著者 : キャロル・オコンネル
生年 : 1947年
出身 : 米国ニューヨーク州
出版年 : 2004年
邦訳出版社 : (株)東京創元社
邦訳出版年 : 2016年
訳者 : 務台夏子
☆☆感想☆☆☆
本書は著者キャロル・オコンネルの「キャシー・マロリー」シリーズの8作目にあたる。キャシー・マロリーはニューヨーク市警の刑事。物語の舞台はニューヨークのセントラルパーク西通りにある古風なウィンター邸。そこで保釈中の殺人犯ウィリー・ロイ・ボイドが刺殺された。当時屋敷に居たのは70歳の老女ネッダ・ウィンターとその姪ビッティ・スミス。捜査にあたったのはマロリーと相棒のライカ―。それにマロリーの友人のコンサルタントのチャールズ・バトラー。58年前に当時12歳だったネッダはウィンター邸で起きた一家9人虐殺事件の後、行方不明になっていたのだ。58年前の一家9人虐殺事件では犯行にアイスピックが使われていた。犯人はわからず未解決のままだ。今回は鋏がボイドの胸に刺さっていたが、死体の傍らにアイスピックが落ちていた。生き残っていたネッダの弟ライオネルと妹でビッティの母でもあるクレオは別荘に行っていて留守だった。マロリーとライカ―は58年前の事件とネッダの空白の58年も捜査し始める。ライカ―の祖父と父が調べたアイスピック殺人事件の記録が出てくる。100年以上前からアイスピック殺人は始まっている。
マロリーは男勝りの刑事として描かれていない。元ストリートチルドレン出身の天才的噓つきの犯罪に精通した美貌の刑事として登場する。犯罪者も怖がる強面ぶりである。女性刑事としては新しいタイプだ。マロリーの描き方もマロリーの犯罪に関する執着を現すようにユーモア一杯だ。
ー- キャシー・マロリーはベーグルにかぶりつき、空いているほうの手で金属の引き出しをするりと
開けた。彼女はそこに、自分の私物である遺体をしまっておいたのだ。被害者はいまも死体袋に
入ったままだった。それに、書類は一切ついていない。彼女がドクターに見せた事件現場の写真
には、胴体より上や下の写ったものは一枚もなかった。そしていま、彼女はジッパーを開け、初
めてドクターに被害者の顔を見せた。「ウィリー・ロイ・ボイドよ」 ー-
死因を特定してもらう場面である。
いろいろな謎が絡み合って飽きさせないが、58年前の虐殺事件の犯人についてもっと描かれていたらという感想を抱いた。