読書感想257 警官の条件
著者 佐々木譲
生年 1950年
出身地 北海道
出版年 2011年
出版社 (株)新潮社
☆☆感想☆☆
警察官の物語である。組織犯罪の捜査に、暴力団や犯罪グループの懐深く入って情報を得るという手法をとる警視庁捜査4課の辣腕警部加賀谷仁と、その手法に危うさを感じる上層部から、隠密に加賀谷を内偵するように命じられ、加賀谷の部下になった安城和也を巡る物語である。加賀谷は覚醒剤を所持しているところを、和也に密告され、警視庁を依願退職する。しかし、覚醒剤を巡っての裁判では2審で無罪になる。裁判の中で加賀谷は入手先も警視庁での命令系統についても沈黙を貫いた。
9年後に三浦半島で釣り船屋をしている加賀谷のもとに警視庁の元の同僚が訪ねてくる。そして「あんたの助けがいる」と告げるところから、物語は始まる。暴力団から提供された高級外車に乗り、高級なスーツを着て高級なクラブに出入りする。どこから資金が出るのかと疑惑の目で見られても仕方のない「悪徳警官」加賀谷が復職してくる。組織犯罪対策部第一課の「上司を売った男」安城和也警部と第五課の加賀谷警部が覚醒剤の新ルートの解明と潜入捜査官殺しの犯人探しにしのぎを削り始める。舞台が八王子の滝山公園だったり、竹芝だったり、湾岸道路や首都高で追いかけたり、桜田門の警視庁だったり、都内を縦横無尽に動き回るのでイメージは湧いてくる。しかし、出てくる警察官の数が多すぎるし、事件が次々に起こるので、煩雑で何度も前のページをめくって確かめなければならなかった。いずれにしても警察の仕事は大変だ。