翌日横山は登校したが、ずっとソワソワ落ち着かなかった。
キョロキョロと辺りを見回して、進む足が先を躊躇う。

やがて横山は意を決して教室へと入ったが、別段変わったところはなさそうだった。
誰も変な視線を送って来ないし、仲間は普段通り横山に挨拶して来る。

横山はホッとして息を吐くと、自分の取り越し苦労だったと胸を撫で下ろした。
あそこは毎日数十のスレッドが上がる巨大掲示板だ。同じ学科の人間が偶然あのスレを目にする可能性は低い‥。
「おい横山!」

しかしいざ声を掛けられると、横山は過剰反応して声を荒げた。
「何だよ!俺がどうしたって?!」

仲間達はそんな横山に戸惑いながら、昨日の出来事について言及する。
「お前昨日路上で人殴ったって‥」

友人が確認して来たのは、昨日構内にて発生した揉め事についてだった。
横山の脳裏にふとその一コマが蘇る。

横山はニッコリと笑顔を浮かべると、友人達に向かって軽い調子で弁解を始めた。
「あーそれは誤解だって!ちょっとふざけてただけ~俺がそんなヤバイ奴に見えっか~?
昔のダチなんだけど、あまりにも悪ふざけすっからよぉ~!」

横山の言葉を聞いた仲間達は、安心したように笑顔を浮かべ、その言葉を信じた。
横山は念の為、彼等に一つ釘を刺す。
「当然だけど、それでも動画とか上げんなよ?誤解されっからさ」

仲間は「OK」と言うと、納得して去って行った。
横山は胸を撫で下ろすと、ニヤリと口角を歪めて一人嗤う。
そうだよな‥見る奴居るかもしんねーけど、それが何だよ。
俺と赤山のことがバレたところで、それがあいつらにとって何になる?余計な心配なんて要らねーわ

ニヤつく横山。そんな彼の姿を見つけた直美が、横山に駆け寄った。横山はうんざりとした表情を浮かべる。
「翔!授業始まっちゃうよ?早く行こ!」「へーへー」

そしてそんな二人の後方から、赤山雪が教室へと入って来た。
雪は重い足取りで、鳴らない携帯を浮かない表情で眺めている。

雪が暫しその場で佇んでいると、先生が入って来て着席を促した。
もう授業開始時刻なのだ。聡美が大きく手招きをして雪を呼ぶ。
「ちょっと雪!早く座んな!」

聡美は隣に座った雪を見て、そのやつれ具合に驚いた。二人はヒソヒソ声で会話する。
「なんで遅れたの?てかどうしちゃったのよその顔は!」
「あ‥あんまり眠れなくて‥」

まだお喋りを続けたいところだったが、既に授業は開始されている。雪は黙って前を向いた。
そして座っている雪の姿を、横山は離れた席からじっと見つめる。

彼女の目の下にはくまがあり、明らかに何かに悩んでいる風だった。
授業も上の空で、溜息ばかりを吐いている。

横山はそれを見て、事態の展開を推測して笑みを浮かべた。
あの写メ見たな‥。これでも二人が別れなければ、あれを学科全体に広めてやる‥。
まぁ既にあの写真一つで青田の二股は確定なんだけどね~。別れなくても青田はとんだ恥晒しって寸法よ

横山は不敵な笑みを浮かべながら、計画通りに物事が運んでいる現状に満足していた。一人心の中で考えを進める。
青田さえいなくなれば、赤山の周りに居る目ぼしい男は俺だけだ。
それでゲームセット!

横山の頭の中にある、勝利の方程式。
しかしとある人物の存在が、その方程式が答えに辿り着くのを唐突に阻んだ。
いや‥あのヤンキー男が‥

脳裏に浮かんだのは、度々現れるあの素行の悪い男の姿だった。
夏頃から赤山の周りをウロチョロとあの野郎‥

あん時俺に暴力振るいやがって‥。そんで昨日も‥!そういえば頻繁に遭遇して‥。

そこまで考えたところで、横山の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
‥!俺を追いかけて、写真撮ったんだあの野郎‥あのヤンキーが‥!

昨夜目にした自分の写真の数々。
あれらを撮った真犯人はあのヤンキー男なのだと横山は思い至ると、怒りのあまり小さく震え出した。
やっと青田を片づけたと思ったら!またもや邪魔者が‥!クソッ‥

すると横山は恨みの篭った目で雪の方を睨んだ。心の中が怒りで燃える。
赤山‥!あいつ、誰それ構わずはべらせやがって‥!しかも俺を攻撃する連中ばっかり‥!
どんだけお高くとまってんだよ!!

横山の怒りの矛先は雪へと向かった。
様々な男を飼い慣らしながら、自分にも気がある素振りをする雪に腹が立った。
一難去ってまた一難‥。思い通りにならない現状に、イライラが募って行く。

横山は今にも席を立って雪を問い質したい気持ちでいっぱいだったが、
ギリギリのところでそれを理性でセーブしていた。横山はイラつく気持ちを、頭を抱えて堪えている。

そしてそんな横山の姿を、一人冷静に観察している男が居た。
福井太一である。

太一はじっと横山のことを見ていた。
なぜ彼がここまで苛ついているのか、彼には思い当たるフシがある‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<一難去ってまた一難>でした。
横山の考えがぶっ飛びすぎて今更ながら愕然‥。
どうやったら雪が自分に気があると思えるのか‥スーパーポジティブですね‥^^;
次回は<現れた虎>です。
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キョロキョロと辺りを見回して、進む足が先を躊躇う。

やがて横山は意を決して教室へと入ったが、別段変わったところはなさそうだった。
誰も変な視線を送って来ないし、仲間は普段通り横山に挨拶して来る。

横山はホッとして息を吐くと、自分の取り越し苦労だったと胸を撫で下ろした。
あそこは毎日数十のスレッドが上がる巨大掲示板だ。同じ学科の人間が偶然あのスレを目にする可能性は低い‥。
「おい横山!」

しかしいざ声を掛けられると、横山は過剰反応して声を荒げた。
「何だよ!俺がどうしたって?!」

仲間達はそんな横山に戸惑いながら、昨日の出来事について言及する。
「お前昨日路上で人殴ったって‥」

友人が確認して来たのは、昨日構内にて発生した揉め事についてだった。
横山の脳裏にふとその一コマが蘇る。

横山はニッコリと笑顔を浮かべると、友人達に向かって軽い調子で弁解を始めた。
「あーそれは誤解だって!ちょっとふざけてただけ~俺がそんなヤバイ奴に見えっか~?
昔のダチなんだけど、あまりにも悪ふざけすっからよぉ~!」

横山の言葉を聞いた仲間達は、安心したように笑顔を浮かべ、その言葉を信じた。
横山は念の為、彼等に一つ釘を刺す。
「当然だけど、それでも動画とか上げんなよ?誤解されっからさ」

仲間は「OK」と言うと、納得して去って行った。
横山は胸を撫で下ろすと、ニヤリと口角を歪めて一人嗤う。
そうだよな‥見る奴居るかもしんねーけど、それが何だよ。
俺と赤山のことがバレたところで、それがあいつらにとって何になる?余計な心配なんて要らねーわ

ニヤつく横山。そんな彼の姿を見つけた直美が、横山に駆け寄った。横山はうんざりとした表情を浮かべる。
「翔!授業始まっちゃうよ?早く行こ!」「へーへー」

そしてそんな二人の後方から、赤山雪が教室へと入って来た。
雪は重い足取りで、鳴らない携帯を浮かない表情で眺めている。

雪が暫しその場で佇んでいると、先生が入って来て着席を促した。
もう授業開始時刻なのだ。聡美が大きく手招きをして雪を呼ぶ。
「ちょっと雪!早く座んな!」

聡美は隣に座った雪を見て、そのやつれ具合に驚いた。二人はヒソヒソ声で会話する。
「なんで遅れたの?てかどうしちゃったのよその顔は!」
「あ‥あんまり眠れなくて‥」

まだお喋りを続けたいところだったが、既に授業は開始されている。雪は黙って前を向いた。
そして座っている雪の姿を、横山は離れた席からじっと見つめる。

彼女の目の下にはくまがあり、明らかに何かに悩んでいる風だった。
授業も上の空で、溜息ばかりを吐いている。

横山はそれを見て、事態の展開を推測して笑みを浮かべた。
あの写メ見たな‥。これでも二人が別れなければ、あれを学科全体に広めてやる‥。
まぁ既にあの写真一つで青田の二股は確定なんだけどね~。別れなくても青田はとんだ恥晒しって寸法よ

横山は不敵な笑みを浮かべながら、計画通りに物事が運んでいる現状に満足していた。一人心の中で考えを進める。
青田さえいなくなれば、赤山の周りに居る目ぼしい男は俺だけだ。
それでゲームセット!

横山の頭の中にある、勝利の方程式。
しかしとある人物の存在が、その方程式が答えに辿り着くのを唐突に阻んだ。
いや‥あのヤンキー男が‥

脳裏に浮かんだのは、度々現れるあの素行の悪い男の姿だった。
夏頃から赤山の周りをウロチョロとあの野郎‥

あん時俺に暴力振るいやがって‥。そんで昨日も‥!そういえば頻繁に遭遇して‥。


そこまで考えたところで、横山の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
‥!俺を追いかけて、写真撮ったんだあの野郎‥あのヤンキーが‥!

昨夜目にした自分の写真の数々。
あれらを撮った真犯人はあのヤンキー男なのだと横山は思い至ると、怒りのあまり小さく震え出した。
やっと青田を片づけたと思ったら!またもや邪魔者が‥!クソッ‥

すると横山は恨みの篭った目で雪の方を睨んだ。心の中が怒りで燃える。
赤山‥!あいつ、誰それ構わずはべらせやがって‥!しかも俺を攻撃する連中ばっかり‥!
どんだけお高くとまってんだよ!!

横山の怒りの矛先は雪へと向かった。
様々な男を飼い慣らしながら、自分にも気がある素振りをする雪に腹が立った。
一難去ってまた一難‥。思い通りにならない現状に、イライラが募って行く。

横山は今にも席を立って雪を問い質したい気持ちでいっぱいだったが、
ギリギリのところでそれを理性でセーブしていた。横山はイラつく気持ちを、頭を抱えて堪えている。

そしてそんな横山の姿を、一人冷静に観察している男が居た。
福井太一である。

太一はじっと横山のことを見ていた。
なぜ彼がここまで苛ついているのか、彼には思い当たるフシがある‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<一難去ってまた一難>でした。
横山の考えがぶっ飛びすぎて今更ながら愕然‥。
どうやったら雪が自分に気があると思えるのか‥スーパーポジティブですね‥^^;
次回は<現れた虎>です。
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