『食ひ改めよ -無病健康法-』(久留弘三:著、体行会:1937年刊)という本をご紹介しています。今回は第5回目です。
◆身土不二(しんどふじ)
食養道では、「身土不二」ということをやかましく言うそうです。その意味は、「身」(=生命、生物)と「土」(=環境)は同一根源から成り立っているもので、両者は決して別個の存在ではない、すなわち一つであって二つではない、ということだそうです。
著者の久留弘三氏は、これを次のように哲学的な思想として語っています。(旧字体を修正しています)
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土によって食物が育ち、生物はその食物によって生命を得るのであるから、生物は畢竟(ひっきょう)「土」即ち「環境」の所産である。
土を離れては生命はあり得ない。
そこで人間は常に環境に支配されているもので、この目に見えない自然の法則を守るものは、健康と長寿が与えられ、これを破るものは忽(たちま)ち病弱、夭死(ようし)が与えられるというのである。
而(しか)してこの観方は私共に誠に宏大無辺の人生観、世界観、宇宙観を与える。
即ち人間は土、環境の所産である。
然(しか)もその環境は宇宙全体に関連している。
そこで、我々の生命、肉体は直ちに宇宙に通じている。
吾々(われわれ)は宇宙と共に日夜呼吸している。
宇宙と我々との関係は「全体」と「個」との関係である。
然(しか)らば宇宙が無終である如く、吾々(われわれ)の生命も亦(また)無終である。
宇宙と共に私共には永久の生命がある。
斯様(かよう)に考えて来るとき豁然(かつぜん)として安心立命の境地が拓けて来るのである。
私共はこの信念を得て初めて食養道のいう「自然を生きる」ことの如何(いか)に尊いものであるかが判り、真剣に食養道を体行することが出来るのである。
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なかなか奥が深いですね。そして、この「身土不二」の原則に従う食物の摂り方として、久留氏は次の3つを挙げています。
1.土地古来の産物を主食物とし、副産物を副食とすべし
2.副産物には、その土地のものを季節に従い、出来得るかぎり自然に調理して食すべし
3.異物、珍味を避けること
食事というのはあまりに日常的なため、普段はあまり何を食べるべきか意識せず、外国産の食材も当たり前に買ってしまいますが、こういう考えを聞かされると、反省すべき点が多いように思われます。
次回は、食物で病気は治るというお話です。