無知の知

ほたるぶくろの日記

原因追及の甘さ

2019-10-05 07:59:21 | 組織
今日はちょっと固めの話し。
ある経済学者(英国人)が日本経済低迷、「失われた20年」の原因について分析しているのをちらちら、と流し読みしました。
日本は中小企業が圧倒的に多いことが諸悪の根源、という分析結果。

ある意味で確かに。
企業体の規模が小さいと、賃金レベルが低かったり、それこそ有休も取りにくかったり、残業を減らしにくかったり、「コンプライアンス」遵守など軽視されたり、ということは起こりやすいでしょう。
経営という視点からみれば、非効率極まりない、でしょう。

彼は盛んに感覚的ではなく、科学的に分析され、判断されるべき、と言います。最近よく耳にするevidence based policy making (EBPM) ですね。そこは私も同意します。ただし、そういいつつ、彼の主張の根本は、やはり感覚的に到達した、「中小企業が多すぎるのが原因」という結論であり、その結論に向かってevidenceを集めてるのでは、と危惧します。

しかし、では中小企業が合併されて、大企業になったとして、そこには何が待ち受けていると?個性を無くした商品や、サービスやらが溢れるのです。大きな企業体の判断は「無駄の排除」。

もう一つの問題は組織体の未熟なままでの大企業化。今だに組織の上層部では昭和的な(最近私の中では流行中)コンプライアンスがん無視の「暗黙の了解」や「何とかしろ」が通用している文化状況です。大きな組織の上層部人間をきちんと監視するシステムが無い。「信頼されている人間を上層部に迎えているので」なんてことが、まことしやかに言われるわけですが、、、本気ですか?

ともかく、今も某電気会社と某地方自治体の話しが表に出ていますが、組織論的な要素を抽出すれば、構造はいつも同じです。

コンプライアンス(あるいは人の道ともいえる)がん無視の「権力」者とそれにおもねり、忖度する周りの人間。

これは古今東西の問題ですが、これをどうやって防御するのか?
最近の大きな組織は「外部評価委員会」など組織の権力関係からやや離れた人々に「客観的な」評価をしてもらう制度を作っています。

委員会はある程度の規模にし、委員についてはCOI(利害関係)も調査した上で、身内で固められることのないよう選出する。ただし、どうしても評価される組織体が組織する委員会です。自ずと「客観性」には制限が生まれますが、ともかく委員会を組織する、ということは内部的な抑止力にはなります。

そして、この委員会にどのくらいの権限を持たせるのか?もまた重要。例の某西の方の研究所もこの「外部評価委員会」はあり、問題点は再三指摘されていたが、全て無視。我が道を行っていたところ、大事故に至ったという経緯。この評価結果はHP上で公表もされていたので、私も落としてみましたが、明確に問題点の指摘がありました。


ともあれこのように、大きな組織のガバナンスもダメダメの状態で、組織内格差も拡大し続けている大企業を観ていると、これは今のこの国の状況そのままであることが分かります。

ですから、中小企業を合併して、大企業化、というのが「科学的に正しい」解ではなかろう、と思ったのでした。もしかしたら、逆に日本は中小企業が多いから、まだ保っているのかもしれません。

経営効率的な観点、のみから日本経済全体の処方箋を書くのは大いに危険。
大概にして頂きたい。