読書感想319 赤く微笑む春
著者 : ヨハン・テオリン
生年 : 1963年
出身国 : スウエーデン
出版年 : 2010年
邦訳出版年 : 2013年
邦訳出版社 : (株)早川書房
訳者 : 三角和代
★☆感想☆☆
スウエーデンのエーランド島を舞台にしたサスペンス。エーランド島4部作の第3作目。高齢者施設で暮らしていた元船長のイェルロフ・ダーヴィドソンは、歩くのもままならないが、これが最後の春になると思って自分の家に帰って一人暮らしを始める。以前は漁で栄え、石切り場で働く人もいた村は、廃れて夏の別荘地になっていた。そんな村の隣人にペール・メルネルがいた。彼は母の従弟の石工の家を相続してそこに住み始めていた。ペールには離婚した元妻との間に幼い双子の男の子と女の子がいた。そして子供のときに別れたお騒がせな父親がいた。イェルロフの近所には作家ラ―ション夫妻と金持ちのクルディン夫妻が夏を待たずに住み始めた。それぞれ秘密を抱えている。
エーランド島のトロール(醜く悪意に満ちた妖精)や願いを叶えてくれるエルフ(美しい小妖精)の民話に彩られた石切り場や草原が神秘的だ。登場人物が趣味のランニングで走る距離が軽く10キロメートルというのも都会に住む人にとっては驚きだ。犯罪と無縁に見えるエーランド島で過去と因縁のある犯罪が起きるのもこのシリーズの特徴でもあり、面白さだ。