著者 大宮千草
絵 多屋光孫
出版年月日 2015年9月15日
出版社 (株)文芸社
☆感想☆☆☆
童話の絵本。山姥の伝承をもとに、子どもを失って狂って探し回るうちに山姥になった母が、天災で親を失い飢餓に苦しむ子供たちを救って、山奥で楽しく暮らす物語。子どもを失った母が親を失った子どもたちによって悲しみを忘れ、新しい生きがいを見つけて立ち直る。山のかなたに歩いていく山姥と子どもたちには「山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう」の詩が浮かんでくる幕切れで、いつまでもお幸せにと声をかけたくなる。
絵も可愛いし、山の描写が美しい。例えばプロローグ。
「クエーン」
雉子が、するどくひと声叫んでとびたちました。すると、ひんやりした山の空気がざあっと動いて、秋草の匂いがたちました。ざざっざざっと、草々、枝々をかき分ける音がします。何かけものがやってきたのでしょうか。尾花がたおれ、紅の水引草がふるえました。
それは、神す山の巨大でなんとも醜いやまんばでありました。