ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

最近よく聴くCD

2017年03月31日 22時32分35秒 | 音楽

 朝日新聞夕刊で紹介されていたことがきっかけで、2月に吉野直子さんの「ハープ・リサイタル2〜ソナタ、組曲と変奏曲」(キングインターナショナル)を買いました。今年発売になったばかりのCDです。

 ヒンデミットの「ハープのためのソナタ」(2014年12月13日に青葉台のフィリアホールで聴きました)が収録されていることも大きかったのですが、タイユフェールの「ハープのためのソナタ」も良い曲で、この2曲を聴きたくなるので通しで流します。

 

 

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おしらせです(2017年3月30日)

2017年03月30日 18時28分32秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、お知らせです。

 大東法学(大東文化大学法政学会)の第68号が、今月発行されました。

 この中に私の「交通政策基本法の制定過程と『交通権』—交通法研究序説」が掲載されています(315~343頁)。お読みいただければ幸いです(なお、こちらも近々、PDFで読めるようになるのではないかと思われます)。

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おしらせです(2017年3月28日)

2017年03月28日 12時48分06秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、お知らせです。

 大東文化大学法学研究所報の第37号が、今月発行されました。

 この中に私の「『基本法学概論』(法律学科2年次生用クラス別授業)の現状と課題」が掲載されています(33~37頁)。お読みいただければ幸いです(近々、PDFで読めるようになるのではないかと思われます)。

 
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租税法講義ノート〔第3版〕準備 33 地方消費税

2017年03月27日 23時25分04秒 | 法律学

 国税として消費税などの消費課税が存在するが、地方公共団体にも消費課税が存在する。従来、地方税においても個別消費税が主流であり、しかも、国税としての消費税が導入された後にも、しばらくの間、地方税としての一般消費税は存在しなかった。しかし、地方分権の推進が謳われるようになり、また、地域福祉の拡充を図る必要が高まり、地方公共団体の自主財源を拡充することを求める意見が強くなった。そこで、1994(平成6)年度税制改正の際に一般消費税としての地方消費税が都道府県税として導入されることとなり、1997(平成9)年度から施行されている※。

 ※これと同時に、地方譲与税は廃止されている。なお、都道府県は、地方消費税の税収のうち、2分の1を市町村に交付することとされている。

 地方消費税は消費税の付加税である。これは、一つには納税義務者の申告および納付の便宜に適うという点によるものであり、一つには徴税の便宜に適うという点によるものである。そこで、都道府県税ではあるが納税申告・確定・徴収に関する事務などを国(税務署および税関)に委託する形をとり、また、納税義務者の範囲、非課税や免税の扱いなどを消費税と同一にしている。そのため、都道府県は地方消費税について実質的に地方税立法権を認められておらず、地方税行政権を行使しえない、ということになる※。

 ※拙稿「地方消費税再考―地方税財政権の観点から―」税制研究55号(2009年)92頁、93頁も参照。

 地方消費税の課税物件(地方税なので課税客体ともいう)は、「消費税法第二条第一項第九号に規定する課税資産の譲渡等」および「同法第二条第一項第十一号に規定する課税貨物」(地方税法第72条の78)の引き取りである。前者は国内取引、後者は輸入取引であるので、消費税の場合と意義および範囲が同一である。そして、前者に対する地方消費税が譲渡割、後者に対する地方消費税が貨物割と称される(同第72条の77第2号・第3号)。

 譲渡割については、本来、納税義務者は都道府県知事に中間申告および納付を行い(地方税法第72条の87)、都道府県知事に確定申告および納付を行う(同第72条の88)。また、都道府県知事は更正・決定の権限を有する(同第72条の89)。しかし、地方税法附則第9条の4以下により、「当分の間」は納税申告、確定、徴収に関する事務などを国へ委託することとなっている※。

 ※「32 国税としての消費税の構造」において述べたように、2012(平成24)年8月10日、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」および「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決され、成立した。これにより、消費税とともに地方消費税は、2014(平成26)年4月および2015(平成27)年10月の2段階で引き上げられることとなったのであるが、2014年4月からは地方消費税の税率が消費税額の約27%となる。換言すれば、「課税資産の譲渡等の対価の額」(消費税法第28条第1項)の1.7%である、ということになる。同様に、2015年10月からは地方消費税の税率が消費税額の約28%となる。換言すれば、「課税資産の譲渡等の対価の額」の2.2%である、ということになる。

 なお、2014年11月18日に内閣総理大臣が2015年10月実施予定の税率引き上げを2017年4月1日に延期する旨を表明した。これは、消費税法等改正法附則第18条第3項および地方税法等改正法附則第19条に基づく判断による(これらの規定は平成27年度税制改正の際に削除された)。

 以上のように、消費税および地方消費税について複雑な税率が設定されたことからしても、地方税法附則第9条の4以下の「当分の間」の規定は生き続けることになるであろう。地方税法本則の第72条の87以下の規定をそのまま実行するとなれば、納税義務者にとっても都道府県にとっても煩雑さが増すばかりであることが明らかである。地方分権の理念などに照らして正しいか誤っているかは別として、本則の第72条の87以下を改正し、貨物割と同様の規定とし、譲渡割についても恒久的に、国が納税申告、確定、徴収などに関する事務を行う(あるいは、国がこれらの事務の委託を恒久的に都道府県から受ける)とすべきであろう。「当分の間」は永久的に「当分の間」であり、曖昧な性格が持続するという意味において弊害が多い。

 貨物割については、地方税法第72条の100により、国が消費税の賦課徴収の例によって消費税の賦課徴収と併せて行う。申告および納付についても、消費税の申告および納付の例によって消費税と併せて行う(同第72条の101、同第72条の103第1項)。これらは、譲渡割の場合とは異なり、「当分の間」の措置とはされていない。

 地方消費税の根本的な問題の一つとして、課税地と最終消費地との不一致がある。一般消費税である以上、原材料の生産、製造、卸売および小売が別々の都道府県において行われうる。ここに消費を加えてもよい。そうなると、それぞれの段階について課税団体が異なりうることにもなる。このことから、地方消費税が仕向地主義、源泉地主義のいずれに立つのかについて議論がなされることとなる。

 前述の通り、地方消費税は国税たる消費税の付加税としての性格を有する。しかし、消費税が仕向地主義に立つのに対し、地方消費税については様々な議論がなされており、現在も見解の一致をみない※。この議論は、現在は都道府県に認められていない税率決定権と深い関係がある。

 ※堀場勇夫「地方税としての消費税」税2008年8月号6頁は「地方消費税は仕向地主義をよりどころとしている」と述べるが、このような見解はあまり多くないようである。

 持田信樹教授は、源泉地主義の下において都道府県に税率決定権を与えるならば「財貨・サービスの物流や企業の立地活動を攪乱する一方、流通の中間段階の所在する安易な税率引き上げ競争が発生して、付加価値税本来の正確な税額計算ができなくなる」ため、都道府県に税率決定権を与えるのであれば仕向地原則を採用することが望ましいと述べるが、税務行政上の困難があることも認める※。また、総務省の「地方消費税勉強会報告書」は、外国の税制を参考にして日本の地方消費税についても都道府県の税率決定権を認めることは理論上可能であるとする※※。

 ※持田信樹『地方分権の財政学』(2004年、東京大学出版会)106頁。

 ※※詳細は、棚瀬誠「地方団体による多段階型の付加価値税の税率決定について―地方消費税勉強会報告書―」税2007年9月号61頁。持田・前掲書109頁、127頁(カナダ・ケベック州売上税が扱われている)、同「税源委譲こそ『三位一体』の主人公」地方税2005年4月号8頁、堀場・前掲8頁も参照。

 前述の問題を解決するため、都道府県間の清算が必要となる。

 地方税法第72条の114第1項は、各都道府県が、当該都道府県に納付された譲渡割額に相当する額、および貨物割の納付額の合算額に相当する額から国に支払った貨物割の徴収事務費に相当する額を控除した額※を、都道府県ごとの消費に相当する額※※に応じて按分し、その按分した額を他の都道府県に支払うことを規定する。この按分額は、当該都道府県から他の都道府県に支払われるものと、他の都道府県から当該都道府県に支払われるものとの両方が存在することにあるが、これらは相殺することとされている(同第2項)。

 ※但し、地方税法附則第9条の15により、当分の間は「第72条の103第3項の規定により払い込まれた貨物割の納付額及び附則第9条の6第3項前段の規定により払い込まれた譲渡割の納付額から同項後段の規定により他の道府県に支払うべき金額を減額し、他の道府県から支払を受けるべき金額に相当する額を加算して得た額」とされている。

 ※※地方税法第72条の114第3項により、都道府県の小売年間販売額、およびこれ以外の消費に相当する額を指すとされている。

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何を聴こうかと迷った時には……(4)

2017年03月26日 23時20分05秒 | 音楽

 ジャズを聴きたくなった時によく選ぶCDは、幻の名盤とも言われたものです。

 Walter Bishop Jr. Trio, Speak Low

 私が購入したのはHQCDのM2CB-1179です。1曲目のSometimes I'm Happyから「これはいいぞ!」という気分になれます。一聴の価値あり、そして長く手元に置いておけます。

 

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2012年5月、名古屋市営地下鉄・名古屋鉄道(その3)

2017年03月26日 00時00分00秒 | 写真

 (以下は「待合室」第492回として、2012年8月25日から同年9月6日まで掲載した記事の再掲です。なお、一部を修正しています。)

 豊橋駅に隣接する新豊橋駅から、豊橋鉄道渥美線を利用し、渥美半島のほぼ中央にある田原市の三河田原駅まで行きました。何と言っても元東急7200系の1800系に乗れたことがうれしかったのですが、これについては第481回「豊橋鉄道で懐かしい顔に会った」で取り上げております(ブログに再掲載しております。http://lapis-platz.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/07/7200_1d32.htmlhttp://lapis-platz.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/07/7200_e782.html、およびhttp://lapis-platz.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/07/7200_d39e.html を御覧下さい)。また、三河田原駅周辺についても、近いうちに取り上げたいと考えています。

  終点の三河田原駅から豊橋鉄道渥美線で新豊橋に戻りました。ここで豊橋駅前の様子を少しばかり見ておこうと思います。

 愛知県は尾張と三河に大別されます。名古屋市は尾張のほうにあり、豊橋は三河の代表的な都市です。江戸時代には吉田といい、東海道の宿場町として栄えました。豊橋と名を改められたのは明治時代になってからのことです。現在は中核市(地方自治法第252条の22以下)の一つとなっています。フォルクスワーゲン・ジャパンの本社があることでも有名です。

 上の写真では、道路の中央に線路が敷かれていることがおわかりになるでしょう。ここには路面電車が走っています。豊橋鉄道東田本線で、豊橋駅前から市内の赤岩口、運動公園前までの路線です。

 東海地方には、ここ豊橋の他、名古屋市、岡崎市、岐阜市などに路面電車が走っていました。名古屋市電など、多くの路面電車は20世紀中に廃止されましたが、名鉄岐阜市内線・田神線・美濃町線は2005年まで走っていました。現在は豊橋市のみで見ることができます。

 しかも、東田本線は、20世紀も終わりに近い1998年に、ほんの僅かの距離ではありますが延長しています。上の写真は駅前駅という名称の駅、というより停留所ですが、この駅が移転したことにより、150メートルほど距離が伸びた、ということです。もっとも、1973年、この先の市民病院前までの区間が廃止されています。

 茶色の車体の路面電車は、名鉄から譲り受けたモ780形の782号です。VVVF制御車で、名鉄時代は岐阜市内線と揖斐線(2005年廃止。こちらは鉄道線)で運用されていました。

  名鉄の600V線区であった岐阜市内線、田神線、美濃町線、そして揖斐線が廃止されて、それらの線区で運用されていた車両の多くが、名鉄系列の豊橋鉄道、やはり名鉄系列であった福井鉄道へ移っています。豊橋鉄道には、モ780形の他、モ800形が譲渡されました。

 今回は「名古屋市営地下鉄・名古屋鉄道(その3)」と銘打っているのですが、上の写真はJR東海の車両です。前回にも記しましたが、豊橋駅から平井信号場(JR飯田線の下地駅と小坂井駅との間、名鉄名古屋本線の豊橋駅と伊奈駅との間)までは、JR東海と名鉄が線路を共用しています。豊橋駅では、1番線と2番線がJR飯田線、3番線が名鉄名古屋本線となっています。

  飯田線は豊橋から、長野県の辰野駅までの路線です。実はまだ利用したことがないのですが、今回は乗らないこととしました。

 213系のクモハ213形5000番台です。211系によく似ていますが、扉の数が異なるなど、全く別の形式です。元々は関西本線の名古屋駅から亀山駅までの間で運用されていましたが、飯田線専用であった119系に代わり、飯田線で運用されています。

 なお、名鉄との共用区間である豊橋駅~平井信号場には、船町駅と下地駅があります。飯田線の普通電車はこの両駅に停車しますが(一部通過するものもあります)、名鉄名古屋本線の電車は両駅に停まりません。

 さて、豊橋駅3番線から特急に乗り、名鉄岐阜駅を目指します。上の車両は「パノラマsuper」の愛称で親しまれている1000系の仲間です。おそらく1200系か1230系であると思うのですが、名鉄の車両には正面に車体番号が書かれていない場合も多いので、見ただけでは系列がわからないことも少なくありません。1200系、1230系、1800系は、いずれも正面の形が同じなので、側面を見て確認するのが手っ取り早いということになります。

  方向幕が回転している間に撮影したので、行き先が日本最大の無人駅である豊明になっています。こんな特急電車の運行はないはずです。そもそも、特急は豊明を通過します。

 方向幕が鳴海の位置にある時に撮影しました。この特急電車は名鉄岐阜行きですので、まだ回り続けます。ちなみに、鳴海には一部の特急が停車します。

 豊橋を発車すると、国府(「こう」と読みます)、東岡崎、知立、神宮前、金山、名鉄名古屋、国府宮(「こうのみや」と読みます)、名鉄一宮、新木曽川、笠松、名鉄岐阜の順に止まります。

 終点の名鉄岐阜駅で降りました。ここで駅の周辺を歩き、写真を撮ろうと思ったのですが、連休中とは思えないほど、駅前には人の姿が見当たりません。いや、少々大げさかもしれませんが、岐阜市の中心街が廃れているという話はどうやら本当のようです。有名な柳ケ瀬まで歩いてみようかとも思ったのですが、それ以前に、名鉄岐阜駅の駅ビルに入っているLOFTの1階を見ると、驚くほどに客の数が少ないのです。片手で数えられるくらいでしょうか。単純に「客がいない」と言ってもよく、首都圏のLOFTでは考えられないくらいです。私は東急ハンズのほうによく入るのでLOFTを利用することはほとんどありませんが、それでもここまで「客がいない」LOFTは見たことがありません(と言っても、渋谷と二子玉川と福岡天神くらいしか知りませんが)。ちなみに、2005年に駅名が新岐阜から名鉄岐阜に改められますが、まだ新岐阜駅であった時代にはダイエーがあったそうです。また、名鉄岐阜駅のそばにパルコもあったそうですが、閉店しています。

  市内中心部を歩く気が失せてしまいました。柳ケ瀬などを周るのは機会を改めてから、ということにして、各務原(かかみがはら)線に乗ります。

  名鉄岐阜駅は名鉄名古屋本線と各務原線の終点ですが、名古屋本線は高架、各務原線は地上で、改札口は全く別です。名古屋本線の側には多くの乗降客が見受けられますが、各務原線のほうは少ないようです。大手私鉄で最も輸送密度が低いのは名鉄であるという事実は後で知りましたが、今回、名鉄の名古屋本線、三河線、豊田線、各務原線、犬山線、小牧線を利用してみて、少しばかりではありますが納得しました。

 6番線に犬山行きが停車しています。これに乗ることとしました。またも系列がわからないのですが、2両編成ですので、6800系か3100系か、というところでしょう。奥に停車しているのは2代目の5000系です。

 各務原線は名鉄岐阜から新鵜沼までの路線ですが、犬山線の犬山まで走る系統が多いようです。

 5000系が停車している場所には7番線のホームがありました。2005年まで、この駅から田神線を経由して美濃町線に直通する電車が走っていたのです。路面電車が各務原線を走っていた訳で、美濃町線と田神線を走る車両は全て複電圧車でした。各務原線が1500V線区であるのに対し、美濃町線と田神線が600V線区であったためです。

  それにしても、よくぞ複電圧車など、コストが高い車両を投入してまで美濃町線と田神線、そして岐阜市内線を運行したものだと思います。映像で見ただけですが、岐阜市内線や美濃町線の電停の多くは、道路の上にあるというのに安全地帯が設けられておらず、利用者は危険にさらされていました。おまけに、本来ならば道路交通法で自動車の軌道乗り入れは禁止されているはずなのに、岐阜県内では自動車が軌道を通行することが容認されていました。さらに加えるならば、田神線は単線、美濃町線の大部分も単線で、タブレット交換をしていました。岐阜市も岐阜県警察も、長らく路面電車には敵対的であったと言われており、それが安全地帯の未設置や自動車の軌道走行の許容につながっています。その中で何十年も岐阜市内線、美濃町線および田神線を運行してきたのです。

 2代目5000系を撮影しました。ステンレス製の車体で新品に見えますが、実は1000系の余剰車を改造した車両です。名鉄には廃車となる車両の機器を流用して製造された車両が少なくありませんが、2代目5000系もその一つです。正面のスタイルが東急3000系や都営6300形に似ています。

 各務原線に乗りました。新鵜沼から犬山線に入り、かつては道路の上をパノラマカーや特急北アルプスなどが走ることで有名であった犬山橋を越えると、岐阜県から愛知県に入ります。犬山遊園駅を過ぎると、犬山駅に到着します。

  上の写真は、この犬山から新可児を経由して御嵩までの路線である広見線での運用についている5700系か5300系です。通勤用車両でありながら2扉で転換クロスシートを備えています。豪華とも言えますが、名鉄は自家用車との競争を常に念頭に置いており、6000系が登場するまでほとんどの通勤用車両が5700系や5300系と同じような仕様でした。見方を変えれば、通勤用車両でありながら2扉でよいのですから、いかに輸送密度が低いかということを車両が証明しているようなものであるとも言えます。

  実は名鉄広見線も存廃問題に揺れています。現在、同線の運行は犬山~新可児と新可児~御嵩に分かれており、新可児~御嵩のほうが廃止される可能性もあるのです。この区間の途中にある明智駅から八百津線が分岐していましたが、八百津線が2001年に廃止され、それが広見線の新可児~御嵩の利用者の減少にもつながっているようです。また、2001年には、八百津線の他、谷汲線(黒野~谷汲)、竹鼻線の一部(江吉良~大須)および揖斐線の一部(黒野~本揖斐)も廃止され、JR高山本線に乗り入れる特急北アルプスも廃止されました。

  かつて、2001年か2005年まで、名鉄の路線総延長は近鉄に次いで2位でした。しかし、現在は東武が2位であり、名鉄は3位となっています。これは、そもそも名古屋鉄道が多くの閑散路線を抱えていたという事情に端を発し、21世紀に入ってから次々に路線が廃止されたことによるものです。2004年には三河線の猿投~西中金と碧南~吉良吉田が廃止され、2005年には岐阜市内線、田神線、美濃町線および揖斐線が全廃され、2008年にモンキーパークモノレール線が廃止されています。現在も、上に記した広見線の新可児~御嵩の他、蒲郡線(蒲郡~吉良吉田)、西尾線の一部(西尾~吉良吉田)についても存廃問題が生じています。

 名鉄は、これまでにもいくつもの路線を廃止しています。たとえば1964年には岩倉支線(岩倉~小牧)、1965年に一宮線(岩倉~東一宮)、1973年には挙母線(大樹寺~上挙母)が廃止されています。1999年に美濃町線の新関~美濃町が廃止されてから、廃止が加速されたと見ることも可能でしょう。

 名古屋市営地下鉄の7000形が犬山駅に停車していました。平安通~上飯田のわずか800メートルほどという、公営の地下鉄では最も営業距離が短い上飯田線の車両で、名鉄小牧線に乗り入れ、この犬山駅まで走ります。名鉄にも小牧線および上飯田線用の300系がありますが、今回は撮影していません(見ることができなかったのでした)。

 犬山駅で、再びポケットモンスター映画15周年のステッカーが貼られた2200系を見ました。豊橋駅で見たのと同じ編成のようです。犬山線は名鉄のドル箱と言うべき路線でもありますので、名古屋本線などへの直通電車も多く運転されています。また、名古屋市営地下鉄鶴舞線からの直通電車も到着します。

 名鉄小牧線は上飯田から犬山までの路線ですが、名古屋市営地下鉄上飯田線の平安通から上飯田を経て名鉄小牧線の味鋺(あじま)までは上飯田連絡線株式会社が施設を保有する第三種鉄道事業者で、平安通から上飯田までは名古屋市交通局が第二種鉄道事業者、上飯田から味鋺までは名古屋鉄道が第二種鉄道事業者となっています。また、上飯田線については名古屋市交通局が名鉄に業務を委託しているため、上飯田での乗務員交代はありません。

 上飯田線が開業したのは2003年です。それまで、小牧線はこの犬山駅以外で他の路線との接続がなく、とくに上飯田駅は、名古屋市内の始発駅であるにもかかわらず、地下鉄の駅からも離れた所にあったため、不便な路線でした。このようになったのは1971年からで、実に30年以上、孤立したようなターミナルであった訳です。岩倉支線が廃止されていなければ、小牧線の名古屋市中心部へのアクセス機能がもう少し高かったでしょう。時代を読み誤ったのか、別の理由によるのかは不明ですが、問題の残る選択であったことは確かです。そして、小牧線の利便性の悪さは、小牧市にある桃花台ニュータウンにも影響を及ぼしました。桃花台新交通桃花台線が廃止されたことの原因の一つが小牧線にあった、とも言えるのです。

  長らく名鉄が小牧線の起点を上飯田としていた理由はよくわかりませんが、他の大手私鉄であったら延長計画を立てたりしていたのではないかと思います。上飯田から、JR中央本線、名鉄瀬戸線、名古屋市営地下鉄名城線の乗換駅である大曽根までは、それほど離れている訳ではありません。名城線で、大曽根は平安通の次の駅です。現在も孤立路線として残る瀬戸線と接続させることを名鉄が考えていなかったとすると、その理由がわかりません。実現できるかどうかは別として、計画、あるいはその前の構想くらいは立てていなかったのでしょうか。

  そして、上飯田線が開業したとはいえ、小牧線のアクセスが劇的に良くなった、とは言い難いのも事実です。平安通という駅での接続が中途半端であるように思えます。本来なら大曽根までの路線とすべきであったことでしょう。また、上飯田から平安通までは1キロメートルに達しないのですが、名古屋市交通局の路線となっているので、この区間だけ別の会社の運賃が上乗せされる形となります。名古屋市営地下鉄の初乗りは200円です。平安通で名城線へ乗り換える客が多いのであれば、それほど問題にはなりませんが、抵抗感がないとも言えません。さらに記すならば、上飯田線・小牧線と名城線とでは線路の幅が異なり、集電方式まで異なるので、直通運転ができません。そのため、栄、金山方面などに向かうには、乗り換えが必要です。

 2代目3500系が停車しています。1993年に登場したVVVF制御車で、3扉のロングシートとなっています。準急の中部国際空港行きとなっていますので、ここから犬山線、名古屋本線、常滑線、空港線を走り抜けるということです。

 さて、ここから名古屋に戻ります。犬山線のほうが速いかもしれませんが、今回は小牧線を使い、平安通に出て、名城線に乗り換え、栄に向かうこととしました。小牧駅から小牧原駅にかけて残っている桃花台新交通線桃花台線の跡を見たい、という気持ちもあったためです。

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2012年5月、名古屋市営地下鉄・名古屋鉄道(その2)

2017年03月25日 00時00分00秒 | 写真

 (以下は、「待合室」第491回として、2012年8月18日から同月25日まで掲載した記事の再掲です。なお、一部を修正しています。)

 名古屋市の中心部で宿泊し、朝を迎えました。利用したホテルは、地下鉄の丸の内駅と伏見駅の間にあり、どちらから歩いても近い場所です。ただ、丸の内駅の場合、桜通線を利用するには便利ですが、鶴舞線に乗るにはやや不便な構造です。そこで、伏見駅から鶴舞線に乗り、終点の赤池で降りてみることとしました。

  鶴舞線は、名古屋市西区にある上小田井駅から日進市にある赤池駅までの路線です。上小田井から名鉄犬山線に、赤池から名鉄豊田線に乗り入れます。沿線には大学が多いようです。

 上の写真は、名古屋市交通局に所属する3050形です。鶴舞線が全通して名鉄犬山線との直通運転を開始した1993年に登場しました。VVVF制御車で、桜通線の6000形と基本設計を同じくしているとのことですが、運転台の位置が違っているためか、全く違う車両のような印象を受けます。

 赤池駅から先は名鉄豊田線となります。鶴舞線には赤池止まりの電車もありますが、多くは名鉄豊田線に直通し、豊田市まで走ります。正確に記すならば、名鉄豊田線は赤池から、豊田市の一つ手前の梅坪駅までの路線で、梅坪から豊田市までは名鉄三河線です。

 赤池駅の改札を出て、外に出てみました。典型的な郊外のニュータウンの駅という印象を受けました。その中で、上の写真にある幟が珍しく、興味深いものであったため、撮影してみました。

 背景などは全くわかりませんが、行政指導を求める内容が書かれた幟は珍しいと思われます。私が見かけるのは、たいてい、「●●反対!」という類のものです。それに、表立って行政指導を地方公共団体に求めることも、ほとんどないはずです。

名鉄豊田線に乗るため、赤池駅に戻ります。上小田井行きの3050形が2番線・3番線に停車していました。

 名鉄豊田線の電車に乗ります。もっとも、実際に乗ったのは名古屋市交通局の3000形か3050形でした。ニュータウンなのか否かなのかわからないような風景の中を、かなりの高速で走り抜けます。北海道の千歳線を思い起こさせるような風景もありました。それ以上に気になったのは、車両が悪いのか路盤が悪いのかわからないのですが、揺れが激しかったことです。

 梅坪から三河線に入り、豊田市に到着します。さすがはトヨタ自動車の本拠地で、首都圏で言えば多摩センター駅周辺か立川駅周辺の雰囲気に似ています(聖蹟桜ヶ丘駅周辺にも似ているかもしれません)。とにかくビルが目立ち、郊外型の施設も目立ちます。豊田線や三河線の電車に乗ると、車窓が急に変わるのです。

 豊田市という市名は、トヨタ自動車に由来するそうで、本来は、豊田市の次の駅の上挙母(うわごろも)が示すように挙母(ころも)と言いました。実際に、市制が敷かれた際には挙母市という名称でしたが、1959年に豊田市と改められています。

 企業などの名称に由来する地名は、日本では少なくありません。駅名も同様で、鶴見線の駅の多くは企業名か企業人の氏名に由来しています。東京であれば王子駅と恵比寿駅が代表です。しかし、さすがに地方公共団体の名称となるとほとんどありません。企業名に由来するのは、現在のところ豊田市のみで、他に宗教(法人)に由来する天理市があるくらいです。

 豊田市で名鉄三河線のワンマン運転2両編成と乗り換えました。三河線は、長らく西中金から吉良吉田までの路線でしたが、西中金~猿投(さなげ)と碧南~吉良吉田が廃止されています。また、名古屋本線との乗換駅である知立で系統が分断されており、知立~猿投が山線、知立~碧南中央が海線とも言われています。

 しばらくして、知立に着き、名古屋本線に乗り換えます。上の写真は、犬山線に乗り入れる新鵜沼行きの普通電車として運用される6000系の2両編成です。1976年にデビューした6000系は、名鉄では古参となってしまいました。当時、名鉄には2扉車ばかりで3扉車がほとんどなく、オイルショック後にはラッシュ時を中心に輸送力不足となったために東急から3700系を購入して急場をしのいだという逸話もありました。首都圏や京阪神地区ではほとんど考えられないことです。

 また、名鉄は大手私鉄ですが、編成の短さが非常に目に付きます。私は、これまで、大手私鉄の主要な路線には全て乗っていますが、本線でも2両編成がよく走るというのは名鉄名古屋本線と西鉄天神大牟田線くらいしか思いつきません。しかも、西鉄天神大牟田線の場合は甘木線との直通運転を行うワンマン運転の2両編成であり、宮の陣~大牟田で走っていますが、西鉄福岡(天神)~宮の陣では最も短いものでも4両編成です。名鉄名古屋本線の場合は、名鉄名古屋駅を通る電車であれば4両編成が多いようですが、2両編成もあるとのことです。

 知立から特急に乗りました。終点の豊橋に着き、撮影したのが上の写真です。特急用の2200系で、中部国際空港開業に合わせ、空港線に直通する特急のために製造された車両です。ミュースカイという愛称のある2000系とほぼ同時に、2005年に登場しました。2000系は全車が特別車(特急料金を必要とする)ですが、2200系は一般席の車両も連結されています。

 私が乗った編成は、ポケットモンスター映画15周年のステッカーが貼られたものでした。東京でも見かけないようなものでしたが、すぐに、全日空の筆頭株主が名鉄であることを思い出しました。

 名鉄は、大手私鉄の中でも変わっている点が多い、というのが私の印象あるいは感想です。編成の短さもそうですが、この名古屋本線の営業区間も、非常に変わっているのです。

 名古屋本線は豊橋~名鉄岐阜の路線ですが、このうちの豊橋~平井信号場(伊奈駅の手前にある信号場)はJR飯田線と線路を共用しており、この区間の途中にある船町駅と下地駅に、名鉄の電車は停車しません。豊橋駅も、飯田線と同じホームを利用しているような感じとなっており(番線は別です)、改札も共通です。

 上に記した事情のため、名古屋本線の普通電車は豊橋~伊奈を走りません。従って、豊橋~伊奈を走るのは快速特急、特急および急行のみとなっています。伊奈には(一部の時間帯を除いて)急行しか停まりませんので、日中は30分に1本という間隔となります。これはかなり不便であるように思われるのですが、どうなのでしょうか。

 名鉄名古屋本線とJR東海道本線は完全に競合しており、激しい競争を繰り広げているはずです。しかし、JR東海は利便性を高めるなどして名鉄から乗客を奪っており、とくに名古屋~岐阜では、名鉄名古屋本線の線形が悪いこともあってJR東海が優位に立っています。そのJR東海と名古屋鉄道が、このように線路を共用するというのも、歴史的な流れがあるとは言え、不思議な話でもあります。

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2012年5月、名古屋市営地下鉄・名古屋鉄道(その1)

2017年03月24日 00時10分40秒 | 写真

 (以下は「待合室」第490回として、2012年8月11日から同月18日まで掲載した記事の再掲です。なお、一部を修正しています。)

 2012年の5月2日午後から4日まで、名古屋に滞在しました。それまで、名古屋市を訪れたことがなかったので、機会をうかがっていました。これまで、新幹線で、あるいは車で、名古屋を通ったことは何度もあるのですが、通過するだけでした。これではいけないと思い、連休を利用して、東京駅から東海道新幹線に乗り、名古屋駅で降りることとしました。そして、名古屋市営地下鉄の全線と名古屋鉄道の本線などに乗り、写真、動画の撮影を楽しんできました。

 今回は、5月2日に撮影した写真を掲載します。いずれも名古屋市営地下鉄の路線の写真となります。

 名古屋市は、日本で3番目に地下鉄が開業した都市です。東京メトロの銀座線と大阪市営地下鉄の御堂筋線は第二次世界大戦より前に開業していますが、その他の路線は全て戦後の開通です。名古屋市では、まず東山線が開業しています。当初からカルダン駆動の車両が活躍しており、吊り掛け駆動の車両は運用されていません。

 現在の東山線は高畑から名古屋、栄、千種を経由して藤が丘までの路線で、第三軌条方式を採用しています。建設費の負担を減らすためなのか、建築限界が厳しく設定されているようで、銀座線の車両と比べても小型であることが特徴です。そのせいもあってかなり激しい混雑となります。

 上の写真は藤が丘で撮影しました。地上区間の少ない名古屋市営地下鉄ですが、東山線の一社駅と上社駅の間から藤が丘駅までは高架区間となっています。

 上の写真の右側が5050形で、1992年に登場したVVVF制御車です。左側は5000形で、1980年に試作車が登場し、1982年から量産車が投入されています。東山線で初めての冷房車ですが、撮影日の時点で既に廃車となっている編成もあり、2015年に全廃となりました。東山線にホームドアが設置されることが、廃車の理由の一つともなっています。

5050形の6両編成は、藤が丘工場のほうに向かって走りました。後に高畑行きとなって、向こう側のホームに到着します。

 5000形の高畑行きが発車しました。線路と線路との間に第三軌条があるのがよくわかります。この第三軌条から集電して走るという訳です。台車に集電靴があるので、走行中に何度もカチッというような音が鳴ります。

 第三軌条方式は地下鉄で見られる集電方式ですが、日本では主に古い路線で採用されています。最も多いのが大阪市営地下鉄で、御堂筋線、谷町線、四つ橋線、中央線、そして千日前線が第三軌条方式です。この他、東京の銀座線と丸ノ内線、横浜市営地下鉄ブルーライン(1号線および3号線の総称)、札幌市営地下鉄南北線、そして名古屋市営地下鉄の東山線と名城線と名港線が第三軌条方式です。

 また、東京メトロを除く大手私鉄で第三軌条方式を採用する唯一の例が近鉄けいはんな線です。これは大阪市営地下鉄中央線との直通運転を行うためです。

 なお、第三軌条の場合の電圧は、東京と名古屋が直流600V、その他が直流750Vです。また、中央案内軌条式を採用する札幌市営地下鉄南北線を除き、レールの幅が全て標準軌の1435mmとなっています。

 藤が丘から東山線に乗り、本山で名城線に乗り換えました。上の写真は、本山か新瑞橋で撮影しました。名城線と名港線で使用される2000形で、1989年に登場しています。

 方向幕に「右回り」と書かれています。山手線や大阪環状線では外回り、内回りと言われますが、名城線ではこの表現ではなく、右回り、左回りという言い方を使います。日本では珍しいのですが、実はこちらのほうがわかりやすいとも評価されています。

 名城線は、名古屋市営地下鉄の2号線と4号線から構成されます。本来、大曽根から栄を経由して金山を通り、名港線の終点である名古屋港までが2号線であり、金山から新瑞橋を経由して大曽根までは4号線です。実際、長い間、名城線は大曽根⇔栄⇔金山⇔名古屋港であり、その他の区間は4号線と呼ばれていました。しかし、4号線の名古屋大学⇔新瑞橋が開業して環状線が完成し、環状運転を行うということで、2号線の大曽根⇔栄⇔金山と4号線の大曽根⇔新瑞橋⇔金山が一体化されて名城線、2号線の金山⇔名古屋港が名港線となりました。

 なお、名城線、名港線のいずれも、営業運転区間に地上区間はありません。

 新瑞橋で桜通線に乗り換え、終点の徳重まで乗りました。ホームドアが設置されています。上の写真は6000形で、同線ではこの6000形と6050形が運用されています。桜通線の全駅は島式ホームで、常に進行方向右側の扉が開くため、6000形および6050形の運転席も右側に置かれています。

 ホームの先端には運転士用のモニターがあります。桜通線ではワンマン運転が行われているためです。

 他の路線との直通運転はありませんが、桜通線は第三軌条方式ではなく、架線集電方式を採用しています。レールの幅も1067mmです。これらは鶴舞線に合わせたものとなっています。

 今回の写真では唯一、名古屋鉄道の車両が登場します。100系です。鶴舞線の丸の内駅で撮影しました。行先が名鉄犬山線の柏森駅となっています。

 鶴舞線は上小田井⇔赤池の路線で、上小田井から名鉄犬山線に、赤池から名鉄豊田線に直通運転します。赤池は日進市にある駅で、名古屋市営地下鉄では唯一、名古屋市にない駅ということになります。

 最後に、東山線に戻り、西の起点である高畑駅で撮影したN1000形です。2007年に登場しており、5000形を置き換える形となっています。利用客の多い東山線ですが、時間帯のためなのか、名古屋から高畑までは比較的空いていました。

 

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模様替えした戸越銀座駅

2017年03月23日 14時17分47秒 | 写真

戸越銀座駅が模様替えしていました。なかなか面白いデザインです。

 こちらは大崎広小路、五反田方面の2番線につながる駅舎です。最初見た時には何処の店かと思いました。駅名の上にあるシンボルマークは日本の老舗の紋あるいは社章に似ていますし、御丁寧に暖簾がかけられています。ちなみに、この駅は商店街の途中にあります。

奥のほうに写っているホームの屋根に御注目を。

こちらは旗の台、雪が谷大塚、蒲田方面の1番線につながる駅舎です。暖簾がかけられているのは2番線側と同じですが、デザインは洋風というところでしょうか。

2番線のホームの屋根と壁は木目調です。いや、これは不正確な表現です。東急では「木になるリニューアル」としており、本物の木材が使われています。ちなみに木は多摩原産とのことです。

こちらは1番線のホームです。支線の小駅に、随分と粋なことをするものです。

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行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版 第17回 情報公開法制度・個人情報保護法制度

2017年03月23日 00時32分36秒 | 行政法講義ノート〔第6版〕に向けての暫時改訂版

 以下、法律については次のように略記する。

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律⇒行政機関情報公開法

 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律⇒独立行政法人情報公開法

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律⇒行政機関個人情報保護法

 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律⇒独立行政法人個人情報保護法

 

1.情報公開制度総論

(1)情報公開の意義

 情報公開は、行政による情報管理の一態様であり、次の二つの意味を併せ持つ。

 ①行政機関が管理する情報を、私人の請求により開示すること。一般的に情報公開という場合は、こちらの意味を指す。

 ②行政機関が管理する情報を、行政機関の側で積極的に提供すること。これは、情報提供とも言われている。広報もその一種であろう。

 情報公開の出発点は、国民主権・民主主義の理念である(行政機関情報公開法第1条を参照)。この理念において、行政機関が収集し、管理する情報は、本来、国民の共有財産である。民主主義においては公開政治が原則であるから「国民主権から出発すれば、情報公開は当然である」※。

 ※山崎正『住民自治と行政改革』(2000年、勁草書房)56頁注(4)。拙稿「大分県における情報公開(1)―大分地方裁判所平成12年4月3日判決の評釈を中心に―」大分大学教育学部研究紀要第22巻第2号427頁も参照。

 行政機関情報公開法第1条は「行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」ことをあげている。行政運営の公開性、国民に対する政府の説明責任は、国民主権・民主主義の理念から当然に導き出されるものである。そうでなければ、行政機関情報公開法が掲げる「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」という最終目標は、全く無意味なものに帰する。

(2)行政手続との関係、行政手続との違い

 情報公開は、行政手続の整備と並び、適正な行政運営(国家運営)を担保するために欠かせないものである。恣意的な行政運営(国家運営)は、近現代史の教訓が示すように、行政ないし国家の堕落、さらには滅亡、破滅をもたらす。社会が複雑化し、行政に認められる裁量権が拡大する中において、裁量権に対する統制という意味も含めて、情報公開と行政手続の整備は、いずれも必要不可欠なものであると考えてよいであろう。

 但し、情報公開と行政手続は、考え方などに違いがある。行政手続(法)の整備は、第16回において述べたところから明らかであると思われるが、元々、私人の権利や利益を国家権力から保護するという考え方に由来する。これは自由主義的な発想に基づいているのである。

 それに対し、情報公開は、国民主権の原理に由来する。これは、行政への適切な参加、あるいは行政に対する監視という考え方である。

 また、行政手続には事件性の観念が必要であるのに対し、情報公開に事件性の観念は不要である。従って、情報公開の場合、自己の権利や利益などと関係のない情報(文書)であっても請求の対象となる※。言い換えれば、情報公開の場合、開示請求権が広く国民・住民などに認められている。

 ※横浜地判昭和59年7月25日行裁例集35巻12号2292頁、および東京高判昭和59年12月20日行裁例集35巻12号2288頁を参照。

 さらに、歴史的な面での違いもある。行政手続法制の整備は国が先行したが、情報公開法制の整備は地方が先行した。情報公開条例の第1号は、1982年に制定された山形県金山町の条例である。都道府県における情報公開条例の第1号は、やはり1982年に制定された神奈川県の条例である。ちなみに、国の情報公開法は1999年に制定され、2001年に施行された。

 (3)情報公開制度の憲法上の根拠

 情報公開制度も、それが国や地方公共団体の制度である以上、憲法の理念に即したものでなければならない。それでは、情報公開法制度の憲法上の根拠は何処に求められるのであろうか。これについては、いくつかの説が存在する。

 ①憲法第21条説

 国民の「知る権利」に求め、情報公開請求権が「知る権利」を具体化したものとする説である。

 この説の難点は「知る権利」に根拠を求める点にある。そもそも、この権利の根拠については、憲法学説において憲法第21条に求めるのが通説であるが、それ以外の条文に求める説も存在する。また、「知る権利」が表現の自由から導きうることは認められるとしても、直接的に結びつくのは知る自由であって「知る権利」ではない。換言すれば、「知る権利」は「知る自由」に留まらないものであり、意味や内容は広汎にわたる。とくに、情報開示請求権としての「知る権利」については、これを正面から認める最高裁判決が出ていない。そのこともあって、行政機関情報公開法などの法律には規定されていない。また、若干の条例が「知る権利」を明示しているが、実際の意味は条例の運用に左右されるような状態に置かれている。

 ②国民主権説

 特定の条文に求めるのではなく、国民主権原理から行政側のアカウンタビリティ(説明責任)があるものと考える説である。

 

2.行政機関情報公開法の構造

 (1)行政機関情報公開法の目的(第1条)

 昨今の実定法規と同様に、行政機関情報公開法第1条は法律の目的を示すものとなっている。この規定は、次のことを示している。

 ①国民主権の理念を明示する。

 ②政府(対象は行政機関に限定される)が保有する情報に対する国民の開示請求権を認める。

 通説は、この法律によって初めて具体的な情報開示請求権が認められると理解する。

 ③「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」

 ④「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」

 これは、国民参加、そして国民による行政への監視と同義である。なお、「知る権利」が明示されていないことについては根強い批判が存在するが、表面的な事柄ではないかとする見解もある。

 (2)対象となる機関(第2条第1項)

 国の全行政機関である。従って、会計検査院は対象となる機関であり※、外交、防衛、警察関係の行政機関も対象とされるが、国会や裁判所は除外されており、地方公共団体も除外される※※。

 ※但し、不服審査の機関は、行政機関情報公開法第18条および会計検査院法第19条の2により、会計検査院の中に置かれる会計検査院情報公開・個人情報保護審査会である。

 ※※但し、国会や裁判所が作成した文書、地方公共団体が作成した文書であっても、その文書または写しが国の行政機関にあれば、開示の対象となる。

 なお、独立行政法人などは、独立行政法人等情報公開法の対象である(同法別表第一を参照)。

 (3)対象となる文書(第2条第2項)

 行政機関情報公開法第3条は「行政文書」の開示を規定している。ここにいう「行政文書」は、第2条第2項柱書本文において「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政組織の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」と定義されている。従って、「行政文書」には、文書は当然として、写真、フィルム、磁気テープ、パソコンで作成した文書データなども含まれる。

 また、先行した地方公共団体の情報公開条例では「公文書」として決裁や供覧という手続を経た文書のみが公開の対象とされていたが、行政機関情報公開法ではこのような手続を経ていない文書でも開示の対象となる。従って、職員個人の私的なメモは開示の対象にならないが、組織的に使われているメモ(薬害エイズ事件で問題とされたノートなど)は、保管されているだけであっても開示の対象となる。

 (4)開示に関する諸事項

 ①開示請求者

 行政機関情報公開法第3条は、「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第一項第四号及び第五号)の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」と定める。この規定における「何人」は文字通りの意味であって、日本国民に限定されていないし、日本国内の居住も要件になっていない。従って、日本に住む外国人、外国に住む日本人、外国に住む外国人のいずれも開示請求権を有する。

 ②開示請求の性質

 また、行政機関情報公開法第3条により、開示請求権は個人の権利であり、裁判上の救済を受けることが明らかにされている。従って、開示請求に対して不開示決定がなされた場合、対象となる文書の内容を問わず、裁判や不服審査で争いうる。

 ここで、開示請求は、行政手続法第2条第3号にいう「申請」に該当する。そのため、行政機関の長による開示決定・一部開示決定・不開示決定は、行政行為であり、行政手続法第2章にいう「申請に対する処分」に該当し、行政手続法第2章が適用される。

(とくに行政手続法第8条が重要である。不開示決定および部分開示決定(=一部不開示決定)については、不開示としたことについて行政機関の長が理由を示さなければならない。)

 

 

  一方、義務についての一般的な規定はないが、手続として第4条に規定がある(行政手続法よりも申請人の保護に厚い)。情報開示請求権者は、開示請求書という書面によって請求をするのであるが、その際、氏名、住所などの記載、行政文書の名称など、開示を請求しようとする行政文書を特定しうる事項の記載が求められる。法律上はこれらの記載のみで十分であり、その範囲を超える記載を行政機関から求められたとしても拒否できると理解すべきである。逆に言えば、行政機関は、第4条に定められていない事項を要件として記載することを情報開示請求権者に強要することは、情報開示請求権者に萎縮効果などを生じさせかねず、情報公開法の趣旨からして許されないと理解すべきである(ただ、実際には第4条の範囲を超える記載などを求める省庁が存在する)。

 

 開示請求権=個人の権利であり、裁判上の救済を受ける。

      

  開示請求の手続:行政機関情報公開法第4条(行政手続法よりも申請人の保護に厚い)

 ②行政機関の開示義務

 原則:行政機関の長は、請求された行政文書を開示する義務を負う(行政機関情報公開法第5条)。

例外:第5条各号に定められた情報は、開示してはならない(不開示情報)。この点について、原則として行政機関の長に裁量は認められないが、第7条により、公益上特に必要であるとして開示することが認められる場合がある。

 ③不開示情報とされるもの(第5条各号)

 情報公開法第5条各号は、不開示情報を定めている。各号ごとにみていくこととする。

 第1号:個人情報。個人が識別されうるものであれば、原則として不開示である。

     個人情報⇒定型的に不開示とする個人識別型を採用

 個人情報であるから不開示とするのではなく、プライバシーとして保護に値するならば不開示とするタイプ(プライバシー型)もある。

     個人情報でありながら不開示情報とされないものは、イ~ハに列挙される。

     ▲公務員の職および職務遂行に係る情報の扱い

      行政機関情報公開法:公務員の職および職務遂行の内容に係る情報を開示情報とする(氏名は含まない)。

 但し、慣行により、人事異動などの際に課長以上の職であれば氏名も開示される。

 地方公共団体の条例:職務遂行に関する情報である場合については、公務員の職はもとより、氏名も開示情報とする場合が多い。

 最三小判平成15年11月11日民集57巻10号1387頁(Ⅰ-41)、最三小判平成19年4月17日判時1971号109頁(Ⅰ-43)を参照。

 第2号:法人の情報および個人の事業に関する情報(イおよびロに掲げられた事由に限定される)。

     イの「正答な利益を害するおそれのあるもの」=実際に「おそれ」が実際に存在したか否かについては裁判所の審査に服する。

     ロ=いわゆる任意提供情報で公にしないという条件が付されたもの。

 第3号:国の安全等に関する情報。

     「おそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」:この判断については行政機関の長の要件裁量が認められる。従って、裁判所は、行政機関の長が「おそれがある」と判断したことに「相当の理由」があるか否かについてのみ審査する。

 第4号:公共の安全と秩序の維持に関する情報(司法警察活動に関する情報)

     「おそれがある」か否かについての判断=行政機関の長の要件裁量が認められるので、裁判所は、行政機関の長が「おそれがある」と判断したことに「相当の理由」があるか否かについてのみ審査する。

 第5号:行政機関などの内部または相互間での審議、検討または協議に関する情報(意思形成過程情報)。裁判所の全面的な審査が及ぶ。

 第6号:事務事業情報。裁判所の全面的な審査が及ぶ。

 ■不開示情報については、審査基準を設定し、公表しなければならない(行政手続法第5条)。

 ④開示・不開示の判断

 原則:開示決定(行政機関情報公開法第5条)。

 例外:不開示決定。

 ・全部不開示決定=申請に対する拒否処分

 ・部分開示決定(行政機関情報公開法第6条第1項)=申請に対する一部拒否処分

 ・氏名など、個人識別情報を除外しての開示処分(第6条第2項)

 ・存否応答拒否処分(第8条。グローマー条項)=開示請求の対象となっている文書の存否そのものを回答するだけで、開示請求の目的が達成される場合に、行政機関の長は、文書の存否を明らかにすることなく、開示請求を拒否することができる。

 存否応答拒否処分は、アメリカの判例法で形成されたものである。CIAと国防総省が、当時のソ連の潜水艦グローマー・イクスプローラ号を合同で引き揚げようとした計画が存在した。この計画について開示請求がなされた際に、記録の存否に関する応答が拒否されたという事件が生じた。1981年、連邦最高裁判所判決は応答の拒否を妥当と解した。この事件がきっかけとなり、存否応答許否処分を定める規定をグローマー条項というようになった。

 ▲裁量的開示処分(第7条。例外の例外を認める)

 ⑤第三者に対する意見書提出の機会の付与

 第13条に定められる。開示請求の対象となった行政文書に第三者の情報が記録されている場合に、行政文書の開示によって不測の権利侵害などが生じる可能性も否定できないために、当該第三者の意見書の提出などの機会を定めている。

 第1項:行政機関の長の裁量事項

 第2項:行政機関の長の義務的事項

 ⑥その他、開示決定・一部開示決定・不開示決定のいずれも要式行為である(第9条)。また、期間は、開示請求があった日から原則として30日以内とされている(第10条第1項)。

 (5)一部開示決定・不開示決定に対する救済措置

 ①救済措置を申し立てることができる者

 開示請求者=開示請求権を有する☞不服申立適格(行政不服審査制度)、原告適格(行政事件訴訟制度)を有する。

 その他の個人や法人:情報公開法によって保護される利益がある限り、情報公開法第13条・第19条・第20条にいう「第三者」として、不服申立適格(行政不服審査制度)、原告適格(行政事件訴訟制度)を有する。

 ②救済制度その1  行政事件訴訟

 行政機関情報公開法に特別の規定が存在しないので、行政不服審査制度を利用することなく、直ちに、行政事件訴訟法に定められる抗告訴訟を提起することができる。

 a.取消訴訟  従来から認められている。これは、開示請求者にも「第三者」にも認められる。

 b.義務付け訴訟  行政事件訴訟法の改正によって明文で認められた(第3条第6項第2号)。

 c.差止訴訟  「第三者」が開示決定について提起することができる(第3条第7項、第37条の4)。

 ③救済制度その2 行政不服審査制度

 基本的には行政不服審査法の規定によるが、情報公開法には特別な手続が規定されている。

 a.不服申立てがなされた場合、第18条第1号・第2号に規定されている場合を除き、行政機関の長は「情報公開・個人情報保護審査会」に諮問する。

 b.諮問した旨を、不服申立人などに通知する(第19条)。

 c.諮問を受けた審査会は、審査の結果を答申として示すことになるが、答申の写しは不服申立人などに交付され、一般に公表される(情報公開・個人情報保護審査会設置法第16条)。

 d.答申を受けた行政機関の長が、最終的に不服申立に対して裁決または決定を行う。行政機関の長は、審査会の答申に法的に拘束されないが、尊重される必要がある。

 ④情報公開・個人情報保護審査会(内閣府に設置される機関)

 権限:行政機関情報公開法第18条、独立行政法人情報公開法第18条第3項、行政個人情報保護法第42条および独立行政法人等個人情報保護法第42条第3項による不服申立てについての調査・審議

 委員:15名。両議院の同意を得て内閣総理大臣によって任命され、原則として非常勤(但し、5名以内を常勤とすることも可能)。任期は3年で、再任可能である。また、守秘義務が課されている。

 ■情報公開・個人情報保護審査会の調査権限(情報公開・個人情報保護審査会設置法第9条)

 α.諮問庁(不服申立を受けた行政機関の長)に対し、行政文書または保有する個人情報の提供を求めることができる(諮問庁はこれを拒むことができない)。

 ☞インカメラ審理が認められる。これは、裁判官にも認められていない権限である。最一小決平成21年1月15日民集63巻1号46頁(Ⅰ-45)は、裁判所でのインカメラ審理が民事訴訟の原則に反するとして、明文の規定がない限りは訴訟における証拠調べとしてのインカメラ審理を裁判所が行うことは許されないと判示した。

 β.諮問庁に対し、行政文書等に記録されている情報、または保有する個人情報に含まれている情報の内容を、審査会の指定する方法によって分類または整理した資料を作成し、提出することを求めることができる(ヴォーンインデックスの作成の指示権)。

 γ.不服申立人などに対して資料の提出や意見の陳述を求めることもできる。なお、調査審理手続は非公開である(設置法第14条)。

 

3.情報公開に関する判例

  (情報公開法については判例がほとんど蓄積されていないので、以下は情報公開条例に関する判例を紹介しておく。なお、最近の公務員試験においては出題例がほとんど存在しない。)

 (1)最一小判平成6年1月27日民集48巻1号53頁(大阪府知事交際費公開請求訴訟、Ⅰ―40)

 事案 大阪府の住民等であるXらは、大阪府公文書公開条例に基づいて、昭和60年1月から3月までの大阪府知事の交際費に関係する文書の公開を請求した。これに対し、知事Yは一部を公開したが、債権者の請求書および領収書、歳出額現金出納簿、支出証明書について、同条例第8条第1号・第4号・第5号、第9条第1号に該当するとして非公開とした。大阪地判平成元年2月14日判時1309号3頁はXの請求を認めたのでYは控訴したが、大阪高判平成2年10月31日行集41巻10号1765頁は控訴を棄却したので、Yが上告した。最高裁判所第一小法廷は破棄差戻判決を下した。

 判旨:「知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を行うのに要する経費である。このような知事の交際は、懇談については本件条例八条四号の企画調整等事務又は同条五号の交渉等事務に、その余の慶弔等については同号の交渉等事務にそれぞれ該当すると解されるから、これらの事務に関する情報を記録した文書を公開しないことができるか否かは、これらの情報を公にすることにより、当該若しくは同種の交渉等事務としての交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるか否か、又は当該若しくは同種の企画調整等事務や交渉等事務としての交際事務を公正かつ適正に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かによって決定されることになる。」

 「知事の交際事務には、懇談、慶弔、見舞い、賛助、協賛、餞別などのように様々なものがあると考えられるが、いずれにしても、これらは、相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的して行われるものである。そして、相手方の氏名等の公表、披露が当然予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような前記文書の公開によって相手方の氏名等が明らかにされることになれば、懇談については、相手方に不快、不信の感情を抱かせ、今後府の行うこの種の会合への出席を避けるなどの事態が生ずることも考えられ、また、一般に、交際費の支出の要否、内容等は、府の相手方とのかかわり等をしん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるというべきである。さらに、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、裁量によって決定すべきものであるところ、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、知事の交際事務を適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるといわなければならない。したがって、本件文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の氏名等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、懇談に係る文書については本件条例八条四号又は五号により、その余の慶弔等に係る文書については同条五号により、公開しないことができる文書に該当するというべきである。」

 「本件における知事の交際は、それが知事の職務としてされるものであっても、私人である相手方にとっては、私的な出来事といわなければならない。本件条例九条一号は、私事に関する情報のうち性質上公開に親しまないような個人情報が記録されている文書を公開してはならないとしているものと解されるが、知事の交際の相手方となった私人としては、懇談の場合であると、慶弔等の場合であるとを問わず、その具体的な費用、金額等までは一般に他人に知られたくないと望むものであり、そのことは正当であると認められる。そうすると、このような交際に関する情報は、その交際の性質、内容等からして交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと予定されているものを除いては、同号に該当するというべきである」。

 (2)最三小判平成6年2月8日民集48巻2号255頁(大阪府水道部文書公開請求訴訟または大阪府食糧費情報公開訴訟)

 事案 大阪府の住民であるXは、大阪府公文書公開条例に基づいて、昭和59年12月に行われた大阪府水道部の会議接待費および懇談会費についての公文書の公開を請求した。これに対し、Yは、この請求に対応する文書を支出伝票、債権者の請求書および経費支出伺と特定した上で、同条例第8条第1号・第4号・第5号に該当するとして非公開とした。Xは異議申立てを行ったがYは棄却の決定を行った。このため、Xが出訴した。大阪地裁平成元年4月11日判例タイムズ705号129頁はXの請求を認めたのでYは控訴したが、大阪高判平成2年5月17日判時1355号8頁は控訴を棄却したので、Yが上告した。最高裁判所第三小法廷は、Yの上告を棄却した。

 判旨 「本件文書には飲食店を経営する業者の営業上の秘密、ノウハウなど同業者との対抗関係上特に秘匿を要する情報が記録されているわけではなく、また、府水道部による利用の事実が公開されたとしても、特に右業者の社会的評価が低下するなどの不利益を被るとは認め難いので、本件文書の公開により当該業者の競争上の地位その他正当な利益を害するとは認められないと」。

 「本件文書に記録されている情報は、府水道部の懇談会等に関するものであるが、このような懇談会等の形式による事務は、前記のとおり、単なる儀礼的なものではなく、すべて府水道部の事務ないし事業の遂行のためにされたものであって、その内容いかんにより、四号の企画調整等事務ないし五号の交渉等事務に該当する可能性があることは十分考えられる。しかし、右情報は、前記のとおり、懇談会等の開催場所、開催日、人数等のいわば外形的事実に関するものであり、しかも、そこには懇談の相手方の氏名は含まれていないのがほとんどである。このような会合の外形的事実に関する情報からは、通常、当該懇談会等の個別、具体的な開催目的や、そこで話し合われた事項等の内容が明らかになるものではなく、この情報が公開されることにより、直ちに、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは断じ難い」。本件懇談会等に関する文書を公開することにより、大阪府公文書公開等条例8条4号・5号にいう事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるというためには、「上告人の側で、当該懇談会等が企画調整等事務又は交渉等事務に当たり、しかも、それが事業の施行のために必要な事項についての関係者との内密の協議を目的として行われたものであり、かつ、本件文書に記録された情報について、その記録内容自体から、あるいは他の関連情報と照合することにより、懇談会等の相手方等が了知される可能性があることを主張、立証する必要があるのであって、上告人において、右に示した各点についての判断を可能とする程度に具体的な事実を主張、立証しない限り、本件文書の公開による前記のようなおそれがあると断ずることはできない」。

 (3)最二小判平成6年3月25日判時1512号22頁(京都府鴨川ダムサイト情報公開訴訟、Ⅰ―42)

 事案 京都府知事Yは、鴨川の河川管理者であり、鴨川の改修計画について幅広く意見を聴くために鴨川河川協議会を設置した。この協議会においてダムサイト候補地点選定位置図(以下、本件文書)が提出された。そして、協議会が終了した後、ダム構想の存在と先の位置図が提出されたことが記者会見で発表された。これを知ったXは、京都府情報公開条例に基づいて本件文書の公開を請求したが、Yは、これが条例第5条第6号に規定される意思形成過程情報に該当するとして非公開の決定をした。なお、本件文書は初期の段階の資料であり、地質などの自然要件や用地確保の可能性などといった社会的条件については全く考慮されていなかった。

 京都地判平成3年3月27日判タ775号85頁は、Yの処分を違法とした。これに対し、大阪高判平成5年3月23日判タ828号179頁は、Yの処分が相当であるとしてXの請求を棄却した。この判決は、理由として、本件文書が「ダム構想が構想として成立し得るかどうかの検討資料とするため、京都府土木建築部河川課(協議会の庶務を処理する部課)が鴨川流域において貯水が可能な地形を二万五〇〇〇分の一の地形図から読み取り、それを流域図に示したものにすぎず、ダムサイト候補地選定の重要な要素となる地質・環境等の自然条件や用地確保の可能性等の社会的条件についての考慮を全く払うことなく、作られたものである」こと、前記記者会見の後に「後協議会委員に対し、ダム建設について、交渉を申入れる団体や面談を強要する者があり、また、協議会委員宅に無言電話があり、また、電話で種々強い調子で申し入れをする者が現れ、委員の中には、その職を辞任したい意向を示す者がいた」ことなどをあげ、本件文書を「いわば協議会の意思形成過程における未成熟な情報であり、公開することにより、府民に無用の誤解や混乱を招き、協議会の意思形成を公正かつ適切に行うことに著しい支障が生じるおそれのあるものといえる」と判断している。

 判旨 最高裁判所第二小法廷は、大阪高等裁判所の判断を正当として是認し、京都府情報公開条例第5条第6号が憲法第21条などに違反するというXの主張を退けた。

 

4.個人情報保護

 (1)個人情報保護制度

 ①個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)

  個人情報保護に関する基本法(第1章~第3章)

  民間部門の個人情報保護に関する一般法(第4章~第6章)

 ②行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政個人情報保護法)

 ③独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人個人情報保護法)

 ④情報公開・個人情報保護審査会設置法

 ⑤行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等による法律

 (2)行政機関個人情報保護法の目的

 第1条:行政の適正かつ円滑な運営/個人の権利利益の保護

 (3)行政機関個人情報保護法の対象機関

 行政機関情報公開法の対象機関と同じである(第2条第1項を参照)。

 (4)個人情報などの意味

 ①個人情報

 「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」(第2条第2項)。←行政機関情報公開法における個人情報と同様である。

 ②保有個人情報

 「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして、当該行政機関が保有しているもの」(第2条第3項)=行政機関情報公開法にいう「行政文書」に記録されているもの。

  ③個人情報ファイル(第2条第4項、第10条、第11条)

 第2条第4項;保有個人情報を含む情報の集合物で、コンピュータなどによって検索が可能であるように体系的な構成がなされたものとされている。

 第10条;個人情報ファイルを保有しようとする際の、総務大臣への事前通知の義務(変更についても事前通知の義務が課される)

 第11条;保有している個人情報ファイルについて帳簿(個人情報ファイル簿)を作成し、公表する義務(第1項。第2項および第3項も参照)

 (5)取扱基準(第3条以下)

 個人情報の取り扱いについては、第3条以下に規定されている。

 ①保有の制限、特定(第3条)  利用目的の達成に必要な範囲を超えてはならない、など。

 ②利用目的の明示(第4条)

 ③正確性の確保(第5条)

 ④安全措置の確保(第6条)

 ⑤従事者の義務(第7条)

 ⑥利用および提供の制限(第8条)  但し、第2項により、一定の要件の下において利用目的外の利用を認める。

 (6)行政個人情報保護法と個人の権利

  ①開示請求権(第12条) 本人はもとより、未成年者または成年被後見人の法定代理人にも認められるが、開示すれば本人に不利益が及ぶおそれがある場合には不開示となる(第14条第1号)。

 原則は開示であるが、第14条各号により、不開示事由が定められる(限定列挙)。第1号以外は、ほぼ情報公開法と同様の事由が定められている。裁量開示も認められる(第16条)。

 なお、情報公開法と同様に、部分開示(行政個人情報保護法第15条)、そして存否応答拒否処分(同第16条)も定められている。

 ②訂正請求権(第27条、第29条)

 ・開示請求が行われることを前提とする。請求を受けて開示された自己の本人情報が事実でないと思料するときに、訂正(追加または削除を含む。以下同じ)を請求する権利である。行政機関の長は、請求に理由があると認めるときに訂正をしなければならない(第29条)。

 ・訂正を要求しうる本人情報は、次のものに限定される。

  第27条第1項第1号:「開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報」

  同第2号:「第二十二条第一項の規定により事案が移送された場合において、独立行政法人等個人情報保護法第二十一条第三項に規定する開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報」

  同第3号:「開示決定に係る保有個人情報であって、第二十五条第一項の他の法令の規定により開示を受けたもの」

 ・訂正請求は、「保有個人情報の開示を受けた日」から90日以内に行わなければならない(同第3項)。

 ③利用停止請求権(第36条)

 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に請求しなければならないとされる。

 a.保有個人情報の利用の停止または消去:保有個人情報が行政機関によって適法に取得されたものではない場合、第3条第2項に違反して保有されているとき、または第8条第1項・第2項の規定に違反して利用されているとき

 b.保有個人情報の提供の停止:第8条第1項・第2項の規定に違反して提供されているとき

 (7)救済制度(第42条)

 情報公開法と同様の規定であり、行政不服申立てについても情報公開・個人情報保護審査会への諮問手続が明示されている。

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