30) ーーーー日本農業新聞記事
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最近、地方の中核都市で中小企業の経営者の方々を対象に講演する機会が何度かあった。製造業、建設業、運輸業、サービス業など幅広い業種の優良企業ばかりである。そこで筆者は、安倍内閣が打ち出した「成長戦略」の三本柱、すなわち、雇用分野における「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入、医療分野における混合診療の拡大、農業分野におけるJA改革について、これらのうちのどれに期待しているか、複数回答可で挙手してもらった。
・中小企業に無縁
各回の講演会場には200名前後の経営者や幹部が出席していたが、筆者が心中密(ひそ)かに予期していた通り、誰一人として手を挙げた人はいなかった。ただの一人も、である。安倍総理が「岩盤規制にドリルで風穴を開ける」と意気込み、「アベノミクスの第三の矢」として掲げる「成長戦略」の目玉は、我が国の企業数の99%以上、就業者数の約7割を占める中小企業には無縁の話なのだ。少なくとも中小企業が要望したものではない。
http://image.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2014/06/30/uid000354_201406301651127a47e8aa.jpg まずホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、我が国の雇用制度の基本理念を変更するものだが、対象とされる被用者は「年収1000万円以上」などとされ、具体的に想定されるのは、例えば外資を含む大手金融機関の為替ディーラーや証券トレーダー、シンクタンクのアナリストやコンサルティグ会社のコンサルタントなどで、いずれも中小企業の雇用に直接関わる話ではない。
ましてや混合診療の拡大やJA改革に至っては、多くの中小企業にとってはほとんど無関係だ。混合診療の拡大に関しては、生命保険協会の会長が「大きなビジネスチャンスになる」と表明していることから、誰のための「改革」かは明白だ。JA改革については、資材流通への参入拡大や、植物工場の全国展開などを目論(もくろ)む流通大手や商社が最大の受益者だろう。
・元は米国の要望
いずれにしてもこれらの「改革」は、金融機関や商社などごく一握りの大企業が恩恵を受けるだけで、大多数の中小企業にとってはなんのメリットもない。「成長戦略」とは名ばかりで、日本経済の再生にも結び付かない。なぜなら、そもそもこれらは日本国内から出てきた提案ではなく、もとはと言えば米国から要望されたものだからである。
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は2006年6月の「日米投資イニシアティブ報告書」、混合診療の解禁は04年6月の同報告書に、米国の要望として明記されている。JA改革は、11年2月の「日米経済調和対話」で米国側が提起した。最終目標は経済事業と金融事業(信用・共済)の分離で、これは郵便事業と金融事業(郵貯・簡保)の分離を目的とした郵政民営化と同じ図式である。狙いは共済と簡保、すなわち保険だ。
要するに安倍内閣の「岩盤規制改革」は、米国の財界と、それに便乗した日本の一部の大企業の利潤追求の方便にすぎない。国民は、広範に連帯して疑問の声を上げるべきではないか?
<プロフィル> せきおか・ひでゆき
1961年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士修了。年次改革要望書による米国の内政干渉を解明した『拒否できない日本』、TPPに関する『国家の存亡』、『TPP黒い条約』『検証アベノミクスとTPP』など著書多数。
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最近、地方の中核都市で中小企業の経営者の方々を対象に講演する機会が何度かあった。製造業、建設業、運輸業、サービス業など幅広い業種の優良企業ばかりである。そこで筆者は、安倍内閣が打ち出した「成長戦略」の三本柱、すなわち、雇用分野における「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入、医療分野における混合診療の拡大、農業分野におけるJA改革について、これらのうちのどれに期待しているか、複数回答可で挙手してもらった。
・中小企業に無縁
各回の講演会場には200名前後の経営者や幹部が出席していたが、筆者が心中密(ひそ)かに予期していた通り、誰一人として手を挙げた人はいなかった。ただの一人も、である。安倍総理が「岩盤規制にドリルで風穴を開ける」と意気込み、「アベノミクスの第三の矢」として掲げる「成長戦略」の目玉は、我が国の企業数の99%以上、就業者数の約7割を占める中小企業には無縁の話なのだ。少なくとも中小企業が要望したものではない。
http://image.agrinews.co.jp/uploads/fckeditor/2014/06/30/uid000354_201406301651127a47e8aa.jpg まずホワイトカラー・エグゼンプションの導入は、我が国の雇用制度の基本理念を変更するものだが、対象とされる被用者は「年収1000万円以上」などとされ、具体的に想定されるのは、例えば外資を含む大手金融機関の為替ディーラーや証券トレーダー、シンクタンクのアナリストやコンサルティグ会社のコンサルタントなどで、いずれも中小企業の雇用に直接関わる話ではない。
ましてや混合診療の拡大やJA改革に至っては、多くの中小企業にとってはほとんど無関係だ。混合診療の拡大に関しては、生命保険協会の会長が「大きなビジネスチャンスになる」と表明していることから、誰のための「改革」かは明白だ。JA改革については、資材流通への参入拡大や、植物工場の全国展開などを目論(もくろ)む流通大手や商社が最大の受益者だろう。
・元は米国の要望
いずれにしてもこれらの「改革」は、金融機関や商社などごく一握りの大企業が恩恵を受けるだけで、大多数の中小企業にとってはなんのメリットもない。「成長戦略」とは名ばかりで、日本経済の再生にも結び付かない。なぜなら、そもそもこれらは日本国内から出てきた提案ではなく、もとはと言えば米国から要望されたものだからである。
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は2006年6月の「日米投資イニシアティブ報告書」、混合診療の解禁は04年6月の同報告書に、米国の要望として明記されている。JA改革は、11年2月の「日米経済調和対話」で米国側が提起した。最終目標は経済事業と金融事業(信用・共済)の分離で、これは郵便事業と金融事業(郵貯・簡保)の分離を目的とした郵政民営化と同じ図式である。狙いは共済と簡保、すなわち保険だ。
要するに安倍内閣の「岩盤規制改革」は、米国の財界と、それに便乗した日本の一部の大企業の利潤追求の方便にすぎない。国民は、広範に連帯して疑問の声を上げるべきではないか?
<プロフィル> せきおか・ひでゆき
1961年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士修了。年次改革要望書による米国の内政干渉を解明した『拒否できない日本』、TPPに関する『国家の存亡』、『TPP黒い条約』『検証アベノミクスとTPP』など著書多数。
随分、高度な分析記事を載せるようになっているのですね!朝日、毎日、読売、産経、日経のいわゆる五大紙よりははるかに、優れた記事が載せられているようですね!最近では地方紙や、スポーツ新聞や、こういった業界紙の方が優れた記事を書くようですね!
この記事今日のお勧め記事でタイトルだけですが紹介します。