しんぶん赤旗より 2012年10月8日(月)
復興予算 スパイ衛星関連に流用
復旧費計上 大震災時、役立たず
(写真)茨城県行方市にある情報収集衛星の地上施設、内閣衛星情報センター北浦副センター
東日本大震災直後に救援・復旧を目的として編成された2011年度第1次補正予算に“スパイ衛星”の関連費用が盛り込まれていたことがわかりました。
第1次補正予算には情報収集衛星施設整備費として4600万円が計上されています。情報収集衛星は「大規模災害などへの対応」だけでなく「安全保障」を名目に導入された軍事偵察衛星です。
この衛星を運用する内閣衛星情報センターは第1次補正予算での支出について「茨城県行方(なめかた)市にある地上施設、内閣衛星情報センター北浦副センターが被災して生じた地盤沈下や周辺道路の亀裂などを復旧するため」としています。
内閣衛星情報センターの所長は防衛省出身。日本共産党の吉井英勝衆院議員が提出した質問主意書への答弁書によると、同センターの定員219人中48人が防衛省、警察庁、公安調査庁からの出向者です(11年6月30日時点)。
情報収集衛星に関しては11年度第4次補正予算からも165億円が支出されています。政府が予算を計上したのは電力供給が不安視される中、情報収集衛星の開発スケジュールを遅らせないために、来年度予算で予定されていた開発作業を前倒しするためです。
情報収集衛星の運用目的には「大規模災害への対応」も入っています。しかし、東日本大震災の際には何の役にも立ちませんでした。情報収集衛星が撮影した東電福島原発事故に関する衛星写真は「今後の安全保障上の情報収集活動に支障を及ぼす」として公表されませんでした。(4面につづく)
宇宙ビジネスに7億円
「東日本大震災・原子力災害からの本格的な復興予算」のための2011年度第3次補正予算には「実用準天頂衛星システム事業推進調査」の費用として7億円が計上されました。復興とは無関係な衛星システムの予算です。復興補正予算を使い、宇宙ビジネスを推進するものにほかなりません。
準天頂衛星システムとは日本のほぼ真上に測位衛星を配置し、米国が運用するGPS(全地球測位システム)を補完・補強するものです。
■米軍が利用
しかし、この衛星システムはGPSの補完にとどまりません。衛星の発する測位信号が米軍のミサイル誘導や無人機制御など軍事活動に利用される可能性を否定できないと政府は認めています。
なぜこのような予算が盛り込まれたのか。内閣府宇宙戦略室の担当者は次のように話します。
「11年9月に実用準天頂衛星の方針が閣議決定され、翌年度予算では遅いと判断し、補正予算に調査費用を盛り込んだ」
さらに担当者はこう付け加えました。
「これは復興予算には当たらない」
復興予算でもないのに、なぜ第3次補正予算に盛り込まれたのでしょうか。それは、第3次補正予算の目的として東日本大震災関係経費に加えて、「その他」という項目が入っているからです。宇宙ビジネス推進予算を震災復興に便乗して、紛れ込ませたことになります。
「実用準天頂衛星システム事業」は10年に打ち上げられた初号機にくわえ、当面4機体制、将来的には7機体制をめざすものです。今回盛り込まれた「調査費用」は衛星を拡充するためのものです。
初号機は三菱電機製でした。しかし、三菱電機は航空宇宙・軍事事業をめぐる経費の水増し請求で、防衛省などから指名停止処分を受けています。宇宙戦略室の担当者は今後打ち上げる衛星について「日本で人工衛星をつくれる技術があるのはNECと三菱電機だけだ。入札を行うが、これまでの衛星との互換性は考慮しなければならない」と話します。
■安保「深化」
震災復興は遅々として進まないのに、復興予算を流用までして日本政府が宇宙の軍事利用にまい進するのはアメリカと財界の要求に押されてのことです。11年6月に行われた日米外務・防衛担当閣僚会合(「2+2」)の共同発表では「安全保障分野における日米宇宙協議及び宇宙状況監視、測位衛星システム、宇宙を利用した海洋監視」などの項目を上げ、これらの進展が日米の安全保障を「深化」させるとしています。
経団連も、11年5月に発表した「宇宙基本法に基づく宇宙開発利用の推進に向けた提言」の「安全保障」の項で「宇宙を利用した情報収集や早期警戒などの機能の強化も重要」と述べています。
復興予算 スパイ衛星関連に流用
復旧費計上 大震災時、役立たず
(写真)茨城県行方市にある情報収集衛星の地上施設、内閣衛星情報センター北浦副センター
東日本大震災直後に救援・復旧を目的として編成された2011年度第1次補正予算に“スパイ衛星”の関連費用が盛り込まれていたことがわかりました。
第1次補正予算には情報収集衛星施設整備費として4600万円が計上されています。情報収集衛星は「大規模災害などへの対応」だけでなく「安全保障」を名目に導入された軍事偵察衛星です。
この衛星を運用する内閣衛星情報センターは第1次補正予算での支出について「茨城県行方(なめかた)市にある地上施設、内閣衛星情報センター北浦副センターが被災して生じた地盤沈下や周辺道路の亀裂などを復旧するため」としています。
内閣衛星情報センターの所長は防衛省出身。日本共産党の吉井英勝衆院議員が提出した質問主意書への答弁書によると、同センターの定員219人中48人が防衛省、警察庁、公安調査庁からの出向者です(11年6月30日時点)。
情報収集衛星に関しては11年度第4次補正予算からも165億円が支出されています。政府が予算を計上したのは電力供給が不安視される中、情報収集衛星の開発スケジュールを遅らせないために、来年度予算で予定されていた開発作業を前倒しするためです。
情報収集衛星の運用目的には「大規模災害への対応」も入っています。しかし、東日本大震災の際には何の役にも立ちませんでした。情報収集衛星が撮影した東電福島原発事故に関する衛星写真は「今後の安全保障上の情報収集活動に支障を及ぼす」として公表されませんでした。(4面につづく)
宇宙ビジネスに7億円
「東日本大震災・原子力災害からの本格的な復興予算」のための2011年度第3次補正予算には「実用準天頂衛星システム事業推進調査」の費用として7億円が計上されました。復興とは無関係な衛星システムの予算です。復興補正予算を使い、宇宙ビジネスを推進するものにほかなりません。
準天頂衛星システムとは日本のほぼ真上に測位衛星を配置し、米国が運用するGPS(全地球測位システム)を補完・補強するものです。
■米軍が利用
しかし、この衛星システムはGPSの補完にとどまりません。衛星の発する測位信号が米軍のミサイル誘導や無人機制御など軍事活動に利用される可能性を否定できないと政府は認めています。
なぜこのような予算が盛り込まれたのか。内閣府宇宙戦略室の担当者は次のように話します。
「11年9月に実用準天頂衛星の方針が閣議決定され、翌年度予算では遅いと判断し、補正予算に調査費用を盛り込んだ」
さらに担当者はこう付け加えました。
「これは復興予算には当たらない」
復興予算でもないのに、なぜ第3次補正予算に盛り込まれたのでしょうか。それは、第3次補正予算の目的として東日本大震災関係経費に加えて、「その他」という項目が入っているからです。宇宙ビジネス推進予算を震災復興に便乗して、紛れ込ませたことになります。
「実用準天頂衛星システム事業」は10年に打ち上げられた初号機にくわえ、当面4機体制、将来的には7機体制をめざすものです。今回盛り込まれた「調査費用」は衛星を拡充するためのものです。
初号機は三菱電機製でした。しかし、三菱電機は航空宇宙・軍事事業をめぐる経費の水増し請求で、防衛省などから指名停止処分を受けています。宇宙戦略室の担当者は今後打ち上げる衛星について「日本で人工衛星をつくれる技術があるのはNECと三菱電機だけだ。入札を行うが、これまでの衛星との互換性は考慮しなければならない」と話します。
■安保「深化」
震災復興は遅々として進まないのに、復興予算を流用までして日本政府が宇宙の軍事利用にまい進するのはアメリカと財界の要求に押されてのことです。11年6月に行われた日米外務・防衛担当閣僚会合(「2+2」)の共同発表では「安全保障分野における日米宇宙協議及び宇宙状況監視、測位衛星システム、宇宙を利用した海洋監視」などの項目を上げ、これらの進展が日米の安全保障を「深化」させるとしています。
経団連も、11年5月に発表した「宇宙基本法に基づく宇宙開発利用の推進に向けた提言」の「安全保障」の項で「宇宙を利用した情報収集や早期警戒などの機能の強化も重要」と述べています。