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イングランドの丘を歩く




自分は身に染み付いて都市生活者、愛好者であると思っていたが、イングランドで一年前導入されたロックダウンを経験し、最近はすっかりサリー州のCountry Bumpkinと化している。

家の中の楽しみといえば、
美味しいものを作って食べる、庭で花や樹の手入れをする、読書、ピアノ、インターネット(オンラインショッピング、オンライン学習コースを取る、チャットで涙を流すくらい笑う他)、インテリアを変えたり(壁も自分たちで塗り直した)、実物を見ないで家具を買うため、時間をかけてやりとりしたり...という具合。
夫はドラマシリーズを毎晩見る。わたしはすぐに飽きる。最近はけっこう続けてノルディック・ノワールの刑事・犯罪ものを見ていたが。

外出は、週一のスーパーマーケットか園芸店、営業している時は馬に乗り、天候が許せばハイキングに行く。
最近は、春の気候も手伝い、いかにサリー州が美しいかという話ばかりするようになった。ああ危ない。週末予定しているロンドンが面倒くさく感じるようになってきた...




サリー州にある、気軽にハイキングができるコースは合計で3482キロにも及ぶそうだ。

実は今まで便宜上「ハイキングコース」とこのブログ上でも書いてきたが、正式名は「パブリック通行の認められている道」、である。
厳密にはこの道にもいくつか種類があり、歩行者だけに認められているものや、馬と自転車も認められている道、オートバイなどモーターのついているものが許可されている道などがあるが、ここでは深入りしない。


「パブリック通行の認められている道」では、誰でも、通行、ハイキング、ピクニック、犬の散歩などのレジャーができる。

Wikipediaによると:

「イギリスで発祥した「歩くことを楽しむための道」のことで、農村部を中心に、イギリス国内を網の目のように走っている公共の散歩道。長いものは160キロメートルも続く」

「土地の所有者に損害を与えない限りにおいて、すべての人に対して他人の土地への立ち入りや自然環境の享受を認める権利」の認められている道であり、

「国有地・私有地の別なく、対象となる土地を突っ切って公衆が通行することが認められ」ている。

「川や丘、農場や自宅の敷地内を通る道もある。イギリス国民にはこれを大切にする文化が醸成されている。」

「ただし、通行が許可されるのは、その権利の行使が認められた特定の通路のみ。これは、昔からその土地が公衆の通路として使われてきて、現在も通路として使われているのであれば、誰もが自由にそこを引き続き使用し、通り抜ける権利があるという考えに基づくもので、誰もが享受できてしかるべき基本的な権利であると捉えられている」

「カントリーサイド(農村地域)では、フットパスが100年以上も昔から使用され続けていることも少なくなく、網の目のようにフットパスが張り巡らされていることがある。これにより、目的地の方向に合わせ、ルートが自由に選択できる。」

「放牧場・ゴルフ場・崖・沼地などの危険を伴う可能性のある土地にフットパスが設定されていることもあり、これらの通行は自己責任で行う必要がある。危険性によっては、自己責任である旨を看板に大書して告知している通路も少なからず存在する。」


牛の真横を通る道あり、豪邸の側を通る道あり。ここは本当に入っていっていいの? 侵入者とみなされて撃たれない? というような小道もある(下写真)。




お天気もやっと春らしくなったので、昨日は近所の森の中ではなく、フィールドを歩くコースを選んだ。
木に守られるように感じる森の中を歩くのと、空も視界も大きく開けたフィールドを歩くのはやはり全然違う。

下の写真は、ミノタウルスみたいな顔をした牛が放牧されている(一斉にこっちを見られた)放牧地をつっきって、別の放牧地まで続く道。丘を越え、また丘を越える...
季節がら、子羊ちゃんがいっぱいる。牡羊が威嚇の声をあげ、ツノをこれ見よがしに振る。




下の写真は、歩いてきた並木道。




めっちゃ田舎、と思われるかもしれないが、英国の「田舎」Countrysideは日本語と少しニュアンスが違う。ロンドンから20キロという距離だけでなく。

イングランドのCountrysideの主役は、13世紀ごろに誕生し、17世紀以降、地方地主として財産を有し、その賃貸料で生活、金融や海運などに投資しつつ、下院議員席を占め、政治と文化活動に専念した、地方の名士としての人々である。彼らのことを「ジェントルマン」と呼ぶ。
農村の大生産者(ヨーマン)ではないことに注意。


英国の入会権は、囲い込み運動(エンクロージャー)で消えたのかと思っていたのだが、もしかしたらこのような通行の権利として残っているのか...
勉強したいことがまた増えた。
知らないことは無限にあり、そして人生は短し。
そして無限に広がる草原(下写真)。ここを上からゴロゴロ転がりたい。


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