ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

小学生のころ・4〜『砂漠は生きている』

2015年07月12日 | 1950年代映画(外国)
小学校の音楽室で観た映画の中で、最初に印象に残ったのは『砂漠は生きている』(ジェームズ・アルガー監督、1953年)だった。
最近はテレビでも、珍しい動物や昆虫などのドキュメンタリー番組があるので、そんなに目新しくはなくなったけれど、
当時はテレビもなく、動物といえば、たまに連れて行ってもらう動物園しかなかった。
だから、この映画を鑑賞した時、物珍しさと驚きで、食い入るようにして観た。

一見して、とても生物が住めそうもない砂漠。
水もない過酷な環境の中で、よく見ると、カメやガラガラヘビ、ドクトカゲにタランチュラなど陸上生活をする多様な生き物がいる。
鳥だって、いろんな種類がいて、それぞれにこの砂漠で生きる工夫をしている。
山ネコがいる。イボイノシシもいる。
この山ネコがイボイノシシに追われる。追われた山ネコはサボテンに高く高く登り、逃げ切る。
天辺まで登って、やれ安心と思ったら、サボテンがポキリ。
下で集まっているイボイノシシの所へ落下した山ネコは、また必死で駆け登る。
サボテンのトゲが痛いだろうにそれでも登るのか?
命、ハラハラ状態の山ネコを見ていると、ユーモアさえも漂ってくる。
当時の、この場面が一番印象に残っている。

この映画は、ウォルト・ディズニー作品で、アカデミー長編記録映画賞の受賞作である。
最近、山ネコの場面をもう一度見たくなったので、DVDを購入し観てみた。
ドキュメンタリーでありながら、よく見ると、砂漠による撮影ばかりではなく、舞台設定して撮ってあるなと思う場面も多い。
それでも、さすがディズニーである。
対決しあう生き物たちの生態の設定がよく出来ていて、編集がうまいから飽きない。

この作品は当時、義務教育の全ての学校が、文部省(当時)によって半強制的に鑑賞を義務付けられたそうだ。
そうだとすると私の同世代の人達で、あれは観た、印象に残っている、という人が大勢いるのではないか。

何年か後に、同じくディズニー作品で同監督の『ジャングル・キャット』(1960年)が封切られることになった。
内容は、アマゾン流域のジャガーの家族の生態をとらえた記録映画である。
私は、『砂漠は生きている』がすごく気に入っていたので、『ジャングル・キャット』も観たくてしょうがなかった。
丁度その時期、明治製菓だったか子供向けに、抽選でこの『ジャングル・キャット』の招待券が当たる応募があり、
いいチャンスだと思って私は必死になって応募した。
その甲斐があって2枚も当選した。
その当選はがきが嬉しくって、早速、父にせがんで小学校低学年の妹と一緒に名古屋の映画館に連れて行ってもらった。
上映は夜の回である。
入口で、チケット代わりのはがきの角をハサミで切ってもらい、劇場の扉を開けるとビックリ。
人が一杯だらけで、扉から入れてもほとんど前に進めないのである。
それでも、観たさ一倍の私は、人と人の隙間から立ったままで必死になって観た。
後ろでは父が「押すな、押すな!」と怒鳴っている声が聞こえたが、私は押されてもスクリーンに夢中であった。
今、思い返すと、あの時、背の低い妹はどのようにして観ていたのだらうか。
父に肩車でもしてもらっていたのだろうか。
映画の内容も今は思い出せない。
ただ、覚えているのは、劇場内が満員だったことと、映画が終わり、帰り道の広小路通りに屋台が一杯並んでいたこと。
酔った人も歩いている大人の世界を、不安な気持ちを抱きながら、父を見失わないように一生懸命歩いた記憶がある。


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