![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/25/c72227034249b32b43667f861761dfd3.jpg)
輝かしい未来へと続く道を、いつ踏み外してしまったのだろうか。
強すぎる光に視界を遮られ、深い溝の奥底へと、その闇の中へと、
彼はゆっくりと転落して行く‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/d2/6e141fca8829e9c46439937881753bbe.jpg)
ぐらりと、世界が歪んだ。
向かい合う青田淳と河村亮を囲んで、大勢の生徒がその現場を目撃していた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/04/b76c65104ee918364c820a2829b242d1.jpg)
これだけの人が居るというのに、辺りはしんと静まり返っている。
そしてそこに居るほぼ全員が、立ち尽くす青田淳の方を見つめていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/54/cfb0778152b4b0a433fbbcb6ff2a6e91.jpg)
亮は小さく「あ‥」と呟くも、その続きを口にすることが出来なかった。
目の前に居る淳が放つその闇が、徐々に亮の光を陰らせて行く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/35/7346ff188d8a248c657da9c1a6eb6c7a.jpg)
亮の中の第六感が、最大級の警鐘を鳴らしていた。
ドクンドクンと、合わせて鼓動が加速して行く。
「いや‥オレは‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/e6/030d78dbd73b62d50e6de3c2d556c9f3.jpg)
嫌な汗が背中を伝って流れ、亮の身体を冷やして落ちる。
亮は掠れた声でその続きを口にしようとしたが、淳の方がその先を待たずに口を開いた。
「お前、」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/23/9ed6fbdd417e033a2d249fab9ba5db84.jpg)
「欺瞞って言葉、知ってるか?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/29/87eeca08496fbdd51376b9797f11f198.jpg)
暗く深い溝の底へ、ゆっくりと落ちて行く。
加速して行く鼓動のリズムは、その絶望へのカウントダウンだった。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/76/12176140044cbbef00c5d8ad34f3f5a5.jpg)
放課後。
亮は授業が終わるといち早く廊下に出て、淳の姿を探した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/70/f19962658a5e794c35473de4ec573302.jpg)
「!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/6f/75a2643fd6848cc938b14f7c9f18740f.jpg)
人波の間にその背中を見つけ、思わず駆け出す亮。
「おい!ちょっ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/61/5468e7cbf8be4a6e609062f87558ef83.jpg)
しかし淳を呼び止める前に、誰かに思い切り肩をぶつけられた。
「んだよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/d9/ab5cdb31ff0562e8deaea4d8a961e3ae.jpg)
その痛みに苛つき、思わず声を荒げる亮。
顔を上げた先に居たのは、岡村泰士だった。岡村は亮を見て、あからさまに顔を顰める。
「あー‥クソッ。河村かよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/04/e2779f11acc2647e95a6c7a2774dbf14.jpg)
「ムカツクぜー」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/d8/f63798ba6ffd24a9a8f4023b9e6785d1.jpg)
岡村とは以前喧嘩になった時以来犬猿の仲だが、
ここまで露骨に嫌味を出してくるのはどこか珍しかった。
しかし亮は淳のことで頭がいっぱいで、すぐにはその異変に気が付かない。
「この野郎‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/cb/d9cc38f05662028f82f43327243f64e4.jpg)
肩の痛みとあからさまな嫌味に神経を逆撫でされ、亮は思わず声を荒げた。
すると周りに居た学生達が、ヒソヒソと何かを囁いているのに気が付く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/e1/11a53cb4fca50a39f381e89de3f3abec.jpg)
その光景は、明らかに今までとは違っていた。
亮は目を見開きながら、思わずその場に立ち竦む。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/57/d1d8ba2b5b3816409a70d8d467f2592f.jpg)
ヒソヒソ、コソコソと、どこからともなく降って来る言葉たち。
耳を澄ませばその言葉の全てが、亮自身に関連したそれだということが分かる。
「アイツも援助受けてるらしいじゃん」「んだよ、あんな偉そうにしてたくせによぉ」
「俺、てっきり金持ちの息子かと思ってた」「教授の孫じゃなかったの?」「大どんでん返しだな」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/5e/c78488cef50e8d8fc1616113e33427f9.jpg)
まるで暗雲から零れる雨粒のように、その言葉は亮の心に黒い染みを作った。
足が竦んで動けない。
視界の端に、去って行く淳の背中が見える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/5d/313a30e9649d58a6663aa6282fab8e97.jpg)
「乞食野郎」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/8b/941dfa7dfcc0aeffbb56dc9f635d7366.jpg)
俯いた亮の背後から掛かる、心無い言葉。
岡村は亮の背中を小突きながら、真実を晒された彼を嘲笑う。
「なんで学校に乞食が居るんだ~?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/78/8f795af5c410f939e6c73e3f6a703285.jpg)
あははは‥ ははは‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/4b/3db739953a7435c78ab1764f71d6c05c.jpg)
背中越しに聞こえる嘲笑い声。
遠い昔、狂いそうなほど聞かされた。
記憶の奥底に沈めたその過去が、その暗い記憶が、亮の拳を固く握らせる‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/0c/187b813fae94425276fb20a0d82b8c6c.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/04/49da82987bfb831bd1b30688a77948a2.jpg)
「あんた何やらかしたのよ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/d0/c32005f2220a861374303ef6e0e93bce.jpg)
ヒステリックな静香の叫びが、痛む頭をガンガンと鳴らした。
傷だらけの亮に向かって、静香は蒼白な顔で必死に訴える。
「みんなあたしのこと見下すのよ!あたしを!このあたしを!!」
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「これじゃ昔と一緒じゃない!何も変わらないじゃない!」
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亮は何も言えなかった。
先ほど引き摺り出されたものと同じ記憶が、今静香にも蘇っているのが、手に取るように分かるからだ。
「イヤ‥イヤ!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/8e/bd4db2de21f926594c3d60e2a278690a.jpg)
「イヤッ‥!」
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静香は頭を抱え、そう叫び続けた。
その甲高い声は、記憶の彼方にある更に深い闇へと、亮を引き摺り込んで行く‥。
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<亮と静香>高校時代(24)ー陰への転落ー でした。
事態がどんどん悪くなりますね‥読んでる方も辛いです。
伏せられている場面はいずれ明らかになりますので、もう少しお待ち下さいね。
次回は<亮と静香>高校時代(25)ー独りぼっちー です。
☆ご注意☆
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