ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『恋人たちの場所』を観て

2022年07月01日 | 1960年代映画(外国)
『恋人たちの場所』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1968年)を観た。

アメリカから、ある豪華な別荘に洒落た身なりの女性ジュリアがやって来る。
そして彼女は、空港で会ったイタリア人のバレリオのことを思い返す。
バレリオは主婦であるジュリアに一目で夢中になり、住所と電話番号のメモを渡していた。
別荘の部屋でテレビを付けたジュリアは、オートレース・エンジニアの彼が出ているのを見て、教えて貰った番号に電話する。

ジュリアは、別荘にやって来たバレリオを相手に、理由も告げずに2日間だけの恋愛を許す。
そして二人は親密になり、いつしか逢瀬を重ねて行き・・・

男性がマルチェロ・マストロヤンニで、女性がフェイ・ダナウェイ。
この二人がのっぴきならぬ思いで愛を交わす。
ただ観客からすると、状況説明が不足していてどうもその愛がシックリ来ない。
第一、あの豪邸に対するジュリアの立場は何の説明もない。
そして、ジュリアには夫がいるらしいが、それにはひと言だけの会話からの説明であって、ましてやバレリオの家庭背景なんて何らわからない。
後半、アルプスに行った辺りで、やっとジュリアが不治の病、多分癌にかかっていることが明かされ、余命幾ばくもない悲劇の主人公に演出されていく。
調べると、こんな甘い脚本を5人で書いたらしい。
脚本に5人も関わっていたら、みんな自分の主張もせず適当な所で手を打ったのではないか。

二人だけの究極の愛の世界、と言えば聞こえはいいが、単なる有名俳優による顔見せ興業としか言えない作品。
若い頃だったらこのような作品でもロマンテックで許せたかもしれないが、今はそうはいかない。
なにしろ、デ・シーカ監督の作品である。
数々の社会性のある名作を作ったネオリアリスモの巨匠がこのような、アメリカ映画のやっつけ仕事ではないか、と思うような作品を作る。
私としては、『自転車泥棒』(1948年)から始まり1950年代の作品をテレビで慣れ親しんで、
『昨日・今日・明日』(1963年)や『ああ結婚』(1964年)が同世代映画の人間である。
だからデ・シーカの作品が軽くなって行ったのはわかるが、この作品は頂けなかった。

そう言えば、この次に作った作品『ひまわり』(1970年)が現在、ウクライナの関係でリバイバル上映されたり再評価されたりしているが、
当時観た私の感想では、通俗的な甘いメロドラマだったとの印象がある(ただし、観直せば考えが変わるかもしれないが、それはよくわからない)。
と言いつつも、他のデ・シーカの見落とし作品はやはり気になるので、今後も暇を見つけて観ていきたい。

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