読書感想249 6月19日の花嫁
著者 乃南アサ
生年 1960年
出身地 東京都
出版年 1991年
出版社 (株)新潮社
☆☆感想☆☆
物語は結婚を1週間後の6月19日に控えた池野千尋が「彼」の運転する車に乗っていて、雨の中で事故に遭い失神してしまうところから始まる。彼女が翌日の6月13日に目覚めると、見知らぬマンションの部屋のベッドに寝かされ、見知らぬ男が現れて路上で倒れていた彼女を助けたと言う。しかし、彼女は自分に関する記憶を一切失っていた。見知らぬ男は前田一行と名乗って、「また、振り出しだな」とつぶやく。そして彼女にハンドバックを渡す。その中に身元が分かるものは何もなく、池野千尋の名前の書いてある写真と6月19日の日付のある領収書がはいっており、それを手掛かりに千尋の自分探しの旅が始まる。千尋は結婚式にたどり着けるのか、一行とはどんな関係なのか。数々の謎を読者は千尋と一緒にたどっていく。
自分に関する記憶がなくなるというのも恐ろしいし、自分が覚えていない悪事の数々を挙げつられても困ってしまうだろう。昔のことを話していて、記憶のいい人と全く覚えていない人がいるが、自分に関することは記憶の悪い人でも忘れることはない。記憶喪失というのはドラマやミステリーでよく使われるテーマだが、かなりの頻度で現実にもあるのだろうか。認知症は病気として一般的だが、精神的なショックに伴う記憶喪失は物語の世界以外ではあまり聞かないなあ。