ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

新・判例解説Watch(法学セミナー増刊・速報判例解説Vol. 10)

2012年03月31日 14時32分02秒 | 本と雑誌

 今週、日本評論社から、法学セミナー増刊として速報判例解説第10号が発売されました。

 第9号までと異なり、メインタイトルが「新・判例解説Watch」となっています。

 この中の租税法のNo. 9 にある「任意組合等から生じた所得の計算方法に関する所得税法の解釈と課税要件明確主義」は、私が執筆したものです。

 ご一読をいただければ幸いです。

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やはり、岩泉線は廃止か

2012年03月30日 20時35分55秒 | 社会・経済

 ネット時代になって、ローカル版の記事などを(多少であったとしても)読めるようになったのはうれしいことです。ただ、記事を読んで、あれこれと考えさせられることも少なくありません。

 今日の朝日新聞岩手版などで報じられていますが(http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001203300005)、JR東日本は、岩手県の岩泉線を廃止する方針を固めました。JR東日本盛岡支社も正式に発表しています(http://www.jr-morioka.com/pdf/press/pdf_1333088629_1.pdf)。

 岩泉線は、山田線の茂市から岩泉までの38.4キロメートルの路線で、1980年代に第二次特定地方交通線に指定され、廃止される予定でした。残ったのは、道路事情の悪さによるものです。しかし、この時でも輸送密度は667人で、赤字にして乗客が少なすぎることは明らかでした。国鉄がJRグループとなってからも輸送密度は減少の一途をたどり、1986年度には295人、1987年度には180人、2003年度には85人、2007年度には58人、そして2009年度には29人となっています。JR東日本の在来線はもとより、全国のJRグループの在来線では最も悪い成績です。今月で営業を終える十和田観光電鉄線や長野電鉄屋代線と比較しても低すぎます。岩泉線の輸送密度では、路線バスでも満席にすることはできないでしょう。

 JR東日本は、2009年度の平均通過人員の数を公表しています。これによると、第1位は山手線で106万7341人、第2位は埼京線で70万169人です。岩泉線は67位(最下位)で46人であり、66位の只見線が388人ですから、岩泉線は只見線の8分の1にも満たないのです。山手線と比較すると、岩泉線の通過人員は約23203分の1という数になってしまいます。JR西日本の三江線も輸送密度が極端に低いことで有名ですが、平均通過人員は83人となっています。

 また、1986年から2010年まで、茂市~岩手和井内が4往復、茂市~岩泉に至っては3往復しかありません。途中、1往復だけ増えたこともあったそうですが、すぐに廃止されてしまいました。

 2010年7月末日、岩泉線の押角と岩手大川との間にある落石シェルターの近くで土砂崩れが発生しました。この時、列車が走行しており、現場に突入の上、脱線しています。死者が出なかったのは幸いでしたが、負傷者は出てしまいました(重傷ではなかったそうですが)。

 その後、この事故の原因調査検討委員会が設けられています。同委員会は、2011年12月に、岩泉線の沿線で大規模な岩盤崩落が発生する恐れのある場所が23、列車の運行に影響のある落成崩壊が発生する恐れのある場所が88箇所あるという趣旨を指摘しています。JR東日本盛岡支社は、安全確保のために少なくとも約130億円の費用が必要であるとしています。期間については長期間としか言明していません。

 2009年度の収支が2億5700万円の赤字で、平均通過人員が46人では、どう考えても130億円以上の費用などをかけて復旧させるだけの意味がありません。今までよくぞ存続してきた、とすら言えます。しかも、東日本大震災で大きな被害を蒙った三陸鉄道とは違い、JR東日本は第三セクターでもなければ赤字会社でもないので、公費による復旧は望めません。

 以上からすれば、廃止はやむをえないところでしょう。残る問題は廃止後の道路事情で、代替バスがどのように運行されるかにかかっています。

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某所で

2012年03月29日 21時27分27秒 | まち歩き

201203291

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あざみ野駅の近くで

2012年03月28日 00時54分00秒 | まち歩き

 東急田園都市線・横浜市営地下鉄ブルーラインのあざみ野駅の近く、横浜市青葉区新石川一丁目に、西勝寺があります。そこで撮影しました。

Azamino14

 名所に行かなくとも、美しい風景、心が和む光景は見つけられる。常にそう思っています。大学生時代以来、およそ20年ぶりに、昨日、あざみ野駅周辺をじっくり歩いてみました。Canon EOS Kiss X5で撮影してみましたが、いかがでしょうか。写真によって、レンズを換えたりしています。私自身は、このカメラを買ってよかった、と思っています。

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 西勝寺を訪れたのは、今回が初めてです。近くを通ったことは何度かあるのですが、車で通過したのではよくわかる訳がありません。今回も、何の下調べもしないままで歩きました。

Azamino17

 近々、私のホームページに設けている「待合室」(http://kraft.cside3.jp/wartesaal01-2012.htm)でも、期間限定ですが掲載いたします。

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法学部、および法科大学院の1年生は、まずこれを読んでみてください。

2012年03月28日 00時42分16秒 | 本と雑誌

 以前、書店で見かけて気になっていた本を、27日に青葉台で買いました。

 木山泰嗣『最強の法律学習ノート』(2012年、弘文堂)

 奥付をみると今月30日発行となっています。つまり、まだ発売されたばかりなのです。

 法学部での講義の聞き方にも触れられていますし、何といってもノートの取り方、作り方が詳しく述べられています。1年生に限らず、法学部生にはおすすめです。また、法科大学院生にも推薦できます。

 2011年度に続き、2012年度も1年生向けの「現代社会と法」を担当します。私の担当クラスでは、この本を参考書としておきます。

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大丸横浜ららぽーと店、2013年1月に営業を終了へ

2012年03月27日 07時29分35秒 | 社会・経済

 昨日の夜、朝日新聞社のサイトで報じられ、今日の朝日新聞朝刊8面14版にも記事が掲載されていましたが、横浜市都筑区にある大丸横浜ららぽーと店が来年の1月末で営業を終了することになりました。

 今から5年前の2007年3月、横浜線鴨居駅の近くに、ららぽーと横浜がオープンしました。大丸の店舗ができたのも同時です。売上高が想定よりも低い状態が続き、赤字を脱却できなかったとのことです。

 ららぽーと横浜がオープンしたばかりの頃、私は2回行きました。その後、一昨年か昨年に一度だけ、妻と行きました。東急ハンズ、HMV、島村楽器、そしてイトーヨーカドーがあることは知っていましたが、大丸があることは知りませんでした。たしか、オープンの際に折り込み広告が入っていたのですが、大丸には関心がなかったから知らなかっただけなのかもしれません。

 ただ、一テナントとしてではあれ、百貨店の場所としては疑問だらけです。まず、ららぽーと横浜は、鴨居駅に近いとはいえ、あまり交通の便がよくない所にあります。最初から自家用車で行くことが前提となっているようなところです。次に、ららぽーと横浜は、若い人たち、子供連れの家族が入るような店が多いのです。高級品を扱う店もあるようですが、それほど目立つ訳でもありません。

 つまり、完全な郊外型ショッピングモールであり、大丸や三越などの百貨店の客層とは明らかに違います(実際に行ってみてください。私が表現したかったことがおわかりになると思います)。狙いとしては失敗だったということでしょう。都筑区には、センター北駅そばの阪急百貨店(都筑阪急)、センター南駅そばの東急百貨店がありましたが、東急百貨店は港北東急ショッピングセンターに変わっています。日本最初の郊外型百貨店である玉川高島屋のような形であったらよかったのかもしれませんが、時代が違っていました。

 昨日、報道を見てすぐに思い出したのが、武蔵村山市にあった三越のことです。東京都の市で唯一、鉄道の駅が存在しない武蔵村山市に、完全な郊外型のショッピングセンター、ダイヤモンド・ミューがオープンしました(現在はイオンモールむさし村山になっています)。そこにテナントとして入ったのが三越で、2006年11月に開店したのですが、その2年後、突然の閉店発表があり、2009年3月1日に営業を終了しました。2年4ヶ月ほどという短命な店でした。

 三越には、もっと短命な店舗がありました。宮城県は名取市にあるイオンモール名取(当初はダイヤモンドシティ・エアリ)に、2007年2月下旬にオープンした名取三越です。郊外型ショッピングセンターに入ったという点で、武蔵村山の三越、そして大丸横浜ららぽーと店と共通していますが、名取三越は2009年3月1日に閉店しており、営業期間はわずか2年でした。

 ついでに記しますと、私は、大丸と三越を利用することがあまりありません。大丸は、小学生時代に東京駅八重洲口にある東京店に何度か行ったことがあり、あとは集中講義の期間中に福岡天神店に入ることがあるくらいです。また、三越も、やはり集中講義の期間中に天神の福岡店に入ることがあるくらいで、東京は日本橋室町の本店には一度しか入ったことがありません。

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二子玉川駅と長津田駅の駅名標

2012年03月26日 01時05分32秒 | 写真

3月24日付で、東急の新しいタイプの駅名標として大岡山駅を取り上げました。今回は、二子玉川駅と長津田駅です。

 こちらは1番線、田園都市線のほうです。ライトグリーンで、DT07となっています。

 こちらは2番線、大井町線のほうです。オレンジで、OM15となっています。また、次の駅はOM16の溝の口となっていますが「一部の列車は高津、二子新地に停車」という案内も書かれています。

長津田駅4番線側にある駅名標です。田園都市線なのでライトグリーン、DT22です。

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果たしてどうなのだろう? 大阪府泉佐野市の試み

2012年03月25日 01時58分44秒 | 国際・政治

 3月23日(金)に読売新聞社が報じていましたが、大阪府の南部にある泉佐野市が、市の命名権(ネーミングライツ)を「売却」する方針に出ました。

 野球場などの施設ではおなじみになりつつある命名権ですが、自治体の名称自体に手がつけられるのは、おそらく初めてのことでしょう。私自身は通ったこともないのですが、泉佐野市は関西国際空港株式会社の本社の所在地であり、関西国際空港の一部の所在地である(ややこしいことに、この空港はいくつかの市町にまたがって存在しています)、りんくうタウンという大型プロジェクトの舞台にもなった場所ですが、財政状況が非常に厳しく、財政健全化団体に指定されています。よほど財源が逼迫しているのか、今回の命名権の話になったという訳です。

 しかも、命名権は市の名称に留まりません。愛称も対象となっています。私が通勤で利用する東急田園都市線を走る東京メトロの車両には香川県の広告が出ていて、同県の愛称が「うどん県」となっているのですが(うどんは香川県に限られるものでもないでしょうが)、泉佐野市は正式名称も愛称も命名権の対象とするのです。

 話はこれで終わりません。市役所庁舎の通称、市道の通称まで命名権「売却」の対象としています。そればかりでなく、泉佐野市の職員が着用する制服にも広告を入れようという徹底ぶりです。この話を聞いて、大相撲のテレビ中継を思い出しました。私が何を言いたいのかについては、テレビ中継を見て、土俵に注目してください。広告そのものの和服を着ている人たちがいます。同じようなことが市の職員の制服などに取り入れられるのです。

 りんくうタウンは、はっきり言えば企業誘致に失敗しています。しかも、企業誘致は既に単純かつ古い(古色蒼然?)方法となっています。朝日新聞3月19日付朝刊1面のトップ記事は「補助金で企業誘致 苦境  200億円交付後 21社撤退・縮小」、2面14版の関連記事で「去る工場 惑う地元」で、泉佐野市の話はありませんが、近場の問題は出ています。一時期は亀山ブランドなどという言葉までCMで使われたシャープ亀山工場は、自治体の企業誘致がどのような結果に陥りやすいかという問題の典型的な解答にすらなっています。しかし、読売新聞社の報道によるならば、泉佐野市は、まだ雇用創出や税収の上昇という夢を見ているようです。

 いずれにせよ、大胆ともいえる同市の試みですが、命名権の売却ですので、契約の問題が出てきます。中身は「売却」というより賃貸借か消費貸借か使用貸借か、ただの広告料か、といったところで、命名権は1年から5年の間とされています。金額は「企業から提案してもらう」そうで、泉佐野市は準備などをしないのでしょうか。

 大阪市長の橋下徹氏は高く評価しているそうですが、ここまで身も蓋もない話は、世の中にそう多くないでしょう。橋下氏は新しい発想と評価しているようですが、命名権そのものは別に新しいものでも何でもないですし、企業誘致や税収のアップに結び付けられている点はむしろ古い発想で、せいぜい発展形というところでしょう。

 一方で命名権の「売却」は中途半端とも言えます。どうせなら市そのものを企業に売却するか賃貸したらどうでしょうか。国や他の地方公共団体に売却か賃貸してもよいでしょう。民間企業で買収または賃借するところがなければ、国か他の地方公共団体が受けるのも一つの手です。たとえば国の直轄地になるとか、東京都の直轄地になるのです(東京都は、いわゆる島嶼部で直轄地を持っています)。

 ただ、この案も全く新しいというものでもありません。沖縄県にある北大東島、南大東島および沖大東島は、第二次世界大戦終戦後まで一企業の所有地でした。北大東島および南大東島は大日本精糖が、沖大東島はラサ工業が所有しており、どこの市町村にも属しておらず、企業による自治が行われていたそうです(沖大東島は現在もラサ工業の私有地です。但し、北大東村に所属する無人島の扱いとなっています)。

 もっとも、大東諸島は無人島から発展しており、日本の市町村制が適用されたのは沖縄返還によります。そのため、既存の市町村が企業に自治体そのものを売却した訳ではないのです。日本の法律では、地方公共団体が別の法人に売却されることを想定していませんが、全く不可能という訳でもないでしょう。橋下知事の主張などからすれば、地方公共団体そのものがどこかの企業に売却されれば、自ずと行政運営スタイルが企業経営スタイルに準じたものになるでしょうから、政治思想などに合致するでしょう。問題は、どこが泉佐野市を購入するか、という点だけです。

 もう一つ、東京都の直轄地とする、と記したのにも理由があります。大阪府は「大阪都」になろうとしています。一番簡単な方法は、大阪府が東京都に編入されることです。そうすれば、大阪府に都政を敷くことは簡単です。勿論、こんなことを大阪市民や大阪府民が望んでいるとは思えません。私も、そうなって欲しいとは思っていません。しかし、大阪府が「大阪都」になったからといって、地方交付税交付団体から脱却できる訳でもありません。「都」になりたいのであれば、東京都に編入されるのが最も手っ取り早い、というだけのことです。

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大岡山駅の駅名標

2012年03月24日 00時19分06秒 | 写真

 2012年2月から、東急でも駅ナンバリングが導入され、駅名標などが順次取り替えられています。

 それとともに、駅名標のデザインも変えられています。新旧の違いがよくわかる例が、大岡山駅にありました。

 まずは目黒線のほうです。こちらが旧ということになります。同線のラインカラーが使われている点では新しいのですが(どの線でも赤のラインが使用されていました)、駅ナンバリングはまだ示されていません。

 なお、東急の場合、乗換駅などでは日本語、ローマ字表記、簡体字表記、ハングル表記が併用されます。

 次は大井町線のほうです。駅ナンバリングの表示が早かった同線ですが、駅名標にはそれ以外の変化も見られます。

 前のタイプでは、上のほうにある大きな文字は駅名の平仮名表記が示されており、下のほうに正式の駅名が書かれていました。駅ナンバリングが導入されてからは、上のほうに大きな文字で正式の駅名を示し、下のほうに平仮名表記を示しています。

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法科大学院のカリキュラム

2012年03月23日 00時28分31秒 | 受験・学校

 3月22日付の朝日新聞朝刊37面13版に「日大法科大学院、不適合の評価」という小さな記事が掲載されています。

 大学を評価する機関として、大学基準協会があります。この評価そのものなどの意義についても様々な問題があるものと思われますが、それは今回、とりあえず脇においておきます。同協会は、毎年、幾つかの大学について評価を下しています(余談ですが、2010年度に大東文化大学も評価の対象となりました)。2011年度も、40校(大学、短期大学、専門職大学院、法科大学院)が評価の対象となっていますが、そのうちの7校が「過去に不適合や評価保留などとされたことを受けた再評価・追評価で」あったということです。

 2008年度の評価で、同協会は日本大学の法科大学院に対して「不適合」という評価を下しました。再評価などは3年後に行われることとなっており、2011年度、同法科大学院に対する再評価が行われたのですが、再び不適合と評価されました。

 その理由は、上記朝日新聞の記事によると、カリキュラムに占める「法律基本科目」の割合が高く、「実務的な科目」が少ないという趣旨のようです。そのため、司法試験対策に偏った科目編成となっている、というのです。

 ここにいう「法律基本科目」とは、憲法、行政法、民法、商法、会社法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法のことです。いずれも司法試験の必須科目になっています。この他、法科大学院では「法律実務基礎科目」、「基礎法学・隣接科目」、「展開・先端科目」という分野があり、それぞれに様々な科目が置かれています。たとえば、租税法や労働法などは「展開・先端科目」に置かれることが多いでしょう。

 日本大学法科大学院のサイトで公表されているカリキュラムを見ると、たしかに「法律基本科目」の修了要件単位数が多くなっています。しかし、これは多くの法科大学院に共通することではないでしょうか。別に司法試験と関係がなくとも「法律基本科目」に力点が置かれるのは、法学系の大学院である以上、当然のことです。法科大学院は、大学院とは言っても法学研究科とは全く異なり、むしろ法学部に近い存在ですので、憲法、民法、刑法の三大基礎科目を中心とするカリキュラムになるのが理にかなうことではないでしょうか。また、日本大学法科大学院における設置科目は、(少なくとも大東の法務研究科よりは)かなり多く、「基礎法学・隣接科目」の多さには驚かされました。

 他の法科大学院がどのようなカリキュラムを組んでいるのか、比較検討した訳ではありませんのでよくわかりません。ただ、実際の問題として「法律実務基礎科目」は、本来であれば司法修習所が行うべきと考えられるものでもありますし、司法試験の科目に入っているものはありません。

 大学基準協会の評価を受けるためには、非常に分厚い報告書を提出しなければなりません。また、その報告書に対する評価も量の多いものです。従って、いかなる基準の下に同協会が大学に対する評価を下したかについては、最低限、評価そのものを読まなければなりません。今、読みうる状況ではないのでここまでとしておきますが、「適合」と判断された法科大学院と「不適合」と判断された法科大学院との差異がさほど大きいものとは思われません。

 法科大学院が司法試験対策に走っているという批判は、以前から存在します。これは半分ほど当たっており、半分ほど的外れです。そもそも、法科大学院を修了した者だけが司法試験の受験資格を取得するという原則の下に制度が組み立てられています。従って、試験のことを全く考えない大学院など、存在意義はありません。試験科目が定められている以上、対応するカリキュラムを編成しなければなりません。とくに「法律基礎科目」は、民法など、膨大な範囲を扱わなければならないので、どうしても修了要件の単位数は増えます。

 一方、現在の司法試験には、法科大学院に設置される「法律実務基礎科目」および「基礎法学・隣接科目」に対応する試験科目が全く存在しません。これでは、修了要件単位数が少なくなるのも当然でしょう。また、担当可能な者に限りがあるという問題も忘れてはいけません。

 今後、法科大学院に対して大学基準協会がいかなる判断を示すのか。2012年度にも幾つかの法科大学院が評価対象となりますから、注意しておく必要があります。「不適合」が今後も出されるようであれば、もはや個別の法科大学院の問題ではありません。司法試験制度と合わせて、全体を見直すべきでしょう。

 21世紀に入ってから進められた司法改革で、裁判員制度と新司法試験・法科大学院制度が誕生しました。色々な問題はあるとはいえ、素人に事件の判断をさせる裁判員制度はとりあえずのところ成功しており、法律の玄人を作り出そうとする新司法試験・法科大学院制度は失敗でしょうか。そもそも、この双方は方向性として全く相容れないものであり、それが現在の司法制度に並存していること自体がおかしな話です。

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