読書感想246 模倣犯
著者 宮部みゆき
生年 1960年
出身地 東京都
出版年 2001年(平成13年)→2005年(平成17年)
出版社 小学館 → 新潮文庫
受賞歴 毎日出版文化賞特別賞 司馬遼太郎賞
芸術選奨文部科学大臣賞
☆☆感想☆☆
本書は宮部みゆきのベストセラー小説である。テレビドラマ化もされた作品。残念ながらテレビドラマは最後の30分ぐらいしか見られなかったので、是非原作を読んでみようと思っているうちに歳月を重ねてしまった。今回やっと本書を手に取った。文庫5冊の大部な小説で大変だと思ったが、一気に読んでしまった。事件と関わりのある人物が次々に語り部となって進行していく。語り部のトップバッターは塚田真一。隅田川の川岸にある大川公園に犬の散歩で訪れて、切断された手を発見。次の語り部はお豆腐屋さんの有馬義男。孫娘の古川鞠子が行方不明。そして語り部は事件の担当の武上刑事へ移っていき、事件が進展していく。行方不明者の記事を書こうとしているルポライターの前畑滋子、そして犯人の一人、栗橋浩美、共犯とされた兄、高井和明の無実を信じる高井由美子。そして連続誘拐殺人事件の主犯、ピースにと続いていく。事件は劇場型犯罪の様相を呈してくる。自分の作りだした連続誘拐殺人事件に多くの観客を呼び込むべく、テレビのニュース番組に犯人が電話をかけてくる。声の特定ができないようにボイスチェンジャーを使用する犯人が、二人いるということに気付くのは、孫娘の情報を知らせるという犯人からの電話で東京中を引っ張りまわされた有馬義男。ここがひとつの山場になる。また、登場人物それぞれの人となりや心理状態は納得がいくが、主犯のピースはあまりに突飛で異常すぎるから、リアルティにかけてしまう。犯罪者の人格崩壊が常人の理解できる範囲にとどまっていれば、読者も理解とある種の共感を抱ける。完全な異常人格が出現すると、お手上げだ。しかし、面白かったし、宮部みゆきの筆力には感心した。(2018.9.30)