バンッ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/95/ad910a5ee11f72bc41e3b50bc6679732.jpg)
河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。
そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/b6/36a45694406e5442bfd1d4dbe9a954e4.jpg)
先程目にしたあの諍い。
あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/98/e94d29fa7e1e2ef4a79d21645bd92171.jpg)
いくつになっても血の気の多い姉。
亮は声を荒げて彼女を責める。
「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/14/5733f6aff6197bbe91a9fd3b2ec3e6d4.jpg)
「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/10/6a1037da60c36d8b8780f002408cde59.jpg)
佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。
ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。
「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」
「知るかよ‥クソ野郎‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/d0/f8c30c47d6f210b8312a93fc20a40394.jpg)
姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。
亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。
「静香!おいっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/56/14328c762a14aa1e3dd88fb65190d003.jpg)
「姉ちゃん!頼むよっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/3a/6890445f955935780d7416d8152ad4cc.jpg)
その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。
亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。
「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/9c/a8c2c5511b75129b149d4b36df568864.jpg)
「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/c7/de4b99569cb94ee9cd1b3bea6780ff83.jpg)
消え入りそうな声でそう呟く亮。
しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。
「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」
「あー‥ムカツク」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/22/78cf3309d3c8a81084b74f97ea593226.jpg)
身を捩ってこの場から逃れようとする静香。
亮は必死に言い聞かせようとした。
「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥
」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/84/a5b94c9e930ba5dcebbe83d5a2c04307.jpg)
しかしその言葉は静香には届かない。
亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/25/0dfbe776b43f5ed3372428797d3bfaa3.jpg)
亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。
「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。
そんな風に、生きたくなったんだよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/de/fa7f9660883d7ba58a1fc2908798a895.jpg)
言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。
この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。
「ちゃんとした人間になりてぇんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/31/178a1c3cc14df33535731919927fabe6.jpg)
「オレ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/39/af27b770d79228c357a781103cac6d48.jpg)
それが彼の願いだった。
今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/12/5056093d654fca36edfd25378b797e80.jpg)
けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。
バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c7/d9fab5f47e535fe9e7cff43395a57603.jpg)
亮は再び顔を上げた。
逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。
「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/43/225d60ba7be26796d6c8dfa8a7bd75c4.jpg)
真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。
「なぁ!頼むから‥!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/3a/10411d3bc179fbc52817bf8e7be0cfcf.jpg)
陽の下を堂々と歩きたい。
「なぁっ‥!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/8a/9843edccfd542932cce871513492f14d.jpg)
その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼の願い>でした。
少し短めの記事で失礼しました。
亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。
でも全然静香に響いてないですよね‥。
「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_lose_s.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/33/db70ee2f410fee66d736f70ec42df730.jpg)
亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。
この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。
次回は<事件勃発>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
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河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。
そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/b6/36a45694406e5442bfd1d4dbe9a954e4.jpg)
先程目にしたあの諍い。
あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/98/e94d29fa7e1e2ef4a79d21645bd92171.jpg)
いくつになっても血の気の多い姉。
亮は声を荒げて彼女を責める。
「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/14/5733f6aff6197bbe91a9fd3b2ec3e6d4.jpg)
「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/10/6a1037da60c36d8b8780f002408cde59.jpg)
佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。
ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。
「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」
「知るかよ‥クソ野郎‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/d0/f8c30c47d6f210b8312a93fc20a40394.jpg)
姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。
亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。
「静香!おいっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/56/14328c762a14aa1e3dd88fb65190d003.jpg)
「姉ちゃん!頼むよっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/3a/6890445f955935780d7416d8152ad4cc.jpg)
その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。
亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。
「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/9c/a8c2c5511b75129b149d4b36df568864.jpg)
「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/c7/de4b99569cb94ee9cd1b3bea6780ff83.jpg)
消え入りそうな声でそう呟く亮。
しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。
「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」
「あー‥ムカツク」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/22/78cf3309d3c8a81084b74f97ea593226.jpg)
身を捩ってこの場から逃れようとする静香。
亮は必死に言い聞かせようとした。
「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0152.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/84/a5b94c9e930ba5dcebbe83d5a2c04307.jpg)
しかしその言葉は静香には届かない。
亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/25/0dfbe776b43f5ed3372428797d3bfaa3.jpg)
亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。
「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。
そんな風に、生きたくなったんだよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/de/fa7f9660883d7ba58a1fc2908798a895.jpg)
言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。
この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。
「ちゃんとした人間になりてぇんだ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/31/178a1c3cc14df33535731919927fabe6.jpg)
「オレ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/39/af27b770d79228c357a781103cac6d48.jpg)
それが彼の願いだった。
今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/12/5056093d654fca36edfd25378b797e80.jpg)
けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。
バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/c7/d9fab5f47e535fe9e7cff43395a57603.jpg)
亮は再び顔を上げた。
逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。
「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/43/225d60ba7be26796d6c8dfa8a7bd75c4.jpg)
真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。
「なぁ!頼むから‥!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/3a/10411d3bc179fbc52817bf8e7be0cfcf.jpg)
陽の下を堂々と歩きたい。
「なぁっ‥!!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/8a/9843edccfd542932cce871513492f14d.jpg)
その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼の願い>でした。
少し短めの記事で失礼しました。
亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。
でも全然静香に響いてないですよね‥。
「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_lose_s.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/33/db70ee2f410fee66d736f70ec42df730.jpg)
亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。
この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。
次回は<事件勃発>です。
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