ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

東京の白山神社(1)

2015年10月31日 09時40分41秒 | まち歩き

 2012年度より、講義期間中のみではありますが、週に一回、文京区白山五丁目にある東洋大学で大学院法学研究科の講義を担当しています。

 これまでにも、何度か白山や本駒込を取り上げています。「何度も歩いているから」ということもあるのですが、「気に入っている街であるから」という理由でなければ、写真を撮ったりすることもないでしょう。都営三田線白山駅、東京メトロ本駒込駅の周辺は寺町と言える所で、とにかく寺院が多いのですが、今回は寺院でなく、地名の由来ともなっている神社です。

 都営三田線白山駅のA3出口から、白山上交差点のほうへ向かう道ではなく、その脇に入り、小さな公園のある交差点を左折すると、すぐに白山神社の鳥居が見えます。

 真っ直ぐ向かう前に、交差点の近くにある文京区の「旧町名案内」を見ておきたいものです。白山駅を含むこの辺りは、1966(昭和41)年まで白山前町といいました。白山神社(白山権現社)の門前町であったためです。領域は、現在の白山五丁目の一部と同一丁目の一部です。大まかにいえば、国道17号線の西側、東洋大学の南側、という感じでつかめばよいでしょう。

 白山神社は、天暦2年、西暦に直せば948年に建立されました。石川県白山市にある加賀一ノ宮の白山比咩神社を、武蔵の地に祀ったのが始まりなのですが、当初はこの地でなく、本郷元町(旧本郷区の元町。現在の本郷の一部)にありました。後に、正確な年代などはわからないのですが現在は小石川植物園となっている場所に移り、明暦元年、西暦に直せば1655年に、現在の場所に移転したとのことです。

 旧本郷区と旧小石川区が合併して成立した文京区には、江戸幕府との関係が深い街が多く、歩いていると様々な発見があります。

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日本国憲法の「なしくずしの死」 臨時国会召集請求問題に関連して

2015年10月27日 13時03分56秒 | 国際・政治

 ルイ・フェルディナン・セリーヌの小説の題名(勿論邦訳。フランス語の原題を示すと文字化けする可能性があります)をタイトルに掲げましたが、私はこの言葉を大分大学教育福祉科学部で憲法の講義を担当していた時によく使っていました。まさに、日本国憲法が置かれている状況に相応しい表現と考えたからです。

 現在、野党側が臨時国会の開会を要求しているのに対し、内閣が全く応じず、来年1月に開会される予定の通常国会を、例年より大幅に早い時期(1月上旬。通常は下旬)に召集する方向を示しています。これまで、臨時国会の開会要求は(今回も含めて)36回もなされていますが、21世紀に入ってから、過去に2回、いずれも小泉内閣時代に臨時国会が開かれていません(今日付の朝日新聞朝刊⒋面14版「少数派尊重 憲法の趣旨どこへ 臨時国会 内閣は召集しない構え」によります)。

 このような事態に関して、内閣が憲法違反を犯しているという批判もあります。その通りとも考えられます。しかし、実は憲法自体に問題がないとは言えないのです。ここを利用すれば、なしくずしの死に至らせることも可能でしょう。

 憲法第53条は「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めています。問題は後段です。今回は衆議院の総議員の4分の1以上に該当する議員が召集を要求している訳ですから、内閣は応ずる義務があります。

 ところが、何時までに応じなければならないかがわかりません。何も書かれていないのです。

 通常国会であれば、第52条が定めるように「毎年一回」としておけばよいのですが、臨時国会や特別国会では話が変わってきます。現に、第54条第1項は「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。」、同第3項は「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」と定めていますし、第59条第4項は「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」、第60条第2項は「予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」と定めています。

 念のために国会法を参照しますと、第2条は「常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。」、第2条の2は「特別会は、常会と併せてこれを召集することができる。」と定めています。または、第2条の3第1項は「衆議院議員の任期満了による総選挙が行われたときは、その任期が始まる日から三十日以内に臨時会を召集しなければならない。但し、その期間内に常会が召集された場合又はその期間が参議院議員の通常選挙を行うべき期間にかかる場合は、この限りでない。」、同第2項は「参議院議員の通常選挙が行われたときは、その任期が始まる日から三十日以内に臨時会を召集しなければならない。但し、その期間内に常会若しくは特別会が召集された場合又はその期間が衆議院議員の任期満了による総選挙を行うべき期間にかかる場合は、この限りでない。」と定めています。つまり、衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙が行われた場合に関しては臨時会の召集期日が定められているのですが、議員側から臨時国会の召集を求められた場合の期日の規定が存在しないのです。

 臨時国会の召集について期日が定められていない点は、実は自由民主党も問題としており、同党の改憲草案には20日以内と明記されています(それすら無視されているのが、今回の最大の問題とも言えます)。現行の第53条については、おそらく、召集を実質的に決定する内閣の裁量に委ねるという理解なのでしょう。

 手元にある宮澤俊義(芦部信喜補訂)『全訂日本国憲法』(1978年、日本評論社)399頁は、「議員から、一定の期日に召集せよとの要求があった場合に、内閣はその期日に拘束されるか」という問いを立て、「内閣は、要求者たる議員が指定する期日に召集すべき拘束を受けるものではない、と解すべきである。先例もそう解する。議員が期日を指定して召集を要求した場合は、内閣はその期日に法律上拘束されると解すべき根拠はどこにも見出されない」と答えています。たしかにその通りでしょう。しかし、それならば、内閣は何時臨時国会を召集してもよいのでしょうか。宮澤(芦部補訂)・前掲書同頁は「内閣は、召集の時期をいつと決定しなくてはならないか」という問いを立て、400頁において先例を引き合いに出しつつも「内閣はいつ召集することに決定してもいいかといえば、そう解することは、正当ではない」と述べ、続けて次のように論じています。

 「いやしくも、議員から本条によって要求がなされた場合には、内閣は、国会召集の手続を行うために、通例必要とされる期間を経た後に、国会を召集することを決定すべきであり、それ以上に、その召集をおくらせるべきではあるまい。先例では、そうした要求があってから、二か月またはそれ以上たってから召集している例があるが、これは不当である。本条による要求があった場合、内閣はいくらおそく召集してもいいということになれば、本条が議員に召集の要求権をみとめたことが無意味になってしまうだろう。

 先例では、召集されるべき国会に内閣が提出すべき案件の準備ができていないことをもって、すぐに召集しないことの理由としているが、これは不当である。議員から召集を要求される国会の臨時会の権能は、内閣が提出する案件の審議にかぎられるものではないことはもちろんであるから、内閣がそこに案件を提出する準備ができたかどうかは、召集の時期の決定に少しも影響をおよぼすべき事情ではない。内閣としては、右に述べられたような相当な期間(せいぜい二、三週間でよかろう)のうちに臨時会の召集を決定すべきである。」(同書400頁)

 参照した文献が古いということについては御容赦を願うこととして、内容は妥当でしょう。私も、このように解釈するのが正しいと考えています。もう一冊、手元にある長谷部恭男『憲法』〔第6版〕(2014年、新世社)362頁も、召集時期については明言していないものの、「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、召集を決定しなければならない」と述べています。

 しかし、憲法にも国会法にも臨時国会の召集の期日が明文で定められていないことが、問題を大きくしていることは否定できないでしょう。これでは、内閣のほうで通常国会の召集時期を早めに設定することなどにより、臨時国会を召集しなくともよいということになり、憲法第53条後段は空文に帰し、実質的に削除されたのと同じことになります。まさに「なしくずし」の改憲という事態です。悪いことに、これを招いたのは憲法自身であり、国会法でもあります。もっとも、だからと言って臨時国会を召集しないことが許される訳ではありません。特別国会など、期日を定めている条文に倣って、召集期日を決定すべきです。

 参考までに、地方自治法第101条を掲げておきましょう。同条の第2項は、「議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。」と定めており、さらに、次のように定めています。

 同条第3項:「議員の定数の四分の一以上の者は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる。」

 同条第4項:「前二項の規定による請求があつたときは、当該普通地方公共団体の長は、請求のあつた日から二十日以内に臨時会を招集しなければならない。」

 同条第5項:「第二項の規定による請求のあつた日から二十日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第一項の規定にかかわらず、議長は、臨時会を招集することができる。」

 同条第6項:「第三項の規定による請求のあつた日から二十日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第一項の規定にかかわらず、議長は、第三項の規定による請求をした者の申出に基づき、当該申出のあつた日から、都道府県及び市にあつては十日以内、町村にあつては六日以内に臨時会を招集しなければならない。」

 国会法にも同様の規定を置く必要があるのではないでしょうか。

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13年前に買ったiBook 600

2015年10月25日 21時55分49秒 | デジタル・インターネット

 先日、実家にあるiBook G3 600を、久しぶりに動かしてみました。

 大当たりの機械であったためか、それともマッキントッシュであったからか、理由はわかりませんが、しっかりと動きました。ちなみに、OSはMac Ⅹですが、ヴァージョンは10.2のままのはずです。そのため、OS 9も動かせます。

 このiBook G3 600は、ぼくが最初に購入したマックで、大分大学教育福祉科学部の助教授になった2002年の6月14日、デオデオ大分本店で購入しました。2001年モデルでしたので、購入当時で既に少し古い型番となっていましたが、それを承知で購入しました。

 理由は、当時、研究室で使用していたWindows XPの機械でトラブルが頻発し、仕事にならないと悩んでいたためです。その頃、Mac OS Ⅹの安定性が増したということを何かの雑誌で読んだことから、将来のメイン機になりうることを想定して、予備機として購入したのです。早い話が様子見のためですが、大分大学助教授時代、そして大東文化大学助教授時代に、非常に使用頻度が高い予備機となりました。大学での講義で使用したこともありますし、遠出をする際に何かと持ち歩く機械となりました(現在ではMacBook Airを持ち歩いています)。キーボードの操作感はあまりよくないのですが、とにかく丈夫で使い勝手が良いのです。

 しかも、これまた理由がよくわからないのですが、iBook G3 600は女性に受けがよい機械でした。大分大学時代のゼミ生にも好評でしたし、東京・大分間の飛行機の中でこれを使っていたところ、JALであったかJASであったかANAであったか、どこの航空会社であったかは忘れましたが、客室乗務員の女性に、いかにも、欲しい、持っているなんてうらやましい、というような歓声をあげられ、むしろこちらが驚いたということもありました。よほど欲しかったのでしょうか。

 2015年の今、OS 9を使うことなどないでしょうし、10.2ではとうの昔に実用的でなくなっていますし、さりとて10.11(Mac OS Ⅹ El Capitan)にすることはできません。しかし、動作は安定していますし、今では入手困難なソフトも入っていますので、何かの折にまた使ってみようと思っています。

 こんなことを書いているぼくは、新しいMac Bookの操作感などに魅了されてしまい、渋谷、銀座、そして二子玉川でいじってみて買いたくなったのですが、性能などを考え、どうしようかなどと考えながら現在に至っています。

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司法試験の考査委員から法科大学院教員を排除へ(但し、2016年度のみ?)

2015年10月21日 22時43分19秒 | 法律学

 このブログでは敢えて取り上げないでおいたのですが、やはり、司法試験考査委員から受験生に試験問題が漏洩した事件は、大きな衝撃を与えるものでした。

 そこで、ということなのでしょう。法務省は、今日、2016年の司法試験考査委員から法科大学院の教員を排除する方針を固めました。時事通信社が、今日の21時42分付で「法科大学院教員を除外=来年の司法試験考査委員-法務省」(http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2015102100903)として報じています。

 但し、これは2016年のみの措置とのことで、2017年以降については検討が続くようです。

 とりあえず、2016年実施予定の試験については、考査委員を実務家、法科大学院OB、学部のみで指導する教員により構成するようです。実施上の難点の有無はともあれ、妥当な方針と言えるでしょう。大学教員を入れるのであれば、当初から法科大学院の教員を排除すべきであったとも言えます。

 

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六法の参照は非常に大事

2015年10月19日 09時26分08秒 | 法律学

 10年前、つまり2005年度の4月から半年ほどの間、私は、早稲田大学法職課程教室公務員試験講座の専門科目講座「行政法」を担当していました。全15回で、講義期間中の毎週月曜日、18時から21時までです。記憶に誤りがなければ7号館でした。毎回教材を作成していたので、前日の日曜日となるとほぼ一日を潰していました。

 それから10年が経過し、今年度(2015年度)、5月から、月曜日の6限(18時半から20時まで)に、私は法学研究所(大東文化大学法学部法律学科の付置機関)の公務員講座「行政法」を担当しています。過去問などを題材にしつつ、学部の講義とは違う観点に立って、話を進めていきます。私自身が教材を作成し、過去問の解説も記しています。

 このような仕事をしていると、改めて気づくことがあります。普段から六法を参照して勉強することの重要性です。法律の条文を読みながら学習しなければ、やはり無意味なのです。

 よく、公務員試験は判例が重要だといいます。実のところ、これは半分は当たっていますが、半分は外れています。やはり、法律に関する試験問題が出される訳ですから、条文に関する知識が大前提になっているのです。条文と判例の順序を間違えてはいけません。まずは条文があり、その条文の解釈などをめぐって争われるから判例があるのです(ほとんどの場合はこれに該当します)。判例の重要性を肯定するのは当然なのですが、だからといって条文を疎かにしたら、何が争点なのかを理解することすら難しくなるでしょう。

 行政法の過去問を参照するとすぐにわかりますが、これといった判例が存在しないような分野があります。また、判例の有無に関係なく、条文に関する知識が必要な分野がいくつも存在します。例えば、行政手続法に関する出題がそうで、条文の趣旨についてかなり細かいところを問うものが多いのです。

 こうなると、普段から重要な法律、例をあげるならば行政手続法、行政代執行法、行政事件訴訟法、行政不服審査法などの重要な規定に何度も繰り返して目を通し、確認しておくことが必要となります。実際の試験では六法を参照することができませんし、問題によっては参照条文が書かれているとは言え、行政手続法や行政事件訴訟法などの条文は書かれませんから、覚えているか否かで結果が異なります。問題の選択肢には、条文の引き写しに近い文章も含まれていれば(これが正解であったりします)、紛らわしい表現であるがよく読むと不正解であることがわかるもの(勿論、引っかけを意図しています)も含まれています。一度も条文を読んだことがなければ正解を見つけられるはずがありませんし、参照の度合いが不十分であっても、正解に至ることはないでしょう。

 こう記すと、六法の参照が面倒だ、などという声が聞こえてきそうです。たしかにそうです。しかし、最初に億劫がり、面倒くさがっては、後が大変です。最初の苦労を省くと、後の苦労が大きくなる訳です。毎日のように読んでいれば、いつの間にか覚えてしまうものです。正確に暗唱できる必要があるかどうかは、私にもわかりませんが、少なくとも趣旨は覚えられます。小説などを何度も読んでいれば、少なくともあらすじなどを詳しく語ることができるようになり、印象的なフレーズであれば完全に諳んじることができるようになるのと同じことです。「読書百遍意自ずから通ずる」という言葉は、六法の参照についても当てはまります。何しろ、それほど記憶力のよくない私でも、いくつかの条文は暗記できるようになったのです。

 私は中央大学法学部法律学科を卒業し、早稲田大学大学院法学研究科修士課程を修了しました。その間、周囲に司法試験(勿論、当時ですから旧司法試験です)の勉強をしていた者が多かったため、六法の活用に自分なりの工夫をしている人をよく見かけ、私にできることがあれば真似たりしたものです。新司法試験の現在でも、教材なり勉強法なりは多少変わっているでしょうが、基本的な部分では同じことではないでしょうか。

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三江線は廃止されるか

2015年10月17日 15時02分21秒 | 社会・経済

 以前から廃止の噂があった三江線ですが、JR西日本が同線について今後のあり方を検討していることが明らかになりました。朝日新聞社が今日の7時46分付で「JR西日本、三江線廃止を検討 地元に戸惑い広がる」(http://www.asahi.com/articles/ASHBJ513FHBJPTIB00S.html?iref=comtop_6_03)として報じています。

 三江線という路線名を耳にしても、どこかわからないとおっしゃる方もおられるでしょう。山陰本線の江津駅(島根県)から芸備線の三次駅(広島県)まで108.1kmの路線で、いわゆる陰陽連絡線の一つです。しかし、国鉄時代から営業成績は悪く、1975年に全通する前、三江北線、三江南線の双方が赤字83線として国鉄諮問委員会から廃止を勧告されたこともあります。この際は、途中の浜原~口羽が建設中であったことなどから存続が決まりました。1980年代には特定地方交通線に指定される可能性も高かったのですが、除外されました。代替道路の未整備が理由とされています。

 それにしても、営業成績が悪いことに変わりはありません。しかも、年々悪化しています。上記朝日新聞社記事によると、1992年度の利用者は1日平均で1409人で、これでも多いとは到底言えない数字ですが、2014年度には183人となっていました。2014年度の輸送密度は50人で、これはJR北海道で最も低い札沼線の北海道医療大学⇔新十津川(81人)を下回り、JRグループでは最低の数字となります。ちなみに、廃止された岩泉線(JR東日本。盛岡県)の2009年度における輸送密度は29人であり、一部廃止が決定した留萌本線の全線における2014年度の輸送密度は142人です。

 2010年には沿線自治体によって三江線活性化協議会が結成されました。その後、三江線では、2012年の10月から12月まで社会実験が行われ、列車(と言っても1両だけのワンマン運転ですが)の代わりにバスを増便したのですが、1日平均の利用人員が226人しかいなかったのでした。

 ついでに記すならば、赤字83線の勧告がなされたのは、私が生まれた1968年のことですから、実に47年前のことでした。それ以来、機会がある毎に廃止か存続かが検討されてきたこととなります。半世紀近くにわたってよくぞ存続したものです。また、特定地方交通線から除外された路線であっても、深名線、岩泉線は廃止されています。

 今月に入って、JR西日本から島根県の副知事に連絡が入りました。今後の三江線について検討したいという意向が、同社から伝えられたとのことです。その後も同社から県に説明が行われたのですが、廃止という言葉そのものは出されなかったということです。ただ、同社は、記事の文言を引用するならば「地域交通のあり方について検討に入りたい」という趣旨を島根県に伝えたのであり、廃止も示唆されていると理解するのが妥当でしょう。

 ただ、廃止が検討されるのであれば、2013年8月24日の大雨による全線運休からおよそ11か月ぶりに、つまり2014年7月に全線で運転を再開したのは何であったのか、という疑問は残ります。2013年の災害では、井原川橋梁の橋脚が折れたり、72箇所で土砂の流入や土石流などの被害を受けており、10億円以上の費用がかけられています。JR西日本がいつから廃止を検討してきたのか、詳しいことがわからないのですが、利用客が極端に少ないのであれば、当然、大金をかけて復旧するだけの意味があるのか、岩泉線のように復旧を断念して廃線とするか、検討を重ねたはずです。

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この閣議決定は生きているのか? (生きているはずであるが)

2015年10月16日 09時00分32秒 | 法律学

 私は、ここ何年間か、大東文化大学法学部で法学特殊講義2A(財政法A)・2B(財政法B)という講義を担当しています。2003年に熊本県立大学総合管理学部で、2007年、2009年および2011年に福岡大学法学部で行った集中講義と、基本的な構造は同じです(勿論、年度によって内容を変えています)。

 10月20日か27日の講義で、今も施行されていない財政法第10条を取り上げます。それに関連するものとして、「官公庁における寄附金等の抑制について(次官通達)」という文書があります。1948(昭和23)年1月30日の閣議決定で、国立国会図書館のサイトに掲載されています(https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/bib00855.php)。今回は全文を紹介しておくこととしましょう。何か問題がありましたら、すぐに削除しますので、御連絡をいただければ幸いです。

 「財政の窮迫化に伴い、最近諸官庁(学校を含む。)においてその経費の一部を諸種の寄附に求める傾向が著しいが、寄附者の自由意志によると言われる揚合においても、その性質上半強制となる場合が多く、或いは国民に過重の負担を課することとなり、或いは行政措置の公正に疑惑を生ぜしめる恐れなしとしない。

 よつて、極力かかる傾向を是正するため、次の方針によるものとする。

 1 官庁の諸経費は、予算でもつて賄い、寄附金等の形によつて他に転嫁することは、極力これをつつしむこととし、これがため行政諸政策は、国家財政との関連において実行可能のものに限定するよう努めること。

 2 官庁自身による場合はもとより、後援団体を通じてなす場合においても寄附金の募集は厳にこれを禁止すること。

 3 自発的行為による寄附の場合においても、割当の方法によるものでなく、旦つ主務大臣が弊害を生ずる恐れがないと認めたものの外その受納はこれを禁止すること。

 4 前項によつて主務大臣が寄付の受納を認めた場合には、

 (イ)醵金にあつては、これを歳入に繰入、醵金の主旨を考慮の上予算的措置を講ずるものとすること。

 (ロ)公共施設の寄附(適正賃貸料を下廻る借入の場合を含む。)にあつては、所定の手続をなし、且つこれを公表するものとすること。

 5 主務大臣は前各項の趣旨を部内に徹底せしめる措置を講ずること。

 6 地方公共団体に対しても前各項に準ずるようその自粛を求めること。」

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行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版 第15回 行政指導

2015年10月15日 21時31分39秒 | 行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版

 1.行政指導の性質および定義

 いつのことからか、日本の行政は不透明であると諸外国 (とくにアメリカ)から批判されるようになった。その大きな原因の一つが行政指導である。

 まず、行政指導は、行政組織法の根拠を必要とする。しかし、行政作用法の根拠を必要としない。と言うよりも、法律の根拠がないという事態に臨機応変に対応するための方法であり、法的効果もない事実行為であり、権限の所在や指揮系統・行政責任の不明確性もあって(意図的に不明確にしている場合もある)、当事者以外からは見えにくいものとなっている。とくに、国による行政指導は、官庁の監督権限と結びついて行政の不透明性・密室性を拡大させ、また官民の癒着をも進行させた。日本の行政手続法が制定されたのは、行政指導に関する諸外国からの批判に答える(あるいはかわす?)という意味もあったのである。

 しかし、行政指導が全て悪であるという訳ではない。地方公共団体、とくに市町村において、国の法律の不備、しかも、条例を制定できるかどうかも疑わしい場合などを補う形で、例えば無秩序な宅地開発を防止するために、行政指導が用いられた。

 行政指導には定型がないので、これに対する定義も様々であり、法律においても様々な用語が用いられる(指導、勧告など)。行政手続法第2条第6号は、行政指導を「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないもの」と定義している。この定義にも現われているように、行政指導は、相手方に法的な義務を課するものではなく、任意的な協力を求めるものである。たとえ要綱などにおいて行政指導の基準を定め、相手方がそれに従わない場合の対応措置を定めたとしても、それによって法的な行為にはならない。要綱は内部的な基準にすぎないからである。

 そして、行政指導は、何らかの具体的な行政目的を実現するための手段である。行政指導に従わない私人は、事実の公表や給付の打ち切りなどの制裁を受けることもあるが、刑罰を科される訳ではない。その意味においては、行政指導は非権力的手段である。もっとも、前記の制裁も、刑罰よりはソフトであるとはいえ、場合によっては問題を残すであろう。

 

 2.行政指導の分類

 前述のように、行政指導には定型がない。この点が行政行為などと異なるのであり、行政手続法第2条第6号も一応の定義であるにすぎない。そのため、行政指導の種類と言っても、実態からの帰納的分類であり、実際に果たす機能をみた上での便宜的な分類に過ぎない。実際の行政指導には、社会保障行政などで見られる助成的な指導、規制的な指導、調整的な指導があると言えるが、実際にはいくつかの性格を兼ね備えていることも多く、いずれも、何らかの意味において規制的な機能を帯びる点において共通している。

 ①規制的な行政指導

 行政指導において典型的なものであり、多くの行政指導が、何らかの形で行政の相手方である私人(個人、私企業など)の活動を規制する目的のためになされるものであると言いうる。例として、次のようなものがある。

消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第6条第1項に基づく、公正取引委員会による勧告

 経済産業省によって行われる、不況時における操業短縮勧告(積極的な規制目的)

 建築確認の留保とセットで行われる行政指導

 料金の値上げをめぐる行政指導

 ②助成的な行政指導

 情報提供による助成であり、単なる情報提供とは異なり、何らかの政策目的を実現するための手段として位置づけられる。

 ③調整的な行政指導

 私人間の紛争を解決するための手段としてなされる行政指導である。例として、マンションの建築主と周辺住民との間での紛争を解決するために行われる行政指導があげられる。ただ、この場合は、実質的にマンションの建築主などに対する一種の規制として働くことが少なくない。その意味においては規制的な行政指導の変種と言えなくもない。帰納的な分類であるため、一つの、あるいは一連の行政指導が複数の性格を有しうることは、むしろ当然のことである。

 

 3.行政指導の問題点

 事実行為であるはずの行政指導は、様々な場面において行政目的を実現するための手段として多用されている。それだけに、様々な問題が存在する。

 ①法律の根拠

 既に述べたように、行政組織法の根拠は必要である。それは、所掌事務の範囲内であることが求められるためである(行政手続法第32条も参照)。

 これに対し、行政作用法の根拠が必要であるか否かは問題とされる。既に述べたように、事実行為であることからすれば、行政作用法の根拠は不要であると言いうる。実際的な側面においても、法律の根拠がないという事態に臨機応変に対応するための方法なのであるから、行政作用法の根拠は不要であるとも言えるであろう。判例も、おそらくは行政指導の実態に即して考察したのであろうか、侵害留保の原則から行政作用法の根拠を不要と解する。しかし、学説は様々で、判例と同旨の説、(行政指導の実態に鑑みて、であると思われるが)法律の根拠を必要とすると解する説などがある。

 ②制定法の趣旨・目的との関係

 行政指導について行政作用法の根拠が不要であるとしても、このことから直ちに、行政指導がいかなる内容のものであってもよいということにはならない。行政作用法の趣旨や目的にそぐわない行政指導は違法または不当の評価を受けうることとなる。また、かような行政指導に従ったことによって自らの行動の正当性を主張することも許されないと解さざるをえないであろう(但し、この場合は一定の配慮が必要となる場合も考えられる)。

 ●最三小判昭和57年3月9日民集36巻3号265頁

 事案:事業者団体である石油連盟は、第一次オイルショック後に石油製品の価格を引き上げる決定を行い、加盟各社に通知した。これに基づいて加盟各社が製品の価格を引き上げたところ、公正取引委員会は、このような行為が独占禁止法第8条第1項第1号に違反するという審決を行った。これに対し、石油連盟は、前記決定の後に当時の通商産業省から価格引き上げの幅を縮小すべしという行政指導を受け、石油元売業者もこの行政指導に従ったことを理由として、石油連盟による前記決定の違法性は消滅したと主張したが、公正取引委員会はこれを認めなかった。 判旨 最高裁判所第三小法廷は、独占禁止法第8条第1項第1号にいう「競争の実質的制限」の解釈を示した上で、「事業者団体がその構成員である事業者の発意に基づき各自業者の従うべき基準価格を団体の意思として協議決定した場合においては、たとえ、その後これに関する行政指導があったとしても、当該事業団体がその行った基準価格の決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右行政指導により当然に前記独占禁止法八条一項一号にいう競争の実質的制限が消滅したものとみることは許されない」として、石油連盟の上告を棄却した。

 この判決は、行政指導に従ったからといって、行為の違法が阻却される訳ではないということを示している。但し、行政事件訴訟と刑事事件とでは違法性に関する判断が異なるということもありうる。

 ●最二小判昭和59年2月24日刑集38巻4号1287頁(Ⅰ-101)

 事案:基本的な部分は前掲最三小判昭和57年3月9日と同じである。石油連盟およびこれに加盟する各社の行為が独占禁止法第2条第6号にいう「不当な取引制限」であって同第3条に違反するとして、石油元売会社などの刑事責任が問われた。これに対して、被告人らは当時の通商産業省による行政指導に従ったことを理由として無罪を主張した。東京高判昭和55年9月26日高刑集33巻5号511頁は被告人らの主張を全て退け、懲役刑または罰金刑を言い渡した。最高裁判所第二小法廷は、被告人らの一部について無罪の判決を言い渡した。

 判旨:「物の価格が市場における自由な競争によつて決定されるべきことは、独禁法の最大の眼目とするところであつて、価格形成に行政がみだりに介入すべきでないことは、同法の趣旨・目的に照らして明らかなところである。しかし、通産省設置法三条二号は、鉱産物及び工業品の生産、流通及び消費の増進、改善及び調整等に関する国の行政事務を一体的に遂行することを通産省の任務としており、これを受けて石油業法は、石油製品の第一次エネルギーとしての重要性等にかんがみ、『石油の安定的かつ低廉な供給を図り、もつて国民経済の発展と国民生活の向上に資する』という目的(同法一条)のもとに、標準価格制度(同法一五条)という直接的な方法のほか、石油精製業及び設備の新設等に関する許可制(同法四条、七条)さらには通産大臣をして石油供給計画を定めさせること(同法三条)などの間接的な方法によつて、行政が石油製品価格の形成に介入することを認めている。そして、流動する事態に対する円滑・柔軟な行政の対応の必要性にかんがみると、石油業法に直接の根拠を持たない価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われ、『一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する』という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しないものである限り、これを違法とすべき理由はない。そして、価格に関する事業者間の合意が形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、それが適法な行政指導に従い、これに協力して行われたものであるときは、その違法性が阻却されると解するのが相当である」。

 ③比例原則、平等原則など

 当然に妥当するものと解される。そのため、度を越した公務員の退職勧奨は不法行為とみなされる場合がある(最一小判昭和55年7月10日判タ434号172頁)。また、信義誠実の原則が妥当することがある〔最三小判昭和56年1月27日民集35巻1号35頁(Ⅰ―29)など〕。

 ④相手方の任意性

 行政指導は、一応、非権力的手段と位置づけられているが、実際には相手方の任意性を失わせ、何らかの行為を強要する結果につながることが多い。 地方公共団体の要綱(行政規則の一種)には、行政指導の基準を定めるとともに、指導に従わない者の氏名の公表(当然、経済的あるいは社会的な損失を招く)、許認可などの留保を定めるものが多い。

 ●最三小判昭和60年7月16日民集39巻5号989頁(Ⅰ―132)

 事案:東京都の某所にマンションを建設する計画があり、業者Xは東京都に建築確認の申請を行った。しかし、住民の反対が強かったことから、東京都はXに住民との話し合いを指導した。Xはこの指導に従って話し合いをしたが、解決をみなかった。一方、東京都は新高度地区案を発表して建築確認の留保を明示し、Xにさらに話し合いを進めることを指導した。結局、Xはこれ以上指導に従わないこととし、金銭補償によって住民との紛争を解決し、ようやく建築確認を得た。Xは、その間に建築確認が留保されたことを不服として出訴した。東京地判昭和53年7月31日判時928号79頁はXの請求を棄却したが、東京高判昭和54年12月24日判時955号73頁はXの請求を一部認容したため、東京都が上告し、Xも附帯上告した。最高裁判所第三小法廷は、東京都の上告を棄却し、Xの附帯上告も棄却した。

 判旨:「関係地方公共団体において、当該建築確認申請に係る建築物が建築計画どおりに建築されると付近住民に対し少なからぬ日照阻害、風害等の被害を及ぼし、良好な居住環境あるいは市街環境を損なうことになるものと考えて、当該地域の生活環境の維持、向上を図るために、建築主に対し、当該建築物の建築計画につき一定の譲歩・協力を求める行政指導を行い、建築主が任意にこれに応じているものと認められる場合においては、社会通念上合理的と認められる期間建築主事が申請に係る建築計画に対する確認処分を留保し、行政指導の結果に期待することがあつたとしても、これをもつて直ちに違法な措置であるとまではいえない」。しかし、「右のような確認処分の留保は、建築主の任意の協力・服従のもとに行政指導が行われていることに基づく事実上の措置にとどまるものであるから、建築主において自己の申請に対する確認処分を留保されたままでの行政指導には応じられないとの意思を明確にしている場合には、かかる建築主の明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない筋合のものであるといわなければならず、建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、当該建築主が受ける不利益と右行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、右行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは、違法であると解するのが相当である」。そのため、「いつたん行政指導に応じて建築主と付近住民との間に話合いによる紛争解決をめざして協議が始められた場合でも、右協議の進行状況及び四囲の客観的状況により、建築主において建築主事に対し、確認処分を留保されたままでの行政指導にはもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明し、当該確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているものと認められるときには、他に前記特段の事情が存在するものと認められない限り、当該行政指導を理由に建築主に対し確認処分の留保の措置を受忍せしめることの許されないことは前述のとおりであるから、それ以後の右行政指導を理由とする確認処分の留保は、違法となるものといわなければならない」。

 ●最二小決平成元年11月8日判時1328号16頁(Ⅰ-97)

 事案:武蔵野市は宅地開発指導要綱を定めた。これは、中高層建築物について住民の同意を得ること、教育施設負担金を同市に寄付することを事業主に求め、従わない場合には上下水道などについての協力を行わないというものである。A建設は、同市内にマンションを建設しようとして住民の同意を得る努力をしたが得られなかったので、市長の承認を得ずに東京都に建築確認申請をして確認を得た。同市はA建設からの給水契約の申し込みを拒否したが、A建設は建設を強行した。A建設は何度も給水契約の申し込みをしたが同市は書類を受理しなかった。こうした同市の対応が水道法第15条第1項に違反するとして、同市長が起訴された。東京地八王子支判昭和59年2月24日判時1114号10頁は同市長を罰金10万円に処し、東京高判昭和60年8月30日判時1166号41頁は同市長の控訴を棄却した。最高裁判所第二小法廷は、市長の上告を棄却した。

 決定要旨:同市長がA建設などから提出された給水契約の申込書の受領を拒絶した時期には、既にA建設が「武蔵野市の宅地開発に関する指導要綱に基づく行政指導には従わない意思を明確に表明し、マンションの購入者も、入居に当たり給水を現実に必要としていた」から「このような時期に至ったときは、水道法上給水契約の締結を義務づけられている水道事業者としては、たとえ右の指導要綱を事業主に順守させるため行政指導を継続する必要があったとしても、これを理由として事業主らとの給水契約の締結を留保することは許されないというべきであるから、これを留保した被告人らの行為は、給水契約の締約を拒んだ行為に当たる」。水道事業者である武蔵野市は、「たとえ指導要綱に従わない事業主らからの給水契約の申込であっても、その締結を拒むことは許されないというべきであ」り、同市長に「本件給水契約の締結を拒む正当の理由がなかった」。

 ●最一小判平成5年2月18日民集47巻2号574頁(Ⅰ-103)

 事案:Xは武蔵野市に3階建て賃貸マンションの建設を計画した。武蔵野市は、前掲最二小決平成元年11月8日に登場する要綱に基づいて教育施設負担金の寄付を要請した。Xは不満を抱いたが制裁などを恐れたため、市に教育施設負担金を納付した。Xは、この寄付が武蔵野市の強迫によるものであるとして意思表示の取消しを主張した上で、教育施設負担金相当額の返還を求めて出訴した。東京地方八王子支判昭和58年2月9日民集47巻2号603頁はXの請求を棄却し、東京高判昭和63年3月29日民集47巻2号610頁もXの控訴を棄却した。最高裁判所第一小法廷は、次のように述べて、Xの主張のうち、強迫の主張を退けたが、国家賠償の請求について破棄差戻判決を出した。

 判旨:「行政指導として教育施設の充実に充てるために事業主に対して寄付金の納付を求めること自体は、強制にわたるなど事業主の任意性を損うことがない限り、違法ということはできない」が、「指導要綱は、法令の根拠に基づくものではなく、被上告人において、事業主に対する行政指導を行うための内部基準であるにもかかわらず、水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、事業主に一定の義務を課するようなものとなっており、また、これを遵守させるため、一定の手続が設けられている。そして、教育施設負担金についても、その金額は選択の余地のないほど具体的に定められており、事業主の義務の一部として寄付金を割り当て、その納付を命ずるような文言となっているから、右負担金が事業主の任意の寄付金の趣旨で規定されていると認めるのは困難である。しかも、事業主が指導要綱に基づく行政指導に従わなかった場合に採ることがあるとされる給水契約の締結の拒否という制裁措置は、水道法上許されないものであ」る(水道法第15条第1項、前掲最二小決平成元年11月7日参照)。本件において、武蔵野市の担当者の対応からは「本件教育施設負担金の納付が事業主の任意の寄付であることを認識した上で行政指導をするという姿勢は、到底うかがうことができ」ず、「右のような指導要綱の文言及び運用の実態からすると、本件当時、被上告人は、事業主に対し、法が認めておらずしかもそれが実施された場合にはマンション建築の目的の達成が事実上不可能となる水道の給水契約の締結の拒否等の制裁措置を背景として、指導要綱を遵守させようとしていたというべきであ」り、Xに対して「指導要綱所定の教育施設負担金を納付しなければ、水道の給水契約の締結及び下水道の使用を拒絶されると考えさせるに十分なものであって、マンションを建築しようとする以上右行政指導に従うことを余儀なくさせるものであり、米久に教育施設負担金の納付を事実上強制しようとしたものということができる」から、「右行為は、本来任意に寄付金の納付を求めるべき行政指導の限度を超えるものであり、違法な公権力の行使であるといわざるを得ない」。

 

 3.行政指導に関する行政手続法第32条以下の規定

 ①第32条

 この規定は、行政指導の一般原則を示すものである。

 まず、第1項は、行政指導が行政機関の任務や所掌事務を逸脱するものであってはならない旨を、そして、相手方の任意の協力によってのみ、行政指導の目的が実現されるという旨を規定する。

 次に、第2項は、行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取り扱いの禁止を規定する。但し、法律によって、行政指導としての勧告に従わない者について改善命令や許可の取消処分(実際には撤回処分の場合が多い)をなすという構成がとられている場合には、ここにいう不利益な取り扱いに該当しない。

 この規定に関係する一つの問題として、行政指導に従わなかったものの氏名の公表がある。これについては、第19回を参照していただい。

 ②第33条

 この規定は、申請の取り下げ、または申請内容の変更を求める行政指導に関するものであり、 申請者が行政指導に従わない意思を表明した場合には、なおも行政指導を継続することなどによって申請者の権利行使を妨げるようなことをしてはならない旨が示されている。これは、申請者が一度行政指導に従うと、自分の意思で、すなわち任意に協力したものとみなされるため、大きな不利益を被っても事後的に争えなくなってしまうためである。

 ③第34条

 この規定は、許認可等の権限に関連する行政指導に関するものである。行政機関がこうした権限を行使できない場合(例、処分基準に達していない、実は処分基準として定められていない、など)、または行使する意思がない場合に、こうした権限を行使しうるという趣旨を殊更に強調することは許されない。

 ④第35条

 この規定は、行政指導の方式に関するものである。第1項は、行政指導の趣旨、内容、責任者の明確性を定める。第2項(平成26年改正により追加)は、「行政指導に携わる者」が行政機関の許認可権限等を示す場合に、私人に対して示すべき事項(権限行使の根拠となる法令の条項、要件、権限の行使が要件に適合する理由)を示さなければならない旨を定める。また、第3項は、書面交付請求に対する交付の義務を定める。さらに、第4項は適用除外に関する規定である。

 ⑤第36条

 この規定は、複数の者を対象とする行政指導についての原則を示すものである。

 ⑥第36条の2

 この規定は、平成26年改正により追加されたものであり、行政指導が法律の定める要件に適合しないと私人が思料した場合に、行政機関に対してその行政指導の中止等を求めることができる旨を規定する。行政機関は、この求めを受けて調査を行い、行政指導が法律の定める要件に適合しないと認めたときには中止等の措置をしなければならない。但し、本条が適用されるのは「法令に違反する行為の是正を求める行政指導」に限られる。

 注意:行政手続法は国の行政手続に適用されるものである。地方公共団体の行政手続については各地方公共団体の行政手続条例が適用される。

 

 4.行政指導と訴訟

 ①行政指導は事実行為である→それが違法であるとしても、一般的には処分性が認められず、取消訴訟によって争うことはできない(通説・判例)。

 但し、次の判決に注意を要する。

 ●最一小判平成16年4月26日民集58巻4号989頁

 事案:Xは食品輸入業者であり、「フローズン・スモークド・ツナ・フィレ」(冷凍スモークマグロ切り身)100kgを輸入しようとしたが、Y(成田空港検疫所長)から食品衛生法第6条に違反する旨の通知を受けた。そこで、Xはこの通知の取消を求めて出訴した。千葉地判平成14年8月9日民集58巻4号1017頁はXの請求を却下し、東京高判平成15年4月23日民集58巻4号1023頁もXの控訴を棄却した。最高裁判所第一小法廷は、次のように述べて事件を千葉地方裁判所に差し戻した。

 判旨:食品衛生法第16条は「厚生労働大臣が、輸入届出をした者に対し、その認定判断の結果を告知し、これに応答すべきことを定めて」おり、食品衛生法違反通知書による通知は同条に根拠を置く。従って、厚生労働大臣の委任を受けたYは、Xに対して「本件食品について、法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。そして、本件通知により」Xは「本件食品について、関税法70条2項の『検査の完了又は条件の具備』を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなるのであり、上記関税法基本通達に基づく通関実務の下で、輸入申告書を提出しても受理されずに返却されることとなる」から「本件通知は、上記のような法的効力を有するものであって、取消訴訟の対象となる」。

 ●最二小判平成17年7月15日民集59巻6号1661頁(Ⅱ-167)

 事案:医師であるXは、富山県高岡市内において病院の開設を計画し、Y(富山県知事)に対し、病床数を400床として病院開設に係る医療法第7条第1項の許可の申請をした。これに対し、Yは、医療法第30条の7の規定に基づいて「高岡医療圏における病院の病床数が、富山県地域医療計画に定める当該医療圏の必要病床数に達しているため」という理由で、Xに対し、病院の開設を中止するよう勧告した。Xはこの勧告を拒否し、速やかに許可をするように求めたので、Yは病院開設の許可を出したが、同日に、富山県厚生部長名により、中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には昭和62年9月21日付厚生省保健局長通知において保健医療機関の指定の拒否をすることとされている旨の通知も行った。Xは、病院開設中止の勧告が医療法第30条の7に反するから違法であるなどとして、勧告の取消および保健医療機関指定拒否の旨の通知の取消を求めて出訴した。富山地判平成13年10月31日訟月50巻7号2028頁はXの請求を却下し、名古屋高金沢支判平成14年5月20日訟月50巻7号2014頁も控訴を棄却した。最高裁判所第二小法廷は、以下のように述べて病院開設中止勧告が行政事件訴訟法第3条第2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると判断し、本件を富山地方裁判所に差し戻した。

 判旨:「医療法は、病院を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない旨を定めているところ(7条1項)、都道府県知事は、一定の要件に適合する限り、病院開設の許可を与えなければならないが(同条3項)、医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合には、都道府県医療審議会の意見を聴いて、病院開設申請者等に対し、病院の開設、病床数の増加等に関し勧告することができる(30条の7)。そして、医療法上は、上記の勧告に従わない場合にも、そのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされることはない。

 他方、健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの)43条ノ3第2項は、都道府県知事は、保険医療機関等の指定の申請があった場合に、一定の事由があるときは、その指定を拒むことができると規定しているが、この拒否事由の定めの中には、『保険医療機関等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』との定めがあり、昭和62年保険局長通知において、『医療法第三十条の七の規定に基づき、都道府県知事が医療計画達成の推進のため特に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず、病院開設が行われ、当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合にあっては、健康保険法四十三条ノ三第二項に規定する「著シク不適当ト認ムルモノナルトキ」に該当するものとして、地方社会保険医療協議会に対し、指定拒否の諮問を行うこと』とされていた(なお、平成10年法律第109号による改正後の健康保険法(平成11年法律第87号による改正前のもの)43条ノ3第4項2号は、医療法30条の7の規定による都道府県知事の勧告を受けてこれに従わない場合には、その申請に係る病床の全部又は一部を除いて保険医療機関の指定を行うことができる旨を規定するに至った。)」。

 「上記の医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと、医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たると解するのが相当である。後に保険医療機関の指定拒否処分の効力を抗告訴訟によって争うことができるとしても、そのことは上記の結論を左右するものではない」。

 いずれの判決も、事実行為としての通知や勧告が、後の行政行為(など法的な行為)につながるという制度に関するものである。従って、両判決によって行政指導が一般的に処分として取消訴訟によって争いうるようになった、と考えるべきではない。

 前掲最二小判平成17年7月15日を例にとると、この判決において勧告に処分性が認められたのは、医療法第30条の7ではなく、健康保険法第43条の3(1998年改正前)の存在であろう。医療法第30条の7による勧告そのものは、開設許可に何らの影響も与えない。しかし、健康保険法第43条の3により、保険医療機関の指定が拒否されるとすれば、病院を開設してもほとんど意味がなくなってしまう。このような構造(当時は機関委任事務の制度が存在していた)では、勧告が次の保険医療機関指定許否処分につながりうることとなる。そのため、勧告は、いわば先行処分のような機能を実質的に有することとなるのである。

 ②行政指導に従った結果として損害を受けた場合には、国家賠償法第1条に基づいて損害賠償を請求できる場合がある。前掲最一小判平成5年2月18日がその代表例である。

 ③行政指導継続中の建築確認の留保は、直接的には行政行為の不作為の違法性が問題となっているので、その不作為の違法性を理由にする不作為の違法確認訴訟または損害賠償請求によって争う。 また、行政事件訴訟法第37条の2に定められる義務づけ訴訟により争うこともできるであろう。 ④行政指導不服従の結果としての給水拒否の場合には、給水拒否の違法を争う損害賠償請求、または給水契約締結を求める訴訟によって争うことになる。

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高津駅で総合検測車TOQ i(東急7500系)に遭遇

2015年10月14日 00時00分00秒 | 写真

昨日(10月13日)、高津駅で総合検測車TOQ i(7500系)を見ました。

電車から降りたばかりの時に4番線ホームを通過したため、iPhone6で撮影しました。

 総合検測車TOQ iは、2012年に登場した事業用車で、上り側(田園都市線で言えば渋谷側)にデヤ7500、下り側(田園都市線で言えば中央林間側)にデヤ7550という編成です。中間にサヤ7590をはさむことがありますが、撮影時は連結しておらず、デヤ7500とデヤ7550との間に7700系の3両編成(7903F)をはさみこんでいました。

 TOQ iは、東急の鉄道線(軌道線である世田谷線を除く全線)の軌道検測および架線検測を行うための車両ですが、今回のように7700系などをはさんで走ることもあります。これは、池上線・東急多摩川線の車両(2代目7000系を除く)にATC機器が搭載されていないためで、長津田車両工場で行われる定期検査のための回送にも使用されます。池上線・東急多摩川線の車両は雪が谷検車区に所属するため、同検車区→蒲田駅→多摩川駅→田園調布駅→大岡山駅→二子玉川駅→長津田駅→長津田車両工場というルートを使うこととなります(復路はこの逆を進みます)。 

 なお、2015年2月16日に二子玉川駅で撮影した動画も掲載しておきます。

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講義中に思い浮かんだこと 公債発行特例法は違憲の疑いがある法律ではないのか

2015年10月13日 19時06分28秒 | 国際・政治

 今日の午前中、大東文化大学法学部で法学特殊講義2B(財政法B)の講義をしていました。その時、ふと思い浮かんだことがあります。既にどなたかが指摘されておられるとは思うのですが、記していきます。

 通称を赤字国債という特例公債の発行については、平成23年度まで、ほぼ毎年、財政法第4条に対する特例法が制定されていました。しかし、平成24年度からは「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律」が、毎年ではなく、将来の数年間にわたって公債の発行を認める旨を定めています。

 この法律は、次のようなものです(平成25年11月22日法律第76号による改正後のものです)。

 

(趣旨)

第一条 この法律は、最近における国の財政収支が著しく不均衡な状況にあることに鑑み、平成二十四年度から平成二十七年度までの間の各年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、これらの年度における公債の発行の特例に関する措置を定めるとともに、平成二十四年度及び平成二十五年度において、基礎年金の国庫負担の追加に伴いこれらの年度において見込まれる費用の財源を確保するため、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)の施行により増加する消費税の収入により償還される公債の発行に関する措置を定めるものとする。

(平成二十四年度から平成二十七年度までの間の各年度における特例公債の発行等

第二条 政府は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項ただし書の規定及び第四条第一項の規定により発行する公債のほか、平成二十四年度から平成二十七年度までの間の各年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、当該各年度の予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができる。

2 前項の規定による公債の発行は、当該各年度の翌年度の六月三十日までの間、行うことができる。この場合において、当該各年度の翌年度の四月一日以後発行される同項の公債に係る収入は、当該各年度所属の歳入とする。

3 政府は、第一項の議決を経ようとするときは、同項の公債の償還の計画を国会に提出しなければならない。

4 政府は、第一項の規定により発行した公債については、その速やかな減債に努めるものとする。

(特例公債の発行額の抑制)

第三条 政府は、前条第一項の規定により公債を発行する場合においては、中長期的に持続可能な財政構造を確立することを旨として、各年度において同項の規定により発行する公債の発行額の抑制に努めるものとする。

(平成二十四年度及び平成二十五年度における年金特例公債の発行等)

第四条 政府は、財政法第四条第一項の規定にかかわらず、平成二十四年度及び平成二十五年度における基礎年金の国庫負担の追加に伴い見込まれる費用(この項の規定により発行する公債に係る平成二十四年度及び平成二十五年度における利子の支払に要する費用を含む。)の財源については、当該各年度の予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができる。

2 前項の規定により発行する公債及び当該公債に係る借換国債(特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第四十六条第一項又は第四十七条第一項 の規定により起債される借換国債をいい、当該借換国債につきこれらの規定により順次起債される借換国債を含む。次項において同じ。)についての償還及び平成二十六年度以降の利子の支払に要する費用の財源は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律の施行により増加する消費税の収入をもって充てるものとする。

3 第一項の規定により発行する公債及び当該公債に係る借換国債(次項において「年金特例公債」という。)については、平成四十五年度までの間に償還するものとする。

4 年金特例公債は、特別会計に関する法律第四十二条第二項の規定の適用については、国債とみなさない。

 附則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 政府は、平成二十四年度の補正予算において、政策的経費を含む歳出の見直しを行い、同年度において第二条第一項の規定により発行する公債の発行額を抑制するものとする。

 (附則 平成25年11月22日法律第76号は省略)

 

 この法律は、毎年度の国債発行額こそ規定していませんが、数年度先まで国債を発行できるように準備しておくものです。すなわち、毎年度の国会の議決を不要とするものです。そのため、完全に、という訳ではないのですが国会の審議権(審査権)を制約するものとなっています。これは、会計年度独立の原則(予算単年度主義)を定める憲法第86条に違反するのではないか、と思われるのです。発行額の決定については毎年度の国会の審議(審査)を経ることとなっているために違憲性が少なくなっていますが、違憲の疑いが全くないとは言えません。

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