Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪>災難の始まり(2)

2013-06-02 01:00:00 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
事務室の助手の遠藤さんが、レポートの提出期限を三日間延ばしてくれると言った。



雪は三日間では不可能だと抗議したが、

居眠りする奴が悪いとバッサリ却下された。

すると教室の向こう側から、青田先輩がひょっこりと顔を出した。

「それなら俺が平井にリサイクルに出すように頼んだプリントのはずです。

あの子がしくじったみたいですね」



「俺がやるべきだったのに、丁度手が込んでたんだ。雪ちゃん、ごめんな」




よかったら手伝おうか、と彼は言いかけたが、

違う人の用事を言いつけられてここに来ているらしく、また教室の向こう側へと戻っていった。

遠藤さんからも、さっさと出てってくれよと邪険にされた。



雪は事務所の前で立ち尽くした。



それもそのはずだ。とばっちりのせいで三日間の徹夜が確定したのだから。

偶然か否か、平井和美がそこに通りかかる。



雪は和美の方へツカツカと歩み寄ると、和美が先に口を開いた。

「期限はちゃんともらえたの?あたしのせいで悪かったわね。

でも居眠りさえしてなかったら、こんなことも起きなかったのにね。もどかしいわ。」




その悪びれない態度に、雪の腹の中は沸々と煮えくり返り、言いたいことがモクモクと膨れ上がった。

本当に故意じゃないのか?故意なのか?

もしや青田のせいで? 青田のせいならどうしろっていうの? てか彼女でもないくせになんなの。

あー腹立つ。時間ないし眠いし他の課題も山積みなのに、これで成績落ちたらあたしの奨学金どうしてくれるわけ?



誤解が解けない以上この嫌がらせは続くと見た。絶対そうだ。

それならこの状況だけじゃなく全部をはっきりさせるべきだ。


肚の決まった雪は、そういう馬鹿げた嫌がらせはやめてくれとハッキリ言った。



青田先輩には全く興味はないし、ゼミも本当に偶然だったし、そもそももう辞めた。

だからこれ以上変な誤解をしないでほしいと、彼女の目を見てまっすぐに言い切った。


しかし彼女には全く伝わらず、却って逆効果だったんじゃないかと思うほど言い返してきた。

「何言ってるの?ちょっと今あなたあたしのこと変人扱いしてるわけ?

プリントの話から何で急に淳先輩の話が出てくるの?

点数が欲しいのは分かるけど、人のミスをいいことに人格的なことまで侮辱するなんてひどいじゃない。見損なったわ」




雪は自らを奮い立たせ、怯むことなくもう一度念を押した。

「何しろほんっっとうに興味ないから、私を巻き込むのはもうやめて」



ようやく信じたかのように見えた和美の横を、あの男が通りかかった。

「二人そんなとこで何してるの?授業がまだ残ってるんだな」



彼に気がついた和美は、一緒に帰りましょうと駆け寄っていった。

しかし彼はそれに構わず、雪に笑いかけて言った。

「そうだ雪ちゃん。後でもし必要なら連絡してくれていいから。課題手伝うよ。やっぱり俺のせいでもあるし、気になってさ」



和美の表情が変わった。

私なら大丈夫ですと、気にしないでくださいと、そう言いながらも冷や汗が背中を伝う。



「強制ではないし、気軽にな」



そう微笑む彼に、雪は「早く行けっ」と願いながら、大丈夫です気にしないで下さいと繰り返した。

すると和美は雪の方へ振り返り、嘲笑する。


「あんた賢いのは知ってたけど、ここまでとはねー‥まんまと騙されるとこだった」



そう言い残して、淳の方へ走り去って行った。



雪は苛つきながら、帰路を歩いた。

くだらない、そうだよ全部私が悪いんだよ!



そう愚痴りながら、ある思いで胸の中は一杯だった。

なんであのタイミングで現れるの?偶然?それとも運が悪いのか?

頭の中ではあの男の言葉が反響している。

「後でもし必要なら連絡してくれていいから。課題手伝うよ」



雪の胸中は苛つきで充満していた。

自分がコントロール出来ない所での波紋に、腹が立ってしょうがなかった。

心にもないこと言いやがって!誰のせいでこうなったと思ってんだよ!



偶然にしては出来すぎ、故意にしては仕組まれ過ぎている。

雪は正体不明の不穏な感情を持て余し、そのまま早足で街を歩いて行った。


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<雪>災難の始まり(3)へ続きます。


<雪>災難の始まり(1)

2013-06-01 01:00:00 | 雪2年(復学~球技大会前まで)


あの自主ゼミから少し経ったある日、雪は頭を抱えていた。



授業中寝てしまったせいで、ノートに書かれた字はミミズ状態で判別不可能。

記憶が薄れる前に要点だけをまとめてしまおうと、授業が終わった後ノート整理をしていた時だった。



突然プリントを差し出された。

視線を上げると、目の前に平井和美が立っていた。

「寝てたの?このプリント見ながら課題するのよ。どうぞ」



プリントを受け取り、やることがまた増えた‥とゲッソリしていると、

見下ろしながらこう言った。

「あんた、知ってたんでしょ」



「え?」



「だから自分だけ抜けてあっち行ったんでしょ?さぞ楽しかったでしょうね」


そう言われて、ようやく思い出す。



あ‥あのクソゼミのことか‥。


あれはマジで誤解だから‥と両手を上げて弁解すると、どこから来たのか横山翔が隣に座ってきた。

やめとけばいいのに、挑発するような不敵さで話し始める。


「だ~から後悔する前にこっち来いって言っただろ?」



「お前が一方的に青田先輩に頼んだみたいだけど、

先輩はハナからお前んとこに行く気なんてなかったみたいだぜ。だっせぇ」




空気が冷えきり、その後二人は言い合いを始める。

実は横山は、以前は和美に言い寄っていて、それに対して和美はあるポスターを大学の掲示板に張り出した。

<精神的かつ時間的な被害を及ぼし、友人との信頼関係を壊そうとした横山翔さんの行為を告発します。

このポスターは横山さんが謝罪をするまで剥がすつもりはありません>




横山と和美はこれを機に犬猿の仲になった。

そして今もそれは続く。



二人は声を張り上げて言い争う。

聡美とあんたがうまくいくわけないとなじる和美に、調子のんじゃねぇと怒鳴る横山。

雪は折を見てその場から逃げ出した。




その後廊下まで横山が追いかけてきて、聡美と上手くいくようにとりはからい、

和美に恥をかかせる手伝いをしてくれと言ってきた。

その代わり青田先輩とうまくいくよう手伝うからと。

暴走し気味の横山に最初は意見していたが、途中から呆れ返り、最後は無視してやり過ごした。



翌日、聡美に昨日あったことを報告していた時だった。



彼女はあることに気がつく。

「あれ?雪の持ってるプリント、課題のタイトル違くない?」



どういうこと?と問う雪に聡美は、

元々出た課題に追加項目が出て、タイトルごと課題内容がそっくり変わったというのだ。

どうやら雪が寝ていた時にされた変更らしく、聡美の持っているプリントは雪には見覚えのないものだった。




このプリントを持ってきたのは‥










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<雪>災難の始まり(2)へ続きます。


自主ゼミ開講<淳の場合>(2)

2013-05-31 01:00:00 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
赤山が席を立った。

バタバタと逃げるように。



残ったメンバーも休憩時間に入り、柳はタバコを吸ってくると席を外した。



「なぁ、赤山のヤツ悪くないだろ?うるさくもないし。気も使えるし、いい子だぜ?」



「そうなのか?」




柳は後輩と共に教室を出て行った。


つまらない世間話をしながら。








「ぷっ」

















ゼミは終わり、皆一様に支度をして教室を出る。

淳がドアから出た時、その後輩はワックスの加減で滑りやすい床に足を取られた。




転ばぬように、強く肩を掴む。






「大丈夫?」





「今度からは気をつけろよ」




















それは心配という殻を被った警告

嘲笑という罪を犯した彼女への報復

受けた傷は必ず傷つけ返すという

彼の核(コア)









青田淳の、水面下の攻撃が始まった。



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新歓飲みが物語の始まりだとしたら、雪と淳の関係の始まりはこの自主ゼミ開講ではないでしょうか。

雪は先輩の可笑しい想像をして、思わず笑ってしまったわけですが、

淳は自分を嘲笑っていると思ってしまった。

互いの誤解がこれからの人間関係を大きく動かしていくわけですが、

雪はともかく先輩がね‥。



続く学生生活の中で、雪にだんだんと災難が降り掛かっていきます。

自主ゼミ開講<淳の場合>(1)

2013-05-30 01:00:00 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
淳と同学年の佐藤広隆が、英会話の自主ゼミをやるというので柳から頼まれて参加した。

留学経験もある淳には特にゼミに参加する必要もないのだが、他でもない柳の頼みなので断れなかったのだ。



気がついたら、ゼミは騒がしくなっていた。

「淳、参加してくれてサンキューな!」



柳が横でヘラヘラと笑う。

そろそろ勉強も頑張らなくちゃな~と口だけは達者な横山翔とその友人、

何も言わないあの‥赤山後輩。

そして比較的好成績を保っている佐藤。

しかし佐藤は、入学してからずっと淳に対して、喧嘩腰か不快感を表すかのどちらかだった。



危害を加えてくるわけではないが、気持ちのよいものではない。

自然と溜息も出る。






教室では横山が空気も読めず騒ぎ立てている。

電話をしてきた拍子に、事務室の助手たちがロッカー整理をしていたのでそのことを横山に伝えた。

彼は一目散に教室を後にすると、ノイズはいくらかマシになった。



柳と談笑していると、目の端にあの後輩が映った。






彼女は不機嫌だった。






睨んでいたかと思えば、




意見も出さずにヘラヘラとするだけで、



乾いた愛想笑いばかりを浮かべた。


嫌なタイプだ。関わりたくはない。







退屈な時間。



しかし何かと引っかかった。











突き刺さる視線が、ピリピリと障る。


淳は彼女を見ないようにした。





柳の質問に答え、



彼から賛辞を受ける。





佐藤は思い通りに行かない現状に苛ついて、

やる気もなく寝る奴も居る。







退屈が蔓延する。

どこへ行ったって

何をしてたって

つまらなくって仕方がないのに

上手く繕った自分の姿を

人々は簡単に信用して

人間関係は思い通りに進む

これまでだってそうして来た

これからだって‥








「ぷっ」















開け放した耳から聞こえてきた、




小さなノイズ。




あちらの方から、


















退屈を引き裂く、小さな嘲笑。







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自主ゼミ開講<淳の場合>(2)へ続きます。






自主ゼミ開講<雪の場合>(3)

2013-05-28 15:58:11 | 雪2年(復学~球技大会前まで)
「私‥ちょっとお手洗い行って来ます」



雪は逃げるように席を立った。

雪の居なくなった教室では、男衆も五分間の休憩に入った。





冷や汗が止まらない。







先ほどの視線が蘇る。







見られた。







ガタガタと手が震える。







気付かれた?バカにしてるのを?


‥いや全部だ。最初から最後まで



全部











雪は鏡に映った自分に、ニッと笑いかけた。



こんな風に、一人で笑ってたから見てただけでしょ。

元々良くは思われてなかったんだし、絶対そうだ。


雪は思い直し、トイレを後にする。


すると、


カツカツカツ


足音が近づいて来た。






影がこちらに向かって歩んでくる。






まさか‥







「ぎゃっ!」



佐藤先輩が飛び上がって驚いた。

「お前なんでそんなとこに突っ立ってるんだよ!」と、よほどびっくりしたのか、ブルブルと震えている。

雪は勘ぐり過ぎた‥と安堵のため息を漏らした。



それを見て、佐藤先輩が舌打ちをする。

「お前、青田じゃなくてガッカリしてんだろ。」



はい?と口にする雪に構うこと無く、佐藤先輩は雪をなじった。

「トボケるなよ。どうせ横山から聞いて入って来たんだろ。ペラペラしゃべりやがって‥」

佐藤先輩はそう言うなり、せいぜい頑張ってくれよと踵を返した。

雪はあの人あんなだったっけ?と目を丸くする。



きっとストレスが溜まっているのだろう。


不穏な空気は、皆の歯車を少しずつ狂わせていた。




教室に戻りつつも、ざわついた胸の中は静まることがなかった。

嫌な予感がする‥。何もなければいいけど‥






ようやく自主ゼミが終わり、みな一斉に帰り支度を始める。



ホストである佐藤先輩に構うことなく、ビリヤードへ行こうかと柳先輩と横山の友人は談笑したりした。

雪はそそくさと出口に向かった。

青田先輩はまだ荷物の整理をしていて、雪は彼を追い越して教室を出た。



トボトボと歩いていると、

またもや床に足を取られた。




わぁっ?!







「大丈夫?」





「ここ、ちゃんとワックスかかってないんだよ」

















「今度からは気をつけろよ」






「な?」












グッと、肩に置かれた手に力がこもった。





よっと、と青田先輩は雪の体を起こして、滑らないように立たせてやった。


「それじゃあね」




ニッコリと笑う彼の後ろで、

「おお~赤山ちゃんやったじゃーん!」と、柳先輩が雪の役得をからかった。


















足元から波のように、寒気が立ち上ってくる。


怪しい雲行きが漂い、








ザワザワと蝕まれるように、全身に鳥肌が立った。










その時改めて省みたのだ。



私の迂闊な過ちを。









雪の肩に、手の圧迫感が残っていた。






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<雪の場合>は、これで終わりです。

結構いろんな人が出て来ましたね。

人々のランクの差とか、変な嫉妬や誤解とか、誰しもが経験したことがあるような

気まずさと憂鬱が詰まっていました。

しかしなんといっても最後の青田先輩ですよね‥。

あの”警告”を言うために雪の後から教室を出たんだとしたら、超怖いっすね!


次回は青田先輩の自主ゼミ開講<淳の場合>です。