著者 佐々木譲
生年 1950年
出身地 北海道
出版年 2015年
出版社 (株)新潮社
☆☆感想☆☆
プロローグは人質を盾にして逃げる殺人犯を東京湾岸の大井埠頭の古倉庫に追い詰めた2人の警察官の話から始まる。一人が人質を救出している間に、残された一人は殺人犯に襲われてしまう。銃撃された波多野巡査は、上司の命令を聞かずに飛び込んだ同期の松本巡査によって救出される。7年後、深沢という暴力団員の射殺体が発見され、蒲田署の波多野巡査長が捜査を開始する。隠密に捜査を命じられた警視庁捜査一課の松本巡査部長も同じ事件を追う。小説の展開は二人の警官とともに捜査を追っていく形だ。するといろいろな人間が絡んできて、その錯綜した糸の中から事件の真相が次第に明らかになってくる。しかし暴力団と半グレ、売春組織から外国人女性を救出するボランティア団体、それに数多くの警官に監察医まであまりに登場人物が多すぎる。いろいろな事件も絡まっている。京浜工業地帯でここ数年あがった死体も5体と数も多い。確かに臨場感あふれているが、あまりに錯綜しているので、捜査本部の白板に事件の概要を記述していくように、読者もメモを取らないとわからなくなっていく。そんな気がしたが、結末はやはりという思いはあるが、今一つ犯人の心理がわからない。殺人する人間の心理を肯定的に描くのは難しいし、平凡な人間の共感は得られにくいと思う。