正月1日は胡桃(くるみ)
2日は山芋
3日は胡麻(ごま)
すりつぶして雑煮の餅をつけて食べる
東北地方の古い風習
35年も母が頑固に守りとおした
トウガラシはからいで塩サバはしょっぱい
父はどちらもからいだが
新巻鮭にハラコに塩辛
母の好物は絶対にしょっぱい
鳴門のうず潮の灰干しワカメか
三陸海岸の重茂(おもえ)のワカメか
味噌汁ではじまる海の戦い
縄文人だ弥生人だ
アイヌだ熊襲(くまそ)だ渡来人だと
千年の混血を続けたあとで
いまも馴染まない血があるらしい
お国言葉でさし手の争い
ときには勇み足で土がつく
取った手がねえ(無い)と母がぼやけば *
巣も作れんと父が嘆く *
甘いとからいをシェイクする
濃くなったり薄くなったり
ちょっぴり苦いDNAのテイスト
十日戎に小正月
今宵またグラスを合わせるふたり
しばし平穏な時は流れ
からいとしょっぱいを静かに味わっているが
やがてまた古い血が熱くなり
カクテルの味で仕切りなおし
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* 取った手がねえ=どうしてよいかわからない(東北地方の方言)。
* 巣も作れん=どうしようもない(九州地方の方言)。
今でも使われているかどうかは不明です。
(2005)