あの事件から数日後のことだった。
B高校、校舎裏の片隅。
”ショパン”が傷だらけになって地面に倒れ込んでいる。
彼が顔を上げたその先には、鬼のような形相で鞄を振り上げる河村静香が居た。
静香はその鞄で、力任せにショパンを打った。彼は身を縮こまらせてされるがままだ。
「うちの疫病神の手を潰してくれて!どーも!ありがとねぇ?!あぁ?!このクソ野郎が!!」
ひとしきり打ち終えた後、静香は苛立ちを持て余しながらこう続ける。
「まぁあたしもね?」
「才能に天狗になってるアイツにムカついてはいたけど、
今や家で死んだみたいに大人しくなっちゃったわよ」
「お陰様で」
「うっ‥うっ‥ひっ‥」
静香が皮肉たっぷりにそう言っても、ショパンはただメソメソと泣くばかりだった。
その弱々しい気性が、いっそう静香の気を逆撫でする。
「何て?」
「言えよクソ野郎!」
「アンタのせいであたしの人生どん詰まりだよっ!
なぁっ?!どーすんの?!どうしてくれんだよこのっ‥!!」
「止めろよ!!」
ショパンは声を振り絞ると、静香から顔を逸して言葉を続ける。
「殴りたきゃ殴ればいい!けど僕に言ったところで何にもならない!
僕だって何もかも失ったんだよ!僕が出来ることなんて何一つないんだ!!」
その目には涙が浮かんでいた。
「僕は‥僕はただ淳君の言う通りにしただけなのに‥」
ショパンは震えながらそう言うと、うずくまるかのように頭を抱えた。
「衝動的にやってしまっただけなんだ!
まさかこのことで援助まで切られるなんて思いもしなかったさ!こんな風に捨てられるなんて!」
ショパンが口にしたその真実に、静香は思わず目を見開く。
「どういうこと‥?」
ショパンは数日前の話をし始めた。
瞼の裏に浮かぶのは、練習室でピアノを弾く河村亮の姿。
鼓膜の裏に響くのは、滑らかに響く音の洪水。
そして胸の中に渦巻く、憎しみと嫉妬‥。
自分の順番が来たのにうずくまったままのショパンを見て、淳が話し掛けた。
練習室から聞こえてくる亮の演奏をバックに、二人の会話は進む。
「大丈夫。恥ずかしく思うことじゃない」
「ピアノ、また今度聴かせてな。悩みがあるなら聞くし。俺で良ければ」
ショパンは淳のその言葉を聞いた後、嬉しくて思わず涙ぐんだ。
誰の目にも止まらない劣等生の自分に、この人は気が付いてくれるんだと。
そんな”優しい級長”に、ショパンは一気に傾倒して行く。
級長は快くショパンの相談に乗った。
囚われたその鬱屈した世界に、一筋の道筋を示しながら。
「‥腹が立ったんなら吐き出さないと。どうして溜め込むの?
泣くほど悔しい気持ちにさせた相手がいるのなら、」
「ありのままぶつければいい」
彼の狙い通りショパンは罠に掛かった。
彼に繋がる痕跡を何も残さずに。
しかし彼女は気が付いていた。
彼と幼い頃から一緒だった静香には、その思惑が手に取るように分かる気がしたー‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<亮と静香>高校時代(32)ー後日録ー でした。
なるほど。静香はショパン君から直接話を聞いていたのですね。
しかし淳の口から「ありのままぶつければいい」だなんて‥なんと説得力の無い‥(苦笑)
このエピソードが静香にとっての切り札だったんですね。もしやこのことも会長にチクったのか‥?
次回は再び現在へ戻ります。
<足掻き>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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B高校、校舎裏の片隅。
”ショパン”が傷だらけになって地面に倒れ込んでいる。
彼が顔を上げたその先には、鬼のような形相で鞄を振り上げる河村静香が居た。
静香はその鞄で、力任せにショパンを打った。彼は身を縮こまらせてされるがままだ。
「うちの疫病神の手を潰してくれて!どーも!ありがとねぇ?!あぁ?!このクソ野郎が!!」
ひとしきり打ち終えた後、静香は苛立ちを持て余しながらこう続ける。
「まぁあたしもね?」
「才能に天狗になってるアイツにムカついてはいたけど、
今や家で死んだみたいに大人しくなっちゃったわよ」
「お陰様で」
「うっ‥うっ‥ひっ‥」
静香が皮肉たっぷりにそう言っても、ショパンはただメソメソと泣くばかりだった。
その弱々しい気性が、いっそう静香の気を逆撫でする。
「何て?」
「言えよクソ野郎!」
「アンタのせいであたしの人生どん詰まりだよっ!
なぁっ?!どーすんの?!どうしてくれんだよこのっ‥!!」
「止めろよ!!」
ショパンは声を振り絞ると、静香から顔を逸して言葉を続ける。
「殴りたきゃ殴ればいい!けど僕に言ったところで何にもならない!
僕だって何もかも失ったんだよ!僕が出来ることなんて何一つないんだ!!」
その目には涙が浮かんでいた。
「僕は‥僕はただ淳君の言う通りにしただけなのに‥」
ショパンは震えながらそう言うと、うずくまるかのように頭を抱えた。
「衝動的にやってしまっただけなんだ!
まさかこのことで援助まで切られるなんて思いもしなかったさ!こんな風に捨てられるなんて!」
ショパンが口にしたその真実に、静香は思わず目を見開く。
「どういうこと‥?」
ショパンは数日前の話をし始めた。
瞼の裏に浮かぶのは、練習室でピアノを弾く河村亮の姿。
鼓膜の裏に響くのは、滑らかに響く音の洪水。
そして胸の中に渦巻く、憎しみと嫉妬‥。
自分の順番が来たのにうずくまったままのショパンを見て、淳が話し掛けた。
練習室から聞こえてくる亮の演奏をバックに、二人の会話は進む。
「大丈夫。恥ずかしく思うことじゃない」
「ピアノ、また今度聴かせてな。悩みがあるなら聞くし。俺で良ければ」
ショパンは淳のその言葉を聞いた後、嬉しくて思わず涙ぐんだ。
誰の目にも止まらない劣等生の自分に、この人は気が付いてくれるんだと。
そんな”優しい級長”に、ショパンは一気に傾倒して行く。
級長は快くショパンの相談に乗った。
囚われたその鬱屈した世界に、一筋の道筋を示しながら。
「‥腹が立ったんなら吐き出さないと。どうして溜め込むの?
泣くほど悔しい気持ちにさせた相手がいるのなら、」
「ありのままぶつければいい」
彼の狙い通りショパンは罠に掛かった。
彼に繋がる痕跡を何も残さずに。
しかし彼女は気が付いていた。
彼と幼い頃から一緒だった静香には、その思惑が手に取るように分かる気がしたー‥。
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<亮と静香>高校時代(32)ー後日録ー でした。
なるほど。静香はショパン君から直接話を聞いていたのですね。
しかし淳の口から「ありのままぶつければいい」だなんて‥なんと説得力の無い‥(苦笑)
このエピソードが静香にとっての切り札だったんですね。もしやこのことも会長にチクったのか‥?
次回は再び現在へ戻ります。
<足掻き>です。
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