読書感想326 すべての美しい馬
著者 : コーマック・マッカーシー
生年 : 1933年
出版年 : 1992年
邦訳出版年 : 2001年
邦訳出版社 : (株)早川書房
訳者 : 黒原敏行
出身地 : アメリカ合衆国 ロードアイランド州
受賞歴 : 1992年全米図書賞 全米批評家協会賞
☆感想☆☆☆
祖父が亡くなり、テキサスで77年続いた牧場は唯一の相続人の母の手で売却されようとしていた。母と離婚した父は第2次世界大戦から帰還してきたが心身ともに病んでいた。メキシコ人のばあやに育てられスペイン語が話せる16歳のジョン・グレイディは牧場を維持したいと思ったが、無理だった。それで親友のロリンズを誘って馬に乗ってメキシコに向かった。途中で素晴らしい馬に乗った13歳ぐらいの少年と出会い、一緒に旅することになった。少年の素晴らしい馬がメキシコ人に盗まれ、盗み返した少年とジョン達は逃げる途中で別々になってしまった。ジョンとロリンズはとある山間の牧場にたどりつく。野生の馬を調教するすべを知っているジョンはそこで働くことになる。
―その日の夜十時までにジョン・グレイディは十六頭の馬全部に乗
りロリンズもそれぞれ一度ずつ乗った。火曜日にまた同じように
乗り水曜日の早朝に最初に馴らした馬に鞍をつけてジョン・グレンディが乗りまだ陽の出ないうちに囲い門へ近づいていった。
そこを開けてくれ、ジョン・グレンディがいった。
おれも一頭鞍をつけて伴走するよ。
時間がないぞ。
そいつがおまえを茨の上に放り出したら時間ができるだろうよ。
まあおれは振り落とされないようにしよう。
おれにもこの素晴らしい馬のどれかに鞍をつけてのせろって。
わかったよ。―
牧場主はメキシコ・シティから時々やって来る。馬好きの娘との恋や親切な大叔母との対話も楽しい。
そんな時間が一変する。13歳の少年が捕まり、追手が迫りジョンとロリンズも捕まってしまう。
テキサスとは違ってメキシコは往年の西部開拓時代のような無法地帯だ。そして少年たちは望みとおり往年のカーボーイのように活躍する。全編を貫く馬への愛着が良き時代へのノスタルジーをかき立ている。
この作品は2000年に映画化されている。
解説によれば「越境」「平原の町」と続く国境三部作となる第一作が本書であるという。