読書感想308 昏き目の暗殺者(上)(下)
著者 : マーガレット・アトウッド
生年 : 1939年
出身地 : カナダ
出版年 : 2000年
邦訳出版年 : 2002年
出版社 : (株)早川書房
訳者 : 鴻巣友季子
受賞 : ブッカ―賞 ダシール・ハメット賞
★★感想☆☆☆
「訳者あとがき」の中で著者のマーガレット・アトウッドは「カナダ文学の女神」と呼ばれているとある。カナダ文学も「赤毛のアン」シリーズのモンゴメリーの作品しか読んだことがなく、本作が現代のカナダ文学に接する初めての機会となった。重厚で読み応えのある作品だった。カナダのトロントに近い町で19世紀に釦工場を創業した一族の栄枯盛衰と。孫娘アイリスの追憶と日常の身辺雑記を一人称で追いながら、もう一人の孫娘ローラの小説「昏い目の暗殺者」を挟んでいく構成になっている。時代は二つの世界大戦と大恐慌を経て第二次世界大戦後20世紀の終わりまで続いていく。要所要所の新聞記事でアイリスやローラの動静を知ることになる。また「昏き目の暗殺者」の中で密会中の男女が語るSFファンタジーがある。入れ子細工のように物語がいくつも重なっている。いくつも伏線が張られていて、最後になって「昏き目の暗殺者」が誰で謎の男女が誰なのかわかるようになっている。
重要な登場人物は次のようである。
アイリス=私 83歳まで生きる。
ローラ 妹 1945年に25歳で交通事故で亡くなる。
ノーヴァル 父 大恐慌時代に鉛工場を失って亡くなる。
リリアナ 母 流産で亡くなる。
リーニ― アイリスの家のお手伝いさん。アイリスとローラを育ててくれる。
マイエラ リーニ―の娘。
リチャード 大工場主でアイリスの夫。1947年に亡くなる。
アレックス 共産主義者 第二次世界大戦で戦死。
エイミー アイリスとリチャードの娘。38歳でなくなる。