雪は先輩に向けてメールを打った。
イライラする気持ちを落ち着け、しおらしい自分を演出しながら。
今日大学で河村氏のお姉さんに会ったんですが、ちょっと嫌な感じで‥。
度々先輩の話を出して‥怖いことする‥T T
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/67/27eb3b41b6dc36807d7cbfae24866add.jpg)
するとすぐに、彼から返事が返って来た。
もう大学に行くなと言っておいたのに、また事を起こしたんだな‥。
嫌な気持ちになっちゃったかな。止めるようによく言っておくべきだったのに‥ごめんね
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/58/9bb33673b38d40349eb1cae295e30d22.jpg)
その彼の返信を見ながら、雪は「フン!」と息を吐いた。
今は下校途中の地下鉄の中。未だ雪の怒りはおさまらない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/1c/bb0dcf85d0603d44de7d3b7069a46329.jpg)
メールの文面ではしおらしく涙マークまで付けた雪だったが、実際は黒い顔をしながら口角を上げていた。
私は今日一匹の密告者となる‥!お前は俺に侮辱感を与えた‥!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/51/31596dafb96a5b9ce22381218a60a5c6.jpg)
雪は有名なフレーズを口ずさみつつ、未だ消えない嫌悪感を持て余していた。
てかマジであの人ヤバイわ‥。ヤ◯ザ?ヤ◯ザなの?
つーか人を怒らせるように話すのが、無駄に上手すぎでしょ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/3d/8e6997f53ef47ee7d8e5abf89efdf85b.jpg)
雪が特に引っ掛かっているのは、静香が口に出したあの言葉だった。
てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ?
互いの何をどのくらい分かってるっていうの?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/86/d198c0da36b8947f128876691a8c1281.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/ea/842fde4515b9231385bfcc2822fd4fcb.jpg)
引っ掛かるのは、どこかその言葉が図星だったからだった。
長い年月を共に過ごした静香から言われる言葉だからこそ、説得力があったし、ムカついた。
そして静香が発したもう一つの言葉が、鼓膜の裏にこびりつく。
あたしの弟もゾッコン~
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/82/5fb27b64a18d56932f86eea478155bcc.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/da/fadedbf864a10a45ab70ea0d72aaf0b2.jpg)
こびりついているのは、静香のその言葉だけでは無かった。
瞼の裏に焼き付いているその光景が、再び脳裏に蘇る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/fc/e74084c836db6349b8c1cdcd99380d67.jpg)
赤い痕跡が心の中に付着して、凝固している。
あの秋の景色の中でそこだけが朱に染まったような、あの時感じたあの感覚‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/c8/a4e5ce6b5f12bed416bee172b49f94bd.jpg)
雪は地下鉄の揺れに身を任せながら、一人その意味について思いを巡らせていた。
心の中に残っている、その痕跡の正体を。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/06/a29c6e6d829a737eccc9b0fd8f21b26f.jpg)
雪は心の中で、その気持ちを言葉にする。
ううん、本当は前から‥多分‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/5d/87164235403e92a8d8f80c8144a71c26.jpg)
河村氏は、私のこと‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/6c/6ae720d8bf9afc6182c59501a2f540ca.jpg)
雪はそのことに、先ほど初めて気づいたわけでは無かった。
本当はずっと前から、彼の想いの欠片を微かに感じていた‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/92/f5f288c455dd8525d07f21d8cd9837c2.jpg)
それきり雪は俯いて、ゴトンゴトンと揺れる地下鉄の地面に目を落としていた。
すると不意に携帯が震え、見てみると先輩からのメールが写真付きで入っている。
夜勤やだよーT T
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/a0/d747f43a5eec90361512fcda1b042d87.jpg)
雪はそれを見て、ふっと微笑んだ。
そして携帯カメラの無音シャッターを選択し、自分の後ろに広がる景色を撮影する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/c6/a60cbfb533ded68b13d9bc4252b093f0.jpg)
写真には自分の顔が半分と、車窓の外に広がる夜景が入った。
下校中。座ってるよーん
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/a6/be0a33e7dde4158ca4099a09b5ffb82b.jpg)
それから二人は、他愛もないやり取りを交わした。
コーヒーでも飲むよと言って落ち込む彼氏と、頑張ってとメッセージを送る彼女。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/b9/935ded93622ff5bb3c173d6030ae4ac0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/97/0629ac0aebea313c3d054449f9e27105.jpg)
雪は彼とのメール交換を終えると、自身の携帯に入っている写真を眺め始めた。
まず最初に表示されたのは、いつか教室内で撮った写真だった。
太一と聡美、同期の仲間が写っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/8a/cd64ec730d391ef93bf06900f759a039.jpg)
同期の女子達と撮った、学食での写真もあった。
日替わり定食を食べる傍ら何気ないことを話して笑い合う、それは平凡な時間の痕跡。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/08/9e1ee56915072d7b505bc99cfbd25c25.jpg)
聡美が撮った写真だろうか、頬杖をついた雪の写真。
勉強をしているのかレポートを書いているのか‥これも日常の一片だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/7d/9ffd45897423b57321a4a88ff0ae6e52.jpg)
そして写真は、先輩から送られて来たものも沢山あった。
彼がインターン先で見ている風景。整理された机の上、PCに貼られたタスクの付箋。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/b8/79c8eab6e83d26661b96459722aeabbb.jpg)
スーツを着て、コーヒーを飲んでいる彼の写真。
今の彼が置かれている、日常の風景だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/b6/471bd45619d1416c836cf6be91284cf4.jpg)
同じインターン生同士で撮られた写真もあった。
皆に囲まれて笑う先輩の姿。
そこに雪の姿は無いけれど、彼の日常の一片が雪の携帯に入っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/9a/a30d66388e03db98c7fcabf2e8082920.jpg)
雪はインターン生達に囲まれた先輩の姿を見て、こう思った。
先輩、ここでも中心みたい‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/f2/b36d3b2c4e967fc6a15d83a981d3616f.jpg)
雪は笑みを浮かべながら、彼が微笑んでいる写真を見ていた。
いつの間にか彼女の日常の中に、当然のように彼が居る‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/8e/7172cfc9046131ca087c68cb48a0e15f.jpg)
そしていつしか地下鉄の揺れに合わせ、雪はコックリコックリと船を漕いだ。
その平坦な一本道を、地下鉄は雪を乗せて進んで行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<痕跡の正体>でした。
ここの手書きの台詞‥「お前は俺に侮辱感を与えた‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/55/f3e56c6f2a90f30df4994ea361f30ed8.jpg)
という題名の歌がありました。この台詞は、ここから来てるのかな‥?
Verbal Jint - (ft. Koonta)
*追記*
この台詞は映画の台詞が元ネタだそうです^^CitTさんに教えて頂きました~!Thanxsです!
そしてそして‥遂に雪ちゃんが亮さんの気持ちに本格的に気づきましたねぇ‥。
前回の自然の中で時が止まるような大カットは、それに気づいた瞬間だったのですね‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a0/2993d83ad6481a9cfdd1898ba64b89f0.jpg)
しかしそれにしちゃ、雪ちゃんあんまり動揺してない‥。
亮さん‥ファイティンです‥。
そして‥太一家の夕食会はどうなったんだー‥!見たかった‥orz
次回<知らないところで>です。
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています~!![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
イライラする気持ちを落ち着け、しおらしい自分を演出しながら。
今日大学で河村氏のお姉さんに会ったんですが、ちょっと嫌な感じで‥。
度々先輩の話を出して‥怖いことする‥T T
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/67/27eb3b41b6dc36807d7cbfae24866add.jpg)
するとすぐに、彼から返事が返って来た。
もう大学に行くなと言っておいたのに、また事を起こしたんだな‥。
嫌な気持ちになっちゃったかな。止めるようによく言っておくべきだったのに‥ごめんね
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/58/9bb33673b38d40349eb1cae295e30d22.jpg)
その彼の返信を見ながら、雪は「フン!」と息を吐いた。
今は下校途中の地下鉄の中。未だ雪の怒りはおさまらない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/1c/bb0dcf85d0603d44de7d3b7069a46329.jpg)
メールの文面ではしおらしく涙マークまで付けた雪だったが、実際は黒い顔をしながら口角を上げていた。
私は今日一匹の密告者となる‥!お前は俺に侮辱感を与えた‥!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/51/31596dafb96a5b9ce22381218a60a5c6.jpg)
雪は有名なフレーズを口ずさみつつ、未だ消えない嫌悪感を持て余していた。
てかマジであの人ヤバイわ‥。ヤ◯ザ?ヤ◯ザなの?
つーか人を怒らせるように話すのが、無駄に上手すぎでしょ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2f/3d/8e6997f53ef47ee7d8e5abf89efdf85b.jpg)
雪が特に引っ掛かっているのは、静香が口に出したあの言葉だった。
てかアンタ達付き合ってどのくらいなのよ?
互いの何をどのくらい分かってるっていうの?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/86/d198c0da36b8947f128876691a8c1281.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/ea/842fde4515b9231385bfcc2822fd4fcb.jpg)
引っ掛かるのは、どこかその言葉が図星だったからだった。
長い年月を共に過ごした静香から言われる言葉だからこそ、説得力があったし、ムカついた。
そして静香が発したもう一つの言葉が、鼓膜の裏にこびりつく。
あたしの弟もゾッコン~
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/82/5fb27b64a18d56932f86eea478155bcc.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/da/fadedbf864a10a45ab70ea0d72aaf0b2.jpg)
こびりついているのは、静香のその言葉だけでは無かった。
瞼の裏に焼き付いているその光景が、再び脳裏に蘇る。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/fc/e74084c836db6349b8c1cdcd99380d67.jpg)
赤い痕跡が心の中に付着して、凝固している。
あの秋の景色の中でそこだけが朱に染まったような、あの時感じたあの感覚‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/c8/a4e5ce6b5f12bed416bee172b49f94bd.jpg)
雪は地下鉄の揺れに身を任せながら、一人その意味について思いを巡らせていた。
心の中に残っている、その痕跡の正体を。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/06/a29c6e6d829a737eccc9b0fd8f21b26f.jpg)
雪は心の中で、その気持ちを言葉にする。
ううん、本当は前から‥多分‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/5d/87164235403e92a8d8f80c8144a71c26.jpg)
河村氏は、私のこと‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/6c/6ae720d8bf9afc6182c59501a2f540ca.jpg)
雪はそのことに、先ほど初めて気づいたわけでは無かった。
本当はずっと前から、彼の想いの欠片を微かに感じていた‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/92/f5f288c455dd8525d07f21d8cd9837c2.jpg)
それきり雪は俯いて、ゴトンゴトンと揺れる地下鉄の地面に目を落としていた。
すると不意に携帯が震え、見てみると先輩からのメールが写真付きで入っている。
夜勤やだよーT T
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/a0/d747f43a5eec90361512fcda1b042d87.jpg)
雪はそれを見て、ふっと微笑んだ。
そして携帯カメラの無音シャッターを選択し、自分の後ろに広がる景色を撮影する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/c6/a60cbfb533ded68b13d9bc4252b093f0.jpg)
写真には自分の顔が半分と、車窓の外に広がる夜景が入った。
下校中。座ってるよーん
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/a6/be0a33e7dde4158ca4099a09b5ffb82b.jpg)
それから二人は、他愛もないやり取りを交わした。
コーヒーでも飲むよと言って落ち込む彼氏と、頑張ってとメッセージを送る彼女。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/b9/935ded93622ff5bb3c173d6030ae4ac0.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/47/97/0629ac0aebea313c3d054449f9e27105.jpg)
雪は彼とのメール交換を終えると、自身の携帯に入っている写真を眺め始めた。
まず最初に表示されたのは、いつか教室内で撮った写真だった。
太一と聡美、同期の仲間が写っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/8a/cd64ec730d391ef93bf06900f759a039.jpg)
同期の女子達と撮った、学食での写真もあった。
日替わり定食を食べる傍ら何気ないことを話して笑い合う、それは平凡な時間の痕跡。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/08/9e1ee56915072d7b505bc99cfbd25c25.jpg)
聡美が撮った写真だろうか、頬杖をついた雪の写真。
勉強をしているのかレポートを書いているのか‥これも日常の一片だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/7d/9ffd45897423b57321a4a88ff0ae6e52.jpg)
そして写真は、先輩から送られて来たものも沢山あった。
彼がインターン先で見ている風景。整理された机の上、PCに貼られたタスクの付箋。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/b8/79c8eab6e83d26661b96459722aeabbb.jpg)
スーツを着て、コーヒーを飲んでいる彼の写真。
今の彼が置かれている、日常の風景だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/b6/471bd45619d1416c836cf6be91284cf4.jpg)
同じインターン生同士で撮られた写真もあった。
皆に囲まれて笑う先輩の姿。
そこに雪の姿は無いけれど、彼の日常の一片が雪の携帯に入っている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/9a/a30d66388e03db98c7fcabf2e8082920.jpg)
雪はインターン生達に囲まれた先輩の姿を見て、こう思った。
先輩、ここでも中心みたい‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/f2/b36d3b2c4e967fc6a15d83a981d3616f.jpg)
雪は笑みを浮かべながら、彼が微笑んでいる写真を見ていた。
いつの間にか彼女の日常の中に、当然のように彼が居る‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/8e/7172cfc9046131ca087c68cb48a0e15f.jpg)
そしていつしか地下鉄の揺れに合わせ、雪はコックリコックリと船を漕いだ。
その平坦な一本道を、地下鉄は雪を乗せて進んで行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<痕跡の正体>でした。
ここの手書きの台詞‥「お前は俺に侮辱感を与えた‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/55/f3e56c6f2a90f30df4994ea361f30ed8.jpg)
という題名の歌がありました。この台詞は、ここから来てるのかな‥?
Verbal Jint - (ft. Koonta)
*追記*
この台詞は映画の台詞が元ネタだそうです^^CitTさんに教えて頂きました~!Thanxsです!
そしてそして‥遂に雪ちゃんが亮さんの気持ちに本格的に気づきましたねぇ‥。
前回の自然の中で時が止まるような大カットは、それに気づいた瞬間だったのですね‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/a0/2993d83ad6481a9cfdd1898ba64b89f0.jpg)
しかしそれにしちゃ、雪ちゃんあんまり動揺してない‥。
亮さん‥ファイティンです‥。
そして‥太一家の夕食会はどうなったんだー‥!見たかった‥orz
次回<知らないところで>です。
人気ブログランキングに参加しました
![](http://image.with2.net/img/banner/banner_21.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/star.gif)