読書感想248 バッタを倒しにアフリカへ
著者 前野ウルド浩太郎
生年 1980年
出身地 秋田県
現職 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
研究員
出版年 2017年
出版社 (株)光文社
☆☆感想☆☆
「小学生の頃に読んだ科学雑誌の記事で、外国で大発生したバッタを見学していた女性観光客がバッタの大群に巻き込まれ、緑色の服を喰われてしまったことを知った。バッタに恐怖を覚えると同時に、その女性を羨ましく思った。・・・虫を愛し、虫に愛される昆虫学者になりたかった。それ以来、緑色の服を来てバッタの群れに飛び込み、全身でバッタと愛を語り合うのが夢になった。」
博士号を取得したが、日本ではバッタの被害がなく、バッタの研究をする機関がほとんどない。それで、2年間の任期つきで日本学術振興会海外特別研究員として西アフリカのモーリタニアのサハラ砂漠へ行って、サバクトビバッタの大発生と集団飛翔の観察研究をすることになる。しかし、著者が子供の頃からの夢を叶えるのはモーリタニアに来てから3年以上経ってからである。日本学術振興会の任期は2年なので、研究滞在費を賄うために、インターネットの世界に飛び込んでいく。ブログから始め、雑誌プレジデントのオンライン記事、ニコニコ動画の討論会に出演、そしてついに京都大学の白眉センターの助教として研究費の支援を受けることになる。バッタの研究というテーマがぶれず、資金を集めるためにいろいろ手を尽くしている。そうこうするうちに支援してくれる人も集まってくる。モーリタニアの生活は淡々と描いているが、すさまじい。さばいたばかりの山羊の首が転がっているところで山羊料理をごちそうになったり、サソリにさされたり。しかし楽しそうに描かれている。子供の頃の夢を実現しようとする一念が羨ましいかぎりだし、フィールドワークの素晴らしさを感じさせてくれて、著者の成功を応援したい気持ちになる。