「な、何するんですか?!」

淳の彼女が、声を震わせながらそう叫ぶ。視線の先には、河村静香の姿があった。
「何言ってんの?あたしが何か?何ってどーゆー意味?何ってなんなの?」
「そっちが足掛けて来たんでしょう?!」

しらばっくれる静香に対して、彼女は反論した。しかし静香は平然とした顔で、「証拠でもあんの?」と言い返す。
彼女は顔を青くしながら、静香に向かって声を上げた。
「あ‥あなたが淳君につきまとって彼の元カノさん達をいじめてたの、知っていますから!
あたしには効きませんよ?!全部淳君に言って‥」 「ふーん。あっそ」

必死になって声を荒げる彼女の前で、静香は適当な相槌を打ちながら携帯を取り出す。
そして静香は呆れたような顔をしながら、彼女に言い返した。
「元カノ達が理由も無しに、ただサンドバックになったとでも思ってるの?
彼女の座を射止めると、ちょっと特別になったように感じちゃうのねぇ」

ふっと息を吐きながら静香が紡いだ言葉の意味を、彼女は図りかねた。
しかし彼女が口を開くより先に、静香は電話をし始める。
「もしもし?あ、淳ちゃん~。あたしちょっと身体がだるくって‥
うん、熱があるみたい。さっきまで大丈夫だったんだけど‥風邪引いたかも‥」

ケホッケホッと、静香は偽の咳をしながら淳に電話を掛けた。身体の具合が悪いという芝居を打つ。
「学校終わった後で、家まで送ってくれる?吐いたから気持ち悪くって‥」
「そんなに酷いの?」 「そんなにではないけど‥」

静香はしおらしい芝居を続けながら、悲しそうな声で淳にこう聞いた。
「あ‥でも今日約束あるのよね?彼女と‥」「いや大丈夫だよ。ちょっと延期してもらうさ」

ごめんねぇ、と返す静香に向かって淳は、淡々とした声のトーンでこう返した。
静香はそれがよく聞こえるよう、彼女の目の前に携帯を翳して淳の声を聞かせる。
「俺が上手く言っておくよ」

彼は平然と、彼女に嘘を吐くと静香に言う。何の罪の意識も感じられない、普段通りの声のトーンで。
「それじゃ後で病院連れてくよ」「うん、分かった。ありがとね~それじゃ後で~」

固まっている彼女に、静香は人差し指を出して見せた。
「ほらね、」と勝ち誇った気持ちが静香の胸の中を締める。

そして静香は電話を切ると、鼻歌を歌いながらその場から駆けて行った。
身動きも取れない彼女をその場に残して。

放課後になり、淳と静香は待ち合わせの場所にそれぞれ向かった。
先に来ていた静香の様子を、淳は疑心の込もった眼差しで見ている。

そこで待っていた静香は、およそ病人とは思えぬ様子でそこに立っていたからだ。
血色も良いし、どこか嬉しそうな顔をして、淳に向かって手を挙げる。

淳は静香に近寄ると、一言こう聞いた。
「具合悪いんじゃないの」

静香は淳の問いに対して、「あ‥」と声を漏らしたきり何も言わなかった。
淳は静香の嘘を知り、彼女のことを冷めた目で見下ろす。

淳は溜息を吐きながら、それでも彼女の芝居に付き合うことにした。
「それじゃ病院に‥」と歩き出そうとした淳の腕を、静香が両手で掴んで引き止める。

静香は真っ直ぐ淳のことを見上げながら、微かに微笑んでこう言った。
「ううん、それより話があるんだけど‥」

その静香の言葉に、淳はキョトンとした表情を浮かべ、聞き返した。
「話?」

それに対して静香は下を向き、恥じらいながら言葉を続ける。
「うん‥もうそろそろ落ち着いてくれたら嬉しいんだけど‥」

しかし淳にはその意味が飲み込めなかった。オウム返しで聞き返す。
「落ち着くって?」

その淳の鈍感さに、静香はイラッとして目を開けた。

静香は腕組みをすると、幾分呆れたような表情でこう言葉を続ける。
「淳ちゃんさぁ‥いつまで知らないフリしてんの?どーせまたあの子とも別れるクセに!」

その静香の言葉を聞いて、淳はニヒルな笑みを浮かべた。
静香にしか見せない黒い微笑み。
「あ‥ちょうど今さっきね。誰かさんのお陰でさ。あんまり悪戯してんなよ」

彼女と淳が別れたことを知って、静香はククッと意地悪く笑った。
今まで淳が付き合ったどんな彼女にも、こういったことを仕掛けるとほぼ間違いなく破局する。
それを知っての静香の行動だったのだ。
静香は呆れたような表情を浮かべながら、諭すように淳に話し掛ける。
「どーせ好きで付き合ってたわけじゃないんでしょ。彼女の方が先に寄って来たのよね?」

静香の言葉が図星だった淳は、目を逸らしながら唇を尖らせた。
するとそれきり黙った淳の前で、静香も彼から目を逸らしながら何かを躊躇っている。

やがて静香は頭を掻きながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
今まで胸に秘め続けてきた、その柔らかな純情を。
「淳ちゃんさぁ‥好きでも無い女の子と付き合わずに、あたしに落ち着いたらダメなのかな。
それならあたしも‥おとなしくしていられると思う。もう学校で問題を起こすのも止めたいし‥」

そして静香は顔を上げ、真っ直ぐ淳の方を見つめた。
彼女の本当の気持ちが、色素の薄いその瞳いっぱいに光っていた。
「あたし、淳ちゃんのこと好きなんだ」

その静香の告白に淳はキョトンとし、「え?」と聞き返した。
静香は照れたように、キャッと言いながら続ける。
「だ~か~らぁ!昔っから!」

そして静香は恥じらうように口元に手を当てながら、温めて来たその思いを口に出す。
「初めて会った時からなの‥」

静香のその表情は本物だった。言葉に出したその気持ちも。
すると淳も彼女の告白に対して、本当の気持ちが顔に出た。
「はぁ??」

淳は変な言葉でも聞いたかのように、眉を寄せながらそんな声を出した。
それは思いの込もった告白を受けた時のリアクションとは程遠いものだったが、
それが青田淳の真実の気持ちだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>高校時代(12)ーニ人の関係ーでした。
静香からの告白‥。彼女もこんなピュアな表情をするのですね‥。
それに対しての淳のあの反応‥。この先、波乱の予感しかしません‥orz
そしてそして
ブログを初めてから494日、遂に本家に追いついてしまいました‥!!

ここまで長かったような、短かったような‥。じーん‥。
最初は毎日更新なんてムリだろうなと思っていましたが、どうにかここまで途切れることなくやって来ることが出来ました。
これも皆さんの励ましのお陰です。今まで温かく見守って頂き、本当に本当にありがとうございました‥(T T)

さてこれからは、本家が更新された週の内にその話の分の記事を、次の更新分が来るまでにアップ出来たら‥と思っております。
つまり本家更新が水曜の深夜ですので、次の水曜の深夜までにはその回の記事をアップする、と。
毎日更新は途切れますが、週単位では追いつくようにして行きますので、
どうぞこれからもご贔屓のほどよろしくお願いします‥
次回<亮と静香>高校時代(13)ー柔らかな純情ー です。
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています~!

淳の彼女が、声を震わせながらそう叫ぶ。視線の先には、河村静香の姿があった。
「何言ってんの?あたしが何か?何ってどーゆー意味?何ってなんなの?」
「そっちが足掛けて来たんでしょう?!」

しらばっくれる静香に対して、彼女は反論した。しかし静香は平然とした顔で、「証拠でもあんの?」と言い返す。
彼女は顔を青くしながら、静香に向かって声を上げた。
「あ‥あなたが淳君につきまとって彼の元カノさん達をいじめてたの、知っていますから!
あたしには効きませんよ?!全部淳君に言って‥」 「ふーん。あっそ」

必死になって声を荒げる彼女の前で、静香は適当な相槌を打ちながら携帯を取り出す。
そして静香は呆れたような顔をしながら、彼女に言い返した。
「元カノ達が理由も無しに、ただサンドバックになったとでも思ってるの?
彼女の座を射止めると、ちょっと特別になったように感じちゃうのねぇ」

ふっと息を吐きながら静香が紡いだ言葉の意味を、彼女は図りかねた。
しかし彼女が口を開くより先に、静香は電話をし始める。
「もしもし?あ、淳ちゃん~。あたしちょっと身体がだるくって‥
うん、熱があるみたい。さっきまで大丈夫だったんだけど‥風邪引いたかも‥」

ケホッケホッと、静香は偽の咳をしながら淳に電話を掛けた。身体の具合が悪いという芝居を打つ。
「学校終わった後で、家まで送ってくれる?吐いたから気持ち悪くって‥」
「そんなに酷いの?」 「そんなにではないけど‥」

静香はしおらしい芝居を続けながら、悲しそうな声で淳にこう聞いた。
「あ‥でも今日約束あるのよね?彼女と‥」「いや大丈夫だよ。ちょっと延期してもらうさ」

ごめんねぇ、と返す静香に向かって淳は、淡々とした声のトーンでこう返した。
静香はそれがよく聞こえるよう、彼女の目の前に携帯を翳して淳の声を聞かせる。
「俺が上手く言っておくよ」

彼は平然と、彼女に嘘を吐くと静香に言う。何の罪の意識も感じられない、普段通りの声のトーンで。
「それじゃ後で病院連れてくよ」「うん、分かった。ありがとね~それじゃ後で~」

固まっている彼女に、静香は人差し指を出して見せた。
「ほらね、」と勝ち誇った気持ちが静香の胸の中を締める。

そして静香は電話を切ると、鼻歌を歌いながらその場から駆けて行った。
身動きも取れない彼女をその場に残して。

放課後になり、淳と静香は待ち合わせの場所にそれぞれ向かった。
先に来ていた静香の様子を、淳は疑心の込もった眼差しで見ている。

そこで待っていた静香は、およそ病人とは思えぬ様子でそこに立っていたからだ。
血色も良いし、どこか嬉しそうな顔をして、淳に向かって手を挙げる。

淳は静香に近寄ると、一言こう聞いた。
「具合悪いんじゃないの」

静香は淳の問いに対して、「あ‥」と声を漏らしたきり何も言わなかった。
淳は静香の嘘を知り、彼女のことを冷めた目で見下ろす。

淳は溜息を吐きながら、それでも彼女の芝居に付き合うことにした。
「それじゃ病院に‥」と歩き出そうとした淳の腕を、静香が両手で掴んで引き止める。

静香は真っ直ぐ淳のことを見上げながら、微かに微笑んでこう言った。
「ううん、それより話があるんだけど‥」

その静香の言葉に、淳はキョトンとした表情を浮かべ、聞き返した。
「話?」

それに対して静香は下を向き、恥じらいながら言葉を続ける。
「うん‥もうそろそろ落ち着いてくれたら嬉しいんだけど‥」

しかし淳にはその意味が飲み込めなかった。オウム返しで聞き返す。
「落ち着くって?」

その淳の鈍感さに、静香はイラッとして目を開けた。

静香は腕組みをすると、幾分呆れたような表情でこう言葉を続ける。
「淳ちゃんさぁ‥いつまで知らないフリしてんの?どーせまたあの子とも別れるクセに!」

その静香の言葉を聞いて、淳はニヒルな笑みを浮かべた。
静香にしか見せない黒い微笑み。
「あ‥ちょうど今さっきね。誰かさんのお陰でさ。あんまり悪戯してんなよ」

彼女と淳が別れたことを知って、静香はククッと意地悪く笑った。
今まで淳が付き合ったどんな彼女にも、こういったことを仕掛けるとほぼ間違いなく破局する。
それを知っての静香の行動だったのだ。
静香は呆れたような表情を浮かべながら、諭すように淳に話し掛ける。
「どーせ好きで付き合ってたわけじゃないんでしょ。彼女の方が先に寄って来たのよね?」

静香の言葉が図星だった淳は、目を逸らしながら唇を尖らせた。
するとそれきり黙った淳の前で、静香も彼から目を逸らしながら何かを躊躇っている。

やがて静香は頭を掻きながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
今まで胸に秘め続けてきた、その柔らかな純情を。
「淳ちゃんさぁ‥好きでも無い女の子と付き合わずに、あたしに落ち着いたらダメなのかな。
それならあたしも‥おとなしくしていられると思う。もう学校で問題を起こすのも止めたいし‥」

そして静香は顔を上げ、真っ直ぐ淳の方を見つめた。
彼女の本当の気持ちが、色素の薄いその瞳いっぱいに光っていた。
「あたし、淳ちゃんのこと好きなんだ」

その静香の告白に淳はキョトンとし、「え?」と聞き返した。
静香は照れたように、キャッと言いながら続ける。
「だ~か~らぁ!昔っから!」

そして静香は恥じらうように口元に手を当てながら、温めて来たその思いを口に出す。
「初めて会った時からなの‥」

静香のその表情は本物だった。言葉に出したその気持ちも。
すると淳も彼女の告白に対して、本当の気持ちが顔に出た。
「はぁ??」

淳は変な言葉でも聞いたかのように、眉を寄せながらそんな声を出した。
それは思いの込もった告白を受けた時のリアクションとは程遠いものだったが、
それが青田淳の真実の気持ちだった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>高校時代(12)ーニ人の関係ーでした。
静香からの告白‥。彼女もこんなピュアな表情をするのですね‥。
それに対しての淳のあの反応‥。この先、波乱の予感しかしません‥orz
そしてそして

ブログを初めてから494日、遂に本家に追いついてしまいました‥!!


ここまで長かったような、短かったような‥。じーん‥。
最初は毎日更新なんてムリだろうなと思っていましたが、どうにかここまで途切れることなくやって来ることが出来ました。
これも皆さんの励ましのお陰です。今まで温かく見守って頂き、本当に本当にありがとうございました‥(T T)


さてこれからは、本家が更新された週の内にその話の分の記事を、次の更新分が来るまでにアップ出来たら‥と思っております。
つまり本家更新が水曜の深夜ですので、次の水曜の深夜までにはその回の記事をアップする、と。
毎日更新は途切れますが、週単位では追いつくようにして行きますので、
どうぞこれからもご贔屓のほどよろしくお願いします‥

次回<亮と静香>高校時代(13)ー柔らかな純情ー です。
人気ブログランキングに参加しました


