めでたく蓮と恵がカップルになったことを、
雪は自宅で勉強をしている時に知らされた。付き合うことになったと、メールが来たのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/5f/2439ad53bfa4a226b185e71c356e63ea.jpg)
まさか二人が‥と雪は思ったが、とりあえずお祝いメールを送っておいた。
小さい頃から喧嘩ばかりしていた二人が付き合うなんて、なんだか変な感じがする‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/6d/0b2cba378daad0092a428a235febb29a.jpg)
雪はメールを打ち終えてから、額の汗を拭って深い息を吐いた。
毎日色々なことがありすぎて、勉強に集中することが難しくなっている。
横山のことで巻き込んでしまっている聡美や太一にも、申し訳ない思いでいっぱいだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/0f/944f91bc5acdeca654c57a74b9770a8a.jpg)
雪はパラパラとノートをめくりながら、それでも今日は何事も無く過ごすことが出来たと思い、ホッとする。
明日も平穏な一日であって欲しいと、静かに神に祈る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/99/ef64a87be137d6022c748aa0e939ca3d.jpg)
雪は深く溜息を吐いた。視線の先には携帯電話がある。
先輩からの連絡は無い。携帯は震えも鳴りもせず、ただ沈黙している。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/ea/65e75e6a162237bbf210953da408f0be.jpg)
雪はどこか胸の内が騒ぐのを感じた。
静けさは、ギリギリの均衡を際立たせる
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/dc/e2b15042eaf112cc16504a2b6906df86.jpg)
例えるならば、砂浜に築いた砂の城を前にしている気分だった。
波が来る前のほんの僅かな時間しか楽しめない、儚い砂の城‥。
明日何が起こるか、それは誰にも分からない。
大きな運命の歯車に私達は、為す術もなく回されるだけなのだ‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/b3/6a5ed52627568aa39a2b3714c1c1cce4.jpg)
翌日、朝早くから赤山蓮は恵とA大の構内に居た。
こんなゴキゲンな笑顔を浮かべながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/4d/e65b0c711f07f177a4b64369a6398fe9.jpg)
そのままニコニコして隣を歩く彼に、恵は言う。
「も~!何も朝から来なくたって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/3c/df5555e682fb7039f7963fab44863481.jpg)
少し困ったように口にする恵にも、蓮は「一緒に登校するのも楽しいっしょ」と言って嬉しそうだった。
地獄鉄‥ラッシュアワーの人混みで溢れかえる地獄のような地下鉄だって、二人一緒ならハッピーだと。
そのまま暫し二人が会話を重ねていると、後方から不意に名前を呼ばれた。
「蓮君?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/49/9f979744e166ef7b8bac514993fba65f.jpg)
二人が振り返ると、彼は笑顔を浮かべて挨拶を口にした。
「やぁ、おはよう」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/2d/382fda75a6c01045775b4e1d25d9a729.jpg)
青田淳だった。
蓮は淳の顔を見るやいなやピッと姿勢を正し、深く頭を下げて挨拶した。
「わっ!淳さん!」 「久しぶりだね。大学に遊びに来たの?」
「あ、ハイッ!おはようございますっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/6b/ddda706f56df493eb1c5519507e0e541.jpg)
その超低姿勢の蓮に、恵は幾分呆れ顔だ。
今日はテストですか、と蓮が淳に質問すると、淳はレポートを出しに来たと言って微笑んだ。
明日はテストがあるよと続けて口にした淳に、蓮はファイティンと言ってエールを送る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/c4/86320bbf5bb2957c0c70406460c54022.jpg)
淳は蓮の隣に居る恵に視線を移すと、ニッコリと笑って挨拶した。
すると意識しまくりの蓮は、ビクッと身体を強張らす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/0d/e2852fb5533ef8bd9f62338bc96a6b4e.jpg)
恵はそんな蓮に肘鉄砲を食らわすと、同じく笑顔で挨拶を返した。
二人のそんなやり取りを前にして、淳は不思議そうな表情だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/26/cf8a66b1fdfd98dab09ffa96151b3ae9.jpg)
気まずい思いでその場に佇む蓮の前で、暫し淳と恵は歓談した。
「君ら二人、幼馴染みなんだよね。朝から一緒に登校かぁ」 「はい、そうなんです。雪ねぇと一緒に小さい頃から‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/89/11519ede208fd11d9fa280f7319bb671.jpg)
しばし俯いていた蓮だが、決意を固めるとバッと顔を上げ、淳に向かって力強く宣言した。
「俺ら、付き合ってるんです!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/03/7467d06506409d85c3bc7c3a9f8653c4.jpg)
いきなりそう口にした蓮に、恵はビックリして息を飲んだ。淳も目を丸くする。
「昨日からっす!」「えっ本当に?」「マジっすよ!あれ?姉ちゃんから聞いてないっすか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/81/f032e1b5b59dac4a8d4645030592c861.jpg)
その蓮からの問いに、暫し淳は固まったが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/c4/8de870797b43b76e4281a30876f4c3f5.jpg)
すぐに笑顔を浮かべて口を開いた。
「朝から大ニュースだね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/0b/62c5523523cf47f9de3584f7c7a6ab46.jpg)
淳は二人に祝いの言葉を述べた。お似合いだよ、と。
蓮と恵が礼を言って頭を下げると淳は頷き、授業があるからそろそろ行くよと別れの挨拶を口にする。
「そうだ。お祝いに今度ご馳走するよ。連絡してくれな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/6d/e4a8215e8ccce5be59b0f3655cfcfb12.jpg)
その淳の提案に、蓮はバンザイをして喜んだ。
社交辞令じゃないっすよね?!と口にする蓮に、笑顔で首を横に振る淳。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/30/86144bfd2d918afbc9ee329c569ea7e2.jpg)
そして彼は教室へと向かって歩いて行った。
淳の後ろ姿が小さくなるのを見届けてから、蓮はガッツポーズで口を開く。
「それじゃあ奢られようじゃね~の~!悩んだ分食べて取り返してやるぅ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/00/af6d9387ad79bd5ef3491c845cfee1dc.jpg)
悩んだといっても一日じゃないか‥。
恵は呆れながらそう返し、いい加減にしてと言って蓮をポカポカ叩いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/1b/876184660bfa7dfe80d28d03d3a900f7.jpg)
カップルになったとはいえ、二人の雰囲気は今までと変わらない‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/91/b3690590a77048df2912d0d76cf371fe.jpg)
清水香織は、鼻歌を歌いながら構内を歩いていた。
テストを受けに行く為、教室へと向かう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7c/21c494564a497dbc6ce6454e945dc639.jpg)
すると視線の先に、見慣れた後ろ姿があった。青田先輩である。
おそらく彼も自分と向かう方向は同じだろう。香織はオロオロし始めた。
で、出来るだけ足音を立てないように‥抜き足差し足‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/58/e2c0c81485ef1c34b2aaf8ddc9bdb735.jpg)
忍び足‥と心の中で思うより先に、彼は香織に気がついた。
心臓がドキリと跳ねる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/59/fdabc601f25b4db49c3f12c0045f9816.jpg)
香織がうろたえていると、彼は行く先を指差して口を開いた。
「あ、同じ授業だよね?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/8a/2299de07f3a1557def046ce9f833ed09.jpg)
香織はバッグの持ち手をギュッと握り締めながら、二、三歩後ずさりをし、口を開いた。
「あ‥あ‥あ‥私はちょっと‥コンビニに‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/16/40731f06066ad95f7011a7e75a15df86.jpg)
そう小さく口にしてから、香織は逃げるように反対方向へ駆けて行った。
「え?そっちには‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/6f/a640bb3ef093e7c2b783aea187b93bd6.jpg)
淳は香織に声を掛けたが、彼女はそれを聞くことなく行ってしまった。
一度も淳の方を振り向くこと無く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/14/e89a2aea61e58b7e11e66099c3ca62dd.jpg)
淳は一人で口角を歪め、嗤いながら、ポツリとその言葉の続きを呟いた。
「コンビニなんて無いけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/b7/fcf18165c4bb29d8dcbaec534b9ce9e2.jpg)
上々だった。
今日の清水香織の反応は、先日彼女に下した警告が生きている証拠だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/f7/6dc39b4db5f6a62e649447c8a42af894.jpg)
そして先ほど、新たに布石を打っておいた。
蓮と恵が付き合うことになったという、予想外だが好都合な事態が彼を動かす‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<布石>でした。
この先輩のコート‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7c/21c494564a497dbc6ce6454e945dc639.jpg)
バー◯リー設定ですかね‥?
なんか色合いが‥ますます彼をおじさんにさせる‥orz
次回は<疎ましいライオン>です。
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雪は自宅で勉強をしている時に知らされた。付き合うことになったと、メールが来たのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/5f/2439ad53bfa4a226b185e71c356e63ea.jpg)
まさか二人が‥と雪は思ったが、とりあえずお祝いメールを送っておいた。
小さい頃から喧嘩ばかりしていた二人が付き合うなんて、なんだか変な感じがする‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/6d/0b2cba378daad0092a428a235febb29a.jpg)
雪はメールを打ち終えてから、額の汗を拭って深い息を吐いた。
毎日色々なことがありすぎて、勉強に集中することが難しくなっている。
横山のことで巻き込んでしまっている聡美や太一にも、申し訳ない思いでいっぱいだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/0f/944f91bc5acdeca654c57a74b9770a8a.jpg)
雪はパラパラとノートをめくりながら、それでも今日は何事も無く過ごすことが出来たと思い、ホッとする。
明日も平穏な一日であって欲しいと、静かに神に祈る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/99/ef64a87be137d6022c748aa0e939ca3d.jpg)
雪は深く溜息を吐いた。視線の先には携帯電話がある。
先輩からの連絡は無い。携帯は震えも鳴りもせず、ただ沈黙している。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/ea/65e75e6a162237bbf210953da408f0be.jpg)
雪はどこか胸の内が騒ぐのを感じた。
静けさは、ギリギリの均衡を際立たせる
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/dc/e2b15042eaf112cc16504a2b6906df86.jpg)
例えるならば、砂浜に築いた砂の城を前にしている気分だった。
波が来る前のほんの僅かな時間しか楽しめない、儚い砂の城‥。
明日何が起こるか、それは誰にも分からない。
大きな運命の歯車に私達は、為す術もなく回されるだけなのだ‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/b3/6a5ed52627568aa39a2b3714c1c1cce4.jpg)
翌日、朝早くから赤山蓮は恵とA大の構内に居た。
こんなゴキゲンな笑顔を浮かべながら。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/4d/e65b0c711f07f177a4b64369a6398fe9.jpg)
そのままニコニコして隣を歩く彼に、恵は言う。
「も~!何も朝から来なくたって‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/3c/df5555e682fb7039f7963fab44863481.jpg)
少し困ったように口にする恵にも、蓮は「一緒に登校するのも楽しいっしょ」と言って嬉しそうだった。
地獄鉄‥ラッシュアワーの人混みで溢れかえる地獄のような地下鉄だって、二人一緒ならハッピーだと。
そのまま暫し二人が会話を重ねていると、後方から不意に名前を呼ばれた。
「蓮君?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/49/9f979744e166ef7b8bac514993fba65f.jpg)
二人が振り返ると、彼は笑顔を浮かべて挨拶を口にした。
「やぁ、おはよう」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/2d/382fda75a6c01045775b4e1d25d9a729.jpg)
青田淳だった。
蓮は淳の顔を見るやいなやピッと姿勢を正し、深く頭を下げて挨拶した。
「わっ!淳さん!」 「久しぶりだね。大学に遊びに来たの?」
「あ、ハイッ!おはようございますっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/6b/ddda706f56df493eb1c5519507e0e541.jpg)
その超低姿勢の蓮に、恵は幾分呆れ顔だ。
今日はテストですか、と蓮が淳に質問すると、淳はレポートを出しに来たと言って微笑んだ。
明日はテストがあるよと続けて口にした淳に、蓮はファイティンと言ってエールを送る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/c4/86320bbf5bb2957c0c70406460c54022.jpg)
淳は蓮の隣に居る恵に視線を移すと、ニッコリと笑って挨拶した。
すると意識しまくりの蓮は、ビクッと身体を強張らす。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/0d/e2852fb5533ef8bd9f62338bc96a6b4e.jpg)
恵はそんな蓮に肘鉄砲を食らわすと、同じく笑顔で挨拶を返した。
二人のそんなやり取りを前にして、淳は不思議そうな表情だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/26/cf8a66b1fdfd98dab09ffa96151b3ae9.jpg)
気まずい思いでその場に佇む蓮の前で、暫し淳と恵は歓談した。
「君ら二人、幼馴染みなんだよね。朝から一緒に登校かぁ」 「はい、そうなんです。雪ねぇと一緒に小さい頃から‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/89/11519ede208fd11d9fa280f7319bb671.jpg)
しばし俯いていた蓮だが、決意を固めるとバッと顔を上げ、淳に向かって力強く宣言した。
「俺ら、付き合ってるんです!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/03/7467d06506409d85c3bc7c3a9f8653c4.jpg)
いきなりそう口にした蓮に、恵はビックリして息を飲んだ。淳も目を丸くする。
「昨日からっす!」「えっ本当に?」「マジっすよ!あれ?姉ちゃんから聞いてないっすか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/81/f032e1b5b59dac4a8d4645030592c861.jpg)
その蓮からの問いに、暫し淳は固まったが、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/c4/8de870797b43b76e4281a30876f4c3f5.jpg)
すぐに笑顔を浮かべて口を開いた。
「朝から大ニュースだね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/0b/62c5523523cf47f9de3584f7c7a6ab46.jpg)
淳は二人に祝いの言葉を述べた。お似合いだよ、と。
蓮と恵が礼を言って頭を下げると淳は頷き、授業があるからそろそろ行くよと別れの挨拶を口にする。
「そうだ。お祝いに今度ご馳走するよ。連絡してくれな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/6d/e4a8215e8ccce5be59b0f3655cfcfb12.jpg)
その淳の提案に、蓮はバンザイをして喜んだ。
社交辞令じゃないっすよね?!と口にする蓮に、笑顔で首を横に振る淳。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/30/86144bfd2d918afbc9ee329c569ea7e2.jpg)
そして彼は教室へと向かって歩いて行った。
淳の後ろ姿が小さくなるのを見届けてから、蓮はガッツポーズで口を開く。
「それじゃあ奢られようじゃね~の~!悩んだ分食べて取り返してやるぅ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/00/af6d9387ad79bd5ef3491c845cfee1dc.jpg)
悩んだといっても一日じゃないか‥。
恵は呆れながらそう返し、いい加減にしてと言って蓮をポカポカ叩いた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/1b/876184660bfa7dfe80d28d03d3a900f7.jpg)
カップルになったとはいえ、二人の雰囲気は今までと変わらない‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/91/b3690590a77048df2912d0d76cf371fe.jpg)
清水香織は、鼻歌を歌いながら構内を歩いていた。
テストを受けに行く為、教室へと向かう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7c/21c494564a497dbc6ce6454e945dc639.jpg)
すると視線の先に、見慣れた後ろ姿があった。青田先輩である。
おそらく彼も自分と向かう方向は同じだろう。香織はオロオロし始めた。
で、出来るだけ足音を立てないように‥抜き足差し足‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/58/e2c0c81485ef1c34b2aaf8ddc9bdb735.jpg)
忍び足‥と心の中で思うより先に、彼は香織に気がついた。
心臓がドキリと跳ねる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/59/fdabc601f25b4db49c3f12c0045f9816.jpg)
香織がうろたえていると、彼は行く先を指差して口を開いた。
「あ、同じ授業だよね?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/8a/2299de07f3a1557def046ce9f833ed09.jpg)
香織はバッグの持ち手をギュッと握り締めながら、二、三歩後ずさりをし、口を開いた。
「あ‥あ‥あ‥私はちょっと‥コンビニに‥」
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そう小さく口にしてから、香織は逃げるように反対方向へ駆けて行った。
「え?そっちには‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/6f/a640bb3ef093e7c2b783aea187b93bd6.jpg)
淳は香織に声を掛けたが、彼女はそれを聞くことなく行ってしまった。
一度も淳の方を振り向くこと無く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/14/e89a2aea61e58b7e11e66099c3ca62dd.jpg)
淳は一人で口角を歪め、嗤いながら、ポツリとその言葉の続きを呟いた。
「コンビニなんて無いけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/b7/fcf18165c4bb29d8dcbaec534b9ce9e2.jpg)
上々だった。
今日の清水香織の反応は、先日彼女に下した警告が生きている証拠だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/f7/6dc39b4db5f6a62e649447c8a42af894.jpg)
そして先ほど、新たに布石を打っておいた。
蓮と恵が付き合うことになったという、予想外だが好都合な事態が彼を動かす‥。
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<布石>でした。
この先輩のコート‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/7c/21c494564a497dbc6ce6454e945dc639.jpg)
バー◯リー設定ですかね‥?
なんか色合いが‥ますます彼をおじさんにさせる‥orz
次回は<疎ましいライオン>です。
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