淳は目を見開きながら、先ほど亮が口にした言葉を改めて反復した。
「終わらせる?逃げる?」
「ウンザリだと?」
ギブスを嵌めた右手の指で、テーブルをトンと叩く。
「亮、」
淳は亮の顔を若干覗き込むような姿勢を取りながら、低い声で話を続けた。
「お前がそのままずっと変わらないなら、
今ここを出て行ったとしても、きっとまたいつか同じことを繰り返す」
「高校の時のことを全て俺のせいにして、今頃になってまた絡んで来たようにな」
「あぁ?」
亮は淳が口にしたその言葉に顔を顰めたが、淳は話を止めない。
淳の瞳に宿る暗い闇が、亮の心に陰るそれを映す。
「お前は俺への執着を捨てなきゃならない」
「俺はとっくに乗り越えてる」
「だからお前も、抜け出すんだ」
亮にとって淳のその言葉は、まさに青天の霹靂であった。
ここから去って行くことをけじめとして報告するだけのつもりだったのに、
言われてしまったのだ。”抜け出せ”と。
亮の目に、包帯を巻いた淳の右手が映る。
昔の自分の左手がフラッシュバックし、心の中に憤懣が渦巻き始めた。
震える拳をぐっと握ったまま、亮は「はっ!」と息を吐き捨てる。
「あー‥このガキッ‥いつまで上から目線で来る気だよ」
心の奥に沈めたはずの怒りが、憎悪が、再び亮の胸の内に充満し始める。
人の立場に立つことなど無く、常に高みから人を見下げる、
その淳の問題点は、いつも亮の神経を逆撫でするのだ。
「何から抜け出せって?
お前がオレの手に何したか分かっててほざいてんのか?あぁ?」
怒りの渦巻く瞳で凄む亮。
しかし淳は、厳しい目付きを緩ませぬまま話を続けた。
「何を考えてるのか知らないが、もうこっちに絡んで来ないと言うからには、
まともに暮らして行く意志はあるってことだな」
「はぁ?!どういうことだよ?!」
「もし留学する気があるんなら父さんに言えばいいし、
そうでなければ自力で生きていけばいい」「あぁ?!」
亮は机をバンッと叩くと、怒りにまかせて大声を上げた。
店中の客が二人の方を見ている。
「せっかく後腐れなく出て行こうとしたのによぉ!偉そうなお前の話聞いてたら気が変になっちまうぜ!」
「まともに生きて行けだのなんだの、いちいち命令してくんじゃねーよ!!
耳が痛ぇの通り越して鼓膜爆発しちまうっつーの!!」
亮は仁王立ちになりながら淳に向けて指を刺した。
表情を変えようとしないその男に、苛立ちの募るまま言葉をぶつける。
「それじゃお前はまともに生きてるって言えんのかよ?!
このまま死ぬまで何でも思い通りにして生きて行けるとでも思ってんのか?!」
「おい、いい加減にしろよマジで!」
”世の中がいつもお前の思い通りになると思うな”
いつか聞いたそのセリフを受けても、淳は微動だにしなかった。
亮が根本から思い込んでいるその誤解を、冷静に口に出す。
「お前の手に棒を振り下ろしたのは俺じゃない。お前はいつもピントがズレてるんだよ」
「あぁ?!」
「耳が痛いか?俺は同じことばかり言い過ぎて口が痛いけどな」
「てめぇ、」と言いながら亮は再び机を叩いた。
けれど淳は立ち上がろうともせず、冷静な口調で亮の問題点を責める。
「けどお前の耳が痛いのは、俺の言うことが間違って無いからだろ?
どうしてお前はあの男じゃなく、俺に対して怒っている?」
「お前、どうしてあの時ああだったんだ?」
「どうして」
淳が言及した過去の出来事。
亮と淳の記憶が、高校三年生の時へと急激に引き戻される。
淳があの時どう思っていたのか、最後の回想がこれから語られようとしていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<互いの問題点>でした。
うーん‥この時点では淳も亮もどちらも言葉足らずですよね‥。
海面から出た部分の氷山を削り合っても、海面下に深いわだかまりという氷山がある以上、
何も解決はしない気がします。
次回からは、淳の視点での高校時代の回想編に入るとのことなので、そこで色々語られるのかもです。
(雪ちゃんは当分出て来ないそうですよ〜(^^;))
次回<淳と亮>過去回想(1)ー本音ー です。
4部40話、この先の淳の回想部分が短いので、
41話がアップされてからくっつけて記事をアップしたいと考えています。
ですので次の更新は金曜あたりかな? よろしくおねがいします〜。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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「ウンザリだと?」
ギブスを嵌めた右手の指で、テーブルをトンと叩く。
「亮、」
淳は亮の顔を若干覗き込むような姿勢を取りながら、低い声で話を続けた。
「お前がそのままずっと変わらないなら、
今ここを出て行ったとしても、きっとまたいつか同じことを繰り返す」
「高校の時のことを全て俺のせいにして、今頃になってまた絡んで来たようにな」
「あぁ?」
亮は淳が口にしたその言葉に顔を顰めたが、淳は話を止めない。
淳の瞳に宿る暗い闇が、亮の心に陰るそれを映す。
「お前は俺への執着を捨てなきゃならない」
「俺はとっくに乗り越えてる」
「だからお前も、抜け出すんだ」
亮にとって淳のその言葉は、まさに青天の霹靂であった。
ここから去って行くことをけじめとして報告するだけのつもりだったのに、
言われてしまったのだ。”抜け出せ”と。
亮の目に、包帯を巻いた淳の右手が映る。
昔の自分の左手がフラッシュバックし、心の中に憤懣が渦巻き始めた。
震える拳をぐっと握ったまま、亮は「はっ!」と息を吐き捨てる。
「あー‥このガキッ‥いつまで上から目線で来る気だよ」
心の奥に沈めたはずの怒りが、憎悪が、再び亮の胸の内に充満し始める。
人の立場に立つことなど無く、常に高みから人を見下げる、
その淳の問題点は、いつも亮の神経を逆撫でするのだ。
「何から抜け出せって?
お前がオレの手に何したか分かっててほざいてんのか?あぁ?」
怒りの渦巻く瞳で凄む亮。
しかし淳は、厳しい目付きを緩ませぬまま話を続けた。
「何を考えてるのか知らないが、もうこっちに絡んで来ないと言うからには、
まともに暮らして行く意志はあるってことだな」
「はぁ?!どういうことだよ?!」
「もし留学する気があるんなら父さんに言えばいいし、
そうでなければ自力で生きていけばいい」「あぁ?!」
亮は机をバンッと叩くと、怒りにまかせて大声を上げた。
店中の客が二人の方を見ている。
「せっかく後腐れなく出て行こうとしたのによぉ!偉そうなお前の話聞いてたら気が変になっちまうぜ!」
「まともに生きて行けだのなんだの、いちいち命令してくんじゃねーよ!!
耳が痛ぇの通り越して鼓膜爆発しちまうっつーの!!」
亮は仁王立ちになりながら淳に向けて指を刺した。
表情を変えようとしないその男に、苛立ちの募るまま言葉をぶつける。
「それじゃお前はまともに生きてるって言えんのかよ?!
このまま死ぬまで何でも思い通りにして生きて行けるとでも思ってんのか?!」
「おい、いい加減にしろよマジで!」
”世の中がいつもお前の思い通りになると思うな”
いつか聞いたそのセリフを受けても、淳は微動だにしなかった。
亮が根本から思い込んでいるその誤解を、冷静に口に出す。
「お前の手に棒を振り下ろしたのは俺じゃない。お前はいつもピントがズレてるんだよ」
「あぁ?!」
「耳が痛いか?俺は同じことばかり言い過ぎて口が痛いけどな」
「てめぇ、」と言いながら亮は再び机を叩いた。
けれど淳は立ち上がろうともせず、冷静な口調で亮の問題点を責める。
「けどお前の耳が痛いのは、俺の言うことが間違って無いからだろ?
どうしてお前はあの男じゃなく、俺に対して怒っている?」
「お前、どうしてあの時ああだったんだ?」
「どうして」
淳が言及した過去の出来事。
亮と淳の記憶が、高校三年生の時へと急激に引き戻される。
淳があの時どう思っていたのか、最後の回想がこれから語られようとしていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<互いの問題点>でした。
うーん‥この時点では淳も亮もどちらも言葉足らずですよね‥。
海面から出た部分の氷山を削り合っても、海面下に深いわだかまりという氷山がある以上、
何も解決はしない気がします。
次回からは、淳の視点での高校時代の回想編に入るとのことなので、そこで色々語られるのかもです。
(雪ちゃんは当分出て来ないそうですよ〜(^^;))
次回<淳と亮>過去回想(1)ー本音ー です。
4部40話、この先の淳の回想部分が短いので、
41話がアップされてからくっつけて記事をアップしたいと考えています。
ですので次の更新は金曜あたりかな? よろしくおねがいします〜。
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