「これ、レプリカですから」
「は‥?どういう‥ことだ?」
淳の口から突如聞かされた真実。
目を丸くする健太と淳との間に、数ヶ月前の記憶が蘇った。
「いや〜かっこいいね。どこのやつ?高いやつなんだろ?な?」
淳が付けて来た新しい時計を見て、皆の前で大声でそう問う健太。
あの時淳はこう答えた。
「これ良いでしょう?雪と露店を見て回ってたんですが、
彼女がサプライズプレゼントでくれたんです」
それはすっかり高級ブランドのイメージが定着していた彼のイメージを覆す、わりと衝撃的な出来事だった。
彼女からの時計を嬉しそうに身に着ける淳を見て周りはざわつき、柳でさえ不思議そうな顔をしていたあの時。
「露店のってことは、高いヤツじゃねーってことだよな?」
「値段とか重要じゃないから」「お前ってマジ時計好きな〜」
それが、柳を決心させた。
「これ」
「母さんが倒れた時もそうだし、色々世話になったからこれは俺から」
前々から柳は、常々淳に”礼がしたい”と言っていた。
そしてあの時雪からのプレゼントの時計を付ける淳を見て、それをあげることを思いついたのだろう。
「お前が好きなデザインと似たやつだから!
まぁ本物じゃねーけど‥これが今俺に出来る最大限の礼だよ!」
それが、淳と柳の間にあるカラクリだった。
明かされたその真実に、健太は驚きを隠せず固まっている。
「‥レプリカ?」
次第に、膝に置いた手に力がこもり始めた。
怒りは沸々と湧き上がり、それは健太の身体を細かく震わせる。
「てことは‥」
「はい。これで十分です。本物だと思ってたんですか?」
「よく時計を見てるのでお詳しいのかと思ってましたが、
本物と偽物の区別も出来てなかったんですね」
まるで高い所から見下ろすかのように、淳は淡々とそう言ってのけた。
それが健太に火をつける。
「このクソ野郎!今なんつったこらぁ!!」
「お前わざと言わなかったな?!
俺がずっと時計代負けてくれって言ってた時も黙ってただろーが!数十万になるって脅してよぉ!!」
「そのために俺は今まで‥!」
淳の胸ぐらを掴みながら、健太はその怒りの矛先を真っ直ぐに淳に向けた。
しかし淳は全くの想定内だと言わんばかりに、微塵も取り乱さずに切り返す。
「どうして怒るんです?」
「いつもボンボンだ何だと言って、
俺が高い物ばかり身に付けると穿った見方をして来たのは健太先輩じゃないですか」
「値段とは関係なしに、
プレゼントに頂いた大切な時計だと言ったはずです」
言い終わると、淳は掴まれたその手を強い力で引き離した。
バッ!
「先輩」
身なりを整えながら、淳は冷淡なトーンで話を続ける。
「先輩だからと印籠翳して威張る前に、
雪を始めとする後輩達があなたのその浅はかな行動のせいで今までどれだけ被害を被って来たのか、
今一度考えてみてはいかがですか」
「ではこれで失礼します。仕事抜けて来てるので」
そう言って淳が背を向けようとした時だった。
俯いていた健太が、グッと拳を握ったのは。
「このガキッ‥!」
「柳瀬」
迫り来る健太に向かって、淳は低い声で呼び掛けた。
半身を残したままのその佇まいに備わった威圧感が、健太の足を止める。
「ここで一線を越えれば、治療費どころじゃ済まないぞ。お前が望む一握の恩情すら無くなる」
「よく考えろ」
淳はそう言い捨て、背を向けた。
振り上げた拳は行き場を失い、健太はただその場で項垂れる。
地面には、突き返された封筒が落ちていた。
あれだけ必死に稼いだ金が、嘲笑うかのように健太を見ている。
まるで稲妻のように、怒りは光速で健太の身体を駆け抜けた。
「この狐野郎‥っ!テメーみたいな野郎が一番嫌いだっ‥!!」
音速のように、感情は遅れて言葉になる。
しかしその言葉とて、到底淳には届かない。
「何を今更」
淳はそう言ってゆるりと口角を上げた。
そんなこと、とっくの昔から知っていた、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<制裁(4)>でした。
最後の「今更」!!
31話で柳から「お前健太先輩に何かした?お前のことあんなに可愛がってたのに」と言われた後、
淳が同じことを言ってました。
「何を今更」
伏線ーー!!!なんとこんな昔の伏線をここで回収するなんて‥。スンキさん、恐ろしい子!!(白目)
淳の時計を何かと見ていた健太の描写も、
この仕返しの伏線だったなんて‥。
このシーンなんて16話ですよ。六年越しの伏線回収に白目が止まりません‥。
いやしかし、黒淳完全復活の回でしたね。
スッキリはしますが、先輩いつか刺されるんじゃないかとヒヤヒヤです‥。
健太は自らの落ち度によっての自爆‥。これで雪ちゃんを疲弊させる人全てが駆逐されましたよ‥。ひぃぃぃ
皆さんさようなら‥
次回は<本意と不本意>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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「は‥?どういう‥ことだ?」
淳の口から突如聞かされた真実。
目を丸くする健太と淳との間に、数ヶ月前の記憶が蘇った。
「いや〜かっこいいね。どこのやつ?高いやつなんだろ?な?」
淳が付けて来た新しい時計を見て、皆の前で大声でそう問う健太。
あの時淳はこう答えた。
「これ良いでしょう?雪と露店を見て回ってたんですが、
彼女がサプライズプレゼントでくれたんです」
それはすっかり高級ブランドのイメージが定着していた彼のイメージを覆す、わりと衝撃的な出来事だった。
彼女からの時計を嬉しそうに身に着ける淳を見て周りはざわつき、柳でさえ不思議そうな顔をしていたあの時。
「露店のってことは、高いヤツじゃねーってことだよな?」
「値段とか重要じゃないから」「お前ってマジ時計好きな〜」
それが、柳を決心させた。
「これ」
「母さんが倒れた時もそうだし、色々世話になったからこれは俺から」
前々から柳は、常々淳に”礼がしたい”と言っていた。
そしてあの時雪からのプレゼントの時計を付ける淳を見て、それをあげることを思いついたのだろう。
「お前が好きなデザインと似たやつだから!
まぁ本物じゃねーけど‥これが今俺に出来る最大限の礼だよ!」
それが、淳と柳の間にあるカラクリだった。
明かされたその真実に、健太は驚きを隠せず固まっている。
「‥レプリカ?」
次第に、膝に置いた手に力がこもり始めた。
怒りは沸々と湧き上がり、それは健太の身体を細かく震わせる。
「てことは‥」
「はい。これで十分です。本物だと思ってたんですか?」
「よく時計を見てるのでお詳しいのかと思ってましたが、
本物と偽物の区別も出来てなかったんですね」
まるで高い所から見下ろすかのように、淳は淡々とそう言ってのけた。
それが健太に火をつける。
「このクソ野郎!今なんつったこらぁ!!」
「お前わざと言わなかったな?!
俺がずっと時計代負けてくれって言ってた時も黙ってただろーが!数十万になるって脅してよぉ!!」
「そのために俺は今まで‥!」
淳の胸ぐらを掴みながら、健太はその怒りの矛先を真っ直ぐに淳に向けた。
しかし淳は全くの想定内だと言わんばかりに、微塵も取り乱さずに切り返す。
「どうして怒るんです?」
「いつもボンボンだ何だと言って、
俺が高い物ばかり身に付けると穿った見方をして来たのは健太先輩じゃないですか」
「値段とは関係なしに、
プレゼントに頂いた大切な時計だと言ったはずです」
言い終わると、淳は掴まれたその手を強い力で引き離した。
バッ!
「先輩」
身なりを整えながら、淳は冷淡なトーンで話を続ける。
「先輩だからと印籠翳して威張る前に、
雪を始めとする後輩達があなたのその浅はかな行動のせいで今までどれだけ被害を被って来たのか、
今一度考えてみてはいかがですか」
「ではこれで失礼します。仕事抜けて来てるので」
そう言って淳が背を向けようとした時だった。
俯いていた健太が、グッと拳を握ったのは。
「このガキッ‥!」
「柳瀬」
迫り来る健太に向かって、淳は低い声で呼び掛けた。
半身を残したままのその佇まいに備わった威圧感が、健太の足を止める。
「ここで一線を越えれば、治療費どころじゃ済まないぞ。お前が望む一握の恩情すら無くなる」
「よく考えろ」
淳はそう言い捨て、背を向けた。
振り上げた拳は行き場を失い、健太はただその場で項垂れる。
地面には、突き返された封筒が落ちていた。
あれだけ必死に稼いだ金が、嘲笑うかのように健太を見ている。
まるで稲妻のように、怒りは光速で健太の身体を駆け抜けた。
「この狐野郎‥っ!テメーみたいな野郎が一番嫌いだっ‥!!」
音速のように、感情は遅れて言葉になる。
しかしその言葉とて、到底淳には届かない。
「何を今更」
淳はそう言ってゆるりと口角を上げた。
そんなこと、とっくの昔から知っていた、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<制裁(4)>でした。
最後の「今更」!!
31話で柳から「お前健太先輩に何かした?お前のことあんなに可愛がってたのに」と言われた後、
淳が同じことを言ってました。
「何を今更」
伏線ーー!!!なんとこんな昔の伏線をここで回収するなんて‥。スンキさん、恐ろしい子!!(白目)
淳の時計を何かと見ていた健太の描写も、
この仕返しの伏線だったなんて‥。
このシーンなんて16話ですよ。六年越しの伏線回収に白目が止まりません‥。
いやしかし、黒淳完全復活の回でしたね。
スッキリはしますが、先輩いつか刺されるんじゃないかとヒヤヒヤです‥。
健太は自らの落ち度によっての自爆‥。これで雪ちゃんを疲弊させる人全てが駆逐されましたよ‥。ひぃぃぃ
皆さんさようなら‥
次回は<本意と不本意>です。
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