ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

やはりそうなる 首都圏への転入超過

2024年01月31日 00時00分00秒 | 社会・経済

 共同通信社のサイトを見ていたら「やっぱりね」と思うような記事が掲載されていました。2024年1月30日17時20分付の「都の転入超過、23年は80%増 6万8千人、人口流出40道府県」(https://www.47news.jp/10461602.html)です。

 これは、総務省が公表した2023年の人口移動報告を扱った記事です。80%増という言葉が目に入ったのですが、2022年に38,023人の増、2023年に68,285人の増ということです。

 もう少し詳しく見ると、2023年に東京都に転入した人は454,133人、東京都から転出した人は385,848人です。前年比で転入がおよそ14,000人増えており、転出はおよそ16,000人減っています。

 COVID-19により、東京都への転入超過は鈍化していた訳ですが、一時的なものであったようです。或る意味でCOVID-19が東京一極集中を和らげ、むしろ東京都からの転出超過が見込まれていた節もあり、それを期待するような声もあったのですが、実際には神奈川県などへの転出に留まったようです。

 東京都の他に転入超過となったのは、上記記事に書かれているところによれば埼玉県、千葉県、神奈川県であるようです。逆に、転出超過となったのは40道府県です。首都圏を東京都、神奈川県、埼玉県および千葉県と定義すると、首都圏への転入超過は126,515人で27%増です。

 上記共同新聞社記事には、総務省担当者の分析として「コロナ禍が明け経済活動が活発化したほか、就職や進学に伴う若年層の東京への移動が増えた」と書かれているのですが、それだけでしょうか。昨年であったか、首都圏への転入超過が止まらない理由として、女性の就職機会が首都圏以外では少ないこと、また、女性の生活しやすさ(生きやすさという感じの言葉であったかもしれません)が首都圏以外の場所で低いことなどが書かれた記事があったと記憶しています。また、別の観点ですが、村社会あるいは村意識が強い地域があまりに多く、他所者を排除するような意識が強いためにせっかくの転入者も追い出されてしまうような所もあるそうで、これでは道府県や市町村がいくらUターンだのIターンだのと宣伝しても意味がなく、せいぜいふるさと納税を強化するしかない訳です。

 世間では、そして学者でも、私のようにふるさと納税を批判する人は少ないようで、私のような人間は叩かれるのが落ちなのでしょうが、それではふるさと納税を強化している道府県や市町村の人口がどうなっているのか、と問いたくなります。総務省はわかっているはずですね。

 また、ふるさと納税で集まった寄附金は、一体どのような支出に向けられているのでしょうか。この辺りのことが全くわからないという地方自治体は少なくないはずです。

 脱線したので元に戻りますと、一極集中の理由は一つや二つではなく、多数が複雑に層を重ねているはずです。一つ言えると思われることは、モータリゼイションが進んだ地域では転出超過になりやすいであろうということです。身近にも、モータリゼイションが進んだ地域から首都圏にやってきて、自家用車を運転しなくなった人がいます。理由を聞くと、ちょっとした買い物なら徒歩か自転車で行けるし、少し離れた場所なら電車やバスで行けて便利であるから、ということでした。

 ※※※※※※※※※※

 実は今回、共同通信社のサイトに2024年1月30日の13時17分付で掲載された「八つの赤字区間検証、3年先送り JR北海道、コロナ禍の影響で」(https://www.47news.jp/10461202.html)という記事を取り上げようかとも考えたのですが、首都圏への転入超過のほうを選びました。

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東急5000系5113F

2024年01月30日 00時00分00秒 | 写真

 東急電鉄のマスコット「のるるん」のモデルが、田園都市線を走る2代目5000系です(一部の編成は東横線を走っています)。今回は、鷺沼駅(DT14)4番線から各駅停車押上行きとして発車する5113Fです。ちなみに、iPhone15 Proで撮影しました。

 私は、小学生時代にこの駅のそばにあった鷺沼プールに何度も行きました。上の写真では電車の背後にあった施設です。元々は土橋にある鷺沼配水池の上部の有効活用としてオープンした施設で、私が行った時にはいつも混んでいました。1.8メートルの深さのプールもありました。しかし、2002年度に廃止されてしまい、現在はカッパーク鷺沼となり、その一部が川崎市立土橋小学校になっています。

 また、1979年に長津田に移転するまで、鷺沼には東急の検車区がありました。現在の東京メトロ鷺沼検車区の部分と東急電鉄長津田検車区鷺沼車庫が該当します。当時の田園都市線は、ステンレス車(8500系、8000系、7200系、初代7000系、初代6000系、5200系)もあれば緑色の初代3000系(吊り掛け駆動)や初代5000系(かつて渋谷駅前のハチ公前広場にあった電車です)も走っており、鷺沼プールのそばの道路から鷺沼検車区を見ているだけでも楽しめました。一度だけ、長野電鉄に譲渡される前の初代5000系が、東急の緑色から長野電鉄の赤とクリームのツートーンに塗り替えられた上で留置されていたのを見ました。

 (なお、鷺沼駅については「2011年6月12日および20日、鷺沼駅」において記しました。)

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北海道の宿泊税導入論議

2024年01月29日 22時00分00秒 | 国際・政治

 地方税法に税目として定められておらず、都道府県または市町村が条例によって導入することが可能である地方税(但し、総務大臣との事前協議を経て総務大臣の同意を得ることが必要です)を、法定外税と言います。税収の使途が条例で定められているか否かによって法定外普通税と法定外目的税に分かれますが、どちらにしても地方税法において税目として法定されていない点が重要であり、制限されてはいるものの地方税について都道府県および市町村が有する立法権の産物として、地方自治の観点からしても重要な存在です。

 〔以上については、石村耕治編『税金のすべてがわかる現代税法入門塾』、略して『現税塾』の第11版(2022年、清文社)の155頁以下(実は私が担当しています)も御覧ください。〕

 ただ、法定外税は収入が少ないものが多く、また、とくに核燃料や産業廃棄物に関係する税目が多いのも特徴です。そして、21世紀に入ってからは宿泊税が採用される傾向にあります。有名なのは東京都の宿泊税ですが、後に紹介するように、大阪府、福岡県、京都市、金沢市などにおいても導入されています。

 現在、北海道においても導入が議論されています。少し前の記事にはなりますが、2024年1月25日19時付で、朝日新聞社のサイトに「北海道の『宿泊税』、2万円未満100円が有力に 免税点は導入せず」(https://www.asahi.com/articles/ASS1T63LMS1TIIPE005.html)という記事が掲載されていたので、これを参照しつつ記していきます。

 北海道で導入が検討されている宿泊税ですが、結局は宿泊税となる様子であるものの、「観光振興税」という仮称(?)が付けられていたようです。北海道の宿泊税は、上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば「人口が減っても持続可能な観光産業を実現するため」のものです。この記事にはあまり詳しく書かれていませんが、「使い道はマーケティングや交通網の充実、災害対応の強化など7分野で」あると書かれていたので、おそらく法定外目的税でしょう。先行例の全てが法定外目的税であることも記しておきます。

 ここで、既に宿泊税を導入している都道府県および市町村の例をみてみましょう。上記朝日新聞社記事に書かれているところを利用していますので、正確さに欠ける部分があるかもしれませんが、御了承ください。

 東京都  税額=100円(一人一泊10,000円以上15,000円未満の場合)、200円(一人一泊15,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=16億7,000万円。

 大阪府  税額=100円(一人一泊7,000円以上15,000円未満の場合)、200円(一人一泊15,000円以上20,000円未満の場合)、300円(一人一泊20,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=12億円。

 京都市  税額=200円(一人一泊20,000円未満の場合)、500円(一人一泊20,000円以上50,000円未満の場合)、1,000円(一人一泊50,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=35億5,000万円。

 金沢市  税額=200円(一人一泊20,000円未満の場合)、500円(一人一泊20,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=7億1,000万円。

 長崎市  税額=100円(一人一泊10,000円未満の場合)、200円(一人一泊10,000円以上20,000円未満の場合)、500円(一人一泊20,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=3億7,000万円。

 福岡県  税額=一人一泊の宿泊料金にかかわらず200円。但し、福岡市または北九州市が課税する場合には50円、その他の市町村が課税する場合には100円。

      直近の税収見込額=13億9,000万円。

 福岡市  税額=150円(一人一泊20,000円未満の場合)、450円(一人一泊20,000円以上の場合)。

      直近の税収見込額=18億6,000万円。

 北九州市 税額=一人一泊の宿泊料金にかかわらず150円。

      直近の税収見込額=3億9,000万円。

 倶知安町 税率=一人・一部屋・一棟あたり宿泊料金の2%。

      直近の税収見込額=2億円。

 このように見ると、宿泊料金に応じて税額が変わる所が多いようで、北海道もそのような構造の宿泊税を導入することを考えているようです。もっとも、当初は宿泊料金にかかわらず一泊100円とすることが考えられていたようですが、これでは1年間の税収見込額が36億円で、これでは少ないという意見が多く出されたようです。そこで、宿泊料金の多寡に応じて税額が変わるという、東京都や大阪府などと同じような構造とすることにしました。こうすると、1年間の税収見込額が60億円になります。北海道が2023年9月にこうした案を示すと、札幌市など7市から反対意見が出されました。札幌市なども宿泊税の導入を検討しているようです。

 そのため、北海道は、一人一泊20,000円未満であれば税額100円、一人一泊20,000円以上50,000未満であれば税額200円、一人一泊50,000円以上であれば税額500円とすることにしたようです。ただ、このようにすると1年間の税収見込額が45億円になります。

 問題は税額の区分よりも免税点でしょう。修学旅行の場合には「課税免除とする」とのことですが(京都市や長崎市と同様です)、それ以外の場合には免税点は設けないということです。しかし、これは妥当でしょうか。上記朝日新聞社記事によれば「道内宿泊客の5~6割は道民でビジネスの利用も多い」とのことです。私も熊本県立大学、西南学院大学および福岡大学での集中講義の際に一泊10,000万円未満のビジネスホテル〔熊本東急イン(現在の熊本東急REIホテル)、西鉄イン天神〕に宿泊していたくらいで、仕事のための宿泊であれば豪華な宿泊施設である必要もなく、安価な宿泊施設の利用にも宿泊税を課するというのは観光振興という目的から外れる部分があります。勿論、ビジネスホテルに宿泊している客は観光客ではないとも言えないので、免税点を設けなかったのでしょう。ただ、或る程度は判別も付くはずです。

 また、札幌市などが導入を検討しているということですが、それ以前に倶知安町が導入しています。税収、役割分担など、市町村との調整という課題も残っています。

 おそらく、北海道は2025年度またはそれ以降の導入を目指して動くでしょう。しかし、解決すべき課題はまだ残っています。導入を急ぐ必要はないと考えています。現在、オーバーツーリズムなどが問題となっていますが、これが長期間続くかどうかもわかりませんから(私自身は、一時的なものであって早ければ今年中には海外からの観光客は減少すると予想しています。然したる根拠はありませんが)。

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東京メトロ18000系18110F

2024年01月28日 15時03分00秒 | 写真

今回は、二子玉川駅(DT07、OM15)4番線に停車中の東京メトロ18000系18110Fです。各駅停車南栗橋行きとして運転されていました。

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千葉ニュータウン鉄道9800形9808F

2024年01月27日 21時10分00秒 | 写真

都営浅草線三田駅(A08)で、西馬込行きの電車を待っていました。到着の案内放送の後、下の写真の電車が到着しました。

  普通西馬込行きとして到着したのは、千葉ニュータウン鉄道の9800形9808Fです。

 千葉ニュータウン鉄道という名称に馴染みのない方は多いでしょう。この会社は京成グループの一員ですが、京成電鉄や北総鉄道の路線案内には登場しません。北総鉄道の路線図を見ると、北総線は京成高砂駅から印旛日本医大駅までの路線となっています。実は、このうちの小室駅から印旛日本医大駅までの区間が千葉ニュータウン鉄道なのです。千葉ニュータウン鉄道が第三種鉄道事業者、北総鉄道が第二種鉄道事業者となっています。

 北総鉄道の車両には、このように側面に北総鉄道のプレートが付けられています。とは言っても、9800形は千葉ニュータウン鉄道の車両です。それなのに北総鉄道のプレートが付けられているのは、千葉ニュータウン鉄道が第三種鉄道事業者、北総鉄道が第二種鉄道事業者となっていることと関係があります。車両を保有しているのは千葉ニュータウン鉄道ですが(実はリースなのですが、後に述べます)、管理しているのは北総鉄道なのです。

 千葉ニュータウン鉄道は、元々は住宅・都市整備公団が千葉ニュータウン線として運営していた路線を引き継いだ会社です。住宅・都市整備公団が鉄道路線の運営を行うのもおかしな話であると思われるかもしれませんが、同公団は第三種鉄道事業者でした(そればかりか、鉄道事業法の制定前には住宅・都市整備公団が鉄道施設および車両を保有していたそうです。但し、実際の運行は北総鉄道に委託していたとのことです)。住宅・都市整備公団が都市基盤整備公団に組織を改められてからも第三種鉄道事業者のままでしたが、都市基盤整備公団が独立行政法人都市再生機構に改められる際に第三種鉄道事業者の地位を降りることになりました。そこで、京成電鉄の子会社である千葉ニュータウン鉄道が設立されたという訳です。北総鉄道が引き受けなかったことなど、よくわからない点も多く、これでは沿線住民から訴訟を提起されてもおかしくないと考えられます。

上の写真を見て、京成3700形ではないのか、と思われた方も多いでしょう。実はその通りです。京成3700形の3738Fが千葉ニュータウン鉄道にリースされたのですから。

京成3700形は北総鉄道にもリースされています。京成グループは、よく車両のリースを行っているようです。

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指宿枕崎線について協議が行われるようです

2024年01月26日 06時00分00秒 | 社会・経済

 1999年8月、私は鹿児島市に行きました。当時の西鹿児島駅、現在の鹿児島中央駅から徒歩圏内にあった東急イン鹿児島(その後、鹿児島東急REIホテルとなり、2021年秋に閉業)に宿泊し、鹿児島市電に乗って鹿児島市内を回りましたが、8月13日に指宿枕崎線のディーゼルカーにも乗りました。

 初めて乗ったキハ200系は、とにかくうるさかった。こんなことを覚えています。

 同線は鹿児島中央駅から枕崎駅までの路線ですが、指宿駅または山川駅で系統が分割されており、鹿児島中央駅から枕崎駅まで直通する列車は非常に少なく、指宿駅か山川駅までしか走らない列車ばかりであったので、山川駅で折り返しました。結局、開聞岳付近や枕崎市へは車で行くことになったのです。

 さて、その指宿枕崎線ですが、JR九州が公表した「線区別ご利用状況」によれば、同線の平均通過人員は次のようになっています。

 鹿児島中央駅〜喜入駅:1987年度は8253(人/日)、2022年度は7168(人/日)。

 喜入駅〜指宿駅:1987年度は8253(人/日)、2022年度は1862(人/日)。

 指宿駅〜枕崎駅:1987年度は942(人/日)、2022年度は220(人/日)。

 末端区間というには42.1kmもある指宿駅から枕崎駅までの区間がとにかく閑散ぶりの目立つ路線であり、赤字であることが容易に推察されます〔ちなみに、JR九州の路線・区間のうち、最も平均通過人員(2022年度)が少ないのは豊肥本線の宮地駅から豊後竹田駅までの区間で171(人/日)です〕。同一路線でありながら、鹿児島中央駅から喜入駅までの26.6kmの区間との落差が激しく、JR西日本の芸備線に似ているとも言えます。

 このような状況のため、鹿児島市、指宿市、南九州市および枕崎市は「指宿枕崎線輸送強化促進期成会」を組織しており、枕崎市は2023年7月25日に「JR指宿枕崎線(指宿~枕崎)活用に関する検討会」の第1回検討会の資料を公表しています。そして、JR九州は、指宿枕崎線の指宿駅から枕崎駅までの区間について沿線自治体に対して協議を申し入れました。2024年1月18日、鹿児島市においてJR九州、鹿児島県、指宿市、南九州市および枕崎市の実務担当者が初会合を開いたとのことです。

 以上は、2024年1月24日の20時13分付で共同通信社のサイトに掲載された「指宿枕崎線で協議申し入れ JR九州、鹿児島の沿線自治体に」(https://www.47news.jp/10435748.html)という記事によります。短い記事なので、この協議申し入れが地域公共交通活性化再生法に定められた再構築協議会に係るものなのかどうかがわかりませんが、「設置する会議体や議論の進め方を今後詰める」ということなので、直ちに再構築協議会という訳でもないのかもしれません。また、JR九州は「存続や廃止といった前提を設けず、幅広い選択肢を示して話し合いたい考えだ」とのことです。ただ、字面通りであるのかについては疑問が残ります。

 指宿駅から枕崎駅までの区間を見ると、指宿駅は有人駅(業務委託駅)、山川駅と西頴娃駅は簡易委託駅、その他の駅は無人駅であり、列車交換ができる駅も指宿駅、山川駅および西頴娃駅しかありません。山川駅から西頴娃駅まで17.7km、西頴娃駅から枕崎駅まで20.1kmですから、本数を増やしたくても増やせないという状況です。

 山川駅の時刻表を見ると、下りは1日7本であり、そのうちの1本は西頴娃駅までしか走りません。

 また、枕崎駅の時刻表を見ると1日6本、うち3本が鹿児島中央駅まで走るのに対し、2本は指宿駅止まり、1本は山川駅止まりです。しかも、鹿児島中央駅まで走る列車は6時4分発、15時54分発、20時6分発となっています。これでは列車を利用したくともできないということになりかねないでしょう。

 

 これまで、このブログではJRグループの地方交通線の存廃問題を何度も取り上げてきました。三江線、岩泉線など、実際に廃止された路線または区間もあります。

 全てに当てはまる訳ではないとはいえ、21世紀に入ってから存廃が問題となった路線の多くは、大正時代の鉄道敷設法に基づくものです。指宿枕崎線もまさにその例で、鉄道敷設法別表には第127号「鹿児島県鹿児島附近ヨリ指宿、枕崎ヲ経テ加世田二至ル鉄道」としてあげられていました。実際に国鉄の路線として開業したのは西鹿児島駅(鹿児島中央駅)から枕崎駅までの区間ですが、これは1931年に南薩鉄道が加世田駅から枕崎駅までの区間を開業させていたからです。また、南薩鉄道が伊集院駅から加世田駅までの区間を開業させたのは1914年のことです。南薩鉄道は後に鹿児島交通となり、伊集院駅から枕崎駅までの区間が枕崎線となりました。鉄道敷設法別表第127号により、指宿枕崎線と鹿児島交通枕崎線の双方、さらに鹿児島本線を加えることによって薩摩半島を一周するルートができる訳です。

 しかし、実際に鉄道を利用して薩摩半島を一周できる期間は、思いのほか短いものでした。

 薩摩半島の西側を通る鹿児島交通枕崎線は1931年に全通しましたが、指宿枕崎線の鹿児島中央駅から五位野駅までの区間が開業したのが1930年、指宿駅まで延伸開業したのが1934年、山川駅まで延伸開業したのが1936年、西頴娃駅まで延伸開業したのが1960年、そして枕崎駅まで延伸開業したのが1963年でした。こうして指宿枕崎線と鹿児島交通枕崎線がつながり(実際に線路がつながっていたのかどうかまではわかりませんが)、薩摩半島一周ルートが完成しました(余談ですが、鹿児島交通枕崎線には国鉄鹿児島本線に直通する列車がありました)。

 ただ、1960年代は高度経済成長期であると同時に、鉄道の衰退が始まった時期でもあります。南薩鉄道には、枕崎線の支線として万世線および知覧線がありましたが、万世線は1962年に、知覧線は1965年に廃止されています。南薩鉄道の経営状況が悪化していたことがうかがわれます。実際に、南薩鉄道は1964年に三州自動車に吸収合併されます。1970年代には枕崎線の状況も悪化の一途をたどりました。1983年には豪雨による被害を受け、伊集院駅から日置駅までの区間と加世田駅から枕崎駅までの区間が不通のまま、枕崎線は1984年に廃止されてしまうのです。薩摩半島一周ルートは21年くらいしか続かなかったという訳です。

 一方、指宿枕崎線のほうも、1968年に赤字83線に指定されました。全区間ではなく、山川駅から枕崎駅までの区間です。この時、既に指宿駅から、または山川駅から枕崎駅までの区間の存在意義が問われていたことになります。それから55年が経過し、現在に至るまで存続していることが驚異と言えます。また、指宿枕崎線は1980年代の特定地方交通線には指定されていませんが、これはおそらく鹿児島中央駅から喜入駅または指宿駅までの平均通過人員が多かったことによるものと考えられます(当時は路線毎に選定したので、一部区間の平均通過人員が多ければ全区間の平均通過人員も多くなり、特定地方交通線の指定から外されることとなります)。

 実に半世紀以上も問題を内包したまま、指宿枕崎線の営業が続けられてきたことになります。

 このような状況を見て考えることは、地域公共交通活性化再生法がどれだけ役割を果たしうるかということです。このブログで取り上げた、存廃が問題となった路線などを見ると、大正時代の鉄道敷設法にたどり着けることが多いという趣旨は前述しました。そして、その鉄道敷設法が制定されてから40年以上が経過した1960年代に、国鉄は赤字経営になり、悪化の一途をたどります。赤字83線の時に徹底した対策が採られていたのであれば、もしかしたら状況は改善されたかもしれないのですが(歴史に仮定は禁物というルールを破ります)、実際にはいくつかの路線が廃止されたのみであり、むしろローカル線の建設が進んでしまった例もあります。こうして1980年代の国鉄改革および国鉄分割民営化に至りました。それでも鉄道を巡る情勢が大きく変わった訳でもないようです。

 その意味において、公共交通機関の問題と過疎化の問題には共通する低音が流れているのかもしれません。少なくとも、通底する部分は存在します。存廃が問題となる鉄道路線のほとんどは過疎地域と言われる所を通っているからです。

 日本には過疎地域に関する法律が1970年から存在しています。過疎地域対策緊急措置法(昭和45年4月24日法律第31号。廃止法令)、過疎地域振興特別措置法(昭和55年3月31日法律第19号)、過疎地域活性化特別措置法(平成2年3月31日法律第15号)、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年3月31日法律第15号)、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(令和3年3月31日法律第19号)です。これだけの法律が存在しているにもかかわらず、過疎の問題は、地域毎であれば解決した事例もあるのかもしれませんが、全体として解決していません。

 こうした例を考慮に入れるならば、地域公共交通活性化再生法は対処療法あるいは止血方法として或る程度役立つかもしれませんが、根本的な解決のための道具になりうるかどうか、疑問が残るところです。

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東急5050系4000番台4113F

2024年01月25日 00時00分00秒 | 写真

朝の9時台に、渋谷駅(TY01、F16)に通勤急行川越市行きとして運行されている東急5050系4000番台4113Fが到着しました。これから、この列車に乗ることとします。

 和光市駅(TJ11、Y01、F01)に到着して、ここから東武東上線の普通川越市行きとして運行されます。

 実は、この列車はめまぐるしいほどに種別が変わります。相鉄いずみ野線の湘南台駅が始発駅で8時49分発の通勤特急なのですが、同線、相鉄本線および相鉄新横浜線では通勤特急であるものの、東急新横浜線および東急東横線では急行であり、東京メトロ副都心線では通勤急行になります。そして、東武東上線では普通列車となり、終点の川越市駅には10時50分に到着します。

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iPhoneやiPadでSafariを使う際には、タブの数に注意しよう。

2024年01月24日 00時00分00秒 | デジタル・インターネット

 私自身は或る時に偶然気付いたのですが、iPhoneやiPadでSafariやGoogleを使用すると、知らない間にいくつもタブが開いたままになります。

 これを放置しておくと、100以上もタブが開いたままになりかねません。そうなると、iPadに接続しているSmart Keyboardが動作しないこともあります。私もこれには驚きましたが、おそらくメモリが関係しているのでしょう。

 iPhoneやiPadを使用されている方は気をつけましょう。一週間に一回はチェックして、開いているタブは全て終了させてください。アプリについても同様です。

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機関車が減っていく

2024年01月23日 00時00分00秒 | 社会・経済

 日本にいて、日本の状況だけを見ているとわからない、あるいは気付かないことですが、実のところ、日本の鉄道は世界的に見るとかなり特殊です。その一つが、機関車が牽引する客車列車が非常に少なく、しかもますます少なくなっていることです(他に、JRでターミナル方式の駅が少ないこと、乗り越し精算ができることなどもあります)。

 たとえば、ヨーロッパに行くと、長距離列車の多くは機関車が牽引する客車列車です。私も、ミュンヘン中央駅などで何度も見かけました。また、ドイツのICEのうち、初期のものが典型的ですが、先頭と末尾に機関車を配置し、中間に客車を連結するプッシュプル方式が採用されることも多いのです。あるいは、ペンテルツークという、最後尾の客車に運転席を設けて機関車を遠隔操作するという方法も採られます(日本では嵯峨野観光鉄道や大井川鉄道井川線で見られますが、他に例があるのかどうかは知りません)。勿論、ヨーロッパ諸国などでも日本と同様の電車は多く走っていますし、地下鉄や路面電車で機関車が牽引する客車列車というのはほとんど存在していません。それにしても、日本の客車列車の少なさが目立つのです。

 こんなことを記すのは、昨日(2023年1月22日)付の朝日新聞夕刊7面4版に「機関車『鉄路の主役』降りる時 複雑な操縦・整備ネック 世代交代」という記事が掲載されており、それを読んだからです。

 私が小学生であった1970年代の後半、当時は国鉄の路線であった南武線には石灰石輸送や石油輸送の貨物列車がよく走っていました。当時で既に古豪であった電気機関車、ED16が貨車を牽引し、最後尾には車掌車が連結されていました。1980年代のいつからか、電気機関車はEF64に変わり、車掌車は省略されましたが、貨物列車がよく通っていたのです。ちなみに、川崎市には武蔵野線も通っており、宮前区には梶ヶ谷貨物ターミナルがあります。同線の鶴見駅から府中本町駅までの区間は貨物輸送専用といってよいところです。

 しかし、客車列車は非効率です。プッシュプル方式を採用するのでなければ、終点に到着して進行方向を変える際に機関車を付け替えなければなりません。尾久車両センターから上野駅までの推進運転という有名な例外もありますが、これは上野駅に機回し線がないからで、通常の列車よりもだいぶ速度を落として運転していたそうです。東京駅には機回し線があり、私も小学生時代に寝台特急の機関車付け替えを何度か見ていましたが、相当に時間と手間のかかる作業であるということはよくわかりました。

 上記朝日新聞社記事は、「寝台特急『ブルートレイン(ブルトレ)』をはじめ、かつて多くの客車を引っ張って全国を駆け回った機関車が次々と姿を消している。最多両数を抱えるJR東日本も、操縦や整備方法が電車と変わらない新型車両への世代交代を急いでいる」という文章で始まります。

 この記事に登場する電気機関車、EF65、EF81のいずれも、国鉄時代に登場したものであり、製造から相当の年月が経っています。どちらも寝台特急の客車を牽引しましたが、現在は貨物列車か入れ替え作業のための機関車となっています。しかし、貨物運送用であれば、既にEF210、EH200などの電気機関車、DF200などのディーゼル機関車が登場しています(そのほとんどはJR貨物が保有しているはずです)。

 国鉄の分割民営化に伴い、電気機関車やディーゼル機関車はJRグループ各社に引き継がれました。やはり上記記事に書かれているところを引用すると、「鉄道博物館(さいたま市)によると、JR旅客6社は国鉄から電気440両、ディーゼル703両、蒸気(SL)6両の計1149両の機関車を引き継いだ。だが、電車や気動車への置き換えが進み、機関車が客車を牽引する定期列車は2016年にJR線から消滅。根強い人気を持つSLを除き、今や残るのは計約120両で、JR東海は10年に、JR四国は昨年9月に全廃に踏みきった」とのことです。

 その大きな理由が、運転方法の違いです。電気機関車、ディーゼル機関車のいずれも、基本的にブレーキが2つあります。機関車単独のブレーキと、牽引する客車または貨車を含めた編成全体のブレーキです。また、主幹制御器(マスターコントローラー、略してマスコン)とブレーキ弁が別々になっているものが圧倒的に多く、最近の電車や気動車で多く採用されているワンハンドルマスコンは、電気機関車やディーゼル機関車ではほとんど採用されていないはずです。

 〔なお、「動力車操縦者運転免許に関する省令」(昭和31年運輸省令第43号)第4条第1項および別表第一には運転免許の種類と操縦できる動力車の種類が定められており、それを見る限りでは「甲種電気車運転免許」を保持していれば「鉄道事業(新幹線鉄道及び磁気誘導式鉄道を除く。)及び軌道事業(軌道運転規則第3条第1項の規定の適用を受けるものに限る。)の用に供する電気車」を操縦できることとなっており、同第2条によれば「電気車」は「電気機関車、電車、蓄電池機関車及び蓄電池電車をいう。」とされています(ディーゼル機関車や気動車は「内燃車」のために全く別の免許になります。ちなみに、新幹線も全く別の免許です)。省令だけを見ると電気機関車も電車も同じ免許の保持で操縦できることになります。しかし、実際には操縦方法が違いますし、機関車の場合には何両もの客車や貨車を牽引する訳ですから、加減速の操作方法などが異なるはずです。〕

 機関車を減らしている以上、機関車と同じ役割を電車や気動車に担わせようとするのは自然な流れです。また、操縦方法などが異なるというのは、メンテナンスなどの面においても合理的・効率的であるとは言えません。そこで、ということなのでしょう。事業用車という、営業用でない車両がクローズアップされてきます。事業用車自体は国鉄時代からありますが、上記朝日新聞社記事に取り上げられているのがE493系です。2021年に登場しており、入れ替え作業用として、また配給列車として使用されることとなっているようです。おそらく、JR東日本の多くの電車と同じタイプのワンハンドルマスコンが採用されているようなので、合理化・効率化は進むでしょう。上記朝日新聞記事には「JR東は国鉄から計467両の電気、ディーゼル機関車を引き継いだが、現在残るのは電気25両、ディーゼル26両のみ。これらもE493系などへの置き換えが進められ、同社は『機関車でなければできない作業は、もう存在しない』と話す」と書かれています。

 勿論、JR貨物が多くの電気機関車やディーゼル機関車を保有しており、今後もこうした機関車が残り、更新されていくことでしょう。ただ、JR貨物にもM250系という貨物電車があります(電車と言ってもプッシュプル方式の電気機関車+貨車のような編成らしいのですが)。この電車は直流区間のみを走行できるものなので、交流区間には入れませんし、勿論非電化区間にも入れません。しかし、貨物の内容にもよりますが列車のスピードアップには貢献するでしょうから、場合によっては貨物電車や貨物気動車が増えるかもしれません。

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いつまで走るか 東急9000系9001F

2024年01月22日 00時00分00秒 | 写真

 今回は、東急9000系のトップナンバー、9001Fです。大井町線B各停溝の口行きとして高津駅(DT09)1番線に停車し、次の溝の口駅(DT10、OM16)に向けて発車するところを撮影しました。

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