授業が終り、学生達は各々に席を立った。
その中で佐藤広隆は、テキストを鞄に仕舞っている。

少し離れたところにいる柳瀬健太が、舌打ちをしながら愚痴をこぼしていた。
「ったく赤山のヤツ、礼儀がなってねーんだよ。
自分まで青田レベルになったとでも思ってんじゃねーのか?」

そんな健太に向かって、メガネ君が自分の意見を口にする。
「まぁ‥過去問を回すのも義務じゃないし、もう気にしないでいたらどうすか?
過去問も赤山の持ってるヤツだけじゃないですし」
「なんだとぉ?!」

しかしそれが健太の癇に障ったようだ。
健太はメガネ君の前で腰に手を当て、頭を大きく前に倒して見せる。
「お前ってやつは、基本的なコトが分かってねぇよ。ったく」

「お前の目はふし穴か!
俺がそんなショボイことで怒ってるとでも思うか?!」

ネチネチとそう言う健太に、「あ‥はぁ」と曖昧に頷くメガネ君。
「赤山のヤツが生意気な態度を取るからだろ?!生意気な態度を!」
「いや、っつーか‥」

するとそんな健太の後ろから、キャップを被った後輩が声を掛けた。
彼は健太の諸々の行動について、客観的な意見を口にする。
「そんな風にずっとネチネチ喧嘩腰でいたら、結局過去問は見せてもらえねーんじゃねーすか?
んなことする必要あります?まぁ‥見たいっちゃ見たいけど、無理ならしょうがないっつーか‥。
穏便に行きましょーよ穏便にー」

しかしその意見はまたもや健太の癇に障ったようだ。
健太はくわっと目を見開き、大きな声で言い返す。
「穏便って何だよ穏便ってよぉ!」

「‥‥‥‥」

キャップ男子は目を細めながら、その場でただ口を噤んだ。
健太は悔しそうに胸をドンドンと叩きながら、持て余す感情をぶち撒ける。
「あーもう!お前らが情けねーからマジでモヤモヤすんよ!
こんなんで大学出てからちゃんとした社会生活送れんのかぁ?!」

健太は周りの皆に向かって、最年長の先輩らしい顔をして持論を展開した。
「今のうち赤山に常識ってモンを教えとかねーと、
いずれ社会に出た時に大変なことになるに違いねぇ。そうしとくべきだろ?まぁムカツクけどよ」

そして健太は教室を出て行こうとしている佐藤に向かって声を掛けた。
「だろ?佐藤よ」

佐藤は顔だけ振り向いて健太の事を睨む。
そんな佐藤の後方から柳楓が、クスクスと笑いながらこう言った。
「うーわいい年した先輩がそんなことで年下女子に食って掛かってるw人喰い人種だ~
皆も相手してねーで昼メシ食って来たら?」「んだとぉ?!
」

怒る健太に向かって、柳はヘラヘラと笑って流している。
健太の周りの学生が、「だな。昼飯食い行こーぜ」と口にし、
皆は学食へと向かい始めた。

「あの野郎‥ノートPC事件以来マジ‥」
「はい?」「い‥いや」

”佐藤のノートPC柳が壊したと見せかけた事件”から、柳は健太に対して敵対視するようになった。
その証拠に、柳は健太には声を掛けずに周りの男子学生に向かって、
「おい!メシ!」と口を開く。


男子学生達は揃って顔を見合わせたが数秒の後、
キャップ男子は健太に背を向け、柳の方へと走って行った。
「おー」

徐々に分裂して行く男達。
メガネ君は迷ったが、最終的に健太の派閥へ付いて行った。


改めて教室を出て行こうとする佐藤。
するとそこで、再び健太に声を掛けられた。
「あ!そうだ!おい、佐藤!」

ビクッと身体を強張らせた佐藤に向かって、健太はニヤリと笑う。
「お前とよく一緒に居るハーフ女いるだろ?俺、あの女から聞き出した話があるんだがな‥」

その意味が解せず、「はい?」と聞き返す佐藤。
健太は佐藤の肩を軽く叩いて、曖昧な表現でこう続けた。
「ちょっとばかし覚悟しとけよ~?後で傷つかねーようにな」

健太は佐藤に背を向けると、ハハハと笑いながらそのまま教室を出て行った。
佐藤はその巨体と一味が去りゆくのを、ぐっと歯を食いしばって睨んでいる。

佐藤は険しい顔をして、健太が口にした言葉の意味を噛みしめていた。
バッと彼らから背を向ける佐藤。

すると突然、ひょっこりと柳楓が現れた。
「おい!佐藤!」

再びビックリする佐藤に、柳はにこやかな笑顔でこう続ける。
「な、何‥」「お前昼メシまだだったら一緒に行かね?」

「え?」

佐藤は思わず目を丸くした。
柳から昼食に誘われるなど、初めてのことでー‥。

「!!」

その返事を口にする前に、佐藤は三度目のビックリをすることになった。
教室のドア付近に、知らぬ間に赤山雪が立っていたからだ。
佐藤はズレた眼鏡を直しつつ、雪に向かって声を掛ける。
「あ‥赤山」「おー赤山ちゃん」「こんにちは」
「き‥来てたのか」「はい」

「いつから?」

佐藤は雪に向かって、思わずそう聞いた。
先程の柳瀬健太との会話を、彼女は聞いていたのだろうかー‥。

雪は曖昧な表情のまま、その佐藤の質問には返答しなかった。
代わりに皆の方を見ながら、佐藤にこう問いかける。
「あー‥佐藤先輩はみなさんとお昼‥」「え?あ‥いや」

昼食を共にしながら財務学会の発表資料を仕上げようと、先ほど雪は佐藤にメールしていたのである。
そして佐藤は了解の旨を返信していた。
そうとは知らない柳は、雪に向かってランチのお誘いを掛ける。
「ねぇ!赤山ちゃんは昼メシ食った?まだだったら一緒に行こーぜ!」
「あ‥いいんですか?」

柳の誘いを雪が了承すると、
佐藤は幾分ホッとした表情でそれに同意した。
「まぁ‥それなら」

雪は柳一味の人数をザッと数えると、こう提案を口にする。
「それじゃプルム館はどうですか?あそこは広いテーブルがあるので」

「俺はまぁ‥構わんよ」「俺もー」
「健太先輩とは極力会いたくねーわ。そこ行こーぜww」

そして皆、雪の提案通りプルム館へと向かうことになった。
一つの派閥がゾロゾロと移動する。
淳は元気ー? ハイ

それぞれの持つ風は、似たような流れを見つけてやがて集まる。
それぞれの意見を持って、様々な状況の中で‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<派閥>でした。
だんだんとグループが出来上がって行きますね。
私はなんとしても柳のグループに入りたいと思います(キリッ)
次回は<風向き>です。
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その中で佐藤広隆は、テキストを鞄に仕舞っている。

少し離れたところにいる柳瀬健太が、舌打ちをしながら愚痴をこぼしていた。
「ったく赤山のヤツ、礼儀がなってねーんだよ。
自分まで青田レベルになったとでも思ってんじゃねーのか?」

そんな健太に向かって、メガネ君が自分の意見を口にする。
「まぁ‥過去問を回すのも義務じゃないし、もう気にしないでいたらどうすか?
過去問も赤山の持ってるヤツだけじゃないですし」
「なんだとぉ?!」

しかしそれが健太の癇に障ったようだ。
健太はメガネ君の前で腰に手を当て、頭を大きく前に倒して見せる。
「お前ってやつは、基本的なコトが分かってねぇよ。ったく」

「お前の目はふし穴か!
俺がそんなショボイことで怒ってるとでも思うか?!」

ネチネチとそう言う健太に、「あ‥はぁ」と曖昧に頷くメガネ君。
「赤山のヤツが生意気な態度を取るからだろ?!生意気な態度を!」
「いや、っつーか‥」

するとそんな健太の後ろから、キャップを被った後輩が声を掛けた。
彼は健太の諸々の行動について、客観的な意見を口にする。
「そんな風にずっとネチネチ喧嘩腰でいたら、結局過去問は見せてもらえねーんじゃねーすか?
んなことする必要あります?まぁ‥見たいっちゃ見たいけど、無理ならしょうがないっつーか‥。
穏便に行きましょーよ穏便にー」

しかしその意見はまたもや健太の癇に障ったようだ。
健太はくわっと目を見開き、大きな声で言い返す。
「穏便って何だよ穏便ってよぉ!」

「‥‥‥‥」

キャップ男子は目を細めながら、その場でただ口を噤んだ。
健太は悔しそうに胸をドンドンと叩きながら、持て余す感情をぶち撒ける。
「あーもう!お前らが情けねーからマジでモヤモヤすんよ!
こんなんで大学出てからちゃんとした社会生活送れんのかぁ?!」

健太は周りの皆に向かって、最年長の先輩らしい顔をして持論を展開した。
「今のうち赤山に常識ってモンを教えとかねーと、
いずれ社会に出た時に大変なことになるに違いねぇ。そうしとくべきだろ?まぁムカツクけどよ」

そして健太は教室を出て行こうとしている佐藤に向かって声を掛けた。
「だろ?佐藤よ」


佐藤は顔だけ振り向いて健太の事を睨む。
そんな佐藤の後方から柳楓が、クスクスと笑いながらこう言った。
「うーわいい年した先輩がそんなことで年下女子に食って掛かってるw人喰い人種だ~
皆も相手してねーで昼メシ食って来たら?」「んだとぉ?!


怒る健太に向かって、柳はヘラヘラと笑って流している。
健太の周りの学生が、「だな。昼飯食い行こーぜ」と口にし、
皆は学食へと向かい始めた。

「あの野郎‥ノートPC事件以来マジ‥」
「はい?」「い‥いや」

”佐藤のノートPC柳が壊したと見せかけた事件”から、柳は健太に対して敵対視するようになった。
その証拠に、柳は健太には声を掛けずに周りの男子学生に向かって、
「おい!メシ!」と口を開く。


男子学生達は揃って顔を見合わせたが数秒の後、
キャップ男子は健太に背を向け、柳の方へと走って行った。
「おー」

徐々に分裂して行く男達。
メガネ君は迷ったが、最終的に健太の派閥へ付いて行った。


改めて教室を出て行こうとする佐藤。
するとそこで、再び健太に声を掛けられた。
「あ!そうだ!おい、佐藤!」


ビクッと身体を強張らせた佐藤に向かって、健太はニヤリと笑う。
「お前とよく一緒に居るハーフ女いるだろ?俺、あの女から聞き出した話があるんだがな‥」

その意味が解せず、「はい?」と聞き返す佐藤。
健太は佐藤の肩を軽く叩いて、曖昧な表現でこう続けた。
「ちょっとばかし覚悟しとけよ~?後で傷つかねーようにな」

健太は佐藤に背を向けると、ハハハと笑いながらそのまま教室を出て行った。
佐藤はその巨体と一味が去りゆくのを、ぐっと歯を食いしばって睨んでいる。

佐藤は険しい顔をして、健太が口にした言葉の意味を噛みしめていた。
バッと彼らから背を向ける佐藤。

すると突然、ひょっこりと柳楓が現れた。
「おい!佐藤!」

再びビックリする佐藤に、柳はにこやかな笑顔でこう続ける。
「な、何‥」「お前昼メシまだだったら一緒に行かね?」

「え?」

佐藤は思わず目を丸くした。
柳から昼食に誘われるなど、初めてのことでー‥。

「!!」

その返事を口にする前に、佐藤は三度目のビックリをすることになった。
教室のドア付近に、知らぬ間に赤山雪が立っていたからだ。
佐藤はズレた眼鏡を直しつつ、雪に向かって声を掛ける。
「あ‥赤山」「おー赤山ちゃん」「こんにちは」
「き‥来てたのか」「はい」

「いつから?」

佐藤は雪に向かって、思わずそう聞いた。
先程の柳瀬健太との会話を、彼女は聞いていたのだろうかー‥。

雪は曖昧な表情のまま、その佐藤の質問には返答しなかった。
代わりに皆の方を見ながら、佐藤にこう問いかける。
「あー‥佐藤先輩はみなさんとお昼‥」「え?あ‥いや」

昼食を共にしながら財務学会の発表資料を仕上げようと、先ほど雪は佐藤にメールしていたのである。
そして佐藤は了解の旨を返信していた。
そうとは知らない柳は、雪に向かってランチのお誘いを掛ける。
「ねぇ!赤山ちゃんは昼メシ食った?まだだったら一緒に行こーぜ!」
「あ‥いいんですか?」

柳の誘いを雪が了承すると、
佐藤は幾分ホッとした表情でそれに同意した。
「まぁ‥それなら」

雪は柳一味の人数をザッと数えると、こう提案を口にする。
「それじゃプルム館はどうですか?あそこは広いテーブルがあるので」

「俺はまぁ‥構わんよ」「俺もー」
「健太先輩とは極力会いたくねーわ。そこ行こーぜww」

そして皆、雪の提案通りプルム館へと向かうことになった。
一つの派閥がゾロゾロと移動する。
淳は元気ー? ハイ

それぞれの持つ風は、似たような流れを見つけてやがて集まる。
それぞれの意見を持って、様々な状況の中で‥。
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<派閥>でした。
だんだんとグループが出来上がって行きますね。
私はなんとしても柳のグループに入りたいと思います(キリッ)
次回は<風向き>です。
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