Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼女のコピー

2014-02-15 01:00:00 | 雪3年3部(新学期~気になるアイツまで)
「また正門側に新しいお店が出来たよーん!」



味趣連代表、伊吹聡美は常に新しいお店を求めて活動中だ。

聡美がスマホで表示したお店を見て、雪はその情熱にいくらか呆れ顔である。

「私も大学通ってる身だけど、周りにどんなお店があるのかなんて全く知らないよ‥」



小さく息を吐く雪だったが、聡美は気にせず「行こ行こ!」とお昼休みに向かう気満々だ。

「ほら口コミもこんなに多いよ!見て、美味しそう!」



その店のHPかグルメのナビか何かを見せる聡美に、雪は冷静に「広告なんだから当然でしょ」と言う。

雪はその広告を見ながら、その口コミ欄の二行に一度は店名が出てくるよう仕組まれていると分析した。

それによって、店の名を上位にヒットするようにしているのだ。



記事をスクロールして見てみると、なるほどわざとらしいほどに店名が強調されていた。

検索結果にも、似たような語り口の口コミや文章が見つかった。雪の鷹の目は鋭い。さすが一流大学経営学部の首席である。

しかし聡美は納得するわけではなく、雪と肩を組み甘えるように揺さぶった。

「ひぃーん!それでも行こうよぉ~!久しぶりにナイフとフォークでガッツリステーキが食べたいの!」



「そうなの?まぁ美味しそうだけど‥」

雪がそう言って聡美の提案に頷いていると、不意に後方に彼女が立っているのに気がついた。

「何が美味しそうなの?」



二人はいきなり現れた清水香織を見て、目玉が飛び出るほど仰天した。

そのまま雪の隣に座る香織に、この授業も一緒かい‥と呟く聡美の肩が震える。



香織はカバンから教科書やノートやらを机の上に出しながら、

雪の方を向いてもう一度「何か美味しいものでも見つけたの?」と聞いた。



雪は聡美が新しく見つけたお店の話題を出しかけるが、隣でそれを遮るように聡美が雪に声を掛ける。

「雪!あたし課題の範囲ド忘れしちゃったから、ちょっと本見せて!」



雪は赤線が引いてある自分の教科書を聡美に見せるが、気にせず香織は質問を続けてくる。

「何?何が美味しそうなの?」



雪は「ステーキを‥」と言いかけるが、次の瞬間強い力で髪の毛を引っ張られた。

「ゆきぃ!このページチェックが二箇所ついてるんだけどぉ?!」



聡美は何とか雪を自分の方へ戻そうと必死である。

しかし香織は切れ切れに雪から引き出した情報を頼りに、二人が話していた内容を推測して言った。

「お昼に行くの?ステーキ美味しそうだなぁ‥」



雪はそんな香織を見て、うぅんと生返事をしながら聡美の方を窺った。

彼女が一緒に行きたがっているのが見え見えだったからだ。



しかし雪は聡美の方を見て絶句した。その答えは負のオーラと共に、強烈なメッセージを伴って雪に送られる‥。

ヤダゼッタイヤダマジでマジでヤダヤダヤダヤダァァァァ



雪はそれ以上何も言えず黙り込んだ。

これ以上何を言えるというのだろう‥。



そんな雪の横で香織は、自分のペンケースを出しながらわざと雪のペンケースを肘に当てた。



円筒形の二つのペンケースは、コロリと机から転げて床に落ちた。

中に入っていたペンが何本も転がり出る。

「あ、ペンケースが‥」 「あ‥!」



雪が床に落ちたそれを拾おうと背を屈めた時、香織は上ずった声で謝りながら椅子から下りた。

すぐ拾うから、と言ってペンに手を伸ばす香織だが、慌てているため上手く拾えない。

「ご、ごめん‥!ごめんね!ああ‥!」



香織は手だけではなく、声まで震えている。

雪は彼女の名前を呼び肩に手を掛けると、親しみのある笑顔を向けて言った。

「何でそんなに謝るの? 大したことじゃないし、そんなに謝らなくて大丈夫だよ。

友達じゃない」




雪の言葉に、香織はハッとした表情を浮かべた後、ニヤニヤと笑みを浮かべた。

「あたしたち‥友達?‥」と呟いて。



ボーっとしている香織の横で雪はペンケースを拾おうと手を伸ばし、あることに気がついた。

「あれ?ペンケースがおんなじ‥」



雪と香織のそれは、色が若干違っているだけで全く同じ物に見えた。

そして雪が次に目にしたのは、自分のと似たような型の、香織が履いているブーツだった。



やはりそういうことなのだろうかと、雪は一人思った。

同じペンケース、似たようなブーツ、似通ったファッション‥。



香織はペンケースを手に取りながら、どこか嬉しそうに口を開く。

「あたしたちって、好みが似てるみたい‥」



そうでしょう?と言って微笑む香織の姿を、雪は全身眼に入るように眺めてみた。

髪型、服、靴、文房具、鞄‥。



そこに居るのは、赤山雪のコピーであった。

雪をよく知らない者は見間違うんじゃないかと思われるような、それはそれはよく研究された模倣‥。



雪の心の中に、小さな刺が刺さったようだった。

それは些細な気がかりだったが、やがて膿んで痛みを大きくするような‥。










一方こちらは四年生ばかりが集められた教室である。

皆の表情はどこか憂鬱そうであり、そして皆ピリピリとどこか神経質な顔をしている。

「四年が集まると空気が淀むよな」 「お前就職した?」



佐藤広隆の耳に、同期たちのそんな会話が耳に入ってきた。

そこここで交わされる就職に関する会話は、聞きたくなくとも自然と耳に入ってきてしまうものだ。



佐藤は今の状況に苛立っていた。

そんな会話は無駄に焦燥感を煽らせるだけだと、心の中で彼らを批判した。

俺はここで妥協しないつもり‥ そこボーナスいくら?‥



将来が見えない漠然とした不安が、教室の空気の中に浮かんでは消える。

そんなモヤモヤとした雰囲気の中で、柳瀬健太が「何とかなるっしょ」と言って笑っている。



佐藤は健太を見て、心の中で呟いた。俺はあの人よりも優れた道を行くと。

四年間ちょっかいを出されつづけ、最早因縁の関係とも言える柳瀬健太。ヘラヘラと笑う彼を、佐藤はじっと見据えた。



そしてもう一人、佐藤の視界に入ってきた男が居た。

同じく四年間、ずっと意識していた男。青田淳だった。



青田淳は皆が戦々恐々と就職に備える空気の中、一人携帯をいじっていた。

隣に座った男が、淳の手元を覗き込む。



その会話の中に、”恋愛”というワードが聞き取れた。

どうやら青田淳は新しく出来た彼女、赤山雪とメールをしているようだった。

後で会いに行くのかという隣の男の言葉に、青田淳は微笑みながら頷いた。



佐藤はその端正な横顔を後方から眺めながら、いけ好かない思いが胸を占拠するのを感じた。

おまけに恋愛までするときた‥。気楽な人生だろうな



青田淳に対して、四年間抱き続けていたもの。

対抗心の底にある、彼に対する劣等感‥。

淳の横顔を見ていると、その疎ましい感情が胸の中で渦を巻く。

佐藤はその気持ちの断片を外に出すように、一人フンと息を吐いた‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼女のコピー>でした。

他人に対する羨望感、劣等感、対抗心‥。

そういった感情が彼女を、そして彼の心を、がんじがらめにしていく‥。そんな回でした。

香織も佐藤も三部を大きく動かす登場人物になります。(おそらく‥) 先が楽しみですね!

次回は<立腹の理由>です。

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路地裏の密談

2014-02-14 01:00:00 | 雪3年3部(新学期~気になるアイツまで)


その後も三人は、ジュウジュウと音を立ててハムを焼き、各々舌鼓を打った。

雪はお箸を口に付けながら、目の前の二人を眺めている。



弟の蓮と、河村氏。

少し前まではこの二人が一緒に居ることなんて想像もつかなかったが、

今彼らは目の前で笑い合っている‥。



それは改めて見ると不思議な光景だった。

雪がじっと二人を見ていると、亮がそんな彼女の視線に気がついて声を掛ける。

「どーした?ジャンジャン食えよ?」「そーだよ姉ちゃん!それ全部食べてよね!」



三人が今一緒にいること、そして雪がその中に含まれていることを何の疑いもなく受け入れている亮と蓮。

雪はそんな今の空気が嬉しくなって、思わず微笑みが漏れた。



それから三人はハムをつつきながら世間話をした。

亮は近所に一人暮らし用の物件を見つけ、そこで生活を始めたと言う。

良い街だと珍しく褒める亮に、そうでしょうと蓮は自分の町を誇って胸を張る。

「仕事はどうですか?」



雪からの質問に、亮は天を仰いでそれに答える。

「おう、まぁ大変ってほどでもねーかな」



そんな亮の態度に、蓮は思わず吹き出した。

「失敗続きで父さんから追い出されかけてたくせにぃ!それで今ハムを‥」



蓮がみなまで言う前に、「うっせーな」と亮が制した。雪はタジタジだ。

すると亮はあることを思い出して、雪の方を向き口を開く。

「あ、そういやお前らの両親のことなんだけどよ。喧嘩でもしてんのか?」



突然の亮からの指摘に、雪はぐっと言葉に詰まった。

思わず目を見開き、そのまま黙り込む。



そんな雪に、亮は尚も気になったことを口に出した。

「見るからに何かあった感じだったんだけどよ。社長もよくいなくなるし‥」



そこまで言ったところで亮は、その場の空気が気まずくなったことに気付いた。

雪も蓮も、苦い顔をして黙り込んでいる。



亮はなぜ二人がそこまで沈黙するのかいまいち分からなかったが、この場の雰囲気に合わせることにした。

「?? 違うんならいーけどよ」



雪はそうとも違うとも言い切れず、とりあえず話題をかえることにした。

今までとはまるで違った話題を、蓮に向かって話し出す。

「あ‥そうだ、蓮!うちの学科の健太先輩って人がね、恵のこと気になってるみたいなんだよ~」



その話を聞いて、蓮は懐かしむような表情で天を仰いだ。

「え~マジで?そういやキンカンって姉ちゃんの大学通ってるんだっけ‥」



蓮は昔のあだ名で小西恵のことを呼んだ。

それは幼い頃から背が低く小さかった恵を、からかい半分で蓮がつけたあだ名だった。

お前なんてキンカンだ! やーいキンカン!



蓮は久々に思い出した記憶に目を細めた。

「へぇ~。ねぇキンカンってモテんの?」

「キンカンって‥。何よその呼び方」



雪は初めて聞く”キンカン”に首を傾げたが、取り合わずに話を続ける。

「とにかくちょっと気になってるのかなって‥。でも開講日の感じからしたらそうでもないような‥。

まだ未練があるような無いような‥」




煮え切らない雪の話に、蓮はハムを口に運びながら曖昧に頷いた。

「ふーん、そーなんだ‥」



雪は関心の薄い蓮の反応を見て、意外な気がして口を開いた。

「何よその反応?あんた恵と同じクラスだったじゃない。連絡取り合ったりしてないの?」



帰って来てから結構経つじゃん、と雪は続けるが、蓮は依然として曖昧に頷くだけだ。

しかし二人の過去を思い返してみれば、お調子者の蓮が恵にちょっかいを出し、何かと喧嘩する姿ばかりを思い出す‥。



雪は蓮と恵の今の状態に納得するように息を吐いた。

「そういえばあんた恵を困らせてばっかだったっけ‥。私が恵でもあんたには連絡しないわ」



姉の言葉に口を尖らせる蓮に、今度は亮が兄貴らしく注意した。

「おいこの野郎!男のくせに何で女を困らせたりすんだ?!ガキくせーことを!」



蓮は二人からの思わぬ説教に顔を顰めたが、

「昔のことだから」と軽く笑って弁解した。



すると急に、蓮は自身のお腹が痛むのを感じた。キリキリとしたその痛みに、思わずうずくまる。

「イタタタ!腹が‥!腹がぁ~~!!」



蓮はそのままマットに横たわり、気持ち悪いと言って大騒ぎした。

呆気に取られる亮と慌てる雪の元に、騒ぎを聞いた母親が駆けつける。

「あんた達ここで何やってんの?!家にも入らずに!」

「お母さん、お腹がぁ~!」



焼いたハムの煙と共に、四人の喧噪は夜空に溶けていく。

半月がその様子を、煌々と照らしていた。












カチャカチャ、とキーボードを叩く音が室内に響く。

同じ頃、横山翔はビールを片手にチャットをしているところだった。

PCの画面にタイプした文字が連なっていく。

うちの学科にクソUzeee野郎がいて、毎日自分が金持ちなのをひけらかしてる。

それを見てると反吐が出そーなんだが、この場合俺はどういう企てをすべきか?




横山は続けて、もう一行書き足した。

ところで突然、その野郎に彼女が出来たらしい。



横山の脳裏に、二人の姿が思い浮かんだ。

思い出すだけで忌々しさを感じる光景だった。



横山はスルメをかじりながら、ネットスラングを交えながら書き込みを続ける。

「んで、見るとその女はうちの学科の男たらしのクソビ◯チで‥」



そんな折、携帯電話が鳴った。母親からだった。

「あ、母さん?俺今レポートやってる。じゃーね」



横山は平然と嘘を吐くと、携帯を置いてビールを飲み干した。

缶を机の上に置いて、再びキーボードを叩き始める。

「俺はそれを見て、やっぱり奴らは似たもの同士だと感じ‥」



クククと肩を揺らして笑う横山だったが、不意にピタと動きを止めた。

「あの二人、くっつきやがって‥。あいつ俺に赤山を勧めておいて‥」



去年の夏休み、青田淳から送られてきた幾つものメールが横山の脳裏を過った。

「人のこと弄びやがって‥!」



暗い視線が、脳裏に浮かぶ彼を射て光った。

横山はその後もネットにて密談を繰り広げた。

もう俺は以前の俺じゃないと、俺は変わったと叫びながら、一人キーボードを叩き続けた‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<路地裏の密談>でした。

最後の横山のチャット、ネットスラングが交えてありもうお手上げ寸前でした‥T T

合ってるのかかなり微妙なので、誤訳だと思われましたらご一報下さい。。

次回は<彼女のコピー>です。

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エプロン姿の君

2014-02-13 01:00:00 | 雪3年3部(新学期~気になるアイツまで)



河村亮は真面目に勤務中だ。ゴミ袋を幾つもゴミ捨て場に捨てる。

もうとっくに日は暮れて、終業まであともう少しである。

「結構力仕事なのな」



そう呟きながら、一人肩を回していた時だった。

店の入り口から、雪の母親の荒ぶった声が聞こえる。

その声はドア近くに佇む雪の父親に向かっているようだった。

「今頃帰って来て何です?!」



「何よ!どうせなら肺ガンになるまで吸ったらどう?!」



一服すると言っては度々外出し、なかなか帰って来ない旦那に苛立っているらしかった。

しかし雪の父親も顔を顰めて言い返す。

「一服が必要な時もあるんだよ!」



いい加減にしろ、と言い捨てて彼は彼女に背を向けた。

大きな足音をたてながら、店の中へと入って行く。



旦那を見る彼女の表情は険しかった。

悔しさを堪えて口元を結ぶ表情は、どこか雪に似ている‥。



亮はそんな二人を窺いながら、どこか不穏な空気を感じ取っていた。

家族というものは、必ずしもいつも円満なわけじゃないー‥。



「あれ?河村氏?」



不意に声を掛けられ振り返ると、そこには雪が立っていた。

亮は普段通り挨拶しかけるが‥

「よぉ!ダメー‥」



しかしふと気になって店の中を覗いた。

雪の両親がこっちを見ていないことを確認する。



‥どうやら大丈夫そうだ。

「‥ージヘアー!」



雪はそんな亮を見て眉を寄せるが、それ以上にその見た目にはインパクトがあった。

「わ!本当にエプロンしてる!似合ってるし!」「ユニホームは必須だろ?」



からかうように笑う雪に対して、亮はその魅惑的な瞳で彼女に語りかける。

「エプロン姿もイケてるだろ?店の売上は全てオレが上げてると言っても過言じゃねぇな」



そのうぬぼれ発言に、思わず雪は白目だ。

なぜ顔のいい男はこうナルシシズムが強いのだろう‥。

恥ずかしくないんですか? 恥ずかしくありませんが何か?



二人は負けじと口喧嘩する。貼り付いたような笑顔を浮かべて。

「仕事頑張ってるんでしょ?何でそんな‥」「知るか弟に聞け」



そして雪は弟の勤務態度を思い返し、遂に降参した。

「勝てっか?」と胸を張る亮に、「まいりました」と俯いて。



「しっかし今帰りかよ?」



そう言って亮は空を見上げてみた。もうとっぷりと日も暮れている。

「お嬢サンがこんな夜遅くに‥」「しょうがないですよ、学校遠いんですもん」

「だったら早く家に帰れよ」「家族皆ここにいるからつい‥」



二人がそんな会話をしながら歩き始めると、後方から蓮が走り寄ってきた。

ニコニコと笑顔を浮かべている。

「姉ちゃん丁度良かった!亮さんが貰った超高級ハムこれから食べるんだ!一緒に行こー!」



そろそろお客さんもいなくなるし、母さんから休憩の許可も貰ってきたと言った蓮に、亮はピースを返す。

「ああ‥(無駄に送料がかかった)あのハムね‥」



遠藤から恩人である亮へのギフト、高級ハム‥。

雪が亮に渡す役目を担っていたが、いつ会えるか分からないと思って宅配で送ったのだ。

こうしてすぐに会えると知っていたら無駄に送料かけて送ることなかったのに‥。



それでも高級ハムの魅力に抗えず、雪はヨダレを垂らした。

そろそろお腹のムシが鳴き出す頃である。

「嫌なら来んな」「行きましょ!」「行きます、行きますよ!」



スタスタ歩き出す亮と蓮の後ろを、雪は小走りでついて行った。

どこへ行くのかと思っていると、二人は思いも寄らない場所に入り始めて‥。







ジュワッと、ハムの焼ける良いにおいが辺りに立ち込める。

ここは、店の隣の細い路地である。

マットを敷いたものの地べたに座り、雪は微妙な気分であった。しかし亮も蓮も気にする素振りは無い。

「あ~いい匂い!やっぱり高級ハムは違うな~!」



そう言って蓮は鉄板の上のハムを裏返した。亮は一人でビールなど飲み干している。

ニコニコ笑いながら蓮が亮に質問した。

「亮さんてナニゲにすごい人なの?」



亮は蓮の質問に、誇らしそうにその高い鼻をさらに高くして答える。

「お前もオレのように真面目に生きてれば、寝ててもハムが送られてくるってもんよ」



兄貴からの訓えに蓮は威勢よく返事をして、雪は微妙な表情で沈黙する。

笑い合う二人の間で、雪はそわそわとした気分だった。

「けどこんなとこでこんなことして大丈夫なの?しかも野外で‥」



心配を口にする雪に、亮は「お前の親戚の敷地内だし、ゴミだけ片せば大丈夫っしょ」と余裕だ。

蓮はハムをひっきりなしに投入しながら、賞味期限が近いから早く食べてと言って各々の皿に焼けたハムを乗せて行く。

た‥食べればいいんでしょ‥



そう言いながら雪は、ハムを口に運んだ。

柔らかなそのお肉を、モグモグと咀嚼する。



「‥遠藤さん奮発したんだなぁ」「ね!超ウマーイ!」「クックック‥」



超高級ハムというだけあって、それはそれは美味なお肉だった。

そのまま雪達三人は、路地裏に煙を立てながら夢中でハムをつつき合ったのだった‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<エプロン姿の君>でした。

亮、エプロン似合ってますね!

しかし路地裏で焼き肉(焼きハム?)とは‥!初めて見た時衝撃でした。韓国では普通なんですかね?


次回は<路地裏の密談>です。


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軍配

2014-02-12 01:00:00 | 雪3年3部(新学期~気になるアイツまで)
「おやおや~~?」



ニヤニヤと笑いながら、健太は佐藤に近付いた。

新品のノートPCに、ベタベタと指紋をくっつける。

「また新品か?ウルトラブック?こりゃ~高かっただろ~?」



そんな健太を前にして、佐藤の顔は見る見る歪んでいった。

その態度に辟易といった表情だ。



健太は嫌がる佐藤に構わず、PCに手を伸ばした。

「これが新しく出たZシリーズかぁ?」



佐藤は曖昧な返事をしながら、一度机の上に出したPCを再びカバンの中に入れた。

その態度に健太が不満を漏らす。

「んだよケチ!見せてもくんねーのか?!」



佐藤は健太に応えることなく、そのままむっつりと黙り込んだ。

お前が壊すから新しいのを買わなきゃいけなくなるんだろーが、と怒り心頭だ。




すると教室に一人の男が入ってきた。

その姿を見て、健太が顔を上げる。

「よぉ、青田!」



健太が声を掛けると、青田淳は柔らかな笑みを返した。

しかしその表情はいつもより幾らか硬い。



昨日、淳に食って掛かった健太のことが思い出された。

あの時の健太は怒りの形相で、淳のことを問い詰めた‥。



しかし今日の健太は、にこやかに大きな声で淳に挨拶した。

淳も小さく会釈してそれを返す。



健太は一つ咳払いをすると、「お前に話がある」と言って、淳の目の前に立った。

「昨日は大人げないとこ見せちまって‥。突然ついカッとしちまってよ」



健太は居心地悪そうに頭を掻いて、大きな声で笑った。バンバンと淳の肩を叩く。

「先輩らしくなかっただろ?でもお前は分かってくれるよな!こんなこと一度や二度じゃねーし、

俺が結構恵ちゃんのこと気にしてたのも知ってたろーし‥」




頷く淳に向かって、健太はもう一度ハッキリと謝った。

「なんか‥悪かったな!」



そんな健太に、淳はにこやかに応えた。

「大丈夫ですよ、謝罪なんて」



健太は再び淳の背中をバンバンと叩きながら言った。

「まぁ、あんま気にすんな!な?」 



健太の言葉に、淳は「はい、気にしていません」と言って微笑んだ。

それじゃ、と言って健太に背を向ける。



健太の顔には笑顔が浮かんではいたが、その胸中はいけ好かない思いでいっぱいだった。

互いに席に着いた後も、健太は淳のスマートな横顔を見ながらむっつりと黙りこんでいた。

 

先ほど自分が謝罪した後で、淳からの謝罪も聞けると思っていた。

「健太先輩が先に目をつけた恵を奪って申し訳ない」 「先輩を立てなくてすみません」

何か一言だけでも。



新学期に入って、青田淳は赤山雪と付き合っていることが発覚した。

なぜ小西恵を蹴って赤山と付き合っているのか、まだ淳の口から正式に話すら聞いていない‥。



健太の心に、次第に淳への不信が募っていく。

苛立ちを抱えながら淳を見ていた健太だったが、ふとある物が目に入った。



それは見慣れない時計だった。

淳がいつもしていたのは、ブルガリだったはずだ。



健太の心がある意図を持って騒ぎ始めた。

彼は心を決めると、一際大きな声で淳に声を掛ける。

「おっ!お前時計変えた?!いや〜かっこいいね。どこのやつ?」



健太の大声に、教室中の視線が淳の腕時計に注がれた。

沢山の視線を感じながら、健太はこれみよがしにその一言を口にした。

「高いやつなんだろ?な?」



ここで淳が時計のブランドと値段を答えることで、皆の心には嫉妬が湧くはずだ。

それか答えに詰まり、困った顔でも浮かべるか?

何にせよ淳に一泡吹かせたいと思っての、健太の一言だった。



しかし健太の思惑とは外れ、淳は意味深な笑みを浮かべた。

それは皆が淳を取り囲むまでの一瞬の表情だったが、健太をドキリとさせるには有効な時間だった。

「見せて!」 「また買ったん?」



淳は皆に見せるように腕時計を掲げながら、ニッコリと笑顔を浮かべて言った。

「これ良いでしょう?雪と露店を見て回ってたんですが、

彼女がサプライズプレゼントでくれたんです」




予想外の淳の発言に、皆驚いて声を上げた。健太も思いも寄らない答えに、思わず驚愕の表情を浮かべる。

「ゲッ!マジかよ!」 「ノロケテロだー!」 



教室はザワザワとざわめいた。

淳を取り囲む男子生徒は勿論、それより外に居る皆も淳の方を見ている。

「お前マジ時計好きな〜」



柳の感想は置いといて、皆の反応は上々だった。露店の物なのにそこまで安物っぽく見えない、と皆口々にその時計を褒める。

「値段は重要じゃないから」と言った淳の答えも好感を感じるものだった。



健太は幾分赤面しながら、一人歯噛みしていた。

これでは値段を聞いた自分が、さもしい人間のように思われても仕方ない‥。

謝罪についても、時計の件に関しても、軍配は淳に上がった。


健太は苛立つ気持ちを抱えながら、彼に対しての不信を一層募らせていく‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<軍配>でした。

健太と淳の駆け引きを感じる回でした。

健太レベルの突発的な思惑になど、先輩は引っかからないですね^^;

そして何気に先輩のジーンズ姿って珍しいですね。


次回は<エプロン姿の君>です。

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黒幕

2014-02-11 01:00:00 | 雪3年3部(新学期~気になるアイツまで)
右隣に聡美、左隣りに香織、という状態で授業はスタートした。

雪は熱心にペンを動かす。



すると聡美が雪の方にメモを寄越した。それにはこう書いてあった。

あの子いきなり馴れ馴れしく何なの?!ムカつくんだけど!



聡美の方を窺うと、

顔を顰めてプリプリと怒っていた。



雪はそんな彼女を見ながら、

何で‥挨拶しただけじゃんと返した。



それを見た聡美は速攻ペンを走らせる。

あんた先学期あの子のせいでD取らされたの忘れたの!?

しかもあの子整形したんじゃない?




聡美の刺々しい言葉の数々に、

雪も思わず冷や汗だ。



幾分困惑しながら雪は自分の気持ちを書いた。

そうかもしれないけど、別にいいんじゃない



それを見た聡美が文字を書き殴る。

よく分かんないけど何かムカつく、と。



聡美はあっかんべーのように目を広げながら、自分も目はいじったことがあると雪に見せる。

「元々目は大きかったけどね!」



「あっそ‥」と言って雪は聡美を宥めた。

もういい加減にして授業に集中しなさい、と。



溜息を吐く雪を見て、香織が雪の方を向く。

雪は誤魔化すように笑顔を浮かべ、それを見た香織も笑顔を浮かべる。



何とか聡美の敵意はバレてないようだ。

雪は安堵の息を吐きながらも、先ほど太一の横に居た男が言ったことの方が気にかかっていた。

横山か‥






「行こ!」 「行こ!」



授業が終わり、雪と聡美は速攻でノートとテキストを片して席を立った。

香織に手を振って別れを告げると、そのスピードに香織はアタフタと戸惑った。



廊下に出ると既に太一が二人を待っており、聡美の顔を見るとポツリと呟いた。

「何で横山先輩がそんな変な噂を流すのかさっぱりっすネ」



「やっぱイカれてんのよ!」と言って聡美がプリプリと怒っていると、太一は無表情のまま言葉を続けた。

「俺が聡美さんを好きなこと、皆知らないんすかネ?」



「態度に出てないっすかねぇ」と淡々と続ける太一を見て、聡美は自分の顔が赤らむのを感じた。

今聡美は太一から、二度目の告白をされたようなものだ。



「何言ってんのと声を荒げる聡美だったが、廊下の先に横山翔の後ろ姿を見つけた。

ポケットに手を突っ込んで、一人悠々と歩いている。この噂の出どころ、この誤解の黒幕だ。



雪達はその後ろ姿を睨んだ。聡美は唸ってもいる。

変な噂を流して飄々としている横山に、言い知れぬ怒りを感じた。



そのまま三人は横山を追いかけた。

ちょっと待ちなさいよと言いながら小走りで進む。



遅れて教室を出てきた清水香織が雪に声を掛けようとしたが、気付かれなかった。

香織は一人暗い表情を浮かべながら、ガリッと爪を噛んだ‥。




「横山!」「ちょっとあんた!」



横山翔は後ろから声を掛けられていたが、知らぬフリをした。

追ってくる雪と聡美、そして太一の方に振り返ってもみたがすぐに無視して背を向けた。



その態度にますます聡美は腹を立てたが、横山は鼻歌を歌い始めると一人の女性に接近した。

このたび学科代表となった直美さんだった。



横山は直美の持っている本を取り上げると、

「直美さんお久しぶりっす」と挨拶した。



直美は突然現れた横山に驚いていた。

後ろから聡美達がずっと横山の名前を呼んでいることも気になる‥。

しかし横山は「気にしないで下さい」と言うと、直美に向けて視線を流した。

「どこまで運ぶんです? 俺持ちますよ。重いでしょ?」



意味深な横山の眼差しに、直美はつい顔を赤らめた。

「あ‥C館まで‥」



それから二人は連れ立って歩いて行った。

横山は直美が学科代表に就任したことを祝い、何かあったら俺に連絡して下さいと申し出る。



直美は戸惑いながらも頷いた。突然の横山の接近に動揺しながらも、悪い気はしていないようだ。

雪達三人は、そんな様子を見てあんぐりと口を開けていた。



二人の後ろ姿が見えなくなると、聡美は怒りの叫びを上げ、それを太一がたしなめる。

雪は一人考えに耽っていた。

こっちが去年のこと言わないからって調子に乗ってるのか‥?

それでもストーキングの件は無闇に言えない‥




去年横山からしつこくつきまとわれたことは、雪にとっても忘れたい過去だった。

それでもこちらがそれを口にしないのをいいことに、おかしな噂を流すのなら黙っていられない‥。

そんなジレンマが雪を悩ます。

「ムカつくゥゥゥ~~!!」



廊下に聡美の絶叫が響き渡る。

心の中ではザワザワと、不穏な感情が胸を騒がせる‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<黒幕>でした。

聡美ちゃんも目をいじってるんですね。新たな発見でした。

そして淡々と告白する太一、いいですね~!赤くなる聡美もいい!

上手くいってほしいです^^


次回は<軍配>です。

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